- Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065195031
作品紹介・あらすじ
かつて『物理数学の直観的方法』で理系世界に一大センセーションを巻き起こした著者による、どこにもなかった経済書、誕生。
・資本主義の本質
・インフレとデフレのメカニズム
・貿易が拡大する理由とは?
・ケインズ経済学とは何か?
・貨幣の本質とは?
・仮想通貨(暗号資産)とブロックチェーンとは何か?
そして、
・資本主義社会の最大の問題点と、その解決のヒント
私たちが生きる現代資本主義社会の本質とその問題、行く末を直観的に理解する一冊!
(目次)
第1章 資本主義はなぜ止まれないのか
第2章 農業経済はなぜ敗退するのか
第3章 インフレとデフレのメカニズム
第4章 貿易はなぜ拡大するのか
第5章 ケインズ経済学とは何だったのか
第6章 貨幣はなぜ増殖するのか
第7章 ドルはなぜ国際経済に君臨したのか
第8章 仮想通貨とブロックチェーン
第9章 資本主義経済の将来はどこへ向かうのか
感想・レビュー・書評
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今まで読んだ経済学の本とアプローチが違う。例え話、思考実験で本質を見抜く。専門用語なしに物事を新たに理解し、脳が再構築される感覚。また、素晴らしい本に出会った。
序文から、「粋」である。
歴史や哲学、国際問題に関しては、かなりの読書量を誇っているのに、なぜか経済に関しては教養の空白になってしまっている人が少なくない。また、理系の中にもそういう人が非常に多い。こうした「教養の高い非経済人」を対象にして、本書を書いたと述べる。
で、金利を払うために、資本主義は成長し続けなければならない宿命。この点から解説が始まる。この解説には感動すら覚える。軍隊の近代化、鉄道による兵站の例え、GPSつきの金貨からアプローチする。
鉄道による補給革命が起こるまで、軍隊は基本的に現地調達に頼らざるを得ず、そのため軍隊のサイズは敵も味方もその限度において、指揮官の能力や兵の練度・士気を競った。軍隊は鉄道により、総力戦へ。この軍隊における鉄道の役割を経済世界において担ったのが、銀行。実物資本以上のお金を貸し出す事で、増殖していく仕組みができた。
GPS付き金貨の例は、見事に「国民所得=消費+投資(貯蓄)」のモデルを映し出す。お金の総量が決まっていて、夜に給与が日払い、翌日の昼に食料品を買いにいく夫婦が住む仮想ドーナツ都市。GPSで見ると、朝には、全ての金貨は都市周辺部に存在。昼に都市で買い物するので、この全ての金額は都市に戻る。その金貨を給与として支払い、再び周辺部へ。夫婦が節約すると、金貨は都市と周辺に分かれて存在する事になり、給与も節約した分減る。この節約した金貨は、つまり貯蓄されたわけだが、このままだと経済は衰退。貯蓄が投資に用いられ、還元されていく必要がある。
中盤でもう一つ感動したのは、経済イデオロギーにおける役者の分類。インフレの場合、資産家階層は、財産の目減りで損。企業家階層は、値上げの転嫁と後追いの賃上げのラグによって得。労働者階層は、上記の裏表で損。これらの利害対立構図のバランスが作用する。尚、デフレにおいて、一番得するのは消費者層。しかし、値下がり期待が買い控えを助長し、社会全体がやかで不況に。最終的に誰も得しない。
他にも、紙幣の誕生、グローバルサウス問題の本質、仮想通貨、国際通貨にも踏み込む。どれも読み応えがある。そして終盤は、経済発展の矛盾、つまり、幸福指標にまで辿り着く。短期的に欲望について。原始状態では短期的欲望を満たす事に精一杯だが、発展と共に短期的欲望の充足は所与となり、長期的欲望に目が向く。しかし、やがて長期的欲望すら縮退し、テクノロジーはすぐに手が届くように働き始めるのである。
人間は外面的な幸福それ自体は吸収することができず、人間の心の中で想像力と言う酵素が作用することで初めて吸収できる状態になる。従い、我々にとって皮肉であるとともに重大な事は、欲望や願望に対する制限がなさすぎて、それが物や情報の形で無制限に叶えられてしまうと、想像力という酵素がかえって分泌されなくなってしまうことである。そして、それこそが、現代の不幸の根源だという。
総体としての不幸のベクトルに対し、個が、いかに向き合うか。お金を使わない生活など、擬似的に楽しむ事も可能。精神的アウトドアブーム、ヒッピーやジプシーみたいな世界観もあるだろうと思うが、何だかゲームや漫画でよくある人類二極化の構図を示唆するようだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ビジネス書大賞2020 特別賞(知的アドベンチャー部門)受賞」とのことで以前から気になっていた本書
これ一冊を読めば経済の大まかなあらすじがわかることを掲げ、経済がわからないが読書レベルが高い人、今まで経済の本で何度も挫折した人、そういう人向けであるとのこと
また初心者向け過ぎず、専門的過ぎず、中間レベルの本であること、また各テーマやエピソードなどを交え読みやすい…などそそられる文句が「はじめに」にずら~っと並んでおり、まんまと引っかかったというわけである
金融機関での勤務経験があるものの、経済全体への理解が足りず、勉強したい気持ちはあるが、専門書を読むと眠くなる…
著者がいうように近頃の経済の本といえば「株で儲ける」とか「仮想通貨について」なーんていう投資ならぬ投機目的の本が多く、うーん違うんだけど…と思っていたところである
さらに著者の言う通り入門書の類は多いが、その次のレベルになると専門的過ぎる
個人的に何かに特化した専門的知識が必要なわけではなく、今の知識をもう少し掘り下げたてみたいという目的があったため、まさにビンゴの本なのだ!
