それでもデミアンは一人なのか? Still Does Demian Have Only One Brain? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065145371

作品紹介・あらすじ

つねにベストは更新される。
最新WWシリーズ始動!

カタナを帯びた金髪碧眼の戦士、デミアン。
記録上は存在しない特殊兵器。

 楽器職人としてドイツに暮らすグアトの元に金髪で碧眼、長身の男が訪れた。日本の古いカタナを背負い、デミアンと名乗る彼は、グアトに「ロイディ」というロボットを探していると語った。
 彼は軍事用に開発された特殊ウォーカロンで、プロジェクトが頓挫した際、廃棄を免れて逃走。ドイツ情報局によって追われる存在だった。知性を持った兵器・デミアンは、何を求めるのか?

感想・レビュー・書評

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  • 楽器職人としてドイツに暮らすグアトの下に金髪で碧眼、長身の男が訪れた。日本の古いカタナを背負い、デミアンと名乗る彼は、グアトに「ロイディ」というロボットを捜していると語った。
    彼は軍事用に開発された特殊ウォーカロンで、プロジェクトが頓挫した際、廃棄を免れて逃走。ドイツ情報局によって追われる存在だった。知性を持った兵器・デミアンは、何を求めるのか?
    「講談社BOOK倶楽部」内容紹介より

    トランスファの捉え方が面白かった.先生の思考を読ませてもらって、そうか~そういう風にとらえると分かりやすいと納得.今までイマイチとらえきれてなかったけど、この巻でなるほど、と思えた.

    このシリーズに限らないのだけれど、読んでいると自分の思考がニュートラルの方向に行っているような感じがする.まぁ、気がする、だけで、実際はどうか分からないし、元々人間の思考なんて、人それぞれ偏っているのだと思うのだけれど.他人から見たらどうかわからないけれど、自分の中でニュートラルの方向へ動く感じがする.

  • 新しいシリーズである『WWシリーズ』の一作目。
    はたして新シリーズにする必要あったのか?っていうくらい、おもいっきり『Wシリーズ』の続きだ(笑)。そのまま『Wシリーズ』の11作目でも良かったんじゃないのかなぁ。
    でも、あの二人のやりとりがまた楽しめるかと思うともう期待しかない。

    本人達のセキュリティの関係でハギリ先生もウグイもキガタ・サリノも名前を変えているが、行動や性格はそのまま。たぶん『Wシリーズ』の最終巻『人間のように泣いたのか?』から1年~数年しか経っていないという設定だ。

    顳顬に指をあてての通信とか、壁に寄りかかって腕を組んで会話する状況とかもう『Wシリーズ』好きにはたまらない。『Wシリーズ』を読んでない人には「こいつ何一人で盛り上がってんだ」って思われているだろうが・・・(というか「顳顬」って何?ってなっているだろうけどw)。

    ただ、この『WWシリーズ』1作目は『Wシリーズ』はもちろんのこと『百年シリーズ』を読んでいた方がより楽しめると思う。特に今回は『百年シリーズ』の登場人物がかなりのキーワードになっている。僕は『百年シリーズ』を読んでいないので、ちょっとその辺が分かりにくかった。でも、当然、本シリーズでも真賀田四季博士がキーパーソンであることは変わっていない。

    今回も「人間とは何か?」というのが根底に流れるテーマだ。
    ウォーカロンやロボット、人工知能などそれぞれが進化をしていき、人間との違いがどんどん無くなってくる。
    そして人間も老化や病気で死ぬことはなくなり、外見も自由に変えられる。
    人が死ななくなる代わりに子供も生まれない。そして人間とほぼ変わらないウォーカロンが人間の代わりをするような時代。
    この時代は、ある意味においては究極のディストピアとも言えるし、新しい人類の形とも言えるかもしれない。

    本書を読んでいて改めて思ったのだが、本書では結婚している(ただ一緒に生活しているだけかもしれないが・・・)カップルが数組登場する。
    もし人間が死ななくなったら『結婚』という制度はどこまで存続できるのだろう?

    現在、人は結婚してもお互いが夫婦として生きている期間は最高でも80年くらいだ(20歳で結婚して100歳までお互いに生きたとしたら)。しかし、本書のような時代になったら、夫婦はお互いに100年でも200年でも生き続けることができる。
    お互い、外見は若いままでいられるし(しかも外見に飽きたら違う外見に変えることも可能)、病気や介護の心配もしなくてもいい、当然、老人同士でよぼよぼの夫婦にもならない。

    このような時代で、子育てもせず、お互い仕事をして経済的にも独立できたとしたら、夫婦という単位で生活する必要や意味はあるのか、そして配偶者を永遠に愛し続けることが本当に可能なのだろうか。
    結婚するときは「死が二人を分かつまで」と誓うが、そもそも「死」が訪れることがないとしたらどうなのだろう・・・。

