インド倶楽部の謎 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065201329

作品紹介・あらすじ

自分の死ぬ日が、わかるとしたら……。火村&有栖の絶妙コンビが遭遇する殺人事件とは!? 大人気「国名シリーズ」最新作! 


★ミステリーランキングに続々登場★
2018年国内本格ミステリランキング第5位!(2019年本格ミステリベスト・ベスト10)
2018年ミステリ・ベストランキング第9位!(ミステリマガジン/2019年1月号)
このミステリーがすごい! 第14位!(このミステリーがすごい!2019年版)
BOOK OF THE YEAR 2018 第14位!(ダ・ヴィンチ 2019年1月号)
自分の死ぬ日が、わかるとしたら……。火村&有栖の絶妙コンビ「国名シリーズ」最新作!

感想・レビュー・書評

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  • 輪廻転生と前世を信じるインド好きメンバー。
    そういうのがあるかどうかはともかく、強固に信じられるって言うのは凄いけど怖いな…
    自身は否定的だけど相手が信じているならそれを前提に考えられる火村先生の思考は柔軟で理性的。

    作中で、これは引っ掛けだなとかミスリードだなとか思って警戒していたにも関わらず見事にハマってしまった。
    まさか犯行動機がそこにかかってくるとは…
    警察だったらなかなか犯人にたどり着けなかっただろうな。

  • 前世の輩が集まる不思議な集まりで起こる事件。
    個人的には、結構な大どんでん返しで興奮してしまいました。決して派手ではないんだけれどじわじわくるタイプ。人間の愚かな思い込みからなかなか気がつくことの出来ない視点が解決の糸口。

  • 『謎を解くのは先生で、あんたが物語を完成させるんかな。それがコンビを組んでる理由や』
    作中の容疑者が、火村・アリスコンビを評した言葉ですが、なるほどなあ、と思いました。何とも奇っ怪な事件に対し、今回も火村とアリスコンビはそれぞれの視点から、事件と物語にケリをつけます。

    前世の記憶を共有するという人たちが集まり、開かれた占いの集い。その集いに参加していた二人が殺害され、さらに被害者の一人が予言された死の日付と、死亡推定時刻も近いことが分かる。事件の管轄である兵庫県警は、火村とアリスのコンビにも協力を要請する。

    話の構成はやっぱり巧い。占いに隠された思惑と、被害者の生前の不審な動き。そこから過去へ過去へと事件を遡っていくと、たどり着くのは小さな旅館での土砂崩れ事故。少しずつ材料がそろい、事件のピースが見えてくるのが心地良い。

    今回は野上刑事の活躍も印象的。火村とアリスは各警察から頼りにされていますが、野上刑事だけは、素人が事件に首をつっこむことを、心よく思っていない様子を隠そうとしません。

    読んでいるイメージからすると、いわゆる昔ながらの刑事というか、足と勘で事件に迫る、頑固な印象が強い。そんな野上刑事が捜査を進め、片道8時間の山奥の旅館までの強行軍を厭わず向かう。その最中で野上刑事の家族や心情も垣間見えて、彼がより身近に感じられました。

    前世であったり予言であったり、胡散臭い話が多く事件の真相も特殊ですが、一方でアリスが終盤にふと思い浮かべる、前世と来世に対する啓示が印象的。

    『前世とは昨日のこと』

    アリスは火村の過去に関して、思いをめぐらすのだけど、読者であった自分の心にも気持ちよく迫ってくるものでした。過去の失敗や後悔、苦い記憶を前世のこととして切り離す事ができたなら……。

    作中で色々と不思議で、奇怪な前世論が出てくるので、アリスのセンチで優しい前世の啓示は、その対照としてよりストンと落ちてきます。

    そしてこのアリスの啓示と同じようなことを考えた登場人物が、最後に火村の心の裡に何かを起こす。火村の心情がこのシリーズで描かれることはほぼないけど、それでも彼の心情に起こったものを、アリスと同じように想像してしまう。

    犯罪学者の火村が事件を解決する。作家のアリスが事件に物語を与える。
    ミステリってともすると、事件の解決とそのロジック、あるいはどんでん返しに神経が注がれ、物語としては物足りなく感じてしまうものもあるけど、作家アリスシリーズ、特に近作のものにおいては、その心配がほぼなくなってきているように感じます。そしてそれは、何よりアリスの心情が反映されている語りの部分が大きい。

    事件を解決する火村。事件に物語を与えるアリス。やっぱり良いコンビです。

  • アガスティアの葉ー。
    それはその人の来し方行く末がすべて記された賢者の葉。
    前世を未来を知ることができるなら、あなたはそれを聞きたいですか?