さて内容は…
読み物として楽しめる工夫があり、読みやすい!
兎にも角にも、とことんわかりやすさを追求し、ロジックもしっかりしている
だからといって(よくありがちな)やたら絵と図解ばかり…といった幼稚さはない
世界の金融経済の歴史を通じて経済を知ることができるのだが、やはり歴史を知らないことには始まらない!と納得
歴史をベースにあらゆる物事は展開するのである
(余談だが、歴史を知ることはあらゆる物事の基本だとしみじみ感じるこの頃…)
とは言うもののところどころ完全に理解できない部分もあり、また一部納得がいかない箇所もあったが、総じて良書である(経済の本は総じて面白みに欠けるものが多いのはなぜだろう…)
★資本主義については思うところが多々あるがこちらは他の書で語りたい
※気になる方はぜひAmazonの試し読みをご参照ください
結構な量を試し読みできます!
ちなみに著者は以下のように紹介がある
かなり物理学に強いマニアックで凄い方のようだ
〜早稲田大学理工学部応用物理学科(数理物理)卒業後、同大学理工学部大学院中退。1987年、自費出版『物理数学の直観的方法』(通商産業研究社)の出版によって、理系世界に一躍名を知られる。その後も組織には属さず仲間と一緒に研究生活を送っている〜
-------以下は個人的備忘録のためまったく面白くなく超長いです(すみません)-------
【第1章 資本主義はなぜ止まらないのか】
■大多数の企業が大量の資金を銀行から借り、そこには「金利」が発生する
その「利子」返済により、企業は借りた資金以上に売上を増やさなければならない
この循環が止められない資本主義の流れ
■中世と現代の経済社会の違いとして、中世では市場にダブついたお金は…
・カトリック:教会へ
・イスラム:貧困層へ
これにより資本主義の成長を意識的に抑制していた
■投資と貯蓄は一致する
国民所得=消費+投資
これがマクロ経済の中枢
■資本主義の必要性の「3要素」
①軍事力の基盤を確保するための資本主義
②アメリカンドリームの舞台としての資本主義
③他国の資本主義から自国を守るための資本主義
(日本の資本主義の本質は③になる)
【第2章 農業経済はなぜ敗退するのか】
■農業経済が脆弱な理由→産業としての機動力の差
・農業:需給バランスのコントロールがしづらい
例)食糧不足になった時に故意に供給を減らして、儲けるのは生存に関わるものだけに難しい
・商工業:迅速に攻め口を転換できる
※農業経済が脆弱な理由は少々弱いか…もう少し掘り下げる必要あり
【第3章 インフレとデフレのメカニズム】
■インフレのメカニズム
①紙幣の発行量がふえてしまうことによるもの
例)第一次世界大戦直後のドイツ
②品物の供給量が突然減ってしまうことによるもの
例)1970年代の石油ショック
③好景気に伴ってどこかに供給のボトルネックが発生し、それが社会全体に波及するもの
例)需給バランスの崩れなど→好景気に起こりやすい
・長期的に見ればインフレは実態経済に何も影響がない
・短期的にタイムラグ(機動性の差)により以下となる
資産家階層(機動性鈍い)→損をする
企業家階層(機動性高い)→得をする
労働者階層(機動性鈍い)→損をする
■デフレ…インフレより社会全体に悪影響
消費者買い控え→モノが売れず企業が値下げ→従業員の賃金カット
経済の悪循環、社会全体が貧しくなる
※長い目で見るとある程度のインフレの方が社会全体に良い影響をもたらす
【第4章 貿易はなぜ拡大するのか】
貿易の歴史
■オランダ
オランダが最も反映した時期において、東インド会社が出していた利益は、オランダ全体の貿易の利益の2%程度
バルト海からの穀物貿易が利益の主流
ただし競争相手がいない独占状態のため潤ったに過ぎない
英国との制海権争奪に破れ転落
■英国
国内で生産した「毛織物」を輸出し貿易の王者に(右から左に物を動かす「商業」から「産業」をベースに貿易が転換する)
19世紀自由貿易と産業革命により量産された綿製品がインド国内へ
たちまちインドの繊維産業が壊滅、インド経済の大打撃
■米国
南北戦争の真の原因:南部の自由貿易主義的な主張を、保護主義を要求する北部の工業経済が排除しようとしたことにある
北部:工場を経済基盤にし、自立したい(イギリスに対抗)→保護主義の導入が不可欠
南部:奴隷を使った農業経済のため競争力が強い→自由貿易を指向
貿易体制を一方にするため、北部が圧倒的な国力差をもって、南部の試みを粉砕した
■日本
