すぐ死ぬんだから

著者 :
  • 講談社
3.70
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065125854

作品紹介・あらすじ

78歳の忍(おし)ハナは夫岩造と東京の麻布で営んでいた酒店を息子雪男に譲り、近所で隠居生活をしている。
年を取ることは退化であり、人間60代以上になったら実年齢に見られない努力をするべきだ、という信条を持つハナは美しさと若さを保っており、岩造は「ハナと結婚してよかった」が口癖の穏やかな男だ。
雪男の妻由美には不満があるが、娘の苺や孫の雅彦やいづみにも囲まれて幸せな余生を過ごしているハナだったが、ある日岩造が倒れたところから、思わぬ人生の変転が待ち受けていた。
人は加齢にどこまで抗えるのか。どうすれば品格のある老後を迎えられるのか。
『終わった人』でサラリーマンの定年後の人生に光を当てた著者が放つ新「終活」小説!

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;内館さんは、三菱重工で、社内報の編集を約13年間担当。妥協を嫌い、自分流を通しながらも、上司や同僚に可愛がられ、慕われていたそうです。氏は、脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本で、橋田壽賀子賞受賞を始め、アジアテレビジョンアワード賞等、数々の賞を受賞しました。小説家・エッセイストとしても活躍。相撲好きで、横綱審議委員を勤め、大相撲研究の為に、東北大大学院に入学し、修了しました。無類の相撲好きの成せる業かつ学びの達人なのでしょう。
    2.本書;80歳を間近にした主人公、忍ハナ(78歳)を巡る外見に関する物語。忍ハナは、60歳台までは全く身の回りを構わなかった。しかし、実年齢より上に見られて目が覚める。「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。仲のいい夫と経営してきた酒屋は息子夫婦に譲りました。問題は息子の嫁。自分に手をかけず、貧乏くさくて、人前に出せたものではない。それだけが不満の幸せな老後だった。だが、夫が倒れた事から思いがけない事実を知って・・・、物語は展開していく。
    3.私の個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
    (1)『第1章』より、「リュックに帽子でゾロゾロ帰って行く老いた一団は、何だか虫の一群に見えた。誰もが年を取る。だが、誰もが虫になるわけではない。自分に手をかけない不精者だけが、虫になる。人間のなれの果てを見せられた気がした」
    ●感想⇒老若男女に関わらず、リュックは現代の定番商品です。リュックは行動し易く楽なので、私も時々リュック姿で出かけます。確かに、年寄り臭さは頂けません。年なんだからと思わずにオシャレにも気配りが必要でしょう。それよりも、集団でゾロゾロ歩く光景は、チョット疑問符。若い人に「将来はああなるのかな」とだけは思って欲しくありません。今まで培った物を社会還元し、夢を与えられる存在になりたいものです。答え探しは、自分でしなければなりません。先日、テレビで“おもちゃ病院(壊れたオモチャを修理する定年後ボランティア集団)”を放映していました。オモチャを直して貰った子供達の笑顔に感動です。現役時代の技術を活かした素敵なボランティア活動に拍手喝采。
    (2)『第5章』より、「駅構内を歩くバアサン達の多くは、ダウンを着ている。・・そんな物ばかり着ていると、精神もそんなものになる。カシミアのコートを纏う相手では勝負にならない。それでも“人間は中身よ”という人はいる。その言葉が好きな人は大抵中身がない。それを自覚し、外側から変えることだ。外が変わると中も変わってくる」
    ●感想⇒私は、外見も中身も拘らなければならないと思います。外見は、何も着飾る事ではなくて、清潔感第一でオシャレにも配慮した服装で良いのです。所で、買い物などで、ジャージの運動着姿の老人を時々見かけます。男性が多いのですが、もう少し他人の眼を気にしたいものです。さて中身は、年を取ってからというよりも、積み上げです。若い時から、色んな経験を積むと共に、読書で精神を養う事でしょう。遅きに失する事は無いので、読書は必要性を感じたら始める事です。司馬遼太郎は、「自分の必要な事はすべて図書館で学んだ」と言っています。読書は人間形成には必須と考えます。
    (3)『第7章』より、「“希望を持っている人は、年齢に関係なく若いんです。逆に言えば、希望を無くした人は老けこむんです”などとテレビや雑誌で言っている。こんなきれいごと聞きたくもないと、いつも思っていたが、今わかる。その通りだ」
    ●感想⇒人間は、幾つになっても、夢や希望を持つことです。それは、人によって違いは当然です。仕事、健康、趣味、家族・・何かしら、こうあって欲しいというものがあるはずです。第二の人生を送るにしろ、ただ漫然とその日を暮らすだけではもったいないです。人間として生を受けたのですから、最後まで活き活き溌剌と生きる人生が良いですね。
    4.まとめ;内館さんは、大学院に入学してまで、相撲研究するという、自由闊達な女性です。横綱審議委員の時に、ご自分の意見をシッカリいう人だと思いました。この本でも「すぐ死ぬんだから」とばかりに、外見に拘らないのは、自己放棄だと言うのです。外見を磨くと言っても、着飾るという事ではなくて、見え方に関心を持ち、自分らしく生きる老人になるという事だと思います。外見だけではなくて、中身を兼ね添えた老人になりたいものです。また、人生100歳時代を迎え、日本社会は益々高齢化が進行します。お荷物にならない年の取り方をしたいですね。そして、人間はみんな年を取ります。人生の各ステージに見合った生き方を模索し、自分らしく積極的に生きる気概を持つべきでしょう。( 以 上 )

