貞観政要 全訳注 (講談社学術文庫)

著者 :
制作 : 呉 兢 
  • 講談社
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本棚登録 : 299
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (776ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065219126

作品紹介・あらすじ

1300年以上読まれた「統治の教科書」不朽の古典、全文完全新訳。
とても読みやすい平明な訳文と、背景となる歴史がよくわかる解説でおくる、決定版!

□よき君主は諫言に傾聴する□
唐王朝(618-907年)の第二代皇帝にして、王朝の最盛と謳われる七世紀「貞観の治」をなした皇帝・太宗が、
広大な版図を治め、王朝を栄えさせるために、臣下と議論を交わし、ときには痛烈な諫言を受け入れた様を描いたのが、
この『貞観政要』全十巻四十篇です。

「そなたが私を諫めること、これまでに二百回以上にもなっており、それらはみな私の意に適かなっている。そなたが衷心より国に奉仕しようというのでなければ、このようなことはできないに違いない」(本書 巻二「任賢」より)

□「人の上に立つ者」のために書かれた□
太宗が死して60年余が過ぎ、国史編纂に携わる歴史家の呉兢によって編纂されたこの書物は、
唐王朝が変革のときを迎えようとする時代にあって、
貞観の治世を手本とするよう、当時の皇帝に上進されたものでした。

□日本人も古代から読み継いだ□
平安時代の日本にも伝わると、以来江戸時代を経て現代に至るまで、
統治者の心構えを説く必読書として読まれ続けてきました。
徳川家康も明治天皇も読んだと言われる、「主君のための教科書」です。

□ビジネスの智恵として□
現代にも通じる、人材育成、組織統治、コミュニケーション術の要諦を説く一冊として注目されています。

□歴史学の眼で「全文」を読み解く□
『貞観政要』が描くのは「理想の君主」像だけではありません。
長く皇帝の座にあった太宗は、やがて怒りやすくなり、傲慢で贅沢になり、直言を嫌がるようにもなっていきます。
なぜ撰者・呉兢は、そのようなことまで記したのか、
唐王朝はいかなる歴史の中で築かれたか、
実像の皇帝・太宗はどのような人物であったか―
歴史学者ならではの鋭い分析とわかりやすい解説で、本書の「本当の意義」を読み取ることができます。

【本書は訳し下ろしです】

感想・レビュー・書評

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  •  ビジネスリーダーが読むべき本として紹介されることも多い『貞観政要』、本書は全10巻40篇の全訳本で、訳及び原文で770頁を超える大冊ではあるが、手に取りやすい文庫本の形で刊行されたことは、とてもありがたい。

     巻一君道篇第三章の「創業と守成、いずれが難きや」は漢文の教材でも良く取り上げられる有名な一節であるが、これをはじめ、太宗の言行、臣下とのやり取り、臣下の太宗に対する上奏、諫言等が記録されている。

     全体を通読し、特に、次のような点が印象に残った。
     ・隋の滅亡を経て唐による統一という大変動期の当事者であった太宗にとって、国家運営上、隋、特に煬帝の失政の轍を踏まないことが重要であったこと。
     ・大規模事業や君主の奢侈に伴う労役負担や戦役に駆り出すことなど、民に多大な負担を課すことが民の不満を招き、ひいては国家の安定を害すること。それを端的に表す言葉として、"君は船なり、人は水なり。水は能く船を載せ、亦能く船を覆す"という古語が紹介されている。
     ・君主の明君たるべきには、広く臣下の進言に耳を傾けるべきこと、臣下も覚悟をもって進言すべきことが、繰り返し取り上げられる。
     ・太宗も治世初期には、臣下の言を良く聞き、身を慎んでいたが、唐の治世が安定してきたからか、我儘になってきたこと。(全訳だからこそ、そのような変化が良く見えてくる。)


