人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065135945

作品紹介・あらすじ

生殖に関する新しい医療技術。キョートで行われる国際会議の席上、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。実用化されれば、多くの利権がWHITEにもたらされる。実行委員であるハギリは、発表を阻止するため、武力介入が行われるという情報を得るのだが。すべての生命への慈愛に満ちた予言。知性が導く受容の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 生殖に関する新しい医療技術。キョートで行われる国際会議の席上、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。実用化されれば、多くの利権がWHITEにもたらされる。実行委員であるハギリは、発表を阻止するため、武力介入が行われるという情報を得るのだが。すべての生命への慈愛に満ちた予言。知性が導く受容の物語。
    「講談社BOOK倶楽部」より

    ”人間らしさ”について考えることになった回.突拍子もないことをするのが人間、感情的に動くのが人間、恋をするのも人間.これ以外にも人間らしさを表すものがあるだろう.
    魂は輪廻転生してまた蘇るとするならば、この体は借り物ということになる.借り物の体はロボットではダメなのか?有機物である必要がある?この小説で描かれたような世界がくるならば、”人間”の定義て何だろうなと思う.

    p.227
    彼女は、急に僕に近づき、抱きついてきた。もの凄く強く、両手で拘束された。

    両手で拘束された、て.表現!甘くもなんともなさすぎる.こういうところがハギリ博士らしいと感じる.

  • このWシリーズの最終巻は、これでもかってくらい完全にハギリ博士とウグイとのラブロマンスに徹底してくれました(笑)。読者の好みを分かってるよね~。ウグイが可愛すぎて「もうダメ!」って感じです。

    このWシリーズはウォーカロンとか人工知能とか不老不死の人工身体とか、生殖ができなくなった人間達とか、いろいろなテーマを混ぜ合わせてくれて、我々に人間の倫理観や永遠の命を得たら人間どうなるんだとか、子孫繁栄とはなんぞやとかそういったことを考えさせてくれました。
    でも、終わってみると『恋』を知らない不器用な中年の学者先生が(実際は100歳超えてるんだろうけど)と仕事に命を懸けていた若きエリート女性情報員(ウグイは20代後半くらいなのかな?)が愛に目覚めるというラブストーリーだったという、本当に楽しませてもらったシリーズでした。

    今の時代、猫も杓子も『愛』だの『恋』だの、『キス』だ『セックス』だと恋愛を我が物顔で知ったように話したり、書いたりするけど、この『人間のように泣いたのか?』ではそんな言葉は一言も使われることなく、本物の『愛』のストーリーを紡ぎ出してくれました。

    ハギリ先生が心情で「ウグイといるといくらでも話せる」、「ウグイに害を加えさせない為なら、僕はどんな悪事だってやってみせる」なんてことを独白する場面があるけど、「そりゃ、もう、あなた、ハギリ先生。それは先生がウグイを愛してるってことですよ」って読者のこっちがつっこみたくなるってもんです。

    「好き」っていう言葉は小説の最後の2ページにやっと初めて出てくるんだけど、もう、ハギリ博士から訳分からん症状説明を受けるカウンセリングの医師の気持ちがいやってほど分かるよね。
    「それは恋煩い!二人でよろしくやってくださいよ!もう!」ってね(笑)。
    二人の最大の見せ場が、ウグイがハギリ先生を抱きしめるところとか、二人が心を通わせて手をつなぐところって、「大正時代の小説か!」って、つっこみたくなります(笑)。

    まさに10冊に渡った『尊い』ラブストーリーを楽しませていただきました。ありがとうございました。

    実を言うと森博嗣先生の小説は「スカイ・クロラ」シリーズだけしか読んだことなかったので、『すべてがFになる』から読み直しますねっw

  • 愛の話じゃなですか。
    愛というか・・・恋??

    Wシリーズ最終作にして、森博嗣先生の視線が「人間」に回帰している。
    Wシリーズって、「こんな未来、すごいな。森先生の考える未来、すごい」って、
    その未来思考の広がりに、
    「おお」って感じだったのですが、
    最終話、いい意味で、
    「人間」にスポットが当たっています。

    今まで、ウォーカロンや、トランスファの世界で、
    戦いも、ウォーカロン間や、仮想現実上での戦いだったのが、
    今回、「こんなところが舞台になるだなんて!」って驚かされます。

    森博嗣、永遠のヒロインも出てくるし、
    なんといっても、あの二人の、今までのもやもやした関係に・・・。

    ただ月を見上げる。
    そんなことが、こんなにも美しいとは。

    やはりそれを美しいと「感じる」、本質があるのでしょう。
    人間がいるから、「美」があるのでしょう。

    私は、誰も登れない場所にある高山植物も、そこに「美しさ」はある、
    と思う人間ですが、
    森博嗣先生は、「美を感じる主体=人間がいなければ、美も存在しない」と考えているように感じられます。

    そうして今回、先生の描いた光景は美しかった。
    それは「月」ではなく、ある感情が伴ったからでしょう。

    人間は泣きます。
    それが人間だから。
    そして涙は、悲しい時のためだけにあるのじゃない。

    本作はかなりずっとバイオレンスシーンの続く1作ではありますが、
    美しい1作でもありました。

  • いつもの感じであっさりと終わったので、まるで完結という感じがしない。この後も別シリーズ出してくれたら嬉しい。

    • ダチョウ伯爵さん
      おっ、この巻がシリーズ最終ですか。

      しかし、完結感がないのは困りものですね。読むのが怖くなってきました(汗)
      おっ、この巻がシリーズ最終ですか。

      しかし、完結感がないのは困りものですね。読むのが怖くなってきました(汗)
      2018/10/31
    • mさん
      このあっさり感が森先生らしいとも感じますね。私は結構好きです。
      このあっさり感が森先生らしいとも感じますね。私は結構好きです。
      2018/11/05
  • 一言でいうとラブラブ。。。
    それだけで、もうこれで良いかって思ってしまった。

  • とうとう、Wシリーズ最終巻。
    今回はハギリ博士自身が危ない目にあった訳ですが、なるほど、客観的にデータだけ見ると、すごい人に見えるんだなあ…いや、博士の実態ももちろんすごい人なんですけどね。ちゃらんぽらんで、思いつきで行動するような人だったとしても。親愛関係の構築があと一歩なところがあったとしても。
    これからもまだまだ博士とウグイ、博士とデボラ見ていたかったので、最終巻なのは残念。
    でも、もしかしたら、森先生の本を読んでいたら、また出会えるのかも…?
    ちゃんと、履修、しますね。

  • 終わっちまった悲しみに
    Wシリーズの10作目
    完結

    ハギリとウグイのやりとりがとっても良いですね。
    1作目からすると考えられない展開です。

    もっと読みたかった。

  • Wシリーズのいつもの巻よりも、やや長い。主人公たちのhumanな感覚がAIに関わる事件を通じて呼び覚まされる・・というところ。

  • 最後にしてこの疾走感。
    あっという間の読了でした。

    人間らしさって言うのが、よくわかった気がします。

  • Wシリーズラストは全てにおいて良かったです。
    ハギリとウグイとの関係、ハラハラする敵との戦闘、知的な会話。
    マガタ博士との会話がすごく面白い。
    最後はふわっと幸せな感じで終わり、よかったなと思いました。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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