罪の声 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065148259

作品紹介・あらすじ

2020年映画公開!小栗旬×星野源の共演。

「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、本屋大賞第3位。圧倒的な取材と着想で、昭和最大の未解決事件を描いた傑作長編小説。「これは、自分の声だ」――京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品からカセットテープとノートを見つける。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。

逃げ続けることが、人生だった。

「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、2017年本屋大賞第3位。
圧倒的な取材と着想で、昭和最大の未解決事件を描いた全世代必読の傑作長編小説!

感想・レビュー・書評

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  • グリコ森永事件を題材とした社会派ミステリー、虚構なのか事実なのかがわからなくなるほどのリアリティーさを感じた。

    事件そのものが未解決事件なのだから真相はわからないのは当然なのだが、事実録音された子供の声の方は今も生きている可能性が高い。その事を考えると不憫でならない。改めてとんでもない事件だなと感じた。
    作品は事件の史実とフィクションがこれ以上もない位からまっていて、凄く引き込まれる。素晴らしい作品だと感じた。

    30年以上の年月が流れ、尚被害者の中には真っ当な境遇を得られていない方々がいるのだろう。それはこの事件に限ったことだけではないだろう。
    もしそういう方々と出会った時、自分は何を話し、どんな行動を取るのか?
    考えた事がなかった。
    今後の人生の中でとても大事な事を気付かせて貰えたと感じている。

  • グリコ・森永事件含む実話をモチーフにしたフィクション作品。

    『どくいり きけん たべたら しぬで』
    当時小学生だった私は、ニュースでこの紙がお菓子に貼られてたことを知って、めちゃくちゃ怖かった記憶がある。
    また、実際に起こった社長誘拐事件の監禁場所が、実家から目と鼻の先だったことも更に怖さを増大させた。

    色んな思いと期待を胸に読んだのだが、正直中盤まで展開に変化がなくダレてしまうも後半は一転、どんどん引き込まれて読了。

    中盤までのクダりがもっとシンプルだったら、もっと読了感も高かっただろうと感じた。

  • 私が小学生の頃、メディアを賑わせていた事件があった。
    グリコ、森永事件。

    連日のように、キツネ顔の男の似顔絵がテレビや新聞で報道されていた記憶がある。

    自分は子供だったので、それがどういう事件だったのか細かいところまでは記憶していないが、自分の大好きだったお菓子に毒が入れられているかもしれない!?
    当時はものすごいショックを受けた記憶が薄っすら残っている。

    好きなお菓子が、フィルム包装になったのも、この事件がきっかけだったなと思い出された。

    私と同じ歳の子供が、犯罪の加害者に巻き込まれていた。それは事実であるらしい。

    この物語は、フィクションらしいか、圧倒的なリアリティがある。
    本当にこういう話だったのではないか!?と思ってしまうほど。

    小説として面白いのか?と問われると些か疑問だが、読後の達成感、カタルシスは間違いがない気がする。

  • 面白かった
    グリコ森永事件を下敷きとした物語。
    「これがグリコ森永事件の真相だった」!って言ってもよさそうな感じ(笑)
    後半の真相が明らかになるところはぐっと引き込まれてしまい、電車を乗り過ごしてしまった(笑)
    そして、登場人物たちの想いに胸が熱くなりました。

    ストーリとしては
    京都でテーラーを営む曽根俊也は、自宅で古いカセットテープを見つけます。それを再生すると、日本中を震撼させた食品会社脅迫事件のギンガ・萬堂事件に使われた男児の声。
    その声は、自分の声!
    って、子供の頃の声が自分の声ってわかる?(笑)

    自分や家族がこの事件にかかわっていたのか?
    と亡父の友人の堀田と事件を追い始めます。

    一方、大日新聞記者の阿久津英士は、未解決事件特集の企画のメンバに選ばれ、この未解決事件を追い始めます。

    曽根と阿久津はそれぞれ細い糸を手繰りながら、過去の関係者を追っていきます。
    って、30年前のことそんなに覚えているものかしら...
    徐々に明らかになる関係者とその人物像。
    当然、きつね目の男も登場

    そして、明らかになる真相
    という展開です。

    そして本書のテーマは、事件に巻き込まれた子供、家族の物語。取材する側の阿久津の想いいも心打たれます。
    ここは、実際に読んでもらったほうが良いです。
    辛い流れですが、そこに籠められた作者の想いが伝わってきます。

    お勧めです!