鎖国後…生糸が日本の最重要輸出品目(富岡製糸場等で生産)
第二次世界大戦後…重工業(自動車など)へ
■イスラム世界
最初から自由貿易以外の体制が成立し得ない…メッカへの巡礼(国境線で商業を管理しきれない)
メッカに急速に自由経済が流れ込んできて、道徳的退廃が蔓延し、その対策として宗教が導入された
競争力を激化させる「産業」とは結び付かなかったため(あくまで商業にとどまる)、凶暴な経済展開に発展せずにすんだ
※宗教と自由貿易の関係は要確認
■現状~将来
コンピューター・ネットワークの発達によるグローバル化によって、自由貿易と保護貿易との本当の適正点がわからなくなっているため、
模索していくことが必要
【第5章 ケインズ経済とは何だったのか】
■経済が縮小均衡の状態と陥ったとき→政府の公共事業により資金を注ぎ込んでやるのがよい
一時資金より相乗効果があり、最初の何倍もの経済効果に付与する
■欠点 増税しない限り財源は国債発行となり、財政赤字とインフレの温床になりやすい
こうしてみるとケインズはの理論は普遍的ではなく、19世紀の「世界の工場」として繁栄のピークであった英国限定モノを作ろうとしたのでは…
当時英国は世界のトップであり健全経営のため、借金の必要もなく、海外投資してもめぐりにめぐって自国へ戻ってきた
しかし米国の工業力が追いつくと、自己資金が自国へ戻らなくなり英国が衰退しだす→その対策として有効であった
また多くの社会階層を成す英国投資家が、英国内の企業よりも自分の私利私欲を優先し、政界にも大きな影響を与えるほど力を持ち、問題視されていた→ケインズ理論が役立つ
ケインズ経済政策はインフラを引き起こす
企業家階層、労働者階層→お得
投資家階層→損をする
大量の失業者を救うとともに、力を持った投資家階層を解体できる
英国経済にとってはプラスになる
■経済学の勝者を決める3つの層
①投資家層
②企業家層・生産者層
③労働者層・消費者層
この3つの層の中で二者がくっつく一種の同盟関係が成立していて、その2対1の構図がしばしば一種の外交ゲームのように状況を支配していた
例a)①②vs③
・19世紀
資本主義vsマルクス主義と言う二大理論の形の対立構造
例b)①vs②③
・20世紀中頃〜70年代
ケインズ主義
投資家層と起業家層との間の関係がほころびはじめ、生産者層が労働者層と手を組んで投資家層から主導権をもぎ取ると言う形式
例c)①③vs②
・1980年代〜
レーガン・サッチャー主義
この時期は投資家層が反撃を始め、消費者層を誘って新たな同盟関係を作り上げ、生産者層から主導権を脱会することを狙ってきた
【第6章 貨幣はなぜ増殖するのか】
ネットワークの発達により仮想通貨など新形態の貨幣が登場し、勝手に増殖しているような錯覚を起こすが、そうではない
自己増殖のメカニズム自体は遥か古くから存在する
イングランドの紙幣とモンゴルの紙幣
■モンゴルの紙幣
・国家の意志で整備された行政機構の力によって流通
■イングランドの紙幣
・市中の個人事業者が無許可で発行したもの
(1694年当時の金細工師たちの厳重な金庫に市民たちが自分たちの金を預け、その預かり証から始まった)
■貨幣増殖とは…
銀行などが預かったものをどこかへ「又貸し」した時、貸し出したものと通帳の数字が二重に市中に出回ることで起こる
↑この増殖がいわゆるマネーストック(以前のマネーサプライの呼び名と同等)
すなわち「通貨供給量」が増えたというのは造幣局が紙幣を増刷したからではなく、銀行が貸出量を増やし、
それに比例して預金通帳の数字という形で「虚の貨幣」が増殖したことを意味する
■仮想通貨は「虚」ではなく「実」
「又貸し」で増えるお金ではない(逆にむやみに発行できない仕組み)
またキャッシュレス化も単に「実」のお金が「電子化」しているに過ぎない
【第7章 ドルはなぜ国際経済に君臨したのか】
■もともとはドルが金との引換え証だったからだが、
ドルが米国という強い国の通貨だったことは二義的な問題だった
■基軸通貨とされるドルだが、単に米国が使っているドルが、貿易のための通貨としても使えるに過ぎない
ましてや最初から米国が他国にあらかじめドルを配ったわけもないので、各国は自力でドルを稼がなくてなならない
→米国の貿易赤字をもたらすことに(ある国の国内通貨を同時に国際通貨として使うという二重性は無理が生じる)
金に裏打ちされる固定相場制→変動相場制へ
■経済力だけでは基軸通貨になれない
米国の保有する各兵器が後ろ盾となりドルの価値を保証していた←?
