川っぺりムコリッタ

著者 :
  • 講談社
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感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065160282

作品紹介・あらすじ

「なんで生まれてきちゃったんだろうって、ずっと思っていました」

“ひとり”が当たり前になった時代に、映画監督・荻上直子がろくでもない愛すべき人々のアパート暮らしを描く、書き下ろし長編小説。

高校生の時に母親に捨てられ、知り合いの家や建設現場を転々とし、詐欺で入った刑務所で30歳を迎えた山田。出所後に海の近くの塩辛工場で働き始めた彼は、川べりに住みたいと願い、ムコリッタという妙な名前のアパートを紹介される。そこには図々しい隣人の島田、墓石を売り歩く溝口親子、シングルマザーの大家の南など、訳ありな人々が暮らしていた。

そんな山田に、役所から一本の電話がかかってきた。幼い頃から一度も会っていない父親が孤独死したので、遺骨を引き取ってほしいという――。

ずっと一人きりだった青年は、川沿いの古いアパートで、へんてこな仲間たちに出会う。友達でも家族でもない、でも、孤独ではない。“ひとり”が当たり前になった時代に、静かに寄り添って生き抜く彼らの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「川っぺりムコリッタ」スゴく面白かったです。家族も生き甲斐もない山田が、人との関わりの中で自分の生きる意味を獲得していく物語です。
    束縛されない自由は何からも守られないというギリギリの状態。
    しかも山田は年代ごとで体験すべきことがかなり少なかった生い立ちです。
    そんな山田が行き着いたハイツムコリッタは、めぞん一刻ばりの変人揃い。でもそれぞれが人間くさくて、温かくて、心のそこがほかほかしてくる人たちです。
    やっぱり人は人と繋がってこそ、成長していくことを感じました。山田も自分で自分を諦めてしまうことを辞め、自分を「見つけ」ていくことができていきます。
    また、「今、辞めんな。振り出しに戻るよ。(中略)頭使わずに手を使え、手を動かしていれば余計な疑問は断ちきれる。」との社長の言葉は胸に刺さりました。生きる意味がどうとかは、自身の体を動かしていけば自然と感じられてくるもの。
    そして隣人の島田が言うように「ささやかななシアワセ」をたくさん拾い集められることができるようになるのだ思います。
    あれほどの生い立ちでありながら、山田が自分を探し、掴み取っていく過程がとても自然で違和感がなくて、感動しながら読み続けられました。

  • この作品好きだぁ〜‼︎
    ブク友こっとんさんのレビューで知りました♪
    感謝です\(//∇//)

    刑務所を出てひっそりと暮らすつもりで働き出したイカの塩辛工場。
    社長に紹介された川沿いのボロアパートは変わり者の住人が暮らす「ハイツムコリッタ」だった。

    美しいけど無表情の大家さんとひたすら二重飛びの練習をする小学生の娘
    何故かお揃いの黒スーツの父親と小学生の息子
    夕飯時に勝手に入り込む隣人

    訳アリ住人達との触れ合いが固まった主人公の心を溶かしていきます。

    みんな切なくて可愛くて最高でした\(//∇//)

    • こっとんさん
      みんみんさん、こんにちは♪
      新年度を迎えてからなんだかバタバタしていて、反応が遅くてすみませんでした!!!
      みんみんさんのおっしゃる通り、『...
      みんみんさん、こんにちは♪
      新年度を迎えてからなんだかバタバタしていて、反応が遅くてすみませんでした!!!
      みんみんさんのおっしゃる通り、『好きだー』って感じの一冊ですよね。わかります!
      なんだか全体を漂う雰囲気がもう、いいですよねー
      理屈抜きの『好きだー』です❤︎
      2023/05/11
    • みんみんさん
      こっとんさん♪こんにちは〜(^ ^)
      ほんと素敵な作品でした!
      みんな個性的で面白かったです。
      レビュー読まなかったらたぶん読まなかったと思...
      こっとんさん♪こんにちは〜(^ ^)
      ほんと素敵な作品でした!
      みんな個性的で面白かったです。
      レビュー読まなかったらたぶん読まなかったと思う
      感謝です\(//∇//)
      2023/05/11
  • 生まれて消える時間の流れ、単調な暮らしのなかでほんの少しの幸せをみつけると暖かな気持ちになる。
    図々しくって、おせっかいで、ダメ人間で、落ちこぼれで、繊細で暖かくて人間らしい。隣に住む島田はそんなキャラだった。
    自分が死んだとき、寂しいって思ってくれる人がひとりいたらそれでいいと。それがかなり幸せなことだと、島田は充分キャラ濃いから思い出してくれる人多いと思うけどね。