     魏徴の長文の諫言、それを聞く太宗の姿勢にも打たれるものがあったが、何よりもここまで記録として残していくという営み自体、素晴らしいとの思いを新たにした。


     訳文は平明で読みやすく、各篇始めの注記は、問答の歴史的背景を知るために大変役に立つ。一読をお勧めしたい。

  • 古より以来、兵を窮め、武を極めて、いまだ亡ばない者はいない。

    (愚かな)帝王は機嫌が良いときに功績をあげてない人間に褒美を与え、機嫌が悪いときに罪のない人間を処刑する。

    *じょうがんせいよう。貞観の治。唐。2太宗李世民。

  • 初志貫徹。
    これが一番難しい。

    一番伝えたかったのは、『巻十 慎終』魏徴の上奏だったんじゃないか。

    世界史の教科書にも出てくるほどメジャーな「貞観の治」を実現した太宗も、その晩年には翳りが見える。有終の美を飾れないのも人間くささが出てて趣深い。

    人の営み、浮き沈みは今現代に始まったことじゃない、それを抽出して自分に置き換える。歴史を学ぶ醍醐味だと思う。

  • 唐の2代目皇帝の太宗と臣下とのやりとりに関する記録が綴られた書物。そこには古人の書物や古代の皇帝の中でも長く続いた聖君とすぐに滅びてしまった暴君の政治の事例が書かれており、それらを通じて主君としてどうあるべきか、また、臣下としても主君とどう向き合うべきかについて学び考えさせられる。現代のリーダーシップを学ぶ本であるということがよく理解できその通りだと思う良書である。何度も読み返したい。
    常に臣下や人民に対して哀れみの心を持ち、人民のことを第一に考えること、自分に謙虚の気持ちを持つことの大切さを何度も認識させられる。また、初めの頃はそれが実行できていても、だんだんと慣れてきて怠慢になったり、功績が大きくなるにつれて傲慢になったりもする、それは全て主君としてのリーダーの心持ちと行動にかかっている。継続することが難しい、感情を抑制することは難しい。だからこそ、こういった歴史の書物をたくさん読み続けていくことで徳を積んでいけるようになるのではないかと考える。

  • 17
    開始:2023/5/20
    終了:2023/6/3

    感想
    どれだけ謙虚でいようとも。やがては自らの才能と功績に溺れる。それでも実直な臣下がいれば。奢りを捨て常に中庸を保ち意見に耳を傾ける。

  • 第75回アワヒニビブリオバトル「おうち時間DEビブリオバトル」4時間目 外国語活動で紹介された本です。オンライン開催。
    2021.05.02

  • およそ760ページというボリュームということもあり、とりあえず読み終えるまでにも時間を要した。読むのは大変だったけど、太宗が本当に優れた名君であったというよりも、魏徴を始めとする臣下に恵まれていて、貞観のはじめの頃は進言に対して、素直に認めて改めていたことによるものだったのがよく分かった。そして、徐々に謙虚さがなくなり、怒りやすくなり、傲慢で贅沢になり、直言を嫌がるようになっていった様子もわかる。訳は現代語として非常にわかりやすく、親切です。長期的に繰り返し読むつもり。

  • 全国の独裁者にオススメの一冊。
    部下の進言を聞き入れ、ブレない人をほめることを目指すための教訓集。
    他のひとの感想にもあるように、とにかく同じことを何回も何回も繰り返されている。
    尊敬する出口氏によると、ビジネス書100冊に勝る名著とのこと。特に三鏡の下り。

  • 唐王朝の皇帝・太宗と臣下との議論・諫言の様を後世の手本として編纂した書の解説付き全訳。記された治世後期の太宗の姿からは、権力者が謙虚さを保ち続けることの困難さが伝わり興味深い。原文併記や典拠・史実の解説がありがたい。

  • 故事にちなんだ政治の教訓集。なにかの書評で褒めてあったので、読んでみたが、陳腐。しかもやたらと分厚い。同じようなことの繰り返し。

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著者プロフィール

1951年,東京生まれ。早稲田大学卒業。同大学大学院修士課程・博士課程単位取得退学。文学博士。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専門は唐代政治史・国際関係史。編著書に『唐の北方問題と国際秩序』『ソグド人墓誌研究』『唐代の国際関係』『訳註日本古代の外交文書』『唐代的民族,外交与墓志』がある。

「2021年 『貞観政要 全訳注』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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