※理解が微妙な項目
【第8章 仮想通貨とブロックチェーン】
■ビットコインとは「電子の世界の金本位制」
「金本位制」の特徴:①人が勝手に増やすことができない ②人から人へ渡って誰でも自由に使える
■どうやって電子の世界で「増えない量」と作り上げるか
「誰がいくらそれを支払い」「誰がそれを受け取ったか」この情報を台帳なるもので徹底管理
ただし、これを「誰もが必要に応じて見ることができ」「誰も改ざんすることができないようにする」
→この仕組みが「ブロックチェーン」
■ブロックチェーンのメカニズム
ブロックと呼ばれるデータの単位を生成し、時系列に沿ってチェーンのようにつないでいくことによりデータベースとなる
各ブロックは、連結されたブロックの一つ前の「ハッシュ値」(ハッシュ関数により計算された値)を持っており、それをさかのぼることで、つながりを辿ることができる
(この詳しいメカニズムは本書にあり、文系の人間でも理解できるよう説明がある)
■ブロックチェーンを作った人間(マイナーと呼ばれる)への報酬がビットコイン
これでビットコイン全体の総量(発行高)が公正な形で少しずつ増える仕組み
マイナーの選出方法はゲームやレースで1位になった者
※ちなみにこの「マイナー」は採掘者、鉱夫を現わす 金本位制度を彷彿させる
■発行高を定められた量に安定させる仕組み
マイナーに支払われる報酬額で調整(発行高が一定になると報酬が半分に減る仕組み)
■弱点
金本位制度同様に必要に応じて適切な量に増やしたり減らしたりできない
(現在の通貨のようには誰もコントロールできない)
そのため金本位制度の限界=ビットコインの限界になるのでは…
■ビットコイン以外の仮想通貨
基本的にはその価値をドルや円などの通貨に依存する形
運営母体がそれとの交換を保証する
商品券の拡大版というイメージ
最高にためになった!
仮想通貨(暗号通貨)の根本が理解できたかも
仮想通貨と一言でいってもビットコインタイプとその他は全く違うものだ
【第9章 資本主義の将来はどこへ向かうのか】
縮退が進行して希少性の低い状態に移行する過程で、富が生まれる
→大企業が中小企業を絶滅させてその縄張りを吸収することで巨額の富を得る
社会を縮小させるとその過程で富を引き出すことができる
→核家族化 家電の必要数が増えるなど
願望の短期化により富が生まれる
→強引にスピードを持って欲求を満たす
どうすれば良いか…
◎縮退を止める道具として「大きな物語」が重要(宗教、愛国心、郷土愛、歴史物語、文明進歩など)
◎ある程度の幅で縮退や自由を許容する社会のほうがむしろ望ましい
※この章は理由あって諸々省略 -
【感想】
経済学を苦手とする人は少なくない。その理由は、大学で学ぶ「経済学」と社会の中の「実体経済」が往々にして乖離しているせいだと思っている。
大学で学ぶ経済学は、まず「経済の成り立ち」から勉強していく。需要量と供給量と価格、貯蓄=投資、GDPと経済成長率の関係、国際収支と為替レートなど多岐に渡るが、単体の項目だけなら基礎的で単純な内容が多い。しかし、実体経済はこれらが全て組み合わさった複雑な層になっており、個々の事象が全体に通じていることを直感的に理解しにくい。さらに厄介なのは、モデル式は理論上正確だが実態上正しいとは限らないことにある。こうした矛盾を孕んでいても「成り立ってしまう」のが実経済であり、それが分かりづらさを生んでいるのは間違いないだろう。
本書は、そうした曖昧な「経済学」に対して、「なぜ資本主義は暴走していくのか」という一本線を引き、この軸に沿って経済学をカテゴリごとに学びなおすことを目的としている。大学のテキストのような総ざらいの学習ではなく、「資本主義の問題点」に強くフォーカスを当て、本で述べる知識と実体経済の成り立ちが乖離しすぎないよう、丁寧に現代社会の特徴を説明していく。
特に複雑な数式は含まれておらず、思考実験や図解を用いて直感的に理解しやすい本を目指しているため、これから学び始める人の入門書としてとてもオススメだと思う。同時に、物理学や生態学からのアナロジーで得た「縮退」「呼吸口」という概念を使って、今後の資本主義に必要な要素を経済学外に求めていくため、経済学に理解がある人にとっても新たに学ぶことのできる本となっている。とても贅沢な一冊だった。
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本書で私が「なるほどなあ」と思ったのは、現代経済と中世ヨーロッパ・イスラム文明の経済を歴史的に比較している部分だ。
中世ヨーロッパでは教会が商業を危険視していたため、民衆に「金は悪だ」と説くことで教会への寄進を促し、集められた金を教会の地下にしまいこんでいた。(結果的にはその金の誘惑に聖職者が負けてしまったのだが)また、イスラムでも同様に富の集中を悪としていたが、貧しいものへの喜捨という形で市場に流させていた。
2つのうち、原則として金利を禁じていたイスラム文明では、民衆の間に発生していた余剰資金が無闇に貯響に回らないよう、「喜捨」という形で撤退路を与えていた。ところがそれは、ケインズ的観点から見ても結果的に、興味深い機能を果たしていた。
