あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065193778

作品紹介・あらすじ

私が自由意思で自分の臓器を売ることがなぜ禁じられるのか?
ギャグに著作権を認めたらどうなる?
カジノは合法なのに賭け麻雀が違法なのはなぜ?
全人類に共通の良心なんてある?

法と道徳、功利主義、人権、国家、自由、平等……私たちが生きていくうえで目をそらさずに考えたい「法哲学の問い」を、たくさんの具体例を紹介しながらわかりやすく解説!青山学院大学の”個性派教授”による、読んで楽しい法哲学教室!

感想・レビュー・書評

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  • 「法哲学は、法律に対してその思考を向ける。つまり、人間社会のさまざまなルールの中で、なぜ法律だけが国家権力による強制力を持つことができるのか、そのような法律を成立させ存在させるものは何なのかを問う。また、はたして議会で制定される法律だけが法なのか、制定法を凌ぐより高次の
    法があるのではないか、あるいは制定法よりも人間社会の多様な営みの中で自生する法こそ重要なのではないか、などと考えたりもする。古代ギリシアに起源を持ちヨーロッパで発展した、歴史のある学問なのだ」(本書「はじめに」より)

    ちなみに、「その思考」とは、同じく「はじめに」に記されているが、「既成の知を疑い、<存在すること>の根拠はなんであるのかを探求し続ける思考」のこと。

    そして著者は、法哲学には具体的な法学がよりよく正義を実現できるようにするための指針を示す「天使の顔」と、人間社会の習俗とか常識それ自体を徹底的に疑い、容赦なく批判してゆく「悪魔の顔」の二つの顔があると主張する。

    本書では、その二つの主張に基づき各章で「カジノは合法なのに賭け麻雀が違法なのはなぜ?」、「自発的な売春、是か非か」、「自分で飲む酒を自分で造って何が悪い?」等々、言われてみれば何でだろう?と思う様々な問いを多数立て、法哲学の観点から考証している。

    なお、それぞれの問いには当然のことながらこれが正解という答えはなく、著者の提示した様々な考え方をもとに読者自身が自分で考えて答えを出す形になっており、良い思考のトレーニングにもなる。

    非常に乱暴にまとめてしまえば、本書の言いたいことは、常識を徹底的に疑い、闇の部分は白日の下にさらし、まっさらの頭でそれらにつき考えてみよう!ということだと思う。

    ところで「まえがき」によれば、著者はセックス・ピストルズの大ファンとのことなので、ピストルズ好きの私と趣味が合うことも本書に好感を持ったところであります。

  • ・1回通読。道徳、法、正義、自由、平等、国家、権利。普段は当たり前なもの、常識として捉えている物事について、様々な視点から問いかけを行う。どのテーマもとても興味を惹かれ、一気読みしてしまった
    ・法哲学に関わる用語や人物についても、わかりやすく丁寧、かつユーモラスに解説してくれるため、入門書としても良いと感じた
    ・基本的には読者に問いかけを行うスタイルだが、たびたび著者の主張が一方的かつ断定的に述べられる時に少し拒否反応がでてしまう。一方で、漫画やアニメを始めとするフィクションへの造詣の深さに対して親近感を覚える

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 社会が壊れるのは法律のせい?-法化の功罪/第2章 クローン人間の作製はNGか?-自然法論vs.法実証主義/第3章 高額所得は才能と努力のおかげ?-正義をめぐる問い/第4章 悪法に逆らうワルになれ!-遵法義務/第5章 年頃の子に自由に避任させようー法と道徳/第6章 大勢の幸せのために、あなたが犠牲になってくださいー功利主義/第7章 人類がエゾシカのように駆逐される日ー権利そして人権/第8章 私の命、売れますか?-どこまでが「私の所有物」か/第9章 国家がなくても社会は回るーアナルコ・キャピタリズムという思想/第10章 不平等の根絶は永遠に終わらないーどこまで平等を実現できるのか/するべきか/第11章 私には「誰かに食べられる自由」がある?-人はどこまで自由になれるか

