読書の極意と掟 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065122617

作品紹介・あらすじ

作家・筒井康隆のつくり方を教えましょう。

戦時中に疎開先で虐められた幼少期、演劇部で活躍した中高時代、不本意な営業に配属された新入社員時代、いつも傍らには本があった――。いずれ自分も小説を書くとは夢にも思わず、役者になりたかった青年を、巨匠と呼ばれる作家にしたのは“読書”だった。小説界の巨人が惜しげもなく開陳した、華麗なる読書遍歴。『漂流 本から本へ』を改題。

感想・レビュー・書評

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  • 読書の極意と掟 筒井康隆著
    48億の妄想が筒井康隆さんとの出会いでした。
    筒井康隆さんのバックボーンを勉強せずに購読しました。
    当時の執筆内容が、現代の日本とアジアの緊迫した状況と重なっていることに先見の明を感じたことはいうまでもありません。

    そこで、手にしたのがこの小説です。
    筒井康隆さんが何を購読し、何を見出したのか?
    一冊ずつ約2ページで紹介しています。

    筒井康隆さんが好きならば、ぜひ手にとって欲しいです。

    三島由紀夫著「禁色」。
    筒井康隆さんが打ちのめされたとありました。
    「作家になるにはそれなりの修行が必要である。」

    プロの世界で長きにわたり価値を提供するひとは、デビュー前から確固たる意志と観察があると読みとけます。

    #読書好きな人とつながりたい。

  • 折に触れて、筒井康隆の本を読んできました。
    「文学部唯野教授」は今でも読み返しますし、「家族八景」も好き、「日本以外全部沈没」や「エンガッツィオ司令塔」などの不条理、黒い笑いは堪りません。
    「大いなる助走」は虚心には読めませんが……。
    ぼくの書棚には、筒井康隆の本が12冊。
    彼の膨大な著作の数からすれば、ほんの一部です。
    なので決してファンとは言えませんが、いつも頭の片隅にいます。
    そんな自分にとって、筒井康隆は小説界のトリックスター。
    そんなイメージがあります。
    何をやらかすか分からない。
    そんな印象が、筒井康隆にはあります。
    ただ、その裏には膨大な読書量があったのだなと、本書を読んで改めて実感。
    本書は、読書を通じた自伝的エッセー。
    これまでの半生を「幼少年期」「演劇青年時代」「デビュー前夜」「作家になる」「新たなる飛躍」の5章に分け、その時代時代で読んできた本を計66冊紹介しています。
    まず「幼少年期」は19冊。
    「のらくろ」は分かりますが、デュマの「モンテ・クリスト伯」やマンの「ブッデンブロオク一家」などを読んでいたのかと驚きます。
    「演劇青年時代」は17冊。
    ヘミングウェイ「日はまた昇る」を読み、乾いた文体は後に作家になる自身にかなり影響を与えたそう。
    ぼくも「日はまた昇る」を読んだのは学生時代。
    文豪との共通点を発見して、一人にやけてしまいました。
    井伏鱒二「山椒魚」をかなり高く評価して、未読の自分は読みたくなりました。
    「デビュー前夜」は8冊。
    三島由紀夫「禁色」を読み、「こんな凄い文章が書けなければ作家にはなれないのかと思い、絶望した」とあります。
    「作家になる」では、川端康成「片腕」、ル・クレジオ「調書」、阿佐田哲也「麻雀放浪記」など12冊を紹介しています。
    「新たなる飛躍」では、大江健三郎「同時代ゲーム」、ディケンズ「荒涼館」など10冊。
    マルケス「族長の秋」はぼくも持っていますが、2~3ページで音を上げました。
    丸谷才一「女ざかり」は未読だったので、ただちにアマゾンから取り寄せ、今到着を待っているところ。
    それにしても、筒井康隆の読書量の多さ、読書の幅の広さといったらありません。
    膨大な読書経験を肥やしにして、今の筒井康隆がいるのですね。
    仰ぎ見る存在です。
    本書は、読書のガイドとしても役立つこと請け合いです。

  • 筒井康隆さんが、幼少期から読んできた本を年代別に紹介している。
    本書を読んで、読みたくなった本を下記に記録しておく。
    デュマ『モンテ・クリスト伯』
    ウェルズ『宇宙戦争』
    ハメット『赤い収穫』
    フィニイ『盗まれた街』
    三島由紀夫『禁色』
    シェクリイ『人間の手がまだ触れない』
    オールディス『地球の長い午後』
    フライ『批評の解剖』
    イーグルトン『文学とは何か』
    幼年期から、読書が楽しみという疎開生活に始まり、役者になるために書物を読み漁り、やがて作家になっていく。書物が人を育てていくような物語を感じる。

