大江健三郎全小説全解説

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065195062

作品紹介・あらすじ

新聞記者として長年大江健三郎を取材してきた著者による、わかりやすい大江健三郎入門書。『大江健三郎全小説』(全15巻)を通して書かれた解説を一冊にまとめる。大江健三郎全小説のあらすじから説き起こしつつ、個々の作品発表当時の文芸批評家による主要評論に言及、その作品がどのように受容されてきたかを論じる。またときに作家へのインタビューを引用しながら作品の意義を明らかにする。大江文学がどのように生まれ、どのように読まれ、さらにこれからどのような研究課題がありえるのかを総合的・俯瞰的に論じた大江評論の決定版。

目次
はじめに
よろしい、僕は地獄に行こう!
惨憺たる青年たち
封印は解かれ、ここから新たに始まる
復元された父の肖像
神話としての「個人的な体験」
知と懐かしさの容れ物として
ノーベル賞はいかにしてもたらされたか
果てしなく多義的な偽史をめざす
アメリカの影が差す女性たち
予戒としての近未来SF
青年の夢想と酷たらしさ
世紀末に集中した「魂のこと」
再びの「カラマーゾフ万歳!」
永遠のモラリスト、伊丹十三
「晩年のスタイル」こそ苛烈に
大江健三郎年譜
『大江健三郎全小説』収録作リスト
文献一覧
索引

感想・レビュー・書評

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  • 神戸新聞NEXT | 全国海外 | 生活 | 東大に「大江健三郎文庫」
    https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202102/sp/0014075022.shtml

    「大江健三郎全小説全解説」 作品の真ん前で考え 深い納得へ 朝日新聞書評から|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13927968

  • 大江作品が凄いのは勿論だが、全小説(「夜よゆるやかに歩め」は未収録だけど)を網羅・総覧できる、素晴らしい一冊本。
    しかも必要にして十分なあらすじと、時代の説明、同時代のリアクションから、2020年の今だからこその評まで。
    巨大な山脈の、微細なミニチュア模型。

    目次
    ◆はじめに
    ■第01章 よろしい、僕は地獄に行こう!
    奇妙な仕事/他人の足/死者の奢り/石膏マスク/偽証の時/動物倉庫/飼育/人間の羊/運搬/鳩/芽むしり仔撃ち/見るまえに跳べ/暗い川 おもい櫂/鳥/不意の唖/喝采/戦いの今日/部屋/われらの時代
    ──初期作品群その1
    ■第02章 惨憺たる青年たち
    ここより他の場所/共同生活/上機嫌/勇敢な兵士の弟/報復する青年/後退青年研究所/孤独な青年の休暇/遅れてきた青年/下降生活者
    ──初期作品群その2
    ■第03章 封印は解かれ、ここから新たに始まる
    セヴンティーン/政治少年死す──セヴンティーン第二部/幸福な若いギリアク人/不満足/ヴィリリテ/善き人間/叫び声/スパルタ教育/性的人間/大人向き/敬老週間/アトミック・エイジの守護神/ブラジル風のポルトガル語/犬の世界
    ──初期作品群その3
    ■第04章 復元された父の肖像
    走れ、走りつづけよ/生け贄男は必要か/狩猟で暮らしたわれらの先祖/核時代の森の隠遁者/父よ、あなたはどこへ行くのか?/われらの狂気を生き延びる道を教えよ/みずから我が涙をぬぐいたまう日/月の男(ムーン・マン)/水死
    ──父と天皇制
    ■第05章 神話としての「個人的な体験」
    空の怪物アグイー/個人的な体験/ピンチランナー調書/新しい人よ眼ざめよ(無垢の歌、経験の歌/怒りの大気に冷たい嬰児が立ち上がって/落ちる、落ちる、叫びながら……/蚤の幽霊/魂が星のように降って、跗骨のところへ/鎖につながれたる魂をして/新しい人よ眼ざめよ)
    ──共生
    ■第06章 知と懐かしさの容れ物として
    身がわり山羊の反撃/「芽むしり仔撃ち」裁判/揚げソーセージの食べ方/グル―ト島のレントゲン画法/見せるだけの拷問/メヒコの大抜け穴/もうひとり和泉式部が生まれた日/その山羊を野に/「罪のゆるし」のあお草/いかに木を殺すか/ベラックヮの十年/夢の師匠/宇宙大の「雨の木(レイン・ツリー)」/火をめぐらす鳥/「涙を流す人」の楡/僕が本当に若かった頃/マルゴ公妃のかくしつきスカート/茱萸(ぐみ)の木の教え・序
    ──中期傑作短・中編
    ■第07章 ノーベル賞はいかにしてもたらされたか
    万延元年のフットボール/洪水はわが魂に及び
    ──ノーベル賞受賞をもたらした作品ほか
    ■第08章 果てしなく多義的な偽史をめざす
    M/Tと森のフシギの物語/同時代ゲーム
    ──森の神話
    ■第09章 アメリカの影が差す女性たち
    「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち(頭のいい「雨の木」/「雨の木」を聴く女たち/「雨の木」の首吊り男/さかさまに立つ「雨の木」/泳ぐ男――水の中の「雨の木」)/人生の親戚/静かな生活(静かな生活/この惑星の捨て子/案内人(ストーカー)/自動人形の悪夢/小説の悲しみ/家としての日記)/(美しいアナベル・リイ)臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ
    ──女性的なるものの力
    ■第10章 予戒としての近未来SF
    治療塔/治療塔惑星/二百年の子供
    ──時空を超えたSF的試み
    ■第11章 青年の夢想と酷たらしさ
    河馬に噛まれる(河馬に嚙まれる/「河馬の勇士」と愛らしいラベオ/「浅間山荘」のトリックスター /河馬の昇天/四万年前のタチアオイ/死に先だつ苦痛について/サンタクルスの「広島週間」/生の連鎖に働く河馬)/懐かしい年への手紙/キルプの軍団
    ──理想郷の建設・学生運動
    ■第12章 世紀末に集中した「魂のこと」
    燃えあがる緑の木(第一部 「救い主」が殴られるまで/第二部 揺れ動く〈ヴァシレーション〉/第三部 大いなる日に)
    ──魂の救済
    ■第13章 再びの「カラマーゾフ万歳!」
    宙返り
    ──神なき祈り
    ■第14章 永遠のモラリスト、伊丹十三
    日常生活の冒険/取り替え子(チェンジリング)/憂い顔の童子
    ──親しい友人の死
    ■第15章 「晩年のスタイル」こそ苛烈に
    さようなら、私の本よ!/晩年様式集(イン・レイト・スタイル)
    ──カタストロフ 3.11
    ◆大江健三郎年譜
    ◆『大江健三郎全小説』収録作リスト
    ◆文献一覧
    ◆索引