  • 大学の課題図書として読みました。以下は私のレポートの要約の抜粋です。

    法律に対して哲学していくといった本である。その意味としては既成の法律に対して徹底的に疑い、法律が「存在すること」の根拠は何であるかを探究し続ける思考方である。現行法大系の基礎原理やそれを支えている人間社会の習俗とか常識それ自体を徹底的に疑い、容赦なく批判していく。常識の上に展開される法哲学は人間社会の表の面のみであるが、筆者はそれを懐疑的な目で分析し、アンタッチャブルな陰の世界を直視して囚われのない頭脳で考えることが法哲学の真骨頂だと信じている。

    • conofeliceさん
      現行法体系の基礎原理って、例えば訴求処罰の禁止とか、かな?
      面白そう。
      現行法体系の基礎原理って、例えば訴求処罰の禁止とか、かな?
      面白そう。
      2023/06/09
  • 法哲学は、「行き過ぎた実定法上の運用がされている場合、その現状からどうやって課題を解決すればいいのかをさまざまな角度から検討する」学問だと思いました。
    そのため、卒論を書く際や憲法や刑法のリーディングケースを考える際などに多様な視点から応用できる気がしました。

    この本は、法律を学ばない人にも面白い視点から社会科学(法学)を俯瞰できる本だと思います。
    また、「法律はなぜ守るのか? 」「自分の体はなぜ売れないのか?」「ワクチン接種は誰が優先?」など、言われてみれば疑問に思ったり、答えに困るような疑問を、法哲学の視点から解決に導いてくれる一冊だと思います。おすすめしたくなります。

  • 議論が分かれる出来事や政策、主義主張、日々いろいろとありますが、「法哲学」としてずっと議論されてきたんですね。米国の2大政党も考え方が根本から違うのもそれぞれの法哲学の違い?どの理論も当時の社会的背景の産物。これからも悩み続けるしかない。「安寧と引き換えに、責任を負う苦しみを伴う自由を犠牲にすることがあってはならない」。筆者の最後の言葉、かっこよい。

  • 青山学院大学法学部の法哲学の授業をベースにした新書本。法哲学なのでもちろん答えは無く、あくまで考える材料や、考える道筋が示されているだけである。
    非常に平易な文章で、自虐や具体例を交えながら進んでいくので、法哲学の入門としては分かりやすい。他方で、あっさりと読めてしまうので、あとになにも残らない危険もある。
    巻末の読書リストと合わせ、しっかり勉強するならば繰り返し読むべき本であり、繰り返し読みやすい本である。
    ドゥオーキンのアファーマティブアクションへの考え方などはちょっと予想外で、そういう意味でも頭の体操にはもってこいであった。

  • 2回目。また読みたい。定義付けと例と自虐が秀逸。

    「安寧と引き換えに、責任を負う苦しみを伴う自由を犠牲にすることは絶対にあってはならない。人間には違和感を抱き、疑い、反抗する能力がある。それを思い起こさせてくれるのが法哲学なのである。」

  • 背ラベル:321.1-ス

  • ⚫︎中身はちょっと難しいが、語り口が軽妙。
    ⚫︎旬な話題を入れているのでクスリと出来たが、後になっては無理だろうな笑
    ⚫︎ロールズは久しぶりに聞いた。懐かしい。
    ⚫︎大学生時代にこんな講義を受けてみたかったなと思わせる、自身の常識を疑うような一冊。

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著者プロフィール

住吉 雅美(すみよし・まさみ):1961年北海道生まれ。北海道大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。山形大学人文学部助教授を経て、現在、青山学院大学法学部教授(法哲学)。著書に『哄笑するエゴイスト――マックス・シュティルナーの近代合理主義批判』(風行社)、『あぶない法哲学――常識に盾突く思考のレッスン』(講談社現代新書)がある。

「2023年 『ルールはそもそもなんのためにあるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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