元禄五芒星

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065149959

作品紹介・あらすじ

「元禄」という、江戸時代のあるひとつのピークにこだわりつづけてきた野口武彦氏。その野口氏が「平成」という時代の終わりを見据えて放ったのが本書『元禄五芒星』です。
将軍綱吉の治世後期、元禄から宝永は経済バブルの崩壊と災害が表裏の時代でした。さらに特筆すべきは、この時代は跡継ぎのいない将軍の時代だったということです。「元禄」の出典は『文選』の「建立元勲、以歴顕禄、福之上也」ですが、この時代は赤穂浪士の名を後世に打ち立てとはいえ、それは果たして「福之上也」というべきか。ちなみに「平成」は『史記』の「内平外成」、『書経』の「地平天成」に拠りますが、そのとおりの時代であったか……。漠然とした不安と鬱屈が世を覆い、先の御代は見えないとき、人びとはいかに生きたのか。死を以ての生の燃焼、なまじ生き残ったがための恨み、己が才を活かせるや否や、才覚でのし上がってからの一抹の寂寥。人生のさまざまな姿が異常なまでにクッキリと浮かび上がった魔術的な時空間を描く五篇をお楽しみください。

感想・レビュー・書評

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  • これはちょっと乗り切れませんでした〜〜。

  •  野口武彦さんにはすでに「花の忠臣蔵」(講談社)「忠臣蔵 ー史実の肉声」(ちくま新書・ちくま学芸文庫)という、「忠臣蔵」をめぐって、野口史観とでもいうべき、視点角度が独特で、「おっと、そうなんですね。」とひざを打ちたくなる好著がある。
     今回は、学者的な歴史的視点に対して、野口史観独特の裏目よみ、ルーモアと偽書に潜む真実に対する想像力で揺さぶりをかけながら、やがて、史実から幻想へと読者を引き込んでゆく手管の面白さが際立っている。
     「江戸の歴史家」(ちくま学芸文庫)をはじめとする、歴史評論における野口節を久しぶりに聞きながら、風太郎的ロマンへいざなわれる快感。高齢をものともせず「小説」への夢を追い続ける著者に拍手。

  •  古代史は文字資料がないがゆえに邪馬台国は沢山の夢とロマンを生み出している。
    近世、江戸時代は文字情報があふれ出す。虚実を取り混ぜた文書類がさまざまな形で残され現代人をたぶらかす。
     忠臣蔵を巡る記録から新しい角度で忠臣蔵を見つめ直す。虚実を取り混ぜたような資料を丹念に掘り起こし、そこにフィクションを織り交ぜる。歴史小説にありがちなパターンではあるが、この本は魔性的な怪しげな雰囲気を醸し出す。読み始めると癖になるテイストである。
     「チカラ伝説」では大石主税を怪しい美少年に仕立てあげる。「元禄不義士同盟」義士になれなかった赤穂浪士と吉良を討たせてしまった吉良邸の附人たちが不義士同盟どうしで決闘する。中入り「紫の一本異聞」は戸田茂睡の江戸地誌『紫の一本』に題材をとった綺談もの。「算法忠臣蔵」では赤穂の銀札から重商主義の先駆けとしての赤穂を語り、「徂徠豆腐考」赤穂浪士の処遇を具申した荻生徂徠と豆腐屋七兵衛の不思議な交流を描くのである。
     著者の博学ぶりと落差のある登場人物の語り口がおもしろい。

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著者プロフィール

野口武彦(のぐち・たけひこ)
1937年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。1973年、『谷崎潤一郎論』(中央公論社)で亀井勝一郎賞、1980年、『江戸の歴史家─歴史という名の毒』(ちくま学芸文庫)でサントリー学芸賞受賞。1986年、『「源氏物語」を江戸から読む』(講談社学術文庫)で芸術選奨文部大臣賞、1992年、『江戸の兵学思想』(中公文庫)で和辻哲郎文化賞、2003年、『幕末気分』(講談社文庫)で読売文学賞、2021年に兵庫県文化賞を受賞。著書多数。最近の作品に『元禄六花撰』『元禄五芒星』(いずれも講談社)などがある。


「2022年 『開化奇譚集 明治伏魔殿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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