竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065210901

作品紹介・あらすじ

日本でもっとも危険な男の物語。

この国を”超格差社会”に変えてしまった中心人物はこの男だった!
「改革」の名のもと、法律を駆使しながら、社会を次々と大胆に改造してしまう。まるで政商のように利にさとく、革新官僚のごとく政治家を操る経済学者ーー。「フェイク(偽物)の時代」に先駆けた“革命家”の等身大の姿とは。

経済学者、国会議員、企業経営者の顔を巧みに使い分け、「日本の構造改革」を20年にわたり推し進めてきた“剛腕”竹中平蔵。猛烈な野心と虚実相半ばする人生を、徹底した取材で描き切る、大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞ダブル受賞の傑作評伝。

はじめに 「改革」のメンター
1章    和歌山から東京へ
2章    不意の転機
3章    アメリカに学ぶ
4章    仮面の野望
5章    アメリカの友人
6章    スケープゴート
7章   郵政民営化
8章   インサイド・ジョブ
おわりに ホモ・エコノミカスたちの革命

感想・レビュー・書評

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  • 「学者の皮をかぶった政商」
    第54回 日本人と戦後70年(青木理)[ゲスト]佐々木実さん
    小冊子『熱風』2021年4号の特集は「アーヤと魔女」です。 - スタジオジブリ出版部
    https://www.ghibli.jp/shuppan/np/013453/

    『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木実 著)~はじめに より 抜粋 | 現代ビジネス | 講談社
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/35950?page=1&imp=0

    『竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木 実):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000344798

  • 日本経済の改革の立役者か、破壊者か。構造改革の旗手、今も政治のブレーンとして活躍する竹中平蔵氏の半生を追った作品。

    郵政民営化ほか構造改革の向うに残ったのは格差社会、外資系企業の進出だけだったようにも思える。日本社会の持っていた古き良きものが、経済の効率化、新自由主義の元で失われてしまった。

    竹中平蔵氏の果たした役割がどこまでかは本書だけでは分からないが、労働者派遣の見直しと農業改革、氏が顧問を務める人材派遣会社のパソナとの関係など注視していきたい。

  • 引き込まれて読了。『経済ってそういうことだったのか会議』の頃から、いや、本書によればもっと前からなのか、竹中平蔵は日本の中心に座り続けているような気がする。よく言われるように、昭和の頃よりも収入が伸びなくなったことを、格差社会を誘導する政策プロモーター・竹中の暴走のせいにしたい気持ちもある。だが、多少なりとも竹中の言うようなアメリカナイズされた社会制度に近づいていなかったら、今頃はもっとひどい状態になっていたのだろう、とも思う。竹中が非常に政治的な人物というのは、たぶん、そのとおりなのだろう。

  • よく言えば「積極的」?悪く言えば…

    竹中氏の経済学的な見地は正直よくわからないので、恥ずかしながら、最初の本の出版時のエピソードや博士号の話、笹川良一さんの財団との関係、住民税不払い方などの「?」的な部分に引き込まれてしまった。

    また、どうして氏がそれほどアメリカ的社会に魅力を感じているかがこれまた「?」だった。アメリカというよりは宮内氏の影響も感じられた。

    あとがきで作者の方も書かれていたが、ご本人の話が載っているとさらに興味深かったのかもなぁ…

    (追記)
    小泉元首相が「自民党をぶっ壊す!」といって郵政民営化を実行しようとしていた当時、「何かがかわる」と思って期待していた自分に言いたいのは、「竹中さんのキャンペーンにまんまと踊らされたんだ!?」ということ…

  • ある意味すごい人。こんなに貪欲に自己利益を追求しながらも、世直しの装いをしっかりとかぶり続け、人々を欺かせ続けられている人はいるだろうか。著者は次書で宇沢弘文の評伝を書いているが、竹中平蔵はあらゆる意味において真逆の存在。