  • 最初の一節を読んでから積読になり、少し経つ。最初に読み始めた時は、はじめの一節にがつんとやられ、書き留めていた。
    でも今は、人は外見とばかりに言い放つハナを痛いと思い、鬱陶しい。
    ふと、大相撲を観覧し帰路につく内館牧子さんがテレビに映ったときのことを思い出す。
    派手目の服と化粧、お供を従え、風をきって歩いていた。すごーっと思った。
    ハナは、内館牧子さんか。
    人生はなげてはいけない。
    自分を慈しみ、自分らしく生きていけたらいいな

  • 世の中にはずいぶんと高齢者が多い。自然に逆らわずいわゆる年相応の身なり、行動の暦年齢で生きている人。また少々の顰蹙にめげる事無く主観年齢で生きている人。日本人は未だに(右ならえ)の意識が強いから前者が多いかもしれない。
    このお話には様々な箇所に嫌な自分を見た。内館牧子さんの観察眼は正直で「そうそう!解るよ~」とつい共感してしまう。
    ただ周りを見てみると、幾つになっても生きる事に前向きな人、楽しんでいる人はやはりどことなく違う。
    ※(以前テレビドラマ観賞)

  • 内田牧子さんのドラマはみていたが、本は初めて。
    面白く一気読み。

    主人公 忍ハナ78歳。
    年相応にみられたくないと日々努力している。
    努力を怠って、
    楽が一番と言っているジジイ、ババアを毛嫌いする。
    心の中で毒づくハナ。
    頑張ってもどうしても老いを感じてしまっているハナ。
    その他の人たちもいろいろな暗黒心や仏心がちらちらして人間らしさが満載。

    岩造とは、いい夫婦だな~と思っていたら、
    まさかまさかの展開に。

    最後は悟りを開いたようなハナさんが78歳まだまだ年にあらがいながら人間臭く生きていくぞ!っていう感じがみえていいね。

  • 話題になってしばらくしてから図書館で予約し、1年ちょっとで手に届いた。

    内館牧子さんのイメージは横審の迫力ある怖い人。
    まさに背表紙のまま!!
    物騒なタイトルだし、攻撃的か批判的か毒が漏れ出ている本ではないかと敬遠していたが、なんのなんの!面白い!!

    ハナさんが78歳とは思えない外見を保ち、同窓生の嫉妬や嫌味に余裕ある返しをするところはかっこいい。

    私なんかまだ中年だけど、ハナさんからすると楽な方へ流れる、ナチュラルを言い訳にしたくすんだ婆さんなんだろうな!
    でも読んでいて全く嫌じゃない。というより気持ちいい。

    周りの婆さんどもに1発、2発かまして生き生きしていると思いきや突然夫に先立たれ、気力をなくし、セルフネグレクトになる。その間は周りの婆さんと変わらない、いわゆる年相応の姿を見せる。
    そしてまさかの夫の裏の姿を知ってしまい、自分を取り戻す。

    夫も子供達もその妻も個性的で、話を聞く分には笑えるほど面白い!でも実際に自分の家族だったらストレスだろうな...