    これは映画も見てみたい。

  • 「罪の声」塩田武士 著

    0.本書からの抜粋
    「社会に構造的欠陥がある場合、不幸を軽減するために、1人ひとりが考えなければならない。
    そのためには総括が必要で、総括には、言葉が必要だから。」

    「不幸や苦しみから目を逸らさず、なぜの思いで割りつづけること。素数になるまで割り続けること。
    素数にこそ、事件の本質がある。」

    1.購読動機
    映画の公開はありますが、それよりも、未解決事件を記者が追ったノンフィクション「殺人犯はそこにいる」の影響が大きいです。
    時効は、法律上の決め事です。しかし、未解決事件の関係者、とくに被害者の方には、時効の概念はないことでしょう。

    2.グリコ森永事件と私の思い出
    当時、テレビよりも新聞の記憶が強いです。
    また、子供でしたから、友達同士で、挑戦状ごっこの遊びなどもしていました。
    今思えば、やはり、子供でした。

    3.「罪の声」
    グリコ森永事件を時効後に追う記者。
    そして、子供の頃に録音された内容が事件に利用された男性。
    事件を解明する側と、事件と家族の真相を知りたい側がすこしずつ、少しずつ輪郭を埋めていきます。

    4.罪の声。読みながら、、、
    本。物語は、これから中盤に入ります。
    緊張感がページから溢れています。

    新聞では報じられなかった、いえ、わたしの記憶にはなかった事件の凄惨さは、、、表現しづらいです。
    さらに、事件の過程で命をなくしてしまった未成年の存在には、身をつまされる思いです。

    罪の声。
    また、ひとつ語り継がれる物語が生まれたと言えるのではないでしょうか?



  • ズッシリと心に来る、重々しいストーリー。黒革のノートと曽根俊也の子供時代の声が録音されたカセットテープの謎。記者の阿久津英士と素人の曽根俊也のそれぞれが進めていた取材から徐々に真実が明らかになっていき、終盤に二人が出会う…

    未解決事件、時効、カセットテープの声の子供たちの歩んだそれぞれの人生、犯人の身勝手さ…様々な設定が絶妙で、引き込まれる。映画のカバーが付いていた為、小栗旬✕星野源をイメージして読んでしまっていたがピッタリと思った。(映画未鑑賞) 登場人物が生き生きしていて、描写もキレイでした。

  •  グリコ・森永事件、ああ、覚えてる覚えてる。あの江崎グリコの社長が誘拐されたという事件。誘拐された社長の映像。キツネ目の男。「商品に青酸カリ入れた」という犯人からの恐喝。
    お菓子にビニールのラミネートが施されるようになったのが、あの事件後という記憶はないが。そして、何だか腑に落ちない感じで、グリコと犯人グループは和解?したような収束をしたことも。
     この小説はグリコ森永事件をモデルとしており、どこまでが事実でどこからがフィクションなのか分からないのだが、この小説の通りだとすると、何だ犯人の動機はそんなことだったのか、犯人グループは大きな組織で、仲間割れの結果、事件はあのような顛末となったのか、本当の被害者は犯人の親族だったのかと虚しくなった。
     元々の犯行の筋書きを作った男は、父親が左翼過激派グループの闘争に巻き込まれて死亡し、勤務していたギンガ(グリコのモデル)から冷たい対応をされたことからギンガには恨みを持っていた。しかし、それが直接の動機だったのではなく、自らも左翼過激派活動をしていた彼は、株の仕手戦で一旗揚げようという犯罪の誘いに久しぶりに熱くなっただけ。その株の仕手戦で標的にしたのが、かねてから恨みを抱いていたギンガだった。あくまで、株で儲けようとしていただけなのに、犯人グループの中に、ヤクザの組長がいたため、身代金だの派手な展開となった。
     左翼過激派とか、その頃はもう、残党が残っていたぐらいだと思うが、そんな背景といい、「報道規制」により、警察の動きを犯人に知らせないことで事件解決をコントロールしていたことといい(今ならSNSがあるので、警察とジャーナリズムだけでコントロールするのは難しい)、昭和らしいなと思った。
     「ギン萬事件(グリコ森永事件)を特集するからメンバーに入れ」と突然取材班に加えられた文化部の三十代の記者が、殆どなにもネタのないところから、大阪、イギリス、京都、名古屋と足を運び、足がかりとなる人に会って地道にインタビューし、パズルのピースを合わせるように遂には事件の全貌に迫った仕事は天晴であった。決して興味本位だけではなく、本当の被害者の未来を思って取材する姿勢にも心を打たれた。

