- Amazon.co.jp ・本 (1106ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065190265
作品紹介・あらすじ
昭和29年春から夏にかけて続く怪事件。
「先祖代代、片倉の女は殺される定めだとか。しかも斬り殺されるんだという話でした」 昭和29年3月、駒沢野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪奇と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。(「鬼」)
複雑に蛇行する夷隅川水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かった。第一発見者の女学生・呉美由紀、妖怪研究家・多々良勝五郎らと共に怪事件の謎に迫るが―。山奥を流れる、美しく澄んだ川で巻き起こった惨劇と悲劇の真相とは。(「河童」)
是枝美智栄は高尾山中で消息を絶った。約二箇月後、群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服をまとっていた。この謎に旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子の悲恋が重なり合い―。『稀譚月報』記者・中禅寺敦子が、篠村美弥子、呉美由紀とともに女性たちの失踪と死の連鎖に挑む。天狗、自らの傲慢を省みぬ者よ。憤怒と哀切が交錯するミステリ。(「天狗」)
解説 綿矢りさ
感想・レビュー・書評
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京極さんの作品は、面白いんだけど作中に差し挟まれる妖怪蘊蓄が兎に角長いので、そこんところに興味が薄い私のような者には所々読み難い、と常々思っておりましたが、この本に収められている三作品には、いつも長々と妖怪の蘊蓄を語る京極堂さんは出て来ず、妹の敦子さんと女学生の美由紀さんが主役。妖怪(今回は鬼、河童、天狗)の蘊蓄は、女子トークのなかに盛り込まれていることが多く、その辺、かなり読みやすかったです。
『天狗』は特に秀逸。
ミステリーとしてももちろんですが、過去に榎木津探偵とも関わりのあった真のお嬢様、美弥子様の発言がとても痛快でよかったです。
LGBT(だけに限らずですが)に対する偏見もテーマになっており、もしや?と思って初出の年月を見ると、例の杉田議員の「LGBT生産性発言」と時期が重なるので、それに対する意見も織り交ぜてあるのかな?と感じました。
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鬼、河童、天狗のそれぞれの単行本の出版社の、どれとも違う京極堂シリーズと同じ版元から出版された月。
ここらへん出版社の垣根を超えたシリーズ刊行できるあたり京極夏彦のすごさなんでしょうか。
バラバラの時の挿絵(モデルさんがお面つけて立ってるやつ)も雰囲気あって好きだったけど、今回の装丁はいつもの京極堂シリーズでその重み(物理)と相まってしっっっくりきた。
最後の天狗の話が一番好きやなぁ。女性の考えをはっきり口にしてくれて爽快。こんなふうにズバッと物言いできないです。 -
よ、読み切りましたー!
何という達成感!
収録作が3編とは思えない読み応えたっぷりのボリュームといつもと違う事件の幕引きのやり方に大満足。
実は鵼の碑が発売される前に百鬼夜行シリーズを全部読破しておいて、発売と同時に鵼を読もう!とかざっくりとしたスケジュールを立てていたのですがまぁ予定通りに進まず遂には年が明けてしまいましたがやっとここまで辿り着きました。
この話は百鬼夜行シリーズではありながら本編のメインとなる登場人物がほぼほぼ出てこないという少し異質なお話だと思います。
京極堂の代わりに事件に挑むのは敦子と「絡新婦の理」に出てきていた美由紀ちゃんの2人。
いやーここで美由紀ちゃんにまた会えたのが個人的にとても嬉しかったです、美由紀ちゃんの性格をとても好ましく思っていたしまた会えたらいいなぁと思っていたので。
こういう思いがけない再会が出来るのが百鬼夜行シリーズのいい所だと思います、逆に「この人は誰だ?」となって読みたい本がどんどん増えていくとも言えるのだけれど……。
で、この2人が身近に起こる様々な事件に関わったり巻き込まれたりしながら解決を目指すのですが……。
解決編に限っては何かこう、京極堂って凄いんだなぁということを思い知らされるというか。
あれだけずっと語って、しかも最初何の話をしているんだ?と思うくらい突拍子もないことを語り出したりするのに自然と京極堂が話し出すとスラスラと頭に入ってくる感じがある。
その点敦子の語りはまぁ流石妹というべきか理路整然としてる感はあるんだけれど、でもやっぱりどこか拙い。
語りだけで相手を説き伏せる所まではいけないんですね。
だからこそ美由紀ちゃんが配置されてるんだと思うんだけど……彼女はどちらかと言うと榎木津タイプなのでしょうか。
彼女は全てが明らかになった後に暴れ出すのだけど、言うことが至極ごもっともな上に敦子の語りだけでは納得出来なかったモヤモヤを昇華してくれるんですよね。
毎回「よく言った!」と手を叩きたくようなまぁ見事な暴れっぷりで。
敦子だけでも駄目だし美由紀ちゃんだけでも駄目というこの絶妙なバランスがとてもいいんだよなぁ。
というかね、美弥子さん!
