韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065181942

作品紹介・あらすじ

政府の過剰に新自由主義的な政策により、すべての世代が競争に駆り立てられている「超格差社会」韓国。その現状を徹底ルポ!

第一章 過酷な受験競争と大峙洞キッズ
第二章 厳しさを増す若者就職事情
第三章 職場でも家庭でも崖っぷちの中年世代
第四章 いくつになっても引退できない老人たち
第五章 分断を深める韓国社会

◎子供
小学5年で高校1年の数学を先行学習、
1日に2、3軒の塾を回る。
幸福指数は、OECDの中で最下位クラス。
◎青年
文系の就職率56%。
厳しい経済状況のもと、
人生の全てをあきらめ「N放世代」と呼ばれる。
◎中年
子供の教育費とリストラで、
中年破綻のリスクに晒される。
平均退職年齢は男53歳、女48歳。
◎高齢者
社会保障が脆弱で、老人貧困率45%以上。
平均引退年齢の73歳まで、
退職後、20年も非正規で働き続ける。

政権が政策を誤れば、これは世界中のどこの国でも起こりうる。
新自由主義に向かってひた走る、日本の近未来の姿かもしれない!

感想・レビュー・書評

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  • この本を読むと、韓国で生きていくのは、かなりしんどそう。

  • 韓国凄いことになってるな。2012年頃、仕事で関わりがあって現地に滞在したことがあったが、その時から急速に変化している印象。この閉塞感が激しい感情表現を生むのかと納得。

  • 韓国の現代の問題が世代別に書かれていて、各世代の背景と現状を垣間見ることができた気がします。
    いずれにせよ多くの人が厳しい生活を送り、自殺者の増加、格差社会、就職難、板ばさみの中年、老後問題、、、日本や他の国にも十分起こり得る問題と最後に結んでいますがその通りと感じました。
    特徴的と思ったのは、そういう社会現象に少し皮肉やユーモアをふくんだ造語、流行語があるところ。
    金ターン、エデュプア、N放世代、雁パパ、サラデント、ゲジョシ、起承転チキン、、、それだけ多くの人が同じ境遇にいるからこそ、次々と生まれる言葉。
    言葉も時代も流れが早すぎてついていけないよ、なんて言っている場合じゃないかも。
    流されて行きつくところは地下なのか。
    最近見た映画パラサイトや韓国現代ドラマの描写からも同様の現象を見受けることができると思います。

  • ●GDPが世界12位にもかかわらず、平均的な生活水準が低い。格差が大きい。日本は明治維新以降、100年で欧米諸国300年の発展を追体験したが、韓国は1960年以降たったの30年で圧縮成長してきた。
    ●大峙洞テチドンは1000の学習塾や予備校がひしめく、私教育一番地。70年代に15の名門高校が江南に移転。学群制のため、教育熱の高い裕福な家庭が、こぞって江南に移住してきた。
    ●大学受験の準備は小五から。1日に少なくとも2〜3軒の塾をまわるので、母親が車で送り迎え、ママたちはカフェで待ち時間を潰す。
    ●塾に入るための塾がある。生徒が対象のメンタルクリニック。年収10億のスター講師。
    ●富裕層の中には、ゴーストライターを雇って子供の名前で自費出版をし、学生簿総合選考の点数を稼ぐ例もある。論文の共同執筆者に子供の名前を加える不正も度々発生する。

  • 各世代へのインタビューや取材を通じて、韓国社会における格差の拡大や失業率の上昇などの問題に迫る一冊。
    良い学歴のため幼い頃から塾や習い事に奔走され燃え尽きてしまう学生世代。就職活動が長期化しいつまで経っても学費や生活費で困窮する若者世代。年老いた親を養いながら子どもを留学させるため生活を切り詰める中年世代。年金だけでは生活が立ち行かずタクシー運転手や重労働の廃品回収を続けてざるを得ない老人世代。
    いずれにも共通しているのは、息が詰まるような社会の実情に耐えきれず精神を病む人が多いということだろう。あまりにも過酷なため「話を盛っているんじゃないか」と思うほどだったが、要所要所に示される統計データはその内容を裏付けている。
    このような社会になった背景には90年代のIMF危機が密接に関係しているとのことだが、後書きの通り韓国と日本が共に歩むためには、互いの歴史と社会のあり方、考え方を深く知る必要があると感じた。 