  • グリコ・森永事件を題材とした社会派ミステリーでありヒューマン小説

    どこまでがフィクションでどこからがノンフィクションなのか分からなくなる程のリアリティが、苦しいくらい迫って来た。
    実在の事件当時、私も幼くて殆ど事件の内容は知らなかったものの「キツネ目の男」だけは、はっきりと記憶に残っている程だ。

    500頁を優に超える長編ながら、終始作者の熱のこもった丁寧な筆致が続く。それに圧倒される反面、中盤までの展開の乏しさで何度も挫折しそうになった。私にとっては忍耐力の問われる作品だったが、世間を震撼させた事件がいかに異様で難解だったかを、読み手に伝える過程として必要不可欠な構成だったのだと思う。

    『罪の声』
    物語のきっかけは事件に使用された男児の声。
    実在の未解決事件にも、少女や男児の声が使用されており、勿論実際にそこに対する捜査もあったのだろう。今から約40年も前でAIで作った声など無い時代に、子供の声を用いるなど異例の事件だったことは間違いない。それを物語の題材とする着眼点も斬新で鋭い。

    ネタバレになるので詳細は避けるが「真実」を知ることが、時には自分のそれまでの人生の模様を一変させることもあるのだと知った。それでも、私も知らずに生きて行くより、真実を知る道を選びたいと思う。

    また、たとえ事件の当事者が亡くなっていても、遺された関係者、被害者や遺族にとっては、事件の及ぼした影響が人生の一部となり、時効が過ぎても決して終わることが無いのだと改めて気付かされた。この事はグリコ・森永事件に限らず、日夜報道される事件について同様のことが言えるだろう。
    報道される局面や見せ方に捉われず「真実」を中立で考えられる人でありたいと思った。

    非常に読み応えのある作品だった。
    映画も出ている様なので是非そちらも観てみたい。

  • 2021/05/10読了
    #このミス作品69冊目

    ある日実家の押し入れから
    未解決事件の犯行声明テープが。
    しかもその声は幼少時の自分の声だ。
    グリコ森永事件をモチーフとした
    大胆なストーリーで面白い。

  • 映画を観た後、やはり原作も読みたいと思い手に取った。
    昭和の未解決事件、その脅迫に使われた男児の声が自分だった…。
    仕事を持ち家庭を持ち、ささやかながら幸せに暮らしてきたのに、今まで築いて来たものが根底から揺るがされる心境は如何ばかりか。脅迫に使ったテープを見つけて愕然とする、京都でテーラーを営む曽根。文化部ながら、事件の取材に関わることとなった新聞記者の阿久津。同い年の2人が、様々な思いを抱えながらこの「ギン萬事件」を追い始める。
    映画を観たばかりとはいえ、小説でもハラハラしながら夢中でページを捲った。ある程度ストーリーが頭に入っているからこそ、この異様な事件の怖さがよりリアルに迫ってくる。物語のうねりにのまれ、圧倒されっぱなしだった。
    曽根サイド、阿久津サイド、それぞれが事件の関係者に当たり話を聞き、少しずつ明らかになっていく真相。謎解きの過程は正に手に汗握る展開だが、知れば知るほど堪らなくなる。こんなに酷いことがあっていいのかと、怒りが湧いてくる。
    理不尽だし、虚しいし、悲しくやるせない。それでも……改めて、実際に起こった事件を自分なりに見直してみたいと思えた。なかなかうまく消化しきれない部分もあるけど、時間をかけてもゆっくり噛み砕いて、ちゃんと理解したいと思う。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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