太平洋 その深層で起こっていること (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065128701

作品紹介・あらすじ

日本は世界1位の「超深海」大国!
→6000m以深の体積が最大

世界中で最も活発な海底火山山脈が連なり、深さ7000mを超える海溝の84%が集中する太平洋――。

海面からは見通せないその深部で何が起こっているのか?

調査航海・潜航歴40年の第一人者が謎解きに挑む!


人はなぜ、「深海」に魅かれるのか?

宇宙飛行士が550人を数える時代に、1万m超の海溝底に到達したのは3人だけ!

人類最後の秘境=深海底は、どんな世界で、何が起こっているのか?

ハワイ島沖・水深1000mにひそむ火山の正体とは?

古代天皇の名をもつ謎の海山群はなぜ生まれたのか?

地球最深部からマグマを噴き出すホットスポットが移動する!?

そして、マリアナ海溝の最下層に暮らす生物を襲う大異変とは?

「最大にして最深の海」で繰り広げられるおどろきの地球史!


【もくじ】

第1部 太平洋とはどのような海か
 第1章 「柔らかい」太平洋――広大な海を満たす水の話
 第2章 「堅い」太平洋――その海底はどうなっているのか

第2部 聳え立つ海底の山々
 第3章 ハワイ沖に潜む謎の海底火山
 第4章 威風堂々! 天皇海山群の謎
 第5章 島弧海底火山が噴火するとき――それは突然、火を噴く

第3部 超深海の科学――「地球最後のフロンティア」に挑む
 第6章超深海に挑んだ冒険者たち――1万メートル超の海底を目指して
 第7章 躍進する超深海の科学

感想・レビュー・書評

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  • 何一つ知識のないジャンルは、ブルーバックスや岩波ジュニア新書で知ることが多い。
    なんといっても分かりやすいので重宝している。

    海ものは好きだけど、詳しいことは全然知らない世界。
    今回もこの本で楽しく入門の扉を叩いてきた。

    深海の研究は難しく、特に世界でも指折りの最深の場所、日本海溝周辺の研究はようやくはじまったと言えるらしい。
    圧力との戦い、遠き場所での孤立無援のチャレンジャーという点でも、同じ時期に進められてきた、宇宙の研究と似ているとのこと。

    読んでいて面白かったのは、空気中と水中では、音と光のあり方が反対だという点。
    水中では、光はすぐに失われてしまうが、音は空気中より遥かに速く、遠くまで伝えることのできる存在だそう。

    太平洋の深い海中に、日本の古代天皇たちの名が連なっていることは今回初めて知った。
    その命名に関わった米国人の博士の意図が今もよくわかっていないこと、その人物が本書では他に二箇所にわたって名を出すほど、海の研究で多彩な功績を残した人物であることなど、はじめて知りました。
    潜水の技術の発展、海の深さをどう測るか、測量は古来即ち軍事利用されうるジャンルなのでそこが太平洋戦争を経てどう動いてきたか、を読み取るのは面白かった。
    マイクロプラスチックがここまで深海にも影響を及ぼしていること、これからの環境問題について考える際の大きな事実となりそう。

  • 最初は内容難しいなぁと少しモチベーションが低下していたが、読み進めるうちに太平洋の環境への影響力の大きさを痛感した。また太平洋、特に深海の神秘さが伝わってきてどんどん読み進めた。

    第一部
    「太平洋とはどのような海か」
    熱水プルームの存在が、地球に豊富な金属資源をもたらしてくれていると分かり、海底火山の重要性を再認識した。
    地球温暖化により深海の温度もここ100年で1度以上上昇した。さらに二酸化炭素の増加が海水の酸性化に繋がったり、難溶性プラスチックが海底に大量に蓄積していたりすることを知り、早急に環境問題に対処する必要があると感じた。

    第二部
    「聳え立つ海底の山々」
    海底火山の観測の話を通じて、自然の力の凄まじさを感じた。

    第三部
    「超深海の科学」
    深海にはまだまだ未知の世界が広がっていて、奥の深い世界であること、超深海探査の難しさを、複数の冒険者の功績や取り組みを学ぶことで少しは理解できた気がする。

    2023/12/31読了

  • ●マイクロチップの恐ろしさ。疎水性通し、PCB sを引き寄せて集まる。魚が間違えて食べる。それを食べた魚の中で濃縮されていき、我々の食卓に登ってくるのだ。
    ●熱水噴出孔から出た熱水は海水で冷やされて、鉄や亜鉛が硫化物等になって析出します。ブラックスモーカー。そこは深海のオアシス。
    ●ハワイ島のマウナケアは、深海5000メートルからそびえ立っているから9000メートル級
    ●海洋地質学者ディーツさんが歴代天皇の名前をつけて、天皇海山群が生まれた。
    ●6000メートル級の有人潜水船は世界に7隻
    ●深海1万メートル潜航達成者は世界に三人。宇宙飛行の550人に比べてとても少ない。しかも三人のうち一人はなんとジェームズキャメロン監督。自分で7年かけて潜水船を作った。

  • 読ませる書き方でよかった
    深海探索の歴史は興味深かった
    深度の記録が徐々に塗り替えられていく
    1万メートルの深海へ行ったのは3人しかいないのは意外
    海底火山の噴火で観測隊が全滅した事件は読みごたえがあった

