ぼくの宝ばこ

著者 :
  • 講談社
3.71
  • (4)
  • (4)
  • (4)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 105
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065192337

作品紹介・あらすじ

ファンシーグッズ、少女漫画、ふろく、宝石箱、ポーリーポケット、シュシューー。かぐわしいもの、きらめくものが好きな著者とおしゃべりしよう。好きなものを愛でることは、辛いときや疲れた日々に希望をもたらしてくれるから…。女性漫画誌『ハツキス』に連載されたエッセイに、大幅な加筆修正を加えて書籍化!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • しょっぱなからフェミニズムへの讃美と共鳴から始まるので大分距離を置いて、物陰から覗くような気分で読み始める。
    SNSでこういう「生きづらさ」と繊細な共感を語るようなゆるふわ世界観の人が急に左に目覚めて、ゆるふわと同時に不寛容と拒絶と怨嗟のかたまりみたいな発言をしだすのってよくあるけど本当に怖い。それでフェミニズムって半ばアレルギーになってしまっている。
    でも文章はかなり好みだった。やわらかくさりげなく詩的で、この人が好きな小さな宝物たちが文章の中で慎ましくかわいらしい光を放っている。ポーリーポケット、うさぎちゃんのついた付録。セボンスター。飽きずに握ってどこへも連れて行って、細かいところまで形をなぞって、大事に眺めていた記憶がよみがえってくる。
    「夢の国のおにぎり」の魔法にかかってしまう夜のくだりとか、「秋のまどろみ」の秋のたのしさ、つめたい風にひそむ予感の話とかとても素敵だった。古いものを探すというのも、ああわかるなあと感じる。そうやってかわいくて物語を持っている素敵なもので自分の周りを満たして、包まれて生活したいという欲望は確実に私の中にもある。
    おもしろいなあ、と物陰からそろそろ出つつ読んでいるといきなりフェミっぽい言葉が出てきて慌てて逃げたりという具合で読んで、思想的に分かり合えない人だけど、感覚的にはかなり近いのだな、と感じる。うーむ。他の本も読むかもしれない。

  • アヤちゃんはかわいいものを集めている。子どものころに欲しかったけど、手に入らなかったもの。持っていたけど失ってしまったもの。そういうものたちと再会したら、また買う。
    手に入れたもの、一つひとつとの出会いをアヤちゃんは覚えている。思い出をひっくるめて、ものを愛している。

    アヤちゃんは何度も思い出す。子どものころの思い出は決していいものばかりじゃない。それでも何度も記憶を取り出す。そうやって過去の自分を救っているのかもしれない。
    かわいいものを愛するように、アヤちゃんはかつての自分のことも愛そうとする。
    世界に傷つけられて、世界を憎んでもいいのに、アヤちゃんは世界を愛しているみたいだ。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1989年生まれ。エッセイスト。著書に『尼のような子』(祥伝社)『焦心日記』(河出書房新社)『果てしのない世界め』(平凡社)『ぼくは本当にいるのさ』(河出書房新社)『なまものを生きる』(双葉社)『ぼくの宝ばこ』(講談社)『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』(双葉社)がある。

「2022年 『うまのこと(飛ぶ教室の本)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

少年アヤの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×