夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.64
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本棚登録 : 2084
感想 : 251
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065129708

作品紹介・あらすじ

同じアパートに暮らす先輩と交際を始めた“私”。だが初めて交わろうとした夜、衝撃が走る。彼の性器が全く入らないのだ。その後も「入らない」一方で、二人は精神的な結びつきを強め、夫婦に。いつか入るという切なる願いの行方は――。「普通」という呪いに苦しんだ女性の、いじらしいほど正直な愛と性の物語。

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【冒頭1ページ試し読み】
 いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。
 何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。医師は私に言うのだろうか。「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあることですよ」と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。

感想・レビュー・書評

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  • この本のレビューを書くということは、このタイトルのこの本を読んだんだ、というただならぬ証拠になってしまい、気恥ずかしさがないと言ったら嘘になる。
    この本のミソは、したいのに物理的に入らないから、ただのレスとは違うところ。
    勿論、レスの問題は深刻ではあるが、それ以上に、夫婦とは生の繋がりだけではなく、心の繋がりが大事ということを教えてくれる。

  • 本書紹介に、『夫婦の繋がりは肉体ばかりではなく精神的なものもある』みたいなことが書いてあったので、どれどれ…と読んでみたが。
    結局入ろうが入るまいが、入れられようが入れられまいが、ヤルことはヤッていますこのご夫婦、というような軽い感想が途中から出てしまい、内容は重いけれど私にはあまり響かなかった。エッセイに期待しています。

    • moboyokohamaさん
      ドラマで観ました。
      なんかsexはできないけど明るくいようねって話でしたよね。
      タイトルが衝撃的で良い、という作品かな。
      ドラマで観ました。
      なんかsexはできないけど明るくいようねって話でしたよね。
      タイトルが衝撃的で良い、という作品かな。
      2022/02/09
    • 借買無 乱読さん
      moboyokohamaさん
      コメント、ありがとうございます。
      期待したほどではなかった、というのが正直な感想になりました。
      moboyokohamaさん
      コメント、ありがとうございます。
      期待したほどではなかった、というのが正直な感想になりました。
      2022/02/09
  • こだま『夫のちんぽが入らない』講談社文庫。

    ネットなどで非常に話題になっており、かつ本屋の平台にも山積みになっていたので読んでみた。生来の天の邪鬼気質のためなのか、この作品に対しての評価は極めて否定的である。タイトル通り『夫のちんぽが入らない』夫婦の物語が妻或いは女性の視点で綴られるのだが、余りの酷い内容に唖然とした。まさかここまで酷いとは思わなかった……

    ここまで話題になったのはタイトルのインパクトで注目を浴び、何時もの如くエセ文化人らがその内容に言及し、美化したからなのだろうか。オーバーカバーを見ると、漫画家・おかざき真里(知らない)、社会学者・上野千鶴子、芸人の麒麟・川島明、女優・小池栄子、ミュージシャン・高城晶平(知らない)、漫画家・今日マチ子(知らない)、作家・燃え殻(知らない)、翻訳家・岸本佐知子(知らない)らが賛辞を贈っているようだ。

    バッシング覚悟で内容を簡単に述べるなら、肉体的に性の不一致である教師夫婦が互いに風俗やネットで互いに自己の性を満足させ、それを愛だ何だとほざいている自己満足的な何の役にも立たない私小説である。

    • いるかさん
      いつも いいね ありがとうございます。
      私もまさしくそう思いました。
      結局精神的な疾患も後でわかったり、とても残念でした。
      平積みにな...
      いつも いいね ありがとうございます。
      私もまさしくそう思いました。
      結局精神的な疾患も後でわかったり、とても残念でした。
      平積みになっていたので、買ってしまいましたが、本屋さんにも不信感を感じました。
      2020/04/18
    • ことぶきジローさん
      ドラ小瓶さん。好みはあるかと思いますが、自分には全く共感出来ない内容でありました。キャッチーなタイトルと話題だけ先行している感じ。
      ドラ小瓶さん。好みはあるかと思いますが、自分には全く共感出来ない内容でありました。キャッチーなタイトルと話題だけ先行している感じ。
      2021/09/14
  • タイトルがアレで書店で買うのが恥ずかしかったんだけど、こんな時の電子書籍!ありがとう、電子書籍。
    全体的に読んでて辛くなる。もっと自分を大事にして甘やかしてあげれば良いのに。そんなに自分を責めなくてもと思うけど、きっと真面目な人なんだろう。
    不安や不満を相手にぶちまければ楽になるかもしれないけど、実はそれって難しく、なかなかできないことである。この夫婦もきっと相手を思う気持ちと自分を保つ気持ちが複雑に絡み合った末にこんな関係になったのだろうと思う。