    「すぐ死ぬんだから」が最後は前向きな言葉として使われていてよかった!
    そうじゃなければ、それを聞かされる人達は嫌だよね。
    失敗したってすぐ死ぬんだからたいしたことない!って何かに挑戦できるのはいいと思う。

    私はTPOをわきまえ、衛生的であれば、どの年代の女性も好きな格好をどんどんしていいと思う。むしろどんどんしてほしい。
    歳を重ねたからって、くすんだ色を身に纏わなくていいし、大ぶりなピアスをしたっていい。髪を染めてメイクとお気に入りの靴で自信を持って外に出たっていいじゃない!
    帽子だってサングラスだって、お洒落な物を身につけた自分を街中のショーウィンドウや電車の窓ガラス、トイレの鏡で見て、よし!イケてる!って思えたら、少なくともその日は幸せだよ。

    日本人はすぐ世間の目とか年相応とか気にするけど、それにがんじがらめになるのはもったいない。

    そういう婆さんに私はなりたい。

    ところで、忍夫妻、命名センスがすごい。
    苺に雪男...どうしても雪見だいふくが思い浮かぶ。

  • さすが内館牧子さん。映像が目に浮かぶよう。
    前半 岩造とハナが仲良く暮らしてるあたりが1番面白かったかなぁ。岩造がなくなって 実はもうひとつ家庭があって
    子供もいてっていうのが あまりに急展開すぎて しっくりこなかったし 森薫親子とのやりとりも なんだかなぁ。
    やっぱり この人は作家ではなく 脚本家だなぁとしみじみ思った。

  • 76歳でもおしゃれやアンチエイジングにぬかりのないハナ。
    ずっと長年連れ添ってきた夫、岩造が急死したことから夫に妾と婚外子がいたことが判明して…。

    非常におもしろかった。
    老いるとは?アンチエイジングとは何か?
    これから描いていく高齢者像とはどのようなものか?
    色々なことを考えるタイミングや機会を得ることができた。

  • すぐに死ぬんだからというセリフは人生百年時代に生きる高齢者にとっての免罪符であると口にするのである。80歳を間近にした女性主人公、忍ハナさんが「70ちょっと事件」 を機に美に目覚め外見を磨く事が内面の美しさに連動しその人の外見に意欲が見て取れると。男前なハナさん、本当に痛快で、えっ!何?嘘?と。思いながらどんどん引き込まれていき、やっぱりハナさん最高なおばあちゃんでした。

  • 文庫本が発売された時に、タイトルが気になっていた。古本屋さんで、文庫本より安く買えたので読むことに。ちびちび少しずつ読んでいこうかと思ったけれど、面白くて3日ほどで読了。
    70代の主人公なので、まだまだ共感できるところは少なかったので、ふーんそんな感じなのね~と思いながら読んでいた。また、途中ハラハラするほど意地悪な言葉が並び、もうやめて〜!と思うところもあった。しかし、何故か読むことをやめれない(笑)どんどん話に引き込まれていった。
    どこが面白かったかと言われたら、はっきり答えることができない。でも、面白かった!と満足感をもらえる本だった。
    著者の経歴を読んで、私の唯一ハマったテレビ小説の脚本を書かれていたことを知り、読むべくして読んだのだ!と嬉しくなった。

  • いや~参ったな。読み始めは仲良し老夫婦の物語だと思って、なかなかページが進まなかったが、ある事件をきっかけにストーリーは思わぬ方向へ・・・。ここから殆ど一気読みに突入。 「夫婦とは老いとは何ぞや」と考えさせられた。 なるほどと共感するところもあったりして参考になる。 やはり「年相応」などと言ってはダメなのかも知れない。 老いても「品格」が大事だな。


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著者プロフィール

1948年秋田市生まれの東京育ち。武蔵野美術大学卒業。1988年脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本に「ひらり」(1993年第1回橋田壽賀子賞)、「毛利元就」(1997年NHK大河ドラマ)、「塀の中の中学校」(2011年第51回モンテカルロテレビ祭テレビフィルム部門最優秀作品賞およびモナコ赤十字賞)、「小さな神たちの祭り」(2021年アジアテレビジョンアワード最優秀作品賞)など多数。1995年には日本作詩大賞(唄:小林旭/腕に虹だけ)に入賞するなど幅広く活躍し、著書に映画化された小説『終わった人』や『すぐ死ぬんだから』『老害の人』、エッセイ『別れてよかった』など多数がある。元横綱審議委員で、2003年に大相撲研究のため東北大学大学院入学、2006年修了。その後も研究を続けている。2019年、旭日双光章受章。

「2023年 『今度生まれたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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