一般にぎりぎりの生活をしている低所得者有層は収入を貯蓄に回す余裕がなく、それらを右から左に生活必需品の消費に使わねばならない。つまり所得の大半が消費に回っており、経済学の用語で言えば「消費性向が高い」ことになる。一方逆に、使い切れないほどの金を稼いでいる高所得者層は所得が消費に回りにくく「消費性向が低い」。つまり社会全体の富の「重心」が高所得者層の中にあるほど、富の大半が貯蓄に回りやすく、経済全体で消費性向が低くなりがちだということである。そして「貯蓄が有効需要を細らせる」という原則に従えば、これは有効需要の不足となって現れる。そしてイスラム経済の場合、この「喜捨」という行為が、実は社会の富の重心を消費性向の低い層から高い層ヘシフトさせ、結果的に有効需要を安定したレベルに維持するという、意外な役割を果たしていたと考えることもできる。要は、金持ちの財産を貧困層に分配する制度が、「教義」という形で内包されていたのである。
こうして見ると、「経済」は(変動為替相場制以降の高速経済だけでなく)古くから存在していたということをはっきりと認識できる。しかも、ある程度現代資本主義との共通点がありながら、解決方法を全く別とするユニークな制度である。こうした歴史的な要素を世界史の上から見つめ直すことができるのも、本書の面白い点だった。
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【まとめ】
1 暴走する資本主義
資本主義にはその速度をどんどん速くしていかなければいけないという強烈な圧力が、宿命として根本部分に組み込まれている。経済活動の5分の1(貯蓄率)が、経済を加速度的に早めるための設備投資に向けられている。
貯蓄という行為は、本質的に経済社会に貧血か超高血圧かの二者択一を強いる。企業は人々の銀行貯蓄をもとに設備投資を行うが、そのスピードを緩めるわけにはいかない。消費と投資を連続的に続けていくと、経済の速度計の針が際限なく上がっていく。
現代社会が資本主義をもはや手放せなくなっている理由は、ほぼ次の3点に要約できる。すなわち
・軍事力維持の基盤としての資本主義(旧英国型)
・人々に未来の夢を与えるための資本主義(米国型)
・資本主義から身を守るための資本主義(日本型)の三つであり、これから何らかの新しい経済体制を設計しようと思った場合、必ずこの3点すべてについてクリアできることを何らかの形で保証できねばならない。
2 農業経済
一般に文明においては、産業は農業から工業へ、工業から商業へ移行していく。その最大の理由は、産業としての機動力の差だ。農業は需要が伸びにくく、供給もやや遅いスピードでしか展開しない。それが弾力性のある工業に負ける要因であった。
3 インフレとデフレ
一般に好景気の状態はインフレを発生させやすい。そして社会全体を眺めると、インフレ状態のもとでは社会にサンドイッチ状の損得が生じ、資産家階層と労働者階層が損をする一方、企業家階層が得をする傾向にある。そのためインフレの功罪は、視点をどの立場に置いて眺めるかで異なってくる。
最気を良くするためには、政策当局は故意にある程度のインフレを期待することがある。ただしその際には大勢の民衆の生活が犠牲になっており、もしそちらへの対応を優先してインフレを防止しようと思った場合には、金利を上げるのが有効なコントロール策だ。これがいわゆる「金融引き締め策」である。
4 貿易
近代になると貿易の世界、というより経済世界全体が「商業」から「産業」の世界へ移行した。中継貿易で生きるオランダやイスラムなどの存在を駆逐し、英国をはじめとする、国内の生産品を官民一体となって強引に売り込む産業国家を貿易の主役とした。
貿易が生み出す利益は、当初は中継貿易勢力が吸い取っていたが、そのような「産業化」に伴って、利益が関税という形で国家政府の金庫に流れ込むことになった。そしてさらに自由貿易の登場によって流入先を変え、その利益は個々の企業にコスト低下という形で広く分散されている。
現代の世界では、コンピューター・ネットワークの発達によるグローバル化によって貿易の常識がかわりつつあるが、自由貿易と保護主義との本当の適正点はまだわかっていない。
5 ケインズ経済学
経済というものは、石油ポンプが自分の汲み上げた燃料で動いているようなもので、何らかの形でひとたび縮小均衡の状態に陥ってしまった場合、外から一度バケツで資金を注ぎ込んでやらないと、自力では拡大が難しい。
そのため、「バケツの役割は、政府の公共事業が果たすのがよい」というのがケインズの考えである。失業救済に対しても経済全体を拡大させることで行うべきというアイデアだ。そのようにバケツで注ぎ込まれた資金は「乗数効果」によって、当初資金の何倍もの最終的効果を伴って経済拡大に寄与する。
ただしケインズプログラムの一般的な欠陥は、公共投資を行うため「大きな政府」を要求する上、その財源としてしばしば国債発行という手段に頼るため、財政赤字とインフレの温床になりやすいことである。
