ニムロッド

著者 :
  • 講談社
3.14
  • (35)
  • (110)
  • (207)
  • (73)
  • (22)
本棚登録 : 1634
感想 : 225
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065143476

作品紹介・あらすじ

第160回芥川賞候補作。

それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。
あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。
新時代の仮想通貨小説。

仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。
中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。
小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。……
やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。 ……

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ITに強い人なら解るのかな。。
    仮想通貨を巡る文学作品。

    ITに弱い私には難しかった。。
    仮想通貨という存在は知ってるけど、イマイチ仕組みがピンとこないので分かりにくい話でした。
    タイトルになっている『ニムロッド』の回収は上手いなと思ったけれど。。

    文体は淡々としていて好みでした。
    高橋一生さん主演の舞台『2020』が面白かった。
    それを書き下ろしたのが上田氏でした。
    舞台も上手く上田作品の世界観を表現しているのだなと納得。
    舞台を見たからなのか、主人公は高橋一生さんのイメージで読んでました。

  • コンピュータ業界の人で有れば、想像できる世界だが、そうでないと難しそう。
    仮想通貨について、少しは勉強した方が良いのかしらと思ってきました。

  • 仮想通貨や大手IT会社が牛耳る今の世界。
    これからの人間の在り方。
    とても哲学的な本でした。

  • IT版村上春樹、新世紀エヴァンゲリオン、satoshi satoshi satoshi...

    なるほど、芥川賞。この説明しきらないような感じ。時間を置いて再読したくなる。

    ビットコインという社会現象が文学として確実に切り取られて、そして賞を取ったということに時代の区切りを感じた。

    夢への挫折とか、遺伝子検査での発覚したDNA異常とか、究極的には1人で抱えていくしかない苦しみは途方もなく辛い。
    だからこそ、彼らの目には、この主人公が魅力的に写るんだろうな。

    ニムロッドと田久保紀子が、互いの影を瞬時に理解する場面は一生忘れられない。

  • 仮想通貨を扱う1人だけの新設の部署に
    在籍することになった主人公中本とその彼女の
    田久保、小説家志望だった同僚の荷室(ニムロッド)
    のやりとりで物語が進む。

    芥川賞って粗削りながらもすごい個性がある
    作品というイメージが強かったのですが
    本作品はとてもきれいにまとまっている反面
    惹き付ける力がちょっと弱いかなぁ。。

  • 芥川賞受賞作品ということで読んでみました。他の人もコメントで書いてるけど、すっごい村上春樹感があります。ただ、主人公のステイタスは村上春樹っぽいんだけど(30代後半で独身だけど、恋人はいて、結婚願望はあんまりなくて、社会に対して斜に構えているみたいな感じね)、主人公が年齢に対して子供っぽすぎるんだよね。文体なのかな?このあたりは大人の男の渋さを感じさせる村上春樹の描く男性キャラクターとは全然違うね。

    ビットコインのことは知識としてよく知ってたので、この小説を楽しめました。個人的には「駄目な飛行機」シリーズ好き。

  • 私にとってはわかりにくい小説でした…
    何度も読めば色々感じるものがあるのかな。
    読む人によって捉え方が違いそうな小説です。
    暗号資産などやってる人やwebに詳しい方はすんなり入ってくるかと思いました。最近の話題のものだなと。もう一回読み直そうかなと思うものでした。
    駄目な飛行機コレクションはよかったです。まぁあぁいうものがあるから今があると思います。実際動かして乗ってみないとわからないですからね!!

  • サーバールームの描写、失敗作飛行機コレクション、いずれも自分にとっては身近なものだった。個人的な事情だが、近年、自分が読書を始めるようになったきっかけとなった作品のうちの一つで、その当時は面白く読んだが、今振り返ってみるとそれより面白い作品はいくつもあり…また、主人公をとりまく世界、舞台が、あまり変わらないところも少々物足りなかったかもしれない…

  • Amazonレビューなどでも辛口が多くてびっくり。なんの見返りも求めない行為、積み上げる行い、感情のない涙…このことが最後の三人のスクリーン越しの対面で結び付き、象徴化されたところがわたしは印象的で面白いと思った。ああそうか、これが小説か…!と思った。社会に対する大まかに言って「善」のメッセージを、自分の経験、感情論を積み重ねることで映し出す。いや、悪だとしてもよいのだけど。フィクションを通して表現するという努力にはこころ打たれます。こういうのを素人がやると、たまらなく見てはいられないものが出来てしまうので不思議です。
    こころにあらたな情景が加わることで、世の中の見方がちょっとだけ変わった。作家っていうのは、そんなふうに多くの人に会話とは違う形でメッセージを送るんだと思った。
    てもたしかに、モチーフが漫画家だと「作家志望の人」とか「編集業」とかに偏るとき、またかいとは思ったりもする。でも上田さんは兼業作家なのでその辺問題ないと思うし、今作も仮想通貨の話など面白かった。これからも期待しています。(全然しらないけど…)

  • 面白かった。
    難しいというか、よく分からない部分が沢山あるのに、なぜだか心地よく読める。
    作者の文体からか、登場人物の温度の低い感じ、何かを一枚隔て見ているような客観的で冷静な語り、そんな感じが好きだなと思った。
    仮想通貨を掘り進める主人公、大手有名会社に勤める恋人。大きな社会という中で、世界を支えたり動かしたりしている人。世界に触れているのにどこか無機質で他人事。でも。私たちは、大きな世界の中で効率的に、利益だけを追求して…そのために生きているんじゃない。誰かに価値を見出されて、それを証明してもらうために生きてるわけじゃない。でも、世界に影響を及ぼしたいとか、何かを残したいとか、生きてる意味のようなものを、確かに感じたいと思ってしまう。それが人間なのかもしれない。だから人はこうやって表現したり、作り出したり、働いたりするのかな。
    その力が尽きてしまったら、人間としての営みにとらわれる必要もないのかもね。そしてもっと自由を求めるのかもしれない。
    失敗作と呼ばれるがらくたたちは、自由を求めた証。私にとっての、誰に見せるでもなく書いてる日記や、披露する場のない演奏活動も、独りよがりだけどそこに確かに存在する自由なのかもしれない。

全225件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上田岳弘の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×