    (以下コピペ)
    新聞記者として長年大江健三郎を取材してきた著者による、わかりやすい大江健三郎入門書。
    『大江健三郎全小説』(全15巻)を通して書かれた解説を一冊にまとめる。
    大江健三郎全小説のあらすじから説き起こしつつ、個々の作品発表当時の文芸批評家による主要評論に言及、その作品がどのように受容されてきたかを論じる。
    またときに作家へのインタビューを引用しながら作品の意義を明らかにする。
    大江文学がどのように生まれ、どのように読まれ、さらにこれからどのような研究課題がありえるのかを総合的・俯瞰的に論じた大江評論の決定版。

  • 全15章のうち既読の作品に関する章を中心に5章ほど読んだだけですが、各作品のあらすじの他、重要な批評が発表当初から最近の(例えば『燃えあがる』でいうと、川西政明から小野正嗣)までピックアップされているから時代ごとのいろいろな反応がわかって興味深いし、巻末の人名&作品索引も参照しやすく、ありがたかった。ざっというと、『万延元年』→『M/Tと森のフシギ』→『人生の親戚』→『懐かしい年への手紙』→『燃えあがる緑の木』→『晩年様式集』の流れで、私は振り返りました。10代後半~20代にかけて、それこそ『燃えあがる』は単行本待たずに雑誌〈新潮〉買って抱えて持ち歩くほど愛読していた大江でしたが、はっきり言って内容は理解できていなくて、私にとっては音楽とか映画より夢中になれるエンタメ、歌詞の意味がわからないままノリノリで聴く洋楽みたいな感じだったんだな。それでも気付かない形で私のその後の人生の土台みたいなものを頑張って支えてくれていたのかもしれない。ノーベル賞取ったあと、「成城の高級スーパーで100グラム●●円の肉を買うのが習慣です」みたいなことを無邪気に話していたのがなんか嫌で、自然と離れてしまったのだが、あれは我ながら言いがかりというか全くの誤解というか、この本を読んで大江がどんな思いでわたしたちに作品を届けてくれていたのかがわかって良かった。龍さんの小説をたまに再読するときにも思うことだけど、必死に伝えてくれたメッセージをちゃんと受け取れず、日本をこんなにしちゃってごめんなさい、という気持ち。一番好きな『人生の親戚』は今読むのはヘヴィすぎる気がするから、『静かな生活』や『キルプの軍団』あたり、若い主人公の作品を読み返してみたいな。あと、これは未読だが最後の小説『晩年様式集』は是非読まねば。
    それと、井上ひさし『吉里吉里人』って東北に独立国?作る話だって知らなくて、嶽本野ばらの『純潔』とか阿部和重の『オーガ(ニ)ズム』よりずっと前にそういうのあったんだ!ってわかって驚いた。阿部和重といえば、初めて読んだ『ピストルズ』が大江っぽいと思ったんだけど、読んだ時点ですっかりあらすじ忘れてた『燃えあがる緑の木』の記憶が無意識下でたちのぼったんだろうな。とかいろいろ気づけたのも面白かった。

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著者プロフィール

1959年宮崎県生まれ。1990年初頭から読売新聞記者として、大江健三郎氏へのインタビューや評論執筆を続ける。『大江健三郎 作家自身を語る』(2007年)の聞き手、構成を務めた。著書に『現代日本の小説』、『ひみつの王国 評伝石井桃子』(芸術選奨文部科学大臣賞、新田次郎文学賞)、『詩人なんて呼ばれて』(谷川俊太郎氏との共著)、『大江健三郎全小説全解説』など。2016年度日本記者クラブ賞受賞。

「2022年 『大江健三郎の「義」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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