悪徳の輪舞曲 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065176764

作品紹介・あらすじ

14歳で殺人を犯した悪辣弁護士・御子柴礼司を妹・梓が30年ぶりに訪れ、母・郁美の弁護を依頼する。郁美は、再婚した夫を自殺に見せかけて殺害した容疑で逮捕されたという。接見した御子柴に対し、郁美は容疑を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は、肉親とどう向き合うのか、そして母も殺人者なのか?  
谷原章介さんが「王様のブランチ」MC10年間の「思い出の一冊」に選んだ『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』シリーズ最新刊!

感想・レビュー・書評

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  • 私的には待望の御子柴弁護士シリーズ第4作目。
    30年前に別れた実母・郁美の殺人容疑の弁護を、妹の梓から依頼を受ける。母妹が30年間、加害者家族として、世間から迫害を受けてきた事実に直面する御子柴。肉親と、自分と向き合い、葛藤しながらも無罪を掴むため奔走するリーガルサスペンス&ミステリ。

    いよいよ、我が家の積読棚に鎮座していた4作品全てを読破した。御子柴シリーズと出逢えて本当に楽しかった。ありがとう、皆さま。これからもよろしく、中山七里。

    本作も冒頭から唐突に、母・郁美が誰かを殺めたであろうシーンから始まる。しかし、御子柴と再会を果たした郁美は無罪を一貫して主張。
    やがて御子柴の父が保険金捻出のために自殺した過去まで遡り、事態は肥大化していく。

    本シリーズは常に、罪と罰そして贖罪について、ドキュメンタリーを交え読者へと投げかけてくる。

    兎角、被害者と加害者、その両家族の境遇がリアルに描かれており、本作品では特に【加害者家族】へフォーカスされている。その半生は圧倒的に、徹底的に悲惨なのである。

    加害者本人へ矛が向けられないのであれば家族へ。
    第三者の立場で執拗なまでに吊し上げ、攻撃し、断罪する。

    ただのおじさんである私の中にも、それなりに年期の入った性善説と性悪説が存在している。
    しかしながら、どうもこの第三者攻撃だけはいけ好かない理解し難い私は偽善者なのか。

    決して寛容なわけではない。加害者家族に一切の否が無いとまでは思わない。
    しかしその攻撃の末に、誰が幸せになるのか。何が生まれるのか。それ以前にアナタ方は何サマなのか。もはや悪意以外の何ものでもないのではないかと。

    と、感慨深い念を抱くほど、本作は加害者家族に重点を置いている印章が強い。
    が故にか、他作に比べ法廷シーンや、いつもの痛快な法弁シーンが薄かったのが、物足りなさを連れてきたように感じた。

    今回の仕掛けはミスリード。冒頭で述べたプロローグに完全にしてやられた。そして何より本シリーズの中で、本作品が最も表題名を物語っていたように思う。


    物語の最後には本シリーズ2作目の『追憶の夜想曲』でレビューにも記した倫子が登場する。この御子柴と倫子のやり取りが、どちらとも貯まらなく愛らしく愛おしい。

    中山七里、ずるいお方。

  • 裁判に勝てるのなら悪辣は美徳。稀代のダークヒーロー御子柴礼二が今回弁護するのは、夫殺しの容疑がかかった実の母親 成沢郁美だ。

    四作目ともなると、そこそこの流れは掴めてる気分になる。バイ菌の妖精がアンパンの妖精のパンチに沈み放つ国民的名台詞を迎える瞬間までの過程を楽しむ。くらいの軽さで読み進めてやるぞ。なんて、このシリーズが大好き過ぎてツンデレ発動してみたものの早々にこの無意味で拙い意思は破壊された。

    やはり面白い。彼の口の悪さは過去一であり、これは「死体配達人」の過去からずっと離れていた家族に対しての嫌悪からだろう。
    しかし冷徹、冷酷なはずの御子柴が表に出さずとも実の母や妹と対峙した事で心の動揺を隠せない姿に読者の心も完全に掻き乱される。
    口に出す言葉と心の矛盾に嫌々ながら向き合うある意味健気な姿勢はもう、、、むず痒さで爆発しそうだ。
    お母さん、梓さん、彼は、良い人なんです。
    ーーーーーーーーーーーーー

