わたしが消える

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 479
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065211205

作品紹介・あらすじ

第66回江戸川乱歩賞受賞作!
綾辻行人氏(選考委員)、推薦。
「序盤の地味な謎が、物語の進行とともに厚み・深みを増しながら読み手を引き込んでいく」

 元刑事の藤巻は、交通事故に遭い、自分に軽度認知障碍の症状が出ていたことを知り、愕然とする。離婚した妻はすでに亡くなっており、大学生の娘にも迷惑はかけられない。  
 途方に暮れていると、当の娘が藤巻を訪ね、相談を持ちかけてくる。介護実習で通っている施設に、身元不明の老人がいる、というのだ。その老人は、施設の門の前で放置されていたことから、「門前さん」と呼ばれており、認知症の疑いがあり意思の疎通ができなくなっていた。   
 これは、自分に課せられた最後の使命なのではないか。そう考えた藤巻は娘の依頼を引き受け、老人の正体を突き止めるためにたった一人で調査に乗り出す。
 刻一刻と現れる認知障碍の症状と闘いながら調査を続ける藤巻は、「門前さん」の過去に隠された恐るべき真実に近づいていくーー。

残された時間で、自分に何ができるのか。
「松本清張賞」と「江戸川乱歩賞」を受賞した著者が描く、人間の哀切極まる社会派ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 一気読みの一冊。

    認知症を一つのテーマに描かれる社会派ミステリ。

    認知症診断された元刑事の主人公が身元不明の老人の調査に携わることになり次第に周囲も脅かされていく…よくある展開だけれど興味は尽きない一気読みの面白さがあった。  

    記憶が喪われつつある日々、片や無意識に、片や意図的に記録としてだけでなく"記憶"としてノートに記すシーンはせつなさが相まって印象的。

    警察組織の闇は難解疑問だったけれど組織に闇はつきものなのだろうな。

    コントロールに一抹の不安も感じる。

    想いを知った、うるっとくるラストシーンも良かった。

  • 介護施設の門前に置いていかれた、認知症の〈門前さん〉。
    彼の介護担当の娘に頼まれ、藤巻は身元を突き止めようとするが……。

    第66回江戸川乱歩賞受賞作。

    介護施設の門前に置いていかれた、認知症の男性は誰なのか?
    冒頭の謎に引きこまれる。

    自分も認知症になるかもしれないという主人公の恐怖と、離婚により離れていた娘との葛藤も、読ませる。

    元警察官(ただし捜査2課)が程よい捜査能力で、地道に手がかりが続いていくのも、おもしろかった。

    ただ、クライマックスはありがちで、前半に対してややもの足りなかった。

  • 主人公は中年男性。今はマンションの雇われオーナーをしているが、元は刑事。しかもどうやら陰謀によって刑事を辞めさせられ、妻と離婚し、娘とも離ればなれになってしまっている。さらには、自転車で停車中に追突事故にあい、病院で検査をしてもらうと、認知症予備軍であることが分かる。

    めちゃくちゃ暗すぎる設定だが、介護士を目指す娘から、施設にいる、身元不明人の調査を依頼され、
    そこから一発逆転のストーリーが始まる!
    …のかと思ったら、なかなかに、その、色々無理がありすぎて力業が過ぎる展開結末。ハードボイルド陰謀活劇みたいな感じを目指したのだろうが、仮に発覚したところで何一つ証拠もない何の証明もできない、何十年も事件のために、いま安泰の地位にいる人が、わざわざ人を殺させはしないよなぁ…とか。
    刑事を辞めた経緯も何時代の設定だろう?という感じで今一つ盛り上がれなかった。

  • 軽度認知障碍と診断された元刑事の藤巻。
    介護施設で研修中の娘から、施設の門の前に置き去りにされ、『門前さん』と名付けられた認知症の老人の身元調査を依頼される。最初は断ろうとしていた藤巻だが、記憶のない『門前さん』と実際に対面し、調査に乗り出すことにする。

