- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065212745
作品紹介・あらすじ
阪急創業者・小林一三は、「政治中心」の東京に対して、大阪を「民衆の大都会」と呼んだ。
ターミナル・デパート、高級住宅地……国鉄に対抗し「官」からの独立を志向する関西私鉄は、沿線に市民文化を花開かせ、「民衆の都」大阪は東京を凌駕する発展を見せた。
だが、大正から昭和への転換、昭和天皇行幸を機に、街は次第に「帝都」へと変質してゆく―。
権力の装置=「国鉄」と関西私鉄との葛藤を通し、「都市の自由」の可能性とその挫折を描く、原武史の代表作。
第20回(1998年) サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞。
[解説(鹿島茂)より]
「横軸としての鉄道に、縦軸としての天皇が交差することによって、思考の座標軸が形成され、二つのパラメーターが思考の軌跡をさまざまに描き出す」
[本書の内容]
はじめに―昭和大礼の光景
第一章 私鉄という文化装置
「帝国」と「王国」
『細雪』から
関東私鉄と関西私鉄
第二章 「私鉄王国」の黎明
第五回内国勧業博覧会
法の抜け穴
二つの風土
第三章 「阪急文化圏」の成立
往来ふ汽車を下に見て―小林一三という人物
民衆の都
沿線文化の確立
反官思想の結実―阪急デパート
第四章 昭和天皇の登場
「大大阪」の誕生
昭和大礼と都市空間の変容
官民協力奮励セヨ―一九二九年の行幸
第五章 阪急クロス問題
「官」の巻き返し
逆風
小林一三、社長を辞任す
第六章 「帝都」としての大阪
大阪市民たるもの
天皇のまなざし
一生一代の御奉公
おわりに―「紀元二千六百年」の光景
解説=鹿島茂
※本書の原本は1998年に講談社選書メチエより刊行されました。
感想・レビュー・書評
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阪急は最高です
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大阪の私鉄の歴史を軸に、政府、特に天皇に関する行事によってどう変わってきたのか解説されている
「鉄学」概論 車窓から眺める日本近現代史
で語られていた関西圏の事情について、詳しく来歴が語られている
政治中心の東京に対して、民衆の総体としての大阪というテーマ
「鉄道」は国の管理下に置かれるが、「軌道」ならば別の法律が適用される
道路を通る部分一部分でもあるから軌道という、法の抜け道的な理屈
そのため、車幅の規格から異なった、私鉄が先導する形で発展できたらしい
民間、特に現在の阪急の歴史がわかる
スタートアップから、沿線の発展、商業施設の開店、ターミナルの場所など色々と紆余曲折はあるようだ
官との対立に関しては、「阪急クロス問題」が顕著
梅田ダンジョンと呼ばれるように、梅田駅と大阪駅の連絡が非常に複雑な事情も過去の来歴によるもの
そんな気質が今の経営者陣にも残ってるんですかね?
その決着に天皇の行幸を利用したというイメージを抱いてしまう
まぁ、主にマスコミ戦略による民衆の叛意が決定打となったというのがより正確な表現なんでしょうけどね
鉄道そのものにはまったく興味がない私
でも、タモリ倶楽部の鉄道回で詳しい方々が盛り上がっているのを見ると何だか羨ましいような気持ちになってくるわけで
これを読んだ後に抱いた気持ちも、こんな知識があったら色々と楽しいのだろうなぁといった感じでしょうか -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/768273 -
タイトルに惹かれて手に取った本です。
著者は、「東京」「大阪」、「国鉄」「私鉄」を対置しつつ論を組み上げていきますが、その内容は、日本思想史的な色合いで、ちょっと予想外のものでした。
「官」の意向に対し「民」の文化を推し進めようと奮闘した関西私鉄の経営者たち。その中でも特に際立っていたのが阪急電鉄の総帥小林一三でした。「官」を相手に腹を括って徹底抗戦していく彼の姿勢は強烈な印象を残しました。とても魅力的な人物ですね。 -
講談社選書メチエ版で既読。