6 貨幣増殖
貨幣の増殖は、銀行などが預かった貨幣をどこかへ「又貸し」した時、又貸しした貨幣と預金者の手元へ渡した「預かり証(預金通帳)」が二重に市中に出回ることで起こる。現代世界では、預金通帳の数字自体が後者に相当して実質的な「虚」の貨幣となっている。
企業も銀行も現金をなるたけ短い間しか自分の手元に置いておきたくないので、それは多数の企業と銀行の間をたらい回しのようにされて、何重にも預金と貸出が繰り返されてしまう。そのため磁石が延々と子孫を作っていくのと同じようにして、オリジナルの何倍もの貨幣が生まれることになる。
その際に増殖の限界を定めているのは「準備率」というもので、銀行が預金全部を貸し出せずに、利用者の引き出し要求に答えるべくある程度を予備として手元に置いておかねばならないことが、無限の増殖に制限を加えている。こうした増殖メカニズムは、一見不健全な制度に見えるが、実は経済社会が好景気などによって拡大したがっている際には、どうしても要求されるものである。逆に言えば、このメカニズムと縁を切るには、経済が全く成長しない絶対的な定常社会でない限りは無理である。
7 国際通貨としてのドル
国際通貨としてのドルの問題の本質は、世界政府も中央銀行も存在しない国際社会に、全員が使える共通通貨が存在してほしいという要求を、しかも成長の宿命を抱えた経済の中で実現しようとしたことにある。つまり前者の部分では、その通貨が誰かの恣意で増やしたりできないという厳格な硬直性が要求されるが、後者の部分ではその通貨が世界全体の経済成長に合わせて量を増やせるよう、ある程度の柔軟性が要求される。つまり「急速には絶対に増やせないが、長期的にはゆっくりと増やすことができる」という、完全に矛盾した要求を課されてしまうことであった。
ドルの場合、本来は米国の国内通貨として整えられたものだったが、周辺諸国は第三国同士の国際貿易でもその支払いにドルを使いたがり、そのため前者が要求するサイズと後者が要求するサイズが矛盾を来たしてしまった。
それでも当初は米国経済の規模が圧倒的に大きかったので、その余裕の分を周辺諸国が利用するという形で何とか継持されていた。しかし周辺諸国が自分も経済成長して、その図体が米国を脅かすほどに大きくなると、それを支え切れなくなってしまった。
当初ドル体制は、金との交換を決まったレートで約束する、実質的な国際的金本位制だったが、そういう事情で支えきれなくなって、その約束を放棄する変動相場制に移行せざるを得なくなった。
8 資本主義の未来
現在の資本主義は縮退という繁栄に向かっている。縮退とは、大小様々な企業が相互作用によって絶妙なバランスの上で生態系を保っていたのに対し、資金の流れなどが超巨大企業と巨大投資家の二者の間だけで回るようになり、末端が生態系に無視される形で衰退していくことだ。
縮退の際は、劣化が起こっているにもかかわらずその過程で富が生まれてくる。
現代社会の富は、単に巨大企業が活発化しているというより、昔の時代からの伝統や習慣で長期的に整っていた社会生活のシステムが、壊れて縮退する過程でしばしば生まれており、むしろ後者がメインとなって富が引き出されている。
現代の資本主義社会では、「大勢の短期的願望(部分)を集めて行けば、長期的願望(全体)に一致する」という勘違いをしてきた。それゆえ、量的変化の増大が質的変化を生み、企業が人々の願望にどんどん短期的に応えることで、経済が加速し続けてきたのだ。
そして、縮退は放っておいても元に戻らない。行きつく先は、短期的願望の塊がすべての長期的願望を押し潰して、恒久的に抜けられなくなる「コラプサー化」だ。
とすれば、寡占へ対抗するために「多様性」を積極的に推進することが有効だ、と思うかもしれないが、そう単純ではない。もし個体が細かい多様性を過剰に主張しはじめると、逆にグループや種としての特性が履曖昧化・希薄化してかえってその多様性の力が弱まり、結果的に短期的願望の巨大な塊をベースに成り立つ単一勢力が勝利することで世界全体が画一化する、というパラドックスが起きるからだ。これは悪い多様化の典型例であり、多様化というのは本来「それを行っても縮退度がさほど増大しない」という局面でのみ許されることだ。
いままでの経済学を一種の力学として眺めた場合、その根本原理とは要するに「われわれの経済社会は、欲望を満足させて利益を極大化させようとするただ一つの力で動いている」ということである。つまりもし経済社会の中に存在する唯一の力がそれで、その力が縮退方向にしか働かないのだとすれば、進行はとまらない。なにか別の力を見つけてこない限りは、回復は望めない。
その力とは短期的な欲望ではなく、「想像力・可能性による幸福」である。即物的な欲望の穴埋めによって希望がまたたく間に塗りつぶされるような息苦しい状況ではなく、空白が生まれる余地を残し、「大きな物語」の実現に向けて呼吸口を残しておける社会が必要になってくる。 -
「経済数学の直観的方法」でお世話になった者としておもしろいのは分かっていたので、発売日に購入。
まったくもって期待通りと言うか期待以上。