  • 筒井康隆は著名な作家であり、多くの作品を世に出していますが、私はあまり小説を読んだことがありません。『時をかける少女』はドラマ・映画で馴染んでいますが、小説をきちんと読んだことがあるのは『日本以外全部沈没』と『残像に口紅を』くらいでしょうか。

    そんな彼が、その半生を「幼少年期(1934年~)」「演劇青年時代(1950年~)」「デビュー前夜(1957年~)」「作家になる(1965年~)」「新たなる飛躍(1977年~)」の5つに分け、各時代ごとに読んだ本を紹介しています。
    作家が呼んで血肉にした作品がどんなものか、興味があります。

    各時代ごとに、10数冊の本が紹介されていますが、自分も読んだことがある本は、彼の幼少年期と演劇青年時代に集中し、それ以降は本格的な作品が並ぶため、全くついていけなくなっています。

    幼少年期の頃にすでに、漱石の『吾輩は猫である』、デュマの『モンテクリスト伯』を読んでおり、演劇青年時代にフロイドの『精神分析入門』、ヘミングウェイの『日はまた昇る』、カフカの『審判』に馴染んでいます。
    デビュー前夜に、三島由紀夫の『禁色』を読んで打ちのめされたとのこと。そうやって作家筒井康隆が誕生していったというわけです。

    文壇の定説は「いい作家が出る条件は、いい家柄に生まれ、その家に沢山の本があり、その家が没落することである」だとされているとか。多少シニカルではありますが、たしかに納得できます。彼も、幼少時から非常に多岐にわたる本に囲まれて育って行ったことになります。

    さまざまな本が紹介された後、最終的にはこれらの本に培われ作家となった筒井康隆についてを深く知ることができる本になっています。

  • 小説界の巨人が惜しげもなく開陳した自伝的読書遍歴

    戦時中にひとり疎開した幼少期、演劇部で活躍した中高時代、いつも傍らには本があった。いずれ小説を書くとは夢にも思わず、役者志望だった青年を大作家にしたのは?読書?だった。筒井康隆誕生の秘密がここに。

  • 筒井康隆氏が自らの読書歴を書いた本。

    幼年期から作家として活躍するまでに読んだ心に残った本を、当時の生活を振り返りながら紹介している。

    筒井康隆氏は、SFや純文学だけでなく、哲学や心理学、文学理論まで精通していることは、彼の作品群を一部読むだけでも分かる。

    そんな筒井氏の読書体験を追体験できるように紹介されているわけだから、彼の内実が気になるなら読んで損はないだろう。

    筒井康隆氏がマンのブッデンブロークを読み、その早熟の才を羨望し、「良い作家が出る条件は、良い家柄に生まれ、その家に沢山の本があり、その家が没落することだ」という文壇の定説に慰みを得たみたいな話しをしているが、私にすれば幼年期から小説を読む習慣があった筒井氏は十分羨望に値すると思った。

    それにしても10年以上前に読んだ気がするが、自分の読みたい本が全然読み進めていないので慄然とした。

    イバーニェス「我らが海」、リースマン、ズーデルマン、ディケンズ、その辺を読んでいきたい。。

  • 著者の読んできた本の、内容紹介と書評を自伝エッセイと共に。その読書によって影響を受けて書かれた筒井作品も教えてくれて、贅沢な。海外小説に疎い私には新発見も多数。

  •  名著紹介の体裁を取りつつ、著者の半自伝になっている。読書家かつ小説家としての成長を追っているので、拾い読みが出来ない。
     最近「壊れかた指南」所収「耽読者の家」を読んだところ、あっ。これは小説版「読書の極意と掟」だと思い至る。

  • こんなに本を枚挙できるとは、さすがです。

  • 文庫化前の『漂流 本から本へ』を読んだ記憶あり、再読。
    あらためて筒井節を堪能する。
    有り余る才能があるのに、しっかし恨みの多い人だな。
    でも熱狂的なファンがいてセールスも好調ながら、権威的なところからの評価が低いからな。
    解説にもある通り日活ニューフェースに通らなくてよかった。役者になっていたら余技で小説を書いたとしてもこんなにたくさんは読めなかったしな。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

筒井康隆の作品

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