    あと、「農作業」と「お百姓」のワードチョイスに笑った。

  • エッセイを基にした私小説、てことはつまり、作者は「夫のちんぽが入らない」張本人であり、その事実に悩み続けた日々をさらけ出しているということになる。

    あとがきを読んで分かったことだが、「ちんちん」でも「ちんこ」でも「男性器」でもなく、「ちんぽ」とい表現を選んだのは、並々ならぬ決意を示しているらしい。「普通でなくてもいい」ことを伝えようとする小説なのだから思い切った表現にしたのだ。それでいて、「ぽ」という響きには魔の抜けた感じがあり、不思議な関係性である当事者夫婦にぴったりだと思ったのだ。ということらしい。
    とは言え、やはり慣れるのに少々時間を要する内容だった。

    とにかくあらゆることをさらけ出している。
    夫のちんぽが入らないために農作業のように手や口で処理をする性生活や学級崩壊のクラスを受け持ち教師としての存在意義を感じられない悪夢のような日々のこと。段々と精神を病み、出会い系の男たちとの体だけの付き合いに救われた経験を持っていること。自分とのセックスがままならないため頻繁に風俗に通う夫。そのことに全て気付いていてもなにも言えない、言う資格がないと思っていること。淡々と吐き出している。
    とてつもなくシリアスで気の重くなる話題の数々なんだけど、事あるごとに「ちんぽが入らない」という文字が出現するものだから、(もちろん糞真面目に、あらゆる悩み事の頂点に君臨する王様として登場するんだけど)どうしてもどんよりとした気分にはなりにくい。白状すると、何度も笑ってしまった。

    私は夫のちんぽが入るけど、だから万事オッケーてなわけではない。
    人間は誰しも人に(近しい人には特に)言えないような悩みがある。
    最近でこそ結婚するもしないも、女性が働き続けるも辞めるも、子どもを産むも産まないも、自由意志だと言う風潮が出てきたけれど、風潮が出てきたテーマのことですら、所変われば扱いも違う。無風のテーマであれば、なおさら「『普通』の呪縛」がきつい。

    心に残った箇所を抜粋。
    「もうセックスをしなくていい。ちんぽが入るか入らないか、こだわらなくていい。子供を産もうとしなくていい。誰とも比べなくていい。張り合わなくていい。自分の好きなように生きていい。私たちには私たちの夫婦のかたちがある」
    ここにいたるまで、実に二十年がかかっている。死をも考えるほどの絶望を経験し、それでも乗り越えたのは、心の繋がりを互いに尊重し合えた相手があればこそだ。

    「子を産み育てることはきっと素晴らしいことなのでしょう。経験した人たちが口を揃えて言うのだから、たぶんそうに違いありません。でも、私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから。それがわかっただけでも私は生きてきた意味があったと思うのです。そう言うことを面と向かって本当は言いたいんです。言いたかったんです。母にも。子育てを仕切りに勧めてくるあなたのような人にも」
    常識が、自分の半径数メートル圏内のものだと知らない人は、その「押し付け」によって周りの人たちを縛り、生きづらくさせる。特に我が子や優しい友人たちを。良かれと思って言っている場合はなおさら。

    作者は死ぬ間際にこの本を旦那や母に渡したいと言う。
    大事な人が、自らの「常識の押し付け」や「キャラクターの押し付け」により苦しんでいたと知った時のショックは計り知れないだろう。相手を生きづらくさせていることは、できれば取り返しがつくうちに知りたい。そして願わくば、相手を生きづらくさせない生き方がしたい。

  • ※感想書いてたら共感するとこ多すぎて私小説みたいになってきたから、シンプルに書き直したwww

    タイトルはコミカルだがすっごく真面目なお話。葛藤の繰り返しと心の整理。いや、最初は「ウケるー!w」って酒の肴にして笑い合える雰囲気だった。著者の秀逸なワードチョイスに声を出して笑った部分もあった。けどそれも大学生まで。
    大学を卒業し、小学校教諭になり、結婚をすると、笑い飛ばして見て見ぬふりできるものではない問題となる。
    読み進めていると"ちんぽ"が入らないことがすべてに繋がっている気がしてくる。仕事への自信、旦那との会話、親・親戚との関係性。すべてに影響を与え、すべてが暗転していく。もしくは元々なんとかやり過ごしてたことに正面からぶつからなくてはいけなくなる。"ちんぽ"さえ入ればドミノ倒しの逆のようにピタゴラスイッチ式にうまくいったんじゃないかって思えてくる。
    でもそんなタラレバ言っていても仕方ない。考え方、捉え方を変えながら、時間をかけながら、それでも傷つきながら、ゆっくりと自分の形を模索・構築していく。