    印象に残ったのは2つのシーン
    墓石売りの親子の部屋から漏れるすき焼きの臭いに群がるアパートの住人達、テーブルを囲みながら賑やかに話しやがて亡くなった住民の思い出にしんみりするシーンと。
    もう一つは、主人公の父の弔いに列を作り歩いてる住人達。男の子のピアニカにあわせ、女の子は縄跳びの縄を空に向かって回す。銘旗を持つもの、木魚を叩くもの、花束を持つもの、しんがり喪主は砕いた遺骨の入った塩辛の瓶を抱えて歩いて行くシーン。
    1人悶々と考えてるより、不思議な距離感だけど仲間がいた方がいいよね。
    滑稽だけど沁み込んでくる世界観。
    悲しくって、せつなくって、イライラするトリプルコンボ、これはムズ痒いけど自分では手の届かないところにある刺激。背中にあるイボのような。
    そっと掻いてくれると嬉しくなるかな。

  • 母に捨てられてから悪いことに手を染め、刑務所を出た後は、誰とも関わらずひっそりと生きていくつもりだった。
    ムコリッタという変わった名前のアパートに住み、そこの住民と関わるまでは…。

    みんな何かしらの過去を持ち、けっして裕福ではない。
    だが悲観することなく、今を生きている。
    おせっかいで身勝手で図々しくて、どかどかと踏み込んでくるけれど、それが無くなった寂しさを感じたときに人の温もりに心が救われていたんだとわかる。

    じんわりとじんわりと心に染み込んでくる物語。

  • 一人で良かったはずだった。
    誰とも関わらず目立たず、ひっそりと暮らしていこうと決めていたはずだった。
    そうやって人生を諦めていた彼はささやかなシアワセを実感していく内に、生きる喜びを見出だしていく。
    川っぺりに佇む古びた木造アパート"ムコリッタ"で。
    世間から脱落したような一風変わった住人達との出逢いが彼の考え方を変えた。

    自分以外の誰かと一緒にご飯を食べる。
    世間話をする。
    笑う。
    その一つ一つはささやかだけれど、何ものにも代え難いシアワセなのだ。

    どうせ明日も今日と同じ、変わり映えのしない毎日だ。
    けれどその変わらない日々の中にでも少しずつ変わっていくものもある。
    そのことに気が付いた彼は、昨日よりももっとシアワセだ。
    一人でも生きていけるけれど、誰かと一緒がずっといい。
    いつも見ている夕焼けも、誰かと一緒なら、ずっと綺麗に思えるはずだ。

  • 川っぺりの古いアパート、ハイツムコリッタでちょっと世間からドロップアウトした人たちが繰り広げる日常。これは読んでいて心地良い。かなり好きな作品だ。

    住人達が手探りで見つけ感じ学びとったことがさりげなく口からこぼれていく瞬間がとても良かった。それは当たり前のようだけどとても大事なことで、それを自然と吸収して、日々変化していく山田くんの姿にもじんわりきた。

    些細なことにシアワセを感じること、忘れがちだけどとても大事なこと。
    どんな人だって思いっきり感じていいよね、感じるべきだよね。

    薄っすら桃色に染まった夕暮れ。
    今日という日が閉じていく時間がなぜこんなに美しい色をしているのか…。
    一日の終わりを告げる空が今以上に愛おしい。

    • くるたんさん
      takeこん♡

      コメントありがとーー♪
      89点なのもすごくわかる!!

      図々しい島田くんが何気に良いこと言うし、炊きたてのご飯を食べるシー...
      takeこん♡

      コメントありがとーー♪
      89点なのもすごくわかる!!