    老人の身元を調べる、人探しのような話なのかなと思い読み進めた。だが、『門前さん』が何者なのか、全く判明しない。何故か・・・という展開。
    時代を遡って痕跡を辿っていくスケール感や、得体の知れない敵の存在は面白かったが、当時の背景や組織の在り方など、掴みにくい箇所もあった。

    『門前さん』の過去を追っていくうちに、藤巻自身の心情が変化していく様子がリアルだと思った。
    病気に関しても、軽度認知障碍・認知症に対する不安や恐怖が膨らむが、娘の行く末を願う父親の優しさの方が大きくなっていくところに希望があるなと感じた。

  • 軽度認知症と診断された元刑事が娘から身元不明の認知症老人の身元を突き止めて欲しいと依頼される。老人の過去に隠された真実に近づくにつれ、事件に巻き込まれていく。
    江戸川乱歩賞受賞作の社会派ミステリーということで読んでみたけど…うーん。いまいちかな。
    老人の正体に迫る部分はなかなか面白かったけど、ラストがありきたりな感じだったと思う。社会派ミステリーならもう少し社会問題を掘り下げた内容だと深入りできて面白いんだけどなー。

  • 身元不明の老人の正体を探ることがあんなことになるとは…。
    展開が面白くて一気に読み終わりました!
    記憶障害の主人公が認知症の門前さんをみて、ゆくゆく自分はこうなるのかと考えていたのかな?
    記憶がちょっと曖昧で自信はないですが、それが切なかったです。
    ちょっと終わりの方はなんだか雑?って思いましたが全体的にみればテンポがいいし読んでて次はなんだ?!って気持ちにさせられたので良かったです。
    私はミステリーが好きなので、江戸川乱歩賞受賞作品は読むべきかなと思いました。本の最後の方に審査員の方々の批評が書かれていたので読みましたが、結構辛辣だなぁと思いました笑
    ただその評価はさすがと言うべきか凄く頷けました。自分的には凄く面白いと思った作品が辛辣な評価をされているのを見て悲しい気持ちになりましたが、次の本を読むときの参考になるので批評も楽しむことができました。

  • 元刑事の管理人,娘から頼まれて身元不明の認知症老人門前さんの過去を調べるうちに,公安の闇に触れていく.動き出す殺し屋や警察関係の脅かしに屈せず頑張る主人公がロートルながら魅力的で,一気に最後まで読んだ.ただ,死んだ元妻と娘がもっと早い段階でやりなおせていたらとそこが残念だ.

  • 認知症の疑いを指摘され、通院・投薬治療中の藤巻は元警察官。大学生の娘・祐美に頼まれて、介護実習先の施設の前に置き去りにされていた認知症の老人の身元探しを始める。調査が進展するにつれて、邪魔が入り、身の危険さえ覚えるようになる。
    本人が認知症の進行に自覚的な場合、しんどいだろうなと思う。心配できるだけ、大丈夫ともいえる。
    通い慣れた、知っているところで迷うのが認知症の予兆の一つだが、藤巻はちゃんと一人で旅ができるし。
    本筋のミステリのほうは、身も蓋もない真相で、社会派というより、陰謀論よりに感じられなくもない。

  • 何者にも屈しない悪を憎む正義のヒーローは不死身……ではない。
    年も取るし認知障碍にもなる。
    この本の中で恐ろしかったことは得体の知れた(巨悪の)権力の及ぼす力か?それとも自分の記憶が今後、保てなくなるのでは?という自分自身に対する不安なのか。
    如実に顕れる老化、これから人間はその事も意識していかなければならないのだとシミジミ。正義や信念や心意気も大事だけどね。

  • 最後に涙腺崩壊。

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著者プロフィール

1961年横浜生まれ。99年「島村匠」名義で第6回松本清張賞を受賞。2020年『わたしが消える』で第66回江戸川乱歩賞を受賞。22年、同調圧力がテーマの『誰かがこの町で』が大きな話題に。本書は第二次世界大戦中のものと思われる血塗られたシャネルスーツを巡り、祖母が誰にも語らなかった秘密を解く歴史ミステリー。

「2023年 『戦火のオートクチュール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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