幽霊を創出したのは誰か? Who Created the Ghost? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065194836

作品紹介・あらすじ

幽霊が存在するために、死は、必要充分条件か?

触れ合うことも、声を聞くことも、姿を見ることすら出来ない男女の亡霊。許されぬ恋を悲観して心中した二人は、今なお互いを求めて、小高い丘の上にある古い城跡を彷徨っているという。
城壁で言い伝えの幽霊を思わせる男女と遭遇したグアトとロジの元を、幽霊になった男性の弟だという老人が訪ねてきた。彼は、兄・ロベルトが、生存している可能性を探っているというのだが。

感想・レビュー・書評

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  • WWシリーズの最新作。
    本作ももう4作目だ。

    Wシリーズの直接の続編としてシリーズは続いているのだが、本シリーズはテーマはどこにあるのだろうか?

    多分、人間は今後どうなっていくのかを突きつめようとしているのだろうな。森先生は。

    小説内で語られる人間の在り方はいちいちうなずかされる。

    ヴァーチャルの世界に人間の脳みそだけを送り込んでそこで暮らす。
    今のヴァーチャルの世界ならリアリティはほとんどすべて再現できるだろうし、いや、現実世界よりも素晴らしい世界を構築できるだろうね。

    そこで幸せに何百年も(脳が死ぬまで)暮らすというのもありだとは思う。

    でもこれって映画『マトリックス』の世界だよね。
    機械に支配された人間は機械のために『電池』の役割をさせられている。その代わりに人間たちは『マトリックス』と呼ばれる仮想現実のなかで生きているのだ(人間たちはそれを現実だと思っているのだが・・・)。
    ただ、それを自ら進んで人間がそれを選ぶってところが違いではあるのだが・・・。

    映画『マトリックス』の中で、エージェント・スミスがいうこんな感じのセリフを言う場面がある。
      最初のマトリックスは中につながれた人間は全員が豊かで人間にとって完璧な世界だったが、それは失敗した。人間は理想の世界を自ら拒絶し、最初のマトリックスにつながれた人間社会は崩壊した。それは人間の本能なのだろう。

    これは至言だろうな。
    人間は理想の世界では生きられないんだと思う。
    幸せな人がいて、不幸な人もいる。
    そういう不平等のなかにこそ、人間は生きている価値を見つけるのではないだろうか。

    人間というものはいかに矛盾をはらんだ生き物だろうか。
    僕もそれなりの時間を生きてきたが、「生きる意味はなんだ?」と聞かれたならば、まだ答えることはできない。深いな・・・。

  • WWシリーズ4作目!
    帯に書かれた「思考のその先へ。」というのがシリーズを表しすぎている

    もう、グアドとロジがたまにイチャつくのを微笑ましく見ているだけで十分さ

  • 今回も示唆に富んだ作品でしたが、物質界・電子界・リアル・ヴァーチャルという見方の中での幽霊って何?の議論が面白かったです。次は何がテーマでしょうか。読者に対してリアルの重要性を説く、という意図は作者には多分ないと思いますが、そのような印象が残るのはリアルはいいものであってほしいとどこかで自分が思ってるからなんですかね。


  • WWWシリーズ第4弾

    久しぶりの森博嗣
    6月にダウンロードして
    そのまま放置してたなんて…


    今回は、幽霊騒動
    200年後の未来で、幽霊とは…
    なんとも、びっくりである

    ドイツの田舎町で
    楽器職人として、のんびり過ごしているグアトと
    日本の情報局から
    特別任務的に派遣されているロジ

    家を借りている、大家夫妻から
    最近、近所で噂されている
    幽霊の話を聞かされる


    百数十年前に起きた、心中騒ぎ


    貴族の御曹司で
    原子力発電の技師をしていたロベルト

    教師で、リベラル派の市民運動家だった両親を持つリンダ

    お互いの家族に、大反対され
    心中を試みるも
    神父の説得に従い、断念

    その後、2人とも行方が分からなくなったと言う


    ロジの気まぐれで
    幽霊が現れるという
    城跡へ行くコトとなる

    悲鳴をあげた女性と
    一緒にいたはずの
    女性と逸れてしまったという男性
    に出会うが
    両方とも、見失ってしまう

    後日、ロベルトの弟と名乗る老人の訪問を受け
    当時の状況を、詳しく聞きたいと
    別荘に招待され
    そこで、事件は起こる


    前作までの流れから比べると
    かなり、ゆるーい展開である


    クローン、ウォーカロン
    ロボット、人間が共存し

    電子界と、バーチャルと
    現実が交差した世界観で
    幽霊騒ぎとは…笑

    正直、違和感しかなかったけど

    電子細胞を、体に入れて
    死ななくなった世界に於いて

    死を恐れていた時代の人類が作り出した
    幽霊とか、魂の存在に関して
    グアトの考察が面白かった


    「幽霊とか、魂とかを考え出したのは
    肉体の死という現実が目前にあったためだろう

    その恐怖を回避するためには
    生きてるうちに
    魂の存在を信じるしかなかった

    それ以外に、安楽を得る方法がなかったのだ」


    なるほどー


    まだまだ人間は死ぬけど
    人生100年時代と言われる昨今


    「人生のマンネリに陥った場合、人はどうするのか?
    そして、マンネリに陥った社会は
    どこへ向かうのだろうか」

    文中、サラッと言ってるこのセリフ
    よくよく考えてみると、かなり空恐ろしい…




    #幽霊を創出したのは誰か
    #wwwシリーズ
    #森博嗣
    #読書好き
    #ブクログ

  • 20200810読了。
    シリーズ4冊目。幽霊の定義とは。肉体と精神の分離とか。

  • もうずいぶん森博嗣を追いかけ続けている。80冊以上読んでいる。ほとんどが繋がっていて、一貫したテーマがある。新作が出る頻度は少なくなってきているが、出ると無条件で読んでしまう作家の一人。今回も、いつものテーマを書いている。それを見守る私。現実の世界は、でも、少しずつ森博嗣ワールドに近づいてきている気がする。

  • これまさかのシリーズものか!
    この著者の「全てがFになる」は読んだことある。
    この本いきなり読んだのは間違いだっただろうか、、、あんま意味わからんかった

  • 解き放たれた私の姿は
    あなたにはきっとみえなくて
    愛を説く私の声は
    あなたにきっと届かない

    再びあなたに逢えた時
    その時の私がどんな形をしていたか
    心をどこに預けていたか
    どうか覚えていて
    どうか忘れないでいて

    私はあなたとともにある

  • 生身から解き放たれた存在はどれだけ自由になれるだろう?
    生身に執着するのは、そこが自分の帰る場所として残ることに安心感を得られるからじゃないだろうか。
    それを手離したら次はどこに帰るだろう。
    根無し草のようにヴァーチャルの世界に漂う?

    やっぱりヴァーチャル界隈の話は感覚としてまだ受け入れ難さがある。ヴァーチャルが舞台なら幻想みが強い方がより楽しい。

    WWシリーズ四作目。

  • 100年シリーズから、ずーっと読み進めてきましたが、ここ1〜2冊で感じていた惰性感極まれり、が正直なところです。特にWシリーズが好きすぎて、作品に倦怠期のような感情を抱いてしまいます。
    ひと言添えるなら〝いくらなんでも杖はないだろう、杖は…〟ですかね。
    嫌いになる前に続編読むのはやめようかな、でも出たらまた買っちゃうんだろうな…

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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