私の大好きな美弥子さんも登場するんですよ!
「美弥子さん誰?」って人は薔薇十字社の鳴釜事件を読んでくれ、本当にかっこいい女性なんだ美弥子さんは!
正直あれだけキャラが立っていたのにほんの少ししか登場シーンがなかったの勿体なくない?と思っていたのだけどここで出てきてくれるなんて!最高!
もうこの3人で色んな事件をバッサバッサ解決していく痛快ものをもう少し読みたいと願ってしまうくらい。
本当にいい人なんだよなぁ美弥子さん、もう少しどっかで出てきてくれると嬉しいなぁ。
ともあれこれで刊行されていた百鬼夜行シリーズは全て読破出来たということで。
いよいよこれで鵼の世界に入れます! -
この中の内容は全部読んでいたので結果的に読み返す形となった。相変わらず面白かった。
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面白かった。続編も書いて欲しい…
エモーショナルに叱りつける呉さんの痛快さがお約束化されている。敦子の情報整理→解きほぐしにそのお説教が加わって、それで京極堂の「憑き物落とし」に近い効果になる。
「河童」「天狗」はお馴染みのキャラクターが小出しに登場する楽しさもあり、地理院地図で夷隅川や高尾山の地形図を見ながら読み進めると旅気分で楽しかったりした。
『絡新婦の理』ではフェミニズムもテーマのひとつだったが、その中心にある人物が「これを語っている人が犯人かもしれないと読者が疑いつつ読ませる」構成でもあったため、どう受け止めれば良いものか悩んだりもした。本作は自らを「属性」で語られることの違和感を対話篇的に議論するパート(とくに「天狗」)が多く、そういう意味では読みやすかった。 -
1000ページごえの本を持ち歩くのはさすがに大変でしたよ先生! でも面白かったです。
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【2023年108冊目】
百鬼夜行シリーズでお馴染み、京極堂こと中禅寺秋彦の妹である敦子と、「絡新婦の理」で初出した女子高生、呉美由紀を中心とした3つのお話。合わせて文庫本で1000頁超えなので、それぞれのお話が短編集とは言えません。本体もサイコロみたいに分厚い。
鬼、河童、天狗をモチーフにした怪異譚。多々良先生なんかも出てくるので、なかなかに豪華。敦子さんの、「ああ、京極堂の妹だなぁ」と思わせる語り口と、美由紀ちゃんの読者を代弁するような説教が胸に刺さります。
特に「天狗」の話は男尊女卑をテーマにもしているのですが、なかなかに読んでて辛かった。いや、どのお話に出てくる人も、殺されるべき理由なんでないんですけどね。 -
ストーリーが女子高生と敦子の視点で進むからなのか、狙ってる?と思うほどに読み難い。
京極堂の説明って言ってること難しいけど、整然としててわかりやすかったな、と実感したわ…...。 -
3つの作品が1つになった作品。百鬼夜行シリーズの探偵役の妹が主人公の小説で、本編のスピンオフ的な作品であると理解。
鬼、河童、天狗という文字にひかれて初めて買った、京極夏彦の作品。普通に面白いものの、過去の事件や本編を知らないとイメージしづらい登場人物が出てきたため、この作品を読見終えた次の日、姑獲鳥の夏と魍魎の匣を購入。
物語として普通に面白く、同時に色々な伝承の話等も知れる一冊。