    「だからこそ『結婚』しなければ永遠に孤独じゃないか」という言う意見もあるだろうし、「こんな相手と子供も作らず200年も300年も一緒にいられる訳ないじゃない。50年くらいまでならなんとか我慢できるだろうけどさ」なんて意見も普通に聞こえてきそうだ(笑)。
    今は『卒婚』なんて言葉も流行ってきているので『結婚』のあり方も時代が変わるにつれ、変わっていくのだろう。

    こう考えると進化した人間の未来の生活というものは、かなり今とは変わった生活をすることになるのだろうな。それこそ、セックスが無くなり、全ての子供が人工授精で産まれるというディストピア社会を描いた村田沙耶香の『消滅世界』に登場する『夫婦』像がそのまま実現するのかもしれない。

    いずれにしても僕が死ぬまではこの本書に描かれる社会は実現しないだろうから、そこまで心配する必要はない。しかし、そういった未来を予想することは、こういう本を読まなきゃ絶対に思い浮かべないことだし、こういうことを考えることが今の自分の精神を活性化させることでもあるので、そこは読書人としては願ったり叶ったりだ。

    という訳で、そういう話は油紙でグルグル巻きにして屋根裏部屋の片隅にでも置いておいて、本書はロジとグアトとの微笑ましいやりとりをニヤニヤしながら読むというのが正しい愉しみ方だ(←なんだかんだ言って結局、恋愛小説好き)。

    本書で一番やられたシーンはロジとグアトのこのやりとり(※以下ネタバレ有り)。

      グアト『人間、どうなるかわからない。うん、たとえば、私が明日にも死んでしまうかもしれない。その場合、君はどうする?考えている?』
      ロジ『そんなことを考えていたら、生きていけません。それ以上変な話をしたら・・・・・・』
      グアト『どうする。もう見切りをつける?』
      ロジ『いえ、泣きます』ロジは無表情のまま言った。

    あの彼女がこんなこと言うなんてねぇ。もう、先生。この幸せ者!

  • どこまでが人間なのか、人間らしいとはなんなのか。どこまでがこの世で、どこからがあの世なのか。色々考えさせられるシリーズ。
    デミアンはロイディとミチルの関係と比べるとメカニックな感じ。

  • Wシリーズの終わりに、また皆さんに会える日が来るといいな(*´ー`*)と思ってはいたけれど、早い再会にビックリ!(;゜∇゜)いや皆さん世を忍ぶ仮の姿だから、それを言っちゃいけないのか(^^;)どんどんマガタ博士の世界になっていって、恐ろしいけれど面白い♪

  • 人工知能とそれを入れておくボディの話だった。現代の技術では、脳と身体は別々にできないけど、それが可能になったら、知性はどうなっていくのか、という考え方が面白かった。まぁ、もちろん正解はない問題なわけだけど。あと、最後の最後で話がガラッと変わって、「え、そうなの!」っていう驚きがあった。結構、複雑な話だった。最後あたりのロジとセリンの会話は、面白かった。

  • WWシリーズ一作目。とは言え、Wシリーズの続編で、百年シリーズも押さえておかないといけない感じ。ハギリがグアド、ウグイがロジ、サリノがセリンに名前を変えて再登場。相変わらずふんわりとした感じに書かれる森先生。毎回誰かの解説とか考察が読みたくなる。というか、読まないと理解出来ない。
    人間とウォーカロン、更にトランスファ、そして人の脳をウォーカロン?ロボット?に搭載してコントロールするとか、だいぶ難しい感じになってきた。
    タイトルの意味は、デミアンの中にヘルゲン・ミュラが入っているから「それでもデミアンは一人なのか?」なのだろう。中々面白いタイトル。

  • 新シリーズと思いきや続きだった。人工知能じゃなくて人の脳が入ってるとか入ってないとかますます理解が及ばない展開になってきたな。百年シリーズを読み返そうと思いつつまだだったが、ますます読まなくては!

  • SF。WWシリーズ1作目。
    待望の新シリーズ。ハッキリとWシリーズの続きっぽい。
    舞台はドイツ。
    主人公は楽器職人・グアトと技師・ロジの二人。
    内容は哲学的。
    真面目に考えながら読むと頭が痛くなったが、時折挟まれるアクションシーンと、微妙にユーモアのあるグアトとロジの会話のおかげで、スイスイ読めた。
    『女王の百年密室』で印象的だったフレーズ、「目にすれば失い、口にすれば果てる」の使い方には笑いました。
    終盤のインパクトも大きく、次作が待ちきれない。

  • 久しぶりの森博嗣さんでした。
    期待を裏切らない、衝撃が全編を通して私に降りかかりました。
    シリーズワクワクが止まりません。

  • Wシリーズが含みと余韻たっぷりで、この先は読者の想像に委ねるのだろうな……と思いながらも、ロスに陥りたくなくて即WWシリーズへ。
    そしたら、名前を変えてみんながいる。しかも「妻のロジです」とかさらっと紹介してるし。
    人間のキャラに温かみが増して人間らしく描かれていくのと並行して、ウォーカロンやトランスファ、人工知能についても深掘りされていく予感。
    百年シリーズ、Wシリーズ、WWシリーズと本当に読み応えのある物語です。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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