- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065187913
作品紹介・あらすじ
原発再稼働の可否を決め、死刑宣告をし、「一票の格差」について判断を下す――裁判官は、普通の人には想像できないほどの重責を負う。その重圧に苦悩する裁判官もいれば、個人的な出世や組織の防衛を優先する裁判官もいる。絶大な権力を持つ「特別なエリート」は何を考え、裁いているのか?
出世欲、プライド、正義感、情熱…生々しい感情が渦巻く裁判官の世界。これまで堅く閉ざされていたその扉を、粘り強い取材が、初めてこじ開けた。「週刊現代」連載時から大きな反響を呼んだノンフィクション「裁判官よ、あなたに人が裁けるか」に大幅な追加取材と加筆を行い、ついに単行本化。
感想・レビュー・書評
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本書は、裁判官という独特の世界を「ぶっちゃけて」語った本であるが、この内容を読む限りどうもこの組織も腐ってきている。今日本全体「政治」も「経済」も閉塞感が漂っているが裁判所と言えどもその例外ではないのかとの思いも持った。
本書を読みながら思わず「それじゃまずいだろ!」と何度もつっこむ。何事にも「建て前」はあるだろうし、誰しも「良心」「理想」はある程度はあるだろうと思っていたが、閉塞感漂う時代にはそんなものはドラマの中にしかないのかも知れない。
本書の後半はあまりの悲惨さに読むのが辛い。日本の司法の頑迷さは「信頼」よりは「悲劇」を産んでいる。冤罪事件が今でも後を絶たないことを思うとやはり司法の変革は不可避だろうと思えた。
また裁判員裁判制度を導入した意図には驚いた。このような司法官僚の本音は決して マスコミでは流れない。やはり閉じて隠された社会は例外なく腐敗するものなのだろう。司法の世界も、もっと広く知られるべきだと本書を読んで痛感した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
骨太のノンフィクションです。
普通の生活を送っているのであれば、無縁の
存在とも言える裁判官。
しかし小学生のうちから学ぶ、「三権分立」
の一翼を担い、法治国家として国家の屋台骨
を支える裁判官。
彼らはどういう人間なのでしょうか。
死刑を宣告する時はどういう心理なのか。時
には違憲という国家さえも相手にするときは
どういう心構えなのか。「無罪」の判決を巡
って警察(検察)と対峙するときはどういう
覚悟があるのか。
一般市民からは想像もつかない重圧と闘う裁
判官の全てがわかる一冊です。 -
裁判官も人であり、裁判所は官僚組織である。
上司が気に入らなけらば干されるし、組織のメンツ大事だし、権力に尻尾振るし。
何つかなあ。それを描き出していただいているのはとてもいいな。生々しい。
ただ、原発反対、死刑反対、その他もろもろ、そうでない人たちを一絡げに、人を見ないで組織を見ているヒラメ裁判官と決め打ちしてるような記述はどうなんだろう。どっちの主張もあり得ると思うんだが。」 -
普段読まないジャンルの本なので、すごく刺激的に読めた。
裁判官の判決と人事を結びつけるシステムが良くない。過剰な忖度を生み、裁判を争う人の人生と裁判官の人生が天秤にかけられていると読み取れる。
1968年の尊属殺人の裁判での井波裁判長の被害者を責める発言。読んでいてかなり頭にきた。
裁判官が保身のために被告人の状況の理解を示さず、逆に責めたのだ。「父親が実の娘を手込めにするのは大昔ならあたりまえのこと」?!彼女は父親と夫婦になった訳ではなく、虐待されて育ったんじゃない。それに責任を負えと?
