ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065166444

作品紹介・あらすじ

人間は自分たちだけで文明への階梯を上がって来たのではない。
一万五〇〇〇年前、東南アジアいずれかの川辺での犬との共生。
ニッチを見出す途上にあったお互いの視線の重なりが、
弱点を補完し合い、交流を促し、文明と心の誕生を準備した。
オオカミは人間を振り返らないが、犬は振り返る。
人間は幻想や感情で判断するが、犬は論理的に判断する。
犬は人の言葉を理解し、人の心を読み、人の窮地を救う――
人間と犬、運命共同体としての関係の特異性と起源を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 万物は犬によって創られた。アイアイ博士が解き明かす、人間と犬、運命共同体としての関係の特異性と起源。

    なかなか本題がはじまらないもどかしさ、正確を期すあまり読み辛い文、イラチな私はかなりイライラしましたが、内容は刺激的ですばらしい。

    『犬は人間的な心の特性の誕生のすべてに関係している。』
    まえがき
    『ヒトが人となる直前の狩猟採集民、イヌが犬になる前の野生動物、その双方に何が起こったのかを、イヌの側から見る視点が必要となる。』第三章 犬の力

  • 人類の言語の発生の理由や犬の家畜化についての興味深い本
    イノシシ猟や北極探検など犬…かわいそう……ってエピソードも多数あるので少しつらい

  • この本はローレンツの本へのオマージュなのかな? ローレンツの本も読んでみたい。

    参考資料として読んだ本だったけれど、とても面白く興味深かった。
    特に、ヒトと犬の最初のつながりは、牧羊犬や番犬であるとともに、「食料」としての役割も大きかったということが、驚きだった。
    つまり、ヤギや牛と同じように食べていたということ。
    なぜ、主な役割から「食料」が消えていったかというと、人間と言葉を介したコミュニケーションが取れて、「食料」以上に有用な役割を担うことが分かった身体こそだと思う。

    以下、本文からのメモ
    47
    イヌはジャッカル類のように魚や昆虫を含む小動物と食肉獣の食べ残し、死肉、果実さえも食物としたはずである。
    69
    ……アジアで大型化したオオカミ、ダイアーウルフや現生のタイリクオオカミが、人類に先んじて北米大陸にわたった

  • 地下鉄のるとかすごいな

  • 一部に書き間違いなのか、日本語不明瞭な箇所が若干見受けられるのが残念ではあるが(校正含め)、生物としての根元的な人間と犬との違いを総論的に述べており、たくさんのことが腑に落ちる。
    著者は"超能力"と表現しているが、人間には理解し得ない微細な兆候や変化を見逃さない犬の観察力の高さに改めて舌を巻き、一方で、娯楽のために他種族を短絡的に虐殺し、さらには同種間で大義なく潰し合い殺し合う人間という存在の唾棄すべき愚かさに嘆息する。
    また、著者自身もアイアイを主に研究してきた学者だということだが、霊長類学界のいわゆる主流派には良からぬ思いを抱いているようで、松沢哲郎を一刀両断しているのが面白い。
    この書の本質的な鋭さを端的に表す記述がいくつかあるので、私が拙い言葉を連ねるより、少し長くなるがそれらを下に引用して終わりたい。

    「客観性は人間の能力ではとうてい達しえない高みである。人間はあまりに多数の偏見によって自己の人格を形づくっているので、そのバイアスからしか事柄を判断できない。」(145ページ)
    「犬は現在直下だけを生きることで『永遠に生きている』ものだから、人の絶望の理由はきちんと説明してもらわないと、理解できない。(中略)人は犬から論理を学ぶ。」(235ページ)
    「犬は大好きな人のかたわらに常にいる。常にいっしょにいて、常に同意しながら、まったく異なる世界を見ている。その時、人は心が解放されるのを感じる。人同士の絡み合った妄想の関係から解き放たれているからである。」(240ページ)