    共感する部分が多く、著者が傷ついた部分とまったく同じ理由で傷ついたり、葛藤したり、苦しかったことを思い出す場面も多かった。仕事について、性について、自己肯定感について、親との関係性について。

    「夫のちんぽが入らない」という事象は、それだけじゃない。女として生まれたからには全てのことに結びついてしまう事象だと思う。著者の心が今、しっかり前を向いてることが、自分の事のように嬉しい。



    ◆内容(BOOK データベースより)
    同じアパートに暮らす先輩と交際を始めた“私”。だが初めて交わろうとした夜、衝撃が走る。彼の性器が全く入らないのだ。その後も「入らない」一方で、二人は精神的な結びつきを強め、夫婦に。いつか入るという切なる願いの行方は―。「普通」という呪いに苦しみ続けた女性の、いじらしいほど正直な愛と性の物語。

  • 衝撃的なタイトルと、内容は悲しみに満ちて、文体は軽妙でコミカル。私小説とは思えない内容でもシニカルな語り口が心地よい。
    20年以上愛する人と寄り添って生きておきながら、セックスでは「入らない」という問題をずっと抱え続けた夫婦の話、そしてそれを抱えて生きていくことへの温かい話だった。

    現代のいう恋愛結婚だなんて奇妙な風習だと思う。
    そもそも恋愛なんて生殖行動の求愛でしかないのに、なぜ崇拝されるようになってしまったんだろう。
    「心」が満たされればいい、なんていう言葉もあるけれど、「心」なんていう不確かなものが満たされることなんてあり得るのだろうか、と不信感を抱いてしまう。
    足りないものを数えて苦しむのならば、だったら初めから意志や想いなど必要ないではないだろうか、とすら考えてしまった。
    それでも、本書は、そんな苦悩さえもそっと寄り添ってくれるようにあけすけに、淡々と、語ってくれる。

    私小説なのだから、参考書や、ビジネス書みたいに「こうすればよい」なんて答えは提示しない。推理小説みたいに犯人はあなただ、で終えられない。
    それでも人生は続いていく。続けざるを得ない。生きることは無限回廊のようだが、著者は「不幸ではない」と言い切っている。それが心強い。

    本書にあるような「普通な」誰かは、きっと読んでも意味が解らず無駄だと思えるかもしれない。でも、きっと「普通であること」に憧れる人なら、きっとほっと息が付けるような作品かもしれない。

  • いつかは読みたいと思いながらも、タイトル故になかなか手を出せずにいた。

    「普通」じゃない事への罪悪感や、誰にも相談出来ない切実な悩みを抱えながら生きてきた事は、とてもとても苦しかったのだろう。
    沢山の苦悩の末、誰かに用意されたものではなく、強制されたものでもなく、自ら答えに辿り着き、それらをさらけ出せた事が羨ましくもある。
    それぞれの形があって、ありのままを受け入れ合って、そのままで生きていく。
    その姿が清々しく素敵だと思えた。

  • いろいろ賛否両論の本だけど、自分にはこの人の人物像が合わなかった。
    実際の話なので(どこまで盛ってるかは知らないけれど)、否定的な感想はしませんが、無理です。
    結局でかいから入らないのか、精神的なもので入らなかったのかさえよくわからないオチでした。
    本編よりも付録の後書きの方はもっと”気持ち悪く”、読んでいて不快感マックスでした。

  • 生きづらい、という言葉が多くの人に愛用されている。
    昔にくらべてどうか、と言われればよくわからないが、ネットのおかげでそういう声はちまたに届きやすくなり、またそれに共感するかしないかで人間性を判定されるような風潮も出来上がった。

    この著者、というか主人公も生きづらそうだ。でも、自分の在り方を認めろ、と言っているわけではない。そっとしておいてほしい、と言っている。それはささやかで正当な願いのように思える。

    甘えている、と感じる部分もある。結局自己愛だろ、と思う部分もある。でもそれは私も一緒だ。

    過去の自分を知っている人がいない町を目指して進学した主人公が得た(彼女なりの)自由と幸せが続くことを願う、そんな読後感であった。

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著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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