    勿論、裁判の臨場感も素晴らしい。
    途端にフィクション風が吹いてしまうのは致し方ないが、検察側が完膚なきまでに敗北する様は我ながら俗悪だが痛快さを感じてしまう。
    著者は悔しがる人物を表現するのが本当にお上手だ。自分の性格が歪められている気がする(笑)
    そして裁判を見届けた後のどんでん返し帝王仕込、ハナヂブーパンチに期待が膨らむ。

    このシリーズにマンネリは存在しない。
    シリーズとしてここまで過去作品を大切にしている物も珍しいのでは無いだろうか。記憶が薄れる事をここまで無念に感じた事は無い。
    更に中山七里作品は他作品の人物達が頻繁に出てくるので、世界の繋がりを感じられる。著者が読者に授けた知識を巧みに煽ってくるのだ。ずるい。しかしそれがたまらんのだ。

    • akodamさん
      NORAxxさん、こんばんは。
      リフレインぶりの5つ星出ましたね。
      本作を含めたシリーズ、私の積読棚で待機中です。
      NORAxxレビュー、響...
      NORAxxさん、こんばんは。
      リフレインぶりの5つ星出ましたね。
      本作を含めたシリーズ、私の積読棚で待機中です。
      NORAxxレビュー、響きました。
      ブクログ歴同期の相棒(片想い)がそこまで絶賛するのなら、そろそろ私も…( ̄∀ ̄)ニヤリ
      2021/10/21
    • NORAxxさん
      akodamさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
      ぐぬぬ、これから楽しみが待ち受けている未読状態が羨ましい...是非読んで、そし...
      akodamさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
      ぐぬぬ、これから楽しみが待ち受けている未読状態が羨ましい...是非読んで、そして楽しんで下さい。
      お互いに片想いだと思ってるなんて全くピュアですなぁ(¯v¯)ニヤ御子柴シリーズのレビュー楽しみにしてますぜ、相棒bb
      2021/10/21
  • 想像する思考なんて余裕で超えてきます。逃げるとか同情とか向き合うとか正義とかそういうことも超えてきます。この設定で4冊書いてて陳腐にならない中山七里さんは凄いと思います。

  • 御子柴礼司シリーズ第4弾

    御子柴のもとに妹の梓が30年ぶりに訪れ、年老いた母である郁美の弁護を依頼する。郁美は、再婚した夫を自殺に偽装し殺害した容疑で逮捕されていた。
    大事な家族を失った被害者家族の辛さはもちろんだが、加害者家族として生きる事の過酷さもまた辛かった。
    「何しろ自分は善人で正義だと信じ切っています。正義が裁かれるはずがないから、安心して罪人を叩く」
    「およそこの世は人が口にする正義ほど胡散臭いものはありませんよ」
    この言葉が突き刺さる。
    法廷での御子柴の弁論は鮮やか。
    家族を否定し続けた御子柴にとってラストの郁美の言葉は、、、
    今後も楽しみです。

  • 冒頭から犯行はクロなのを、どうシロやハイ色に持って行くのかと読み進めると、またしてもやられました。
    お互い30年間没交渉の母親と妹が突然出てきて、殺人容疑の弁護という複雑な内容。犯罪者の家族への対応、親の犯罪者の遺伝子が子に遺伝するのかという重いテーマも抱える。
    御子柴弁護士に味方も増えて来る。前回は渡部刑事だったし、弁護士会の重鎮が今回も援助してくれたし、鑑定センター長も味方のようだ。罪を憎んで人を憎まずということだろうか?
    相変わらずの裁判所でのド派手な証拠への反論も凄い。現実的に行われる物だろうかと毎回思う。
    最後は母親との微かな交流も見られたし、以前の裁判で知り合った倫子ちゃんとのやり取りもホッとさせられる。

  • これはやられた!
    御子柴礼司シリーズ第4弾!

    今回のテーマは加害者家族。犯罪者の家族は世間からどういう仕打ちを受けるのか、これでもかというぐらい語られています。
    今回の弁護は、妹の梓からの依頼。
    再婚相手を自殺に見せかけて殺したとして逮捕された母親の郁美の弁護をするというもの。
    実母の弁護ということで、本人、検察側、両方が動揺します。

    しかし、冒頭、その郁美の殺人シーンからストーリは始まります。その上で、無罪を主張する郁美。
    御子柴はこの裁判を通して、家族と向き合うことになります。
    自分の起こした事件で、家族がどんな生活を送ってきたのか..
    御子柴は無罪を勝ち取れるのか?
    その真相は
    という展開です。

