- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065143056
作品紹介・あらすじ
魂呼び桜には恋と呪いが宿る。
祓い師・仙龍の死期が迫るなか、彼を想う春菜が下した決断とは――。
☆☆☆
土地を支えていたのはミイラ化した人柱だった。
漆喰の繭に包まれた坊主の遺骸が発掘されると同時に、近辺では老婆の死霊が住民を憑き殺す事件が多発。
曳き屋・仙龍と調査に乗り出した広告代理店勤務の春菜が見たものは、自身を蝕む老婆の呪いと、仙龍の残り少ない命を示す黒き鎖だった――!
ひそかに想いを寄せる仙龍のため、春菜は自らのサニワと向き合うことを決意する。
感想・レビュー・書評
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シリーズ第五弾。
今作は至るところに 散りばめられた“想い”なるものにグッとさせられた。
人が人を想う気持ちはどうしてこうも心を掻き立てるのだろう。
ただでさえ満開の桜のその美には心奪われるのに…この曳きの儀式の瞬間は桜の吐息を感じると共に想いが宿る花びら一枚にまで最高に魅せられ心ざわつかされずにはいられなかった。
仙龍に対しての春菜の想いも今までで一番好感を持てた。
そして何よりも魂呼び桜、人柱…その土地に根付く伝承を見届ける土地の人の想い、そしてそれを大切に保存する想い、良かったなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんと今回パグ男でてきません
なんでも曳ける曳家の人たちはすごいし、有るべきところへ戻してやるという怪異に寄り添うのは読み物として面白い
桜が咲くシーンは頭に思い浮かぶような描写がよいが、なにも悪い事をしていないのに祟られ亡くなった人が結構いるのに桜の奇跡はちがうよとおもった
そして楽しみにしている今回の昭和の女子キーワードは
「バスローブ ワイン」でした
描写がふるいんじゃ、一周回ってそれが楽しい -
シリーズ5作目。ヒロインの気の強さの加減もいい感じになってきた。回を追うごとに少しずつ成長が見えるからなのか……1巻の鬱陶しいほどの負けん気の強さは、あえて過剰に書いていたのかと思えるくらいで、その恋も応援したくなる。今回は話もよかったが、ヒロインが仙龍のテリトリーに入り始めたという点が興味深く、章タイトルもいつもと違う感じで目をひかれた。
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土地を支えていたのはミイラ化した人柱だった。漆喰の繭に包まれた坊主の遺骸が発掘されると同時に、近辺では老婆の死霊が住民を憑き殺す事件が多発。曳き屋・仙龍と調査に乗り出した広告代理店勤務の春菜が見たものは、自身を蝕む老婆の呪いと、仙龍の残り少ない命を示す黒き鎖だった――! ひそかに想いを寄せる仙龍のため、春菜は自らのサニワと向き合うことを決意する。
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発掘された人柱と、それに関わる老婆の死霊。今回もまた因縁の深そうな怪異がたっぷりです。魂呼び桜にまつわる伝説はロマンチックなものともいえるけれど、それを恋慕の情ととるか執念ととるかでかなり印象が違ってきます。終盤まではとにかく不気味で怖い。迫りくる仙龍の寿命に対するリミットにもぞくぞくさせられます。ああして目に見えてしまうのも、怖いし嫌だよなあ。
自らのサニワとしての力と向き合い、仙龍の因縁を断ち切ろうとする春菜の強さと健気さが、読者に安心感を与えてくれる印象です。ひどくつらい立場のはずなのだけれど、彼女の頑張りはとても心強くて。ぜひともあんな因縁は断ち切ってもらいたいものです。
そしてラストのシーンの美しさが圧巻。情景を思い浮かべるだけで鳥肌が立ちそうな心地でした。 -
好きなシリーズの最新作。
因縁がらみの建物を移す曳き家の仙龍と春奈が活躍する。
「主人公が嫌い」って意見もあるが、私には理解できない。フツウにまっすぐで好感のもてる主人公だと思うのだが考えすぎでは……?
読書なんて感じ方は人それぞれだし、キャラの好みも千差万別でいいとは思うが、私は春奈に好感を持っている。
今作では重役の浮気に本気で怒る所や自然におばあちゃんの手を握る所(+「わんこ」発言)、過去に遡れば一作目の赤子に関係する哀しい真相に感情を乱すところなど、勝ち気で強気、仕事以外では不器用でやや融通が利かないが、そんな青臭いところも含めて応援したくなる。
仙龍との微妙な距離感や恋愛面でのもどかしすぎる進展ぶり、小林教授やコーイチ、和尚など魅力的な周囲の人物との掛け合いも楽しい。
いちいち登場人物にイライラしながら読むのも不毛だし(どこで切るかは自由)、キャラクターに愛着持ってシリーズを追っかける方がストレスフリーでずっと楽しい。
今回は地滑りで発見された人柱の遺骨と樹齢八百年の枝垂れ桜にまつわる悲恋。
終盤であきらかになる真相はあっさりめだが、それまでの過程が面白い。ホラー描写もさほどグロくはないが、そこに絡む人間関係がテンポよく描写される。
一人称「僕」のおっとり穏やかな小林教授やわんこ属性のムードメーカー・コーイチなど、脇を固めるキャラの朗らかさが恐怖を中和してくれるので、キャラクター小説としても安定の読み応え。仙龍は相変わらず寡黙男前カッコイイ。
特にラストの桜が咲く場面は映像的に美しく胸に迫る。
祟られた人たちは災難だったけど、数百年地すべりから集落を守り続けてきた実績を加味すれば……でも偶然掘り出しただけで祟られるのは気の毒だなあ……。