      図々しい島田くんが何気に良いこと言うし、炊きたてのご飯を食べるシーンもすごく良かった♪
      私もこういうホワイトな気分になれる作品好き。
      そしてこういう温かい作品をよく知ってるtakeこんの本棚をいっぱい眺めさせていただきます✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。
      2019/08/12
    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      聞いたことない作家さんと思ったら、「彼らが本気で編むときは、」の人なんだ。
      くるたんは物知りだなぁ。
      映...
      こんばんは(^-^)/

      聞いたことない作家さんと思ったら、「彼らが本気で編むときは、」の人なんだ。
      くるたんは物知りだなぁ。
      映画見た?生田斗真が凄かったよ。
      そして、編んでるものが何かわかった時は驚いた(笑)
      2019/08/13
    • くるたんさん
      けいたん♪
      おはよ♡
      そう!彼らが本気で編む時は…の荻上さん♪
      観たよ〜♪斗真くんの繊細な表現が良かった♡
      必死にあれを編んでたね(笑)

      ...
      けいたん♪
      おはよ♡
      そう!彼らが本気で編む時は…の荻上さん♪
      観たよ〜♪斗真くんの繊細な表現が良かった♡
      必死にあれを編んでたね(笑)

      これも文句無しに良かった♡
      映画で観てみたい世界だったよ♪
      めっちゃオススメ♡
      2019/08/14
  • 図書館の棚でたまたま目にとまって借りてくる。
    作者をよくよく見ると監督の荻上直子さん。
    昔モリオを読んでとても好きだったので期待して読む。

    親に捨てられ、世間の悪に流されて刑務所に入り出所後に川のそばに
    住みたいという希望だけで地方の街にやってきた主人公が、特徴ある様々な
    アパートの住人と否応なしにかかわって生活していく日常の物語。

    不愛想なアパートの大家親子、売れない墓石のセールス親子、人との距離感が
    近すぎる隣人、以前住んでいた住人の幽霊、河原に住むホームレスの人。
    登場人物はみんなおしゃれじゃないし、泥臭いけれどすごくいい。

    文章を読んでいると情景が頭にスラスラと思い浮かんでとても
    心地よく読める本だった。印象的な場面がたくさんあるのだけれど
    どれも頭にその場面が浮かんでくる感じがさすが監督さんだけあると思う。

    主人公が捨てられた父の遺骨を引き取って葛藤して乗り越えていくのだけれど、
    さりげない周囲とのかかわりに助けられて、人って一人で生きているつもりでも
    こうして知らず知らず人と関わり合って優しさや幸せをわけあって
    暮らしていくことが大切で、必要なことだと思った。

    決して泣かせようとした物語ではないかもしれないけど
    読み終わったら涙が零れ落ちた。
    またじっくり言葉を味わいながら読みたいので早速購入。

  • 映画「かもめ食堂」監督の小説。

    あらすじ
     僕は30歳。詐欺の受け子をしていた罪で、2年間服役した。4歳で両親が離婚。母はネグレクトで、高校生の時に蒸発。家を追い出され、転々と暮らした結果だった。知らない土地で、川の近くに住みたい。イカの塩辛工場に勤めながら、古いアパート「ムコリッタ」に引っ越す。隣人は自称ミニマリストで貧乏な島田、上の階の墓石を売る親子と徐々に関わりを持つ。

     あっさり読める。主人公の生い立ちの悲惨さもくどすぎず、登場人物たちの突飛な設定や、ギリギリの生活感も丁度良い。映画作品と同じ温度感で、淡々と進む。文字数も少なくて、短い小説なのに、腑に落ちるというか、そんなもんだよなーと納得して終わる。描かれている人たちがほどよい距離感でほどよく助け合っているところが好きだ。

  • 凄く良い小説だった。
    荻上監督のかもめ食堂やめがねも大好きな映画です。

  • しみじみいい話だと思った。
    読み始めから勝手に映像が浮かんでしまう。
    しかもキャストまで見えてきてしまうのは、映画監督さんの作品だからなのか。
    小林聡美・三石研・もたいまさこ・加瀬亮 
    荻上さん好きなら、すぐに当てはまるでしょ?
    片桐はいりは・・・塩辛作りのベテラン社員かな。
    炊き立てのご飯、そして味噌汁。絶品塩辛とシンプルな野菜の漬物。
    思わず生唾ごっくんの映像も思い浮かぶ。
    フードコーディネーターはもちろん飯島奈美さん。

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著者プロフィール

荻上直子(おぎがみ・なおこ)
1972年、千葉県生まれ。映画監督、脚本家。千葉大学工学部画像工学科卒業。1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画製作を学び、2000年に帰国。2004年に劇場デビュー作「バーバー吉野」でベルリン映画祭児童映画部門特別賞受賞、2017年に「彼らが本気で編むときは、」で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞など、受賞多数。他の監督作に「恋は五・七・五!」「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」、著書に『モリオ』がある。

「2021年 『川っぺりムコリッタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

荻上直子の作品

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