執権 北条氏と鎌倉幕府 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
4.24
  • (14)
  • (13)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 187
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065175736

作品紹介・あらすじ

北条氏はなぜ将軍にならなかったのか。
なぜ鎌倉武士たちはあれほどに抗争を繰り返したのか。
執権政治、得宗専制を成立せしめた論理と政治構造とは。

承久の乱を制し、執権への権力集中を成し遂げた義時と、蒙古侵略による危機の中、得宗による独裁体制を築いた時宗。
この二人を軸にして、これまでになく明快に鎌倉幕府の政治史を見通す画期的論考!

【本書より】
・鎌倉北条氏は、そもそもどのような家であったのか。
・「得宗」とは、いったいどういう意味なのか。
・これは事実自体がほとんど知られていないが、鎌倉将軍には実は四人目の源氏将軍が存在した。第七代将軍源惟康がその人である。鎌倉幕府が空前の強敵蒙古帝国と対峙したこの時期、なぜ鎌倉幕府は源氏の将軍を戴いていたのであろうか。
―これらの問題を追究するためには、どのような方法が有効なのであろうか。
まず、鎌倉幕府の通史や北条氏歴代の伝記を書くつもりはない。なぜならば、この本は北条氏という「一族の物語」ではなく、「一族の物語」の底を流れる「基調低音」を書くことが目的だと思うからである。表面的に幕府や北条氏の歴史をなぞっても、我々が求める答には辿り着けないはずである。
そこで私は鎌倉北条氏歴代のなかからキー・マンとして二人の「執権」を選んだ。承久の乱で仲恭天皇を廃位し後鳥羽・土御門・順徳の三上皇を配流(流刑)した「究極の朝敵」、第二代執権北条義時と、蒙古帝国の侵略を撃退した「救国の英雄」第八代執権、北条時宗である。
世間一般の評価に極端な隔りのあるこの高祖父(ひいひいおじいさん)と玄孫(ひいひいまご)の人生に注目することにより、答に迫りたいと考える。
この試みが成功し、見事、解答に至れるかどうかは、わからない。「とりあえず付き合ってやるか?」と思った読者と共に旅に出るとしよう。

【本書の内容】
はじめに―素朴な疑問
第一章 北条氏という家
第二章 江間小四郎義時の軌跡―伝説が意味するもの
第三章 相模太郎時宗の自画像―内戦が意味するもの
第四章 辺境の独裁者―四人目の源氏将軍が意味するもの
第五章 カリスマ去って後
おわりに―胎蔵せしもの

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 北条氏はなぜ将軍にならなかったのか、得宗専制とはそもそも何なのかなど素朴な疑問の提起から始まる本書は、「北条氏の鎌倉幕府支配を支えた論理」の解明を課題としている。

    フォーカスされるのは、承久の乱で執権の権力集中を成し遂げた義時と、蒙古襲来という未曾有の危機に際して得宗専制体制を構築した時宗である。あえて北条氏の歴史ではなく、この二人に絞ったことで「支配を支えた論理」とその政治史的意味を明確にすることに成功していると言って良いであろう。初出は『北条氏と鎌倉幕府』(講談社メチエ、2011)。

    きわめて真面目な内容なのだが、資料の解釈など現代的な大胆に噛み砕いている部分が多く、初学者にもわかりやすいように配慮がされている。

    本書の構成は以下の通り。
    はじめにー素朴な疑問
    第1章 北条氏という家
    第2章 江間小四郎義時の軌跡ー伝説が意味するもの
    第3章 相模太郎時宗の自画像ー内戦が意味するもの
    第4章 辺境の独裁者ー四人目の源氏将軍が意味するもの
    第5章 カリスマ去って後
    おわりにー胎蔵せしもの

    素朴だが重要な問題の回答については、ネタバレになるので書かないが、第4章後半の全体のまとめ的な部分を読めば、諒とされるであろう。また現在放映中の大河ドラマも面白く観ることができるように思う。