  • 韓国社会の息苦しさについて。
    ヘル朝鮮は知っていたが、スプーン階級論とかN放世代は知らなかった。
    スプーンは金・銀・銅・土とあって親の資産や収入で人生が決まる。N放とは最初は三放世代で恋愛・結婚・出産を諦める話だったのが5になり、もっと多くなってNになったという話し。

    子供の頃から受験やら就職で競争させられた挙句50前にリストラされて年金とかも貧弱。しかも文政権の稚拙な経済政策のお陰で景気も悪くて最悪。

    まあ反日もしたくなるわな。
    GNP2位と3位が隣国に有るし、近代国家のベースを日本が作ってやったので、稼ぐチャンスには恵まれているが、如何せん目先の利益だけを念頭に小狡く立回ることしか出来ない国民性だから、まあ身から出た錆みたいなもんだな。

  • 「スプーン階級論」
    生まれた家の経済力によって階級が決まってしまうという考え方

    「N放世代」
    厳しい経済状況のため、すべてをあきらめて生きる世代という意味

    「雁パパ」
    子どもの教育のために妻と子どもを外国に行かせ、自分は韓国に残って教育費と生活費を送金する父親のことで、辞書にも載っている

    1997年の「IMF危機」をきっかけに導入された新自由主義の行き着く先は極端な格差社会

    幸福指数はOECDで最下位クラス
    文系の就職率は56%
    平均退職年齢は男53歳
    老人貧困率45%以上

    貧富の差が拡大して固定化し、富と貧困が世代を越えて継承されるようになった「障壁社会」韓国の現状をリポートする

    《もし政権が道を誤れば、これは世界中のどこの国でも起こりうる、ということを覚えておいてほしい。新自由主義に向かってひた走る、日本の近未来の姿かもしれないのだ。》──第五章「分断を深める韓国社会」より

  • 韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩。金敬哲先生の著書。韓国社会が超格差社会で無限競争社会の住みにくい社会になっているという金敬哲先生のご指摘。私にとっては日本社会だって超格差社会で無限競争社会の住みにくい社会になっているように思います。金敬哲先生のように社会を憂いて韓国政府に苦言を呈するような正義感の強い人がいるかぎり、韓国社会はきっと大丈夫なはず。

  • 小手先の対策ではなくて、根本的な部分に対処しないとイタチごっこになることがよく分かる。
    日本も似たような道を突っ走っている気がしてならない。

  • 韓国の社会システムの現在を報告した書。子どもから若者、中高年から高齢者とそれぞれのステージで分けて描かれている。
    端的に言うと子どもと家族がお受験競争、若者は就職競争、中高年は非正規労働で停滞するか子どものお受験競争に自身も当事者になる、高齢者は社会の急速なIT化と未熟な年金制度で現役から抜け出せない。資本主義競争で立ち止まったら終わり。なのでその仕組みで走りつづけるしかない。韓国社会で人々が青息吐息で生きているのを想像すると幸せとは一体なんなのだろうと考えてしまった。彼らをみて資本主義にとって幸せとは食欲、承認欲、など人間が感じる一瞬の出来事なのかもしれない。
    日本の中高年以下の人たちはこれを他人事と思わない方がいい。特にこの本の第四章の高齢者のところは我々の未来になっている可能性が高い。年金システムの破綻、高齢者が疎まれる現象、現役のまま。自身が高校生の頃学校の先生が予言しておられた。僕らの世代(団塊ジュニア)が将来高齢者になった時、電車で僕らは若者に席を譲らなければならないかもしれない。体の運動のためにも。

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著者プロフィール

韓国ソウル生まれ。淑明女子大学経営学部卒業後、上智大学文学部新聞学科修士課程修了。東京新聞ソウル支局記者を経て、現在はフリージャーナリスト。

「2019年 『韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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