  • 端的言ってこの20年間で竹中のやった構造改革は、目立って評価できる結果は残しているのだろうか? 確かに彼と彼らの改革は、抵抗勢力たちの既得権益との戦いであったことは間違いないが、同時に抵抗勢力から奪った利益を自分のものにし、自分が新しい既得権益者の座についているだけではないか? 労働市場の規制緩和を打ち出す政策実行者が人材派遣会社の会長を兼務しているのは公正さを欠いているのではないだろうか? 企業の内部留保が爆上がりし株価も高いが、そのかわりに非正規労働者や低所得者や福祉を受けるべき対象者が負っている負荷はつり合いがとれないくらい不公平な状況になっている。当然国内消費は伸びないからGDPは上がらない。この人はいったいどんな社会を目指して改革を行っているのか? この人に政治理念や倫理なんてないのではないだろうか? そんな疑問から本書を読んだのだが、ほぼそういうことだったという感想。そもそも経済学には「ある目的を達成するために」「手段を考える」学問であって、「目的が何かを考える」学問だという考えがあるらしい。これはまさに竹中の人物像そのもので、戦争目的の技術開発で「科学者の道徳観・倫理観」が厳しく批判されるようになったのに経済学者にはそれは問われていないように思う。これからは経済学者のこのような態度も批判される必要があるだろう。学者が政治に関与するなら応分の結果責任を負うべきだし、政策を出す側の人間が利害に関係する企業とかかわりを持つことは厳しく規制すべきだと思う。本書の触れている時代のあとにも、国家戦略特区諮問会議で加計学園への学部新設承認や、コロナの持続化給付金事業の受託に電通と組んでサービスデザイン推進協議会なるトンネル会社を作ってみたり相変わらず利権に勤しんでいる。彼の口にする「改革」の最終目的地は、自分の自己実現と金儲けでなければどこにあるのか、もっと議論されるべきだという筆者の意見に同感。

  • 新自由主義的政策を導入してきた竹中平蔵氏の人物像を詳細に描いた書。公共事業拡大派から一転して緊縮財政派に鞍替えするなど、氏の言説は度々変節しているが、それは日本の国益や学問上の正しさを追求した結果などではなく、単に自らの利益最大化のためだったということが、関係者の数々の証言から明らかになる。同僚と共同で研究した内容を独り占めして発表してしまうなど、自分の利益のために他人を利用してはばからない性格は、若い頃から一貫しているようだ。その面の皮の厚さに驚くばかりである。

  • 金融界の不良債権処理にあたっての繰延資産税金資産算入を厳格化、監査法人を指図して銀行を破綻させ、公的資金投入を実現、郵政マネーに目をつけたアメリカになびくような郵政民営化の推進、オリックス宮内社長と組んで規制改革利権に手を染めるなど、竹中氏の利にさとい戦略的な手法に切り込む。
    猛烈な野心を持ち学者と称しながら政治的、柔軟ではあるが節操がない、効率性のみを追求し、公正、平等性を無視する・・・竹中氏の真の姿が著者によって鋭くえぐり出される。 
    テレビなどで見る穏和な表情と柔らかいしゃべり方から自分が持っていた竹中像が音をたてて崩れおちた。
    「改革派」という聞こえの良さとは裏腹に多くの敵を作っているようで、何よりも自己利益を強く追求するところが汚ならしく感じた。

  • 竹中平蔵について、ぼんやりとしたイメージしかなかったけれど、ほぼ時系列でその活動をまとめてみるとようやくわかる。ある種の平成金融史としても読める本。もう少しパソナとの関係も深堀してもらいたかった。自分で調べないと。

  • ニュースのコメンテーターとして出演しているイメージだったが、もっとしたたかな人だということが分かった。
    政府や政策の裏側は表に出ないことだらけだなと…。

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著者プロフィール

佐々木実(ささき・みのる)
1966年大阪府出身。大阪大学経済学部を卒業後、91年に日本経済新聞社に入社。東京本社経済部、名古屋支社に勤務。95年に退社し、フリーランスのジャーナリストとして活動している。2013年に出版した『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(小社刊・現在は講談社文庫)で第45回大宅壮一ノンフィクションと第12回新潮ドキュメント賞をダブル受賞。社会的共通資本の経済学を提唱した宇沢弘文に師事し、彼の生涯を描いた『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』(小社刊)で第6回城山三郎賞と第19回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞をダブル受賞した。


「2022年 『今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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