① まず、いわゆる「経済学部」レベルでのマクロ経済学について、「ひらたくいうと何なのか」を知りたい、という人。端的に言ってこの本最強。
詳しいひとの「記述が正確じゃないあーだこーだ」はとりあえず気にしなくて大丈夫。
② 経済学部とか公務員試験の準備とかで中谷巌の「マクロ経済学入門」は読んだよ、クラスの人。読後、「自分の言葉で整理できた」感が半端ないはず。
③ マクロ経済のMicro Foundation、ブラック・ショールズ理論がカバーされてないぞ、これでは「現代経済学」とは言えない、みたいなことを言えちゃう人。→「経済数学の直観的方法」、併せて必読。
④ PhDクラスの人。私にはわからないが、「厳密性」を追求するならアンチ含めていろいろ指摘はあるかもしれない。が、著者が目指している本書のゴールはそこではないだろうとは思う。
さて、その上で、私的には、本書の白眉は「ブロックチェーン」を貨幣数量説、金本位制から説き起こしている章と、資本主義を「縮退」なる理系概念を便宜的に援用して語る思考実験の終章。こういうことを語ってくれるひとはそうはいないと思う。
世の変革期には「理数系武士団」とでもいうべき人々(蘭学の素養のある幕末期の武士のような、つまり理系のバックグラウンドはありつつ経済学にアレルギーのない人)が必要、と。
私は文系だが、本当にそういう一団を待望したい。
そのために、とくに理系の方々にぜひ読んで頂きたい本。 -
自分は学がなく頭もあまり良くないので、よくは理解できなかった。それでもスゴいことが書いてあるという感じはあって、興味深く読ませてもらった。
貨幣とか、金本位制などについてその歴史から本質を捉えて未来について語っている気がした。そこから必然的に出来する「縮退とコラプサー化」を扱いまだ産まれていない対抗策の見通しを示す。
どうやら本書は経済に疎い理系の読者を想定している模様。文系の社会発達モデルって、対立する概念の間を揺れ動きながら、螺旋的により高度化していくようなイメージがある。
対して理系のそれでは、「この先にこんな技術がありそう」という方向に一足飛びにジャンプしていく感じ。
個人的には、この本こそ21世紀の資本論と呼ぶに相応しいと思った。 -
著者の「経済数学の直観的方法(マクロ経済学編・確率統計編)」には本当に驚かされた。単に経済学の主要理論が物理数学をアナロジカルに用いることで記述できるということを示したにとどまらない。そもそも経済学という学問そのものが、西欧自然科学の豊潤なアチーブメントにより醸成された「直観」をもとに構成されているということ、さらに現代経済学の主流派の隠れた意図がその「直観」を通して見ることで極めてクリアになることを、門外漢にもわかりやすく喝破したのである。西欧的・経済学的パラダイムにどっぷり浸かっていては絶対に見出すことのできない斬新な視座であったと思う。
「はじめに」等によればそもそも本書は、経済学に昏いために社会的に「使われる」立場に置かれがちな科学技術の専門家に対し、国を動かす側の論理である「経済学」を啓蒙する意味で、あくまでもで内輪向けに書かれたものであったらしい。それが読者の強い支持を得てまとめられたのが本書のようだが、僕はむしろ、(本職の専門家などは別として)経済に明るいことを自ら恃みにする文系人や実務家こそ読むべきではないかと思う。よく言われるように、経済学というのは他の自然科学に比べ、どこかいい加減で非科学的な柔軟性を多分に有している。経済通の間では余りに自明のこととして共有されているものの中に、どうしても辻褄が合わないとか、どう考えてもトートロジーや循環論を含んでいるとしか思えないものがままあるが、現実の経済はそのような矛盾を曖昧にぼかしたまま「回っている」のだ。しかし傍目八目ではないが、当事者がかえって気づかない矛盾に、著者のような他分野の専門家からの指摘を受けて初めて気がつくということはよくあることで、そこを改めて熟慮してみることには多大な意義があるように思う。矛盾を含みつつも機能しているシステムには必ず歪みが蓄積しているもので、そこで将来予想される調整に伴うムーヴメントを予測する上でも、またその歪みそのものを修正する方策を探る上でも、著者の物理・数学的な知に基づくアナロジーは極めて有用な補助線となるはずだ。
本書のテーマは「資本主義はなぜこのようなものなのか」ということに尽きる。なぜGDPの2割もの投資が必要なのか。なぜ利子は正当化されるのか。なぜ貨幣価値は維持されているのか。そしてなぜ、経済はこれほどまでにイデオロギーに左右されるのか。本書では、こういった自明すぎて答えに窮するような疑問が、電子回路やエントロピー、天体運行などのパラダイムを用いたアナロジーにより問い直されていく。そこでは、物理や数学のような自然科学からはどうしても漏れ出てしまう経済学の非合理性、さらにはその非合理を飲みこんでなおも動きを止めない柔軟性や可塑性といったものが、剥き出しの本質として眼前に提示されることとなるのだ。