  •  今年(2022年)のNHK大河ドラマ(『鎌倉殿の13人』)の予習本として最初に買って、最後に読んだ本となりました。これからさらに興味をひかれる本と出会えればまた読むかもしれませんが、ひとまずこれでひと区切り。

     1月に読んだ『頼朝の武士団』(朝日新書)と同じ著者なので、学術文庫だから専門的なテーマではあるものの、フランクな文章で基本的なことから説明してくれており、比較的わかりやすいと思います。

     本書では、「北条氏は、なぜ将軍にならなかったのか?」という問いに答えを見つけるべく、第二代執権北条義時と、第八代執権北条時宗の2人に焦点を当て、「北条氏の鎌倉幕府支配を支えた論理」について考察しています。

     とても勉強になったし、おもしろかった。とくに、義時の武内宿禰再誕伝説はめっちゃ興味深く読みました。義時って、北条氏にとっては源頼朝ばりの英雄なんですね。

     そして、時宗がこんなに独裁者だったとは驚き。昔(2001年)のNHK大河ドラマ『北条時宗』で見た和泉元彌さんのイメージが強く残っているんだけど、こんなに独裁してたかどうか、よく覚えてないのよねぇ。ここで改めてまた見たいな。

  • 平家打倒後、朝廷とは一線を引く新しい組織の確立を模索する投獄武士団。その試行錯誤の中で血で血を洗う権力闘争があり、本人も意識しない中で権力の頂点に上り詰めた北条義時。東国の事実上の頂点に上り詰めた時に、これまでの権威である朝廷は後鳥羽上皇の命により承久の乱に踏み切った。しかし義時は見事にそれを乗り切ったー
    この、鎌倉将軍とその補佐役である「執権」の二頭構造が承久の乱を乗り切った、という構図が、元寇という未曾有の国難に立ち向かわざるを得なかった時宗にとって模範となり、形式として惟康親王を源惟康として頼朝になぞらえ、自らは肉親を排除してでも完全な独裁者として君臨し、いわば承久の乱にも等しい国難を乗り切る模範となったという説は非常に面白かった。同時に、時宗がなしえたことが子孫にとって仇となり、鎌倉幕府滅亡の遠因となったことも非常にうなづける。
    政治体制でも芸術でも、完成された瞬間に崩壊へと向かう。崩壊の兆しを感じ取っている後継者たちも、完成された姿が強力すぎて、完成されたスタイルを容易に否定できない。このパラドックスを非常に感じさせる好著だった。

  • 鎌倉将軍に準じる立場"なのに"鎌倉幕府を支配したと思われがちな北条得宗家だが、筆者いわく、鎌倉将軍に準じる立場"だから"支配できた。"だから"を支えたものは何か。その仮説が楽しくてたまらない。誰しもが知っている執権の職位というリアルな権力とは別に、とあるフィクショナルな権威があったのだ、と。ハードパワーのみが注目されやすい得宗家をソフトパワーから読み解くオススメの一冊。

  • ちょっと期待したのとは違ったかな。

  • 「北条氏はなぜ将軍にならなかったのか。」「なぜ鎌倉武士は抗争を繰り返したのか。」承久の乱の当事者である二代執権義時と、元寇に対応した八代執権時宗を取り上げて論じる。

    2022年3月・4月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00549294

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741556

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50171369

  • 残っている正確な情報が少ないながらも、大小様々な血生臭い事件や騒動が多い鎌倉時代を、北条義時と時宗を中心に将軍と執権の関係を開設しつつ、日本史上初めての武家政権が手探りで政権を運営していった様子を、とてもわかりやすく解説した一冊。

  • 鎌倉時代はなじみ薄く、登場人物も知らない人が多い。本書でも、知らない人が数多く登場するため、人間関係を把握するのに手間取った。執権、将軍がどういう存在だったかという概略を理解する助けになった。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。立正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、中世内乱研究会総裁。著書に、『鎌倉政権得宗専制論』(吉川弘文館)、『鎌倉幕府の滅亡』(吉川弘文館)、『執権 北条氏と鎌倉幕府』(講談社学術文庫)、『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』(朝日新書)など。

「2022年 『論考 日本中世史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

細川重男の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×