    "おわりに"がまた、とりとめもない雑文と思いきや、秀逸。

  • 【メモ】
    このタイトルの本歌はKonrad Lorenzの“So kam der Mensch auf den Hund”だろうか。

    【製品情報】
    製品名 ヒト、犬に会う――言葉と論理の始原へ
    発売日 2019年07月12日
    価格 本体1,750円(税別)
    ISBN 978-4-06-516644-4
    通巻番号 705
    判型 四六
    ページ数 272
    シリーズ 講談社選書メチエ 人間は自分たちだけで文明への階梯を上がって来たのではない。一万五〇〇〇年前、東南アジアいずれかの川辺での犬との共生。ニッチを見出す途上にあったお互いの視線の重なりが、弱点を補完し合い、交流を促し、文明と心の誕生を準備した。オオカミは人間を振り返らないが、犬は振り返る。人間は幻想や感情で判断するが、犬は論理的に判断する。犬は人の言葉を理解し、人の心を読み、人の窮地を救う――
     人間と犬、運命共同体としての関係の特異性と起源を探る。
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000323814

    【簡易目次】
    序 章 イノシシ猟の衝撃
    第一章 犬への進化
    第二章 イヌ、ヒトに会う
    第三章 犬の力
    第四章 「ことば」はどのように生まれたか
    第五章 こんなことが信じられるか? 


    著者紹介
    著者:島 泰三(シマ タイゾウ)
    1946年生まれ。東京大学理学部人類学教室卒業。日本野生生物研究センター主任研究員、ニホンザルの生息地保護管理調査団主任調査員などを経て、現在、日本アイアイ・ファンド代表。理学博士。アイアイの保護活動への貢献によりマダガスカル国第5等勲位「シュバリエ」を受ける。
    著書に『アイアイの謎』『親指はなぜ太いのか』『ヒト』『サルの社会とヒトの社会』『はだかの起原』など。

  • 犬と暮らすことでヒトは人となった。
    犬(狼)は集団で猟をし、集団(群れ)で生活します。
    その集団生活の維持にはある種の倫理やルールがあり、犬と生活し猟のパートナーとすることは、人が言語や倫理、知識を得る上で重要な役割をになっていたのではないかという話です。
    「馬、車輪、言語」という本でも学びましたが、確かに人は共生する動物から多くの学んでそして進化してきたというのは頷ける話です。
    著者はアイアイの観察など、自然や動物を見つめてきた人で東大卒業のため参考文献などもしっかりしているのですが
    、文章は読みにくかったです。
    いいたいことはわかりました。

  • 人間が言語を修得して進化した過程,犬がオオカミから進化した過程には,相互の作用があった,ということを,様々な状況証拠から導く.
    少し「犬好きのひいき目」があるようにも思うが,そうであったとしても,また,ここで導かれた結論が誤っていたとしても,読み物として大変面白かったので良しとしよう.

  • 人が、コミュニケーションを発達させ、文明をつくりあげていく契機となったのは、異種たる犬との共生であったという。
    荒唐無稽に感じられもするが、犬とコミケニーションを取りながら、その人間を超えた超能力を利用することで、狩猟が容易になり、大規模な牧畜が可能になった。「文明は犬によって始めることができたのである(p.211)」
    犬好きの贔屓の引き倒しに聞こえるかもしれないが、様々な分野の研究成果を総合しながら、ダイナミックに議論が展開する。
    紹介されている研究もいちいち面白い。オオカミは人間を振り返らないが、犬は振り返るという実験や、(最近言われる地域猫に先駆けた)里犬や、犬の伊勢参りの話も実に興味深い。
    私的な思い出話が差し込まれたりするところも、犬好きには微笑ましく共感できるけれど、そういうウェットなところを省いて、文明論としてドライに書かれていたらもっと多くの読者を得られるのではないかとも感じた。でも好きな本だ。

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著者プロフィール

1946年下関市彦島生まれ。東京大学理学部卒。理学博士(京都大学)、マダガスカル国五等勲位シュヴァリエ、雑誌『孫の力』監修。1978年(財)日本野生生物研究センターを創設、主任研究員を経て、国際協力事業団(JICA)派遣専門家として2001年までマダガスカルに6年3か月滞在。アイアイなどを上野動物園に送り、2002年より日本アイアイ・ファンド代表としてマダガスカル北西部アンジアマンギラーナ監視森林の保護管理を行って、現在にいたる。2012年、ルワンダ共和国でマウンテンゴリラの名付け親となる(日本人初)。ANAグループ機内誌『翼の王国』にて阿部雄介氏とともに『日本水族館紀行』(2007~2012年)、『どうぶつ島国紀行』(2012年~)を連載。『はだかの起原』(木楽舎)、『親指はなぜ太いのか』、『戦う動物園』(編)、『孫の力』(3冊とも中央公論新社)ほか、著書、論文・報告書多数。

「2004年 『はだかの起原 不適者は生き延びる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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