第8章までの記述はどこかで既に扱われているトピックに関するものであり、視点こそ目新しくはあっても既視感は否めないが、本書の肝は第9章での著者の提言にある。現在の経済繁栄の原因が経済エコシステムのエントロピー増大過程から富という形でエネルギーを抽出してきたことにあり、その結果システムが「縮退」、すなわち少数種による寡占と多数種の衰退を起こしているとの警告だ。このような過程をもたらしたのは、近代以降の啓蒙主義が天体の二体問題における自動軌道修正を経済学に拡大適用し、人間の短期的願望(欲望)が大数としては長期的願望(理想)に一致するという過剰な楽観主義定着を促進したからだというのである。そして現状の回復も死滅にも至らない「コラプサー」への落ち込みを打開するには、前述の富の抽出過程の他に、エコシステムを破壊的に再構築する「もう一つの力」が必要だと説く。それがセルオートマトンのアナロジーと哲学者オルテガの引用で説明される「呼吸口」の力だという。人間は可能性を閉ざされても満たされ過ぎても精神的に死に至るのであり、「呼吸口」=想像力を媒介とした幸福の摂取により、エントロピックな縮退の進行を少しでも止めてカオスへの落ち込みを防ぐべきと説いている。
ただ一方で、この縮退が不可逆的なもであること、また人々の短期的欲望を完全に抑制することが非現実的であることを認めるところが、著者の物理学者らしいリアリズムの顕現と言えるだろう。著者が期待する「もう一つの力」の効果の発揮には数学や物理に基づく真理に裏打ちされた「最高レベルの知性」による「大きな物語」の提示と共有が必要だとするが、それには現代政治に立ちはだかる大きな壁、すなわち反知性主義の克服が無論のこと必要になる。また現下のコロナウィルス禍をみる限り、外生的ショックは肥大化した残存種よりも寧ろ絶滅に際する希少種を駆逐する方向の推進力を持っているのではないかとも思える。しかし種々の困難はあろうが、著者の駆使するアナロジーの力による共感の醸成と知性の共有が、長期的には必ず人々の行動原理に変化を及ぼすものと信じたい。それが、非科学的な側面を持ちながらその巨大な慣性質量で命脈を保ってきた経済学と、科学的ではあっても必ずしも人々にそのエッセンスが受容されていない自然科学が、今日まで共存している理由なのではないだろうか。 -
「経済というものが全くわからず予備知識もほとんどない(ただし(読書レベルは高い)読書が、それ一冊を持っていれば、通勤通学などの間に1日当たり数十ページ分の読書をしていくだけで、1週間から10日程度で経済学の大筋をマスターできる」(本書「はじめに」より)。
具体的な内容としては、「資本主義はなぜ止まれないのか」、「農業経済はなぜ敗退するのか」、「インフレとデフレのメカニズム」~「仮想通貨とブロックチェーン」等々の全9章。
全部で450ページのボリュームだが、「(本来なら3000ページ近くなる)」(「はじめに」より)とのことなので、経済学の超濃縮エッセンスが詰め込まれていると考えれば、そのボリュームも十分納得できる。
内容も確かに素人にできるだけわかりやすく平易な文章と、時にイラストを交えながらの解説なので、読んでいて「なるほど!」、「そういうことだったのか!」と思ったことが多かった。
加えて各章には簡単な「要約」も付されていて、その章の復習ができるところも親切。
個人的には仮想通貨とブロックチェーンの章がとても分かりやすく、面白かった。
これで著者は経済学の専門家ではなく、「もともと物理屋であって、経済学部の出身ではなく、経済の現場に身を置いたことも一度もない」(本書「おわりに」より)というから驚愕。どんだけ頭いいねんっ!と思わずツッコミが入ってしまった。
社会人は意識しているしていないにかかわらず、経済に無縁である人はほぼいないであろうから、本書を読むことで自分に有形無形で影響を与える「経済」について本書で認識を改めることはとても重要なのでは、と思った次第。 -
経済学がこんなにも物理的だったとは!
現代経済学の問題を提起する後半より、「むっちゃわかりやすくて面白い、経済学の教科書」といった感じの前半が、読んでてワクワクした
こんなにわかりやすくていいのかと、不安になるほど。 -
筆者は口車で読者をやる気にさせるのがとても上手い笑
1〜8章で経済学の基本的な所を抑え、9章で筆者独自の主張(縮退とコラプサー化、呼吸口)を展開するという構成になっている。
歴史を踏まえながら経済について分かりやすく解説してくれるので、歴史を知らない私には1粒で2度美味しい的な本だった。
各章の最後に要約があるので、先に要約を読んでから章の内容を読むと頭に入りやすかった。
図書館で借りて読んだけど、買って本棚に置いときたいかも -
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 資本主義はなぜ止まれないのか/第2章 農業経済はなぜ敗退するのか/第3章 インフレとデフレのメカニズム/第4章 貿易はなぜ拡大するのか/第5章 ケインズ経済学とは何だったのか/第6章 貨幣はなぜ増殖するのか/第7章 ドルはなぜ国際経済に君臨したのか/第8章 仮想通貨とブロックチェーン/第9章 資本主義の将来はどこへ向かうのか