電鉄は聖地をめざす 都市と鉄道の日本近代史 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065157121

作品紹介・あらすじ

小林一三神話を覆す! 私鉄黎明期の語られざる歴史

「阪急や阪神、東急や西武といった”電鉄”が、衛生的で健全な”田園都市”を郊外につくりあげた」
――よく知られたこの私鉄をめぐる物語の深層には、「寺社仏閣」を舞台とする語られざる歴史があった。初期の電鉄をめぐる世界では、神社仏閣とそれを取り巻く人々の、ある意味無軌道とも言える行動が郊外空間を作り出していったのである。それは、近代的な都市計画といった無機質なものでも、経済的な功利性のみだけでも説明のつくものではなかった。とくに、われわれが通常イメージするような鉄道が確立してくる以前の黎明期には、現在の視点からみると「怪しい」人々が蠢いていたのである。

そうした人々を突き動かしていたのは、寺院や神社を興隆させたいという熱情であった。「わが門前に鉄道を」……そのすさまじいまでのパワーが、電鉄を、ひいては日本の都市を作り出していったのである。本書は、「電鉄」と社寺を取り巻く「怪しい人々」に光を当てることで、都市と鉄道という近代化の物語の陰に隠された歴史を明らかにしようというものである。

近代の荒波を生き抜く希望を鉄道に見いだした寺社と、そこに成功栄達の機を嗅ぎつける怪しくも逞しき人々が織りなす、情熱と欲望、野望と蹉跌のドラマ。鉄道誘致と都市開発をめぐる、ダイナミックで滑稽で、そして儚い、無二の日本近代都市形成史。


【本書の内容】
序章 「電鉄」はいかにして生まれたか
第一章 お詣りをプロデュースする僧侶たち――新勝寺と成田の鉄道
第二章 「名所」を作り出す――川崎大師平間寺と京浜電鉄
第三章 「霊験」プロモーションと都市開発――穴守稲荷神社と京浜電鉄
第四章 金儲けは電車に限る――池上本門寺と池上電気鉄道
第五章 葬式電車出発進行――寺院墓地問題と電鉄
終章 日本近代大都市と電鉄のゆくえ

感想・レビュー・書評

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  • 大都市の近郊私鉄(ここでは電鉄と定義)の起源に社寺参詣が関わっているとの話。
    小林一三的な要素だけでない指摘が面白かった。成田山、川崎大師の商売っぷり、また大鳥居に住んでいたので、穴守稲荷の話は興味深かった。20世紀までの都市の次のヒントの提案は面白かった。その点で地方に可能性があると感じた。

  • 日本の電鉄は神社の参詣がはじまり

  • 良書。
    都市圏の電鉄形成に寺社仏閣への参拝客輸送が大きな役割を果たしたことを記した書。
    非常に丹念に調べています。
    成田山、川崎大師なとの有名どころと、今では光が当たらない穴守稲荷。それと池上本門寺などのことが書かれています。
    そして、類書を見ないのが、葬式列車に関する記述。京成の宝城墓地構想は知っていましたが、それ以外にも葬式列車に関するものがあったとは知りませんでした。

    図書館で借りて読みはじめたものの、自分の手元に置いておきたくなって、改めて購入しました。

  • 似たような内容の本で「鉄道が変えた社寺参詣」(交通新書)というのがありますが、あちらは鉄道に乗ってもらうために初詣などを編み出す鉄道会社の様子を書いてましたが、こちらはそもそも寺社のほうも鉄道を利用していたという内容。両方読むと鉄道と寺社の持ちつ持たれつが良く見えてきます。
    にしても成田山は江戸時代の歌舞伎の利用に始まり鉄道の招き入れまで、商売上手ですな。

  • 明治・大正期に設置された電気鉄道の設立と社寺参詣との関わりについてまとめた一冊。

    事例は成田山新勝寺と成田鉄道、川崎大師と京成電鉄、穴守稲荷と京浜電鉄、池上本門寺と池上電気鉄道などなど。

    鉄道側だけでなく寺社側の思惑や鉄道をとりまく人々に注目している点は面白い。地元有力者が地域振興のために寺社と鉄道を利用するものとばかり思ってたけど、僧侶自身が寺の振興のために鉄道に注目するケースもあるらしい。あまり考えたことなかった。

  • 私鉄の黎明期における発展には、よく知られる大手私鉄による沿線開発以外に、寺社仏閣による参拝者獲得競争があった。

    目次
    序章 「電鉄」はいかにして生まれたか
    第1章 お詣りをプロデュースする僧侶たち--新勝寺と成田の鉄道
    第2章 「名所」を作り出す--川崎大師平間寺と京浜電鉄
    第3章 「霊験」プロモーションと都市開発--穴守稲荷神社と京浜電鉄
    第4章 金儲けは電車に限る--池上本門寺と池上電気鉄道
    第5章 葬式電車出発進行--寺院墓地問題と電鉄
    終章 日本近代大都市と電鉄のゆくえ

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著者プロフィール

1972年、和歌山県生まれ。青山学院130年史編纂室員。専攻は日本近代史。著書に『近代日本の大都市形成』(岩田書院)、共著に『「大東京」空間の政治史』『都市と娯楽』(ともに日本経済評論社)など。

「2006年 『「開発」の変容と地域文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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