    殺人者を身内にもつ家族の苦悩
    御子柴の苦悩
    そして、ミスリードを誘う叙述トリック
    これまたしびれました。

    またまた最後に倫子登場(笑)

    とってもお勧め。
    前作にもコメントしましたが、シリーズは順番に読みましょう。

  • めっちゃ面白い〜!シリーズ第4弾!
    しかし、自分を追い込むな!過去の罪を償う為とはいえ…
    これでもか!これでもか!っと…

    加害者家族も悲惨やな。更に「死体配達人」の家族ともなれば…
    被害者家族も報われてないし、どうしたらええんやろ…って思う。
    一番はこんな犯罪起こさん事なんやけど、起こった後の事ももっと考えんとあかん気がする。

    今度は、実の母親の弁護。
    30年も会ってなかったのに、いきなり姉が来て…
    はじめの話が頭に残って、更に最後を引き立たせる。
    母親の夫殺しの弁護を引き受けて…家族の過去を探るのはキツい…
    どんな犯罪犯しても親は親なんやな〜っいうのは号泣〜(T . T)

    法廷では、スカッと!
    法廷外では、ホロリ( i _ i )

    なかなかでした!

    御子柴に肩入れしてくれる氏家さんがカッコ良い!この人もはぐれ者。

    組織の中にあって評価も眼中になく、好き勝手に振る舞う者はやがて周囲から浮く。軌道修正を図ればいいのに、元よりそんな殊勝さは持ち合わせていないから更に浮く。そして周囲との軋轢と自己満足を秤にかけて、組織から逸脱していく人ら。
    こういう人らに憧れる!自分には、とても真似出来んから余計にね!

    次もよろしく!
    あっ!ヒポクラテスも読まな!(^^;;

  • 御子柴礼司シリーズの第四弾!!!

    今回は実母の弁護を引き受けることとなった御子柴。安定の悪辣ぶりは健在。

    加害者家族に容赦なく浴びせられる罵詈雑言。今までの家族の生活ぶりを知ることとなり、どう弁護していくのか。

    安定の中山七里さんでした。

  • 中山七里さんの御子柴礼司シリーズ!
    刊行順に読みたかったが全て貸出中だったので、本作から読み始めた。

    いやぁ〜面白かった!!
    夢中で一気読みしたので興奮が収まらない笑
    法廷劇が見せ場のリーガルサスペンスだが、丁寧な構成と展開の巧妙さで難解さを感じさせない所も中山七里さんの凄さだと思う。
    また単なる法廷劇ではなく、悪名高い「死体配達人」こと御子柴礼司が実母の弁護を担当するという設定。

    なんでも依頼して来た妹の梓も含め、家族が再開するのは礼司が起こした事件以来で実に30年ぶりとなる。加害者家族の現実をシリアスに描いた社会派小説という側面を見せつつ、クライマックスに訪れる真実に舌を巻いてしまった。何故か読み進める内に、トリックを見破りたいよりも、翻弄されて転がされたいという謎の欲求に満たされ、読後は心地よい飽和状態になってしまった。
    冒頭の強烈なシーン、上手いわぁ〜

    御子柴礼司シリーズ恐るべし!
    これは全部読むしかない!!
    出来れば刊行順で・・・笑
    どうやら登場人物もお馴染みのキャラ?のにおいがする。
    鑑定人の氏家さん好きだなぁ。ブレずに信念を持っているお姿がカッコいい!
    事務員の洋子さんも聡明で素敵♪礼司が一目置いてるのも納得。
    最後の倫子ちゃんとか、刊行順で読むと絶対グッとくるシーンなんだろうなぁ〜たぶん・・・

    刺激強めだけどクセになる!!
    このシリーズかなりオススメです(^-^)

  • 御子柴シリーズ 第4作
    悪徳弁護士御子柴の前に、30年ぶりに妹が母親の弁護の依頼に現れる。母親は再婚相手の偽装自殺の殺人罪に問われていた。
    ほーら、身内が犯罪者になっていきますね。
    でもまさか早々に母親とは。
    少年院で実の家族との繋がりを断ち切っていた御子柴は、否応なく家族の事件後を知る事になった。
    あくまでダークの彼の胸の内をこれからどのように描くのでしょうか。続けて読まないとですね。
    先に読んでしまった鑑定人氏家さん。後半での登場にお久しぶりって感じでした。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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