  • 2019/09/04:読了
     面白かった。
     海水、海底、海の山「海嶺と島弧海底火山」、海溝に臨んだ人達、どれも新鮮だった。
     この人の本、わかりやすい。

    【もくじ】

    第1部 太平洋とはどのような海か
     第1章 「柔らかい」太平洋――広大な海を満たす水の話
     第2章 「堅い」太平洋――その海底はどうなっているのか

    第2部 聳え立つ海底の山々
     第3章 ハワイ沖に潜む謎の海底火山
     第4章 威風堂々! 天皇海山群の謎
     第5章 島弧海底火山が噴火するとき――それは突然、火を噴く

    第3部 超深海の科学――「地球最後のフロンティア」に挑む
     第6章超深海に挑んだ冒険者たち――1万メートル超の海底を目指して
     第7章 躍進する超深海の科学 

  • 海水の動きから超深海まで、そして超深海微生物のPCBsで終わる。目まぐるしいが、それも含めて研究史から最新の話まで、大きく、深い。

  • 最後のフロンティア超深海

  • 読んでいてワクワクするような稀有な科学読み物。ほとんど一気読みでした。

    宇宙飛行士が550人を数える時代に1万メートル超の海溝底に到達したのは3人だけ。太平洋の平均深度は4188メートルもあり、最も深いマリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵は1万920メートルもあります。
    著者の蒲生俊敬さんは研究船や潜水艦によるフィールド調査をこよなく愛し、乗船観測は1740日に及び深海潜水船での潜航経験を15回持つ海洋研究者。本書を読んでいると蒲生さんの海洋愛がひしひしと感じられます。
    「世界最大の広さを誇」る「太平洋を、三次元の視点で眺めながら、ぼく自身の調査経験や知識の及ぶかぎりにおいて、これは重要と思われる話題を選んで紹介」した本書を、著者は「たいへん楽しく」書いたとエピローグで述べています。楽しく書かれた本は、読んでも楽しいということがわかりました。

    本書は3部構成になっています。
    まずは水の部分である「柔らかい」面と、底面を構成する「堅い」両面から、太平洋を学術的に考察。ここでは北半球の気温を守ってくれている「ブロッカーのコンベアベルト」や海溝型地震を引き起こす「プレートテクトニクス」がやさしく説明されています。びっくりしたのはチャレンジャー海淵で採取されたエビから「マイクロプラスチック」に由来すると思われる高濃度のPCBsが検出されたこと。人工汚染物質がなぜ1万メートルの深さに到達したのかが説かれ、「マイクロプラスチック」の恐ろしさを理解できます。
    第2部、第3部では、海山と海溝の話。天皇の名前を冠した海山と、誰がどうして海山に天皇の名前を付けたのかという興味深いエピソードや、超深海への挑戦、超深海に棲む生物の話が語られます。

    最後に、著者は「世界で最も多くの超深海水をEEZ内に保有するわが国」の太平洋に対する責務を強調します。そして、ここまで読んで太平洋の偉大さ、面白さ、そして危うさを理解した読者は、著者の訴えに共鳴できるはずです。1963年9月に書かれた「ブルーバックス発刊のことば」に非常に近い、面白い科学読み物。是非お読みくださいの★★★★★。

  • 本年一冊目はブルーバックス。

    一部は太平洋全体の話、二部は海底の凸(海底の山)の話、三部は海底の凹(海溝)の話でした。

    地学、科学史、深海生物等、これだけ広範囲の話題を網羅できるのはすごいと思います。なぜ天皇海山群の名前がついたかを書物をだどって調べるなど、科学にとどまらない。
    (逆に範囲が広くて素人読者は話題に追いつかないですが。)

  • 宇宙飛行士が550人を数える時代に、1万m超の海溝底に到達したのは3人だけ!人類最後の秘境=深海底は、どんな世界で、何が起こっているのか?ハワイ島沖・水深1000mにひそむ火山の正体とは?古代天皇の名をもつ謎の海山群はなぜ生まれたのか?そして、マリアナ海溝の最下層に暮らす生物を襲う大異変とは?「最大にして最深の海」で繰り広げられるおどろきの地球史!

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著者プロフィール

蒲生俊敬(がもう・としたか)
東京大学名誉教授。
1952年、長野県上田市生まれ。東京大学理学部化学科を卒業、同大学大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士)。専門は化学海洋学。北海道大学教授、東京大学大気海洋研究所教授などを歴任。海洋のフィールド研究に情熱を傾け、これまでの乗船日数は1740日に及ぶ。深海潜水船でも15回潜航。海洋の深層循環や海底温泉に関する研究により、日本海洋学会賞・地球化学研究協会学術賞(三宅賞)・海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)などを受賞。著書に、『日本海 その深層で起こっていること』『太平洋 その深層で起こっていること』『なぞとき深海1万メートル』『海洋地球化学』(いずれも講談社)、『海洋の科学』(日本放送出版協会)、『日本海のはなし』(福音館書店)など。『日本海 その深層で起こっていること』は、出版文化産業振興財団(JPIC)による英訳版が海外でも読まれている。

「2021年 『インド洋 日本の気候を支配する謎の大海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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