もう被告人が可哀想に感じて仕方なく、インターネットでもこの事件について調べた。すると弁護士の大貫大八氏、正一氏の最高裁での口頭弁論が、かなり痛烈だったので胸がすく思いがした。そして50年前でもきちんとした考えで彼女を弁護した人がいたのだと知り、ほっとした。 -
裁判所・裁判官の実態を綿密に調査したルポ。本書の内容自体は、「裁判百年史物語」や「絶望の裁判所」を読んで大体知っていたので、特に目新しいことはなかったが、それでも愕然とするような内容が多かった。
最高裁の意向を忖度し、自らの良心を殺して無難な判決を要領よくを書くことに専念する「ヒラメ裁判官」。(時の政府の方針に迎合した)最高裁の意向や過去の最高裁判例に忠実に従い、検察の意向にも配慮して物議を醸さない無難な判決をそつなく出せるヒラメ裁判官が出世し、逆に自らの良心に従い体制の意向に抗った裁判官は徹底的に冷遇される。裁判官の独立、自由心証主義、自らの良心に従った判断等は砂上の楼閣に過ぎない、ということなんだな。
こうした裁判官統制を司リ、諸悪の根源となっているのが、最高裁に出向したエリート裁判官が行政官として行政事務を担う司法官僚制だという。
裁判官は人生勝ち組のエリート集団だからこそ、組織に認められたい、出世したい、より重要で大きな事件に関わりたい、との意識が強い人達なのは理解できる(この意識を壊すには、法曹一元化が不可欠)。
ただ、常識と良識を持ち合わせていない、例えば革命思想を持った裁判官が判決をもって世の中を掻き回す、というようなことがあってはならないし、真の犯人でも罪を逃れるために無罪を主張することは多いだろうから、冤罪事件の発生を恐れるあまり被告に寄りすぎたら犯罪者を罰することが出来なくなってしまう。この辺はなかなか難しいところだろうな。要は、裁判官には、正義感と深い洞察力、そして良識・常識を持って真実を見極める力が必要、ということに尽きる。そのような優れた裁判官が優遇され、出世していく組織に是非してもらいたいと思う(そして、やはり極端に枠から外れた裁判官を軌道修正させる緩い統制は必要なんだろうなあ)。一方で、現実問題として、組織を守り、維持するためには、したたかな司法官僚が必要なことも事実だろう。司法官僚が偉いのではなく、立派な判決を出す現場の裁判官こそが偉い。そして司法官僚は現場をサポートする部隊として分をわきまえる。こういう力関係にしていくべきだろう。
いずれにしても、現状で裁判官に期待できることは、地裁や高裁の裁判長になるまでは猫を被って無難に過ごし、裁判長になったら満を持して自分の良心に従った判断を下していく、ということなんだな。
裁判所や裁判官の実態を知るための良書だと思う。手元に置いておきたい一冊。 -
週刊現代の連載をまとめて単行本化したものらしい。あまり手を入れないまま単行本化したみたいで、各章の連絡が十分でなく、ブツブツになっている。青法協弾圧から裁判所の政治従属が強くなったあたりを、若い人たちに知らせる意義はあるかもしれない。一票の平等に関しては、最高裁判事を辞任してから二倍を超える格差の選挙は無効判決を出すべしとする論文を果敢に書いた藤田宙靖・東北大学名誉教授のことに全く言及されていないのは調査不足。
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日経の社説に紹介されていて購入。普段考えたことのない人の生活。裁判官は身の危険がつきまとうため、強い意志や信念が無い仕事。一方で、閉鎖的な世界であるため、政治にまみれていて、そういった信念も歪めてしまう。組織論にも通ずる学びとなった。
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ちょっと読みにくさを感じた。
裁判官なんてエリート中のエリートだと思っていたけどエリートなりの苦労があるんだなと感じた。
誰よりも正しくあるべき人たちが実力より忖度具合で出世なんかが左右されるなんて馬鹿げてると思うけどどうにもできないんだろうな。 -
上級審の裁判官ほど政府の犬であることが多いことがよくわかった。
かといって、新人さんとかは上役の顔色を見たり、当たり障りのない判決文を書いたりで日和見。
頭がいいだけで自己保身の塊のような人が多いということがよくわかった。
払ってもいい金額:2,000円
貼った付箋の数:10以上 -
近代民主政治の三大原則と言われて、学校教育の中でも必ず取り上げられ「三権分立の原理」。でも今の日本では司法行政のトップにたつ最高裁は国会の多数派政党から指名される内閣総理大臣によって選ばれる。予算も人事も握られてるから、政権政党に思惑に忖度せざるを得ない。そういうことを考えさせられる本でした。理念と実態を正しく見極めることが大事だと思わされますね。