    火村&アリスのソウルメイトコンビが送る国名シリーズ第9弾(らしい)
    インドって神秘の国というイメージが強い。
    古代文明発祥の地で、ゼロを発明した国で、現代では証明できないナニカをたくさん持ってても不思議じゃない国って思っているので、輪廻転生とか言われてもなんとなく「そーなんかー、そうかもなー」と受け入れてしまう。(わたしだけか)
    アリスは輪廻転生を「あるかもしれないこと」としながらも、とことん懐疑的につっこみ、火村は「信じない」といいながら柔軟に推理に取り入れたりして面白い。
    火村もアリスもとっても紳士で、関係者に信頼されてステキ。

    読んでみて、大筋の推理は当たり、犯人も当てたのだけれど、論理的に追い込めずスッキリしなかったんですが、最後まで読むと論理的な説明がなされていて、己のツメの甘さを知るという結果に。
    面白かったです。

  • 有栖川有栖というとダリ繭、朱色辺りのイメージで、ぶっちゃけロジック中心、トリックの為のミステリ、ミステリの為のミステリ、三毛猫ホームズ、電車の中で読むミステリ、そういうものをお出しされると思って身構えつつ読んでいた。
    しかし今回は難解な人間関係やころころ変わる舞台などに悩まされる事一切なく、頁を繰れば勝手にミステリがやってきて展開される、という感じでミステリに疎い私にもおそろしく読みやすかった。そして後半に入り、チラチラと煌めくものがある。「ライツヴィルだ!」と私は思った。マニアじゃないのでうろ覚えだがこれはクイーン後期の人間ドラマだ、と胸ときめかせて読んだ。
    最後には明確に「心」というものが出てきて、作家アリスシリーズで泣かされることがあるとは思わなかった…これはどっちかっていうと月光ゲームが近いテイストだ。
    エモい。
    火村は鉄面皮でアリスは道徳に厳しい。そんな2人から、心などというあるかどうか説明しづらいものが…もう感無量だ。
    でも今から読む人は駅で読むミステリを読む気で読み始めて、最後で泣かされて欲しい。

    これこそが私がメフィストを読んでいた頃のミステリなんだよ…

    当然10作目も読みたい。

  •  久しぶりに読みました、火村&アリスの長編作品。やはりこのコンビの掛け合いが良い……そしてシリーズが続くにつれ、二人の関係性の深みが増していく……。今作は臨床心理士と前世についての論戦を繰り広げるシーンで、二人がそれぞれを慮ってフォローし合う場面がグッと来ました。あとカレー食べたくなった(笑)
     それと今作で驚いたのは、このシリーズのタイトルが、「火村が関わった事件にアリスが勝手に命名したもの」という設定だと判明したこと。そうだったのかアリス……ちょっと痛いぞアリス……(待)

     事件そのものについては、トリックや犯人・動機を解明することよりも、真相へ迫るための各々のアプローチ方法がメインなのかな、という感じ。動機については読者によって賛否が分かれそうな気もしますが、私はアリ派です。

     余談ですが、弾丸出張に出かけてしまう頑固一徹な野上さんの株が、今作で一気に上がりました(笑)

  • 第9弾
    思いもかけない動機に、ちょっとぼんやりなる。火村先生が辿り着いたことがすごいことだし、そこまでそれを想い続ける、というのか、そう行動するに至った犯人の気持ちがすごい。辛い思いをして、しょうがなかったのかも知れないけど、してはいけないことをした両親を、それでも尊敬して、感謝している娘が1番素敵だったな。殺人じゃなかったからだろうけど。でも、犯人のことも心配して、やっぱり嫌いになったりしないところが、その人の質を見れる人間なんだって思う。被害者に同情できないってだけかも知れないけども。

  • まず、しまった。と思った。

    諸事情あり、前回読んだ頃からほぼ8年ぶりとなる作家アリスシリーズ。手元にあるのがモロッコまでなので「次はインドだな」と思って短絡的に手を取ったのが間違い。

    作家アリスシリーズは講談社だけではない&国名シリーズの間にいろいろ挟まってることを忘れていろいろすっ飛ばしてこちらを読んでしまったからである。

    作中にアリスのセリフで菩提樹の件がちらっと語られて(幸いにも記憶に残らなかったが)、「えっ菩提樹…???読んでないぞ」と気が付きネットであわてて順番を調べてショックを受けたわけだ。

    さて本題。

    本作はインドの前世の話と神戸のガイドブック的要素がかなり多く(多いと感じたのは私がインドの話に詳しくないことも大いに関係していると思う)、どうした????と違和感を強く感じ、ミステリーを読んでいる感じがあまりしなかったのが残念。

    インドの前世云々を理解するのと事件を追うのとが同時進行で行われて、当然よくわからないインドの前世の話を理解しようと必死になってしまったのだ。

    とりあえずすっ飛ばしたもろもろの、ちゃんと順番から読みなおしてみたいが、わりと新しめのインド倶楽部がこの調子だとなんだかちょっと、筆が変わったかのような感じがして離脱するかもしれない。。。

    火村の心の黒い部分の謎がとけるまでは読み続けたいのだけれど。このシリーズは人を殺したいと思ったことがあるという火村というキャラ(キャラというと言葉が軽いけれど)に魅力があるためそこが濃密に描かれていないと途端に物足りなさを感じるぐらい火村というキャラクターが魅力的だからだ。

    ちなみに、火村先生は、勝手に「もうちょっと歳を取った本郷奏多くん」で想像しています。この想像、おすすめです。

  • 国名シリーズ第九弾。いつもながら安心して読めるこのシリーズ。殺人事件の関係者同士のつながりや火村と有栖のコンビの推理と今作もシリーズの魅力がたっぷりある。ずっと読んでいたくなるような心地よさと人の心のうちにあるものの悲しみなどの感情もあって今作も満足。

  • 国名シリーズ九作目

    国名シリーズはそこまで多くは読んでないが他作品と比べて筆が変わったのかなという印象

    なんとなくロジックが弱いというかフワフワしているというか...
    内容が神秘的というかそういう内容だから尚更そう思うのかもしれない

    ただ格子はしっかりしていて内容もわかりやすい等、読みやすい作品

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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