- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062939027
作品紹介・あらすじ
珠子、茉莉、美子――3人の少女は、戦時中の満州で出会った。何もかも違う3人は、とあることから確かな友情を築き上げる。やがて終戦が訪れ、3人はそれぞれの道を歩み始める。日本、中国で彼女たちはどう生きたのか。そして再び出会うことはあるのだろか――。2016年本屋大賞第3位に選ばれた、感涙の傑作、ついに文庫化。
感想・レビュー・書評
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著者の年齢を見ると戦争経験者ではない世代と知った。しかし想像や、身近の人達の経験談だけではこれほどの話が出来るものではない。読み終わり参考文献を見て少し納得。著者の膨大な学習努力が覗える。環境の全く異なる3人の女性の人生に、読者はどこかで自分と重なる出来事を見つけてしまうのではないだろうか?戦争は、人を変えるのか?自分に潜む非情さを曝いてしまうのか?ただどこにも常に優しさも有ったことが救われた。今も世界では戦争が起きている。このお話はけして遠い過去の出来事ではないのかもしれない。
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戦時中、満州で出会った3人の少女を巡る話です。
高知から家族とともに来た珠子、朝鮮人の美子、横浜から来た茉莉。
国籍を超えた友情で結ばれる少女たちですが、戦争が激しさを増すにつれ日本は追い詰められていき…
3人はそれまで想像もつかなかった人生を送ることになります。
珠子は終戦後中国戦争孤児に、美子は日本で朝鮮人差別を受け、茉莉は空襲で家族を失い…
戦争という誰も逃げられない苦しみの中、必死で生き抜いた少女たちの人生とは。そして失った物と、そこから得た物とは?
日中韓の関係の悪さは今でも度々問題になっていますが、この本を読んだらその理由が分かるかと思います。
フィクションですが史実を基にしているため、当時の生活や貧しさがリアルに描かれています。
3人が日本で再開した時、日本語が話せない珠子に衝撃を受けた美子と茉莉。
母国の言葉さえ戦争で失われてしまったことはとてもショックでした。
「戦争さえ無ければ」と、当時を生きた人たちはどんなに願ったでしょうか。
今の平和な日本に感謝すると共に、二度と同じ歴史を繰り返してはいけないと思いました。
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珠子、茉莉、美子、
戦時中の満州で出逢った3人の少女。
一時の出逢いの後、それぞれの地で戦争に翻弄され、それぞれの道を歩む。
***ネタばれ***
満州で中国残留孤児となり、それまでの記憶をほとんどなくしてしまった珠子。
横浜に戻り、空襲で両親を亡くして戦争孤児となった茉莉。
朝鮮で生まれ満州を経て日本に渡り、在日朝鮮人となった美子。
3人の歩む道に、胸を張って前を向く姿に、
一時も目が離せない。
ただの戦争小説じゃない。
あの先の大戦をあらゆる角度から描き、戦争に翻弄された3人の少女が、戦後、どのような人生を辿ったのかまで描かれていて、彼女たちの人生を通して、生きるとはどういうことかを考えさせられました。
解説でも書かれていますが、著者である中脇初枝さんが膨大な量の取材をし、たくさんの資料を読み込んでこの素晴らしい作品を書かれたことに、大変感銘を受けました。
今、ロシアがまた同じ事をしています。
この作品に描かれているみたいに、多くの人が凄惨な体験をされ、犠牲となっています。
なのに、何もできない自分が虚しく、誰も止めれないことに恐怖を覚え、未来に対する不安がましてやまない毎日ですが、この小説を読んだことで、前を向く勇気、人生に立ち向かう勇気をもらったように思います。自分ができる事は、このような作品を通じて事実から目を背けず、未来に伝えて行くこと。そうやって前を向いて歩いていきたいです。 -
戦時中の満州で出会った3人の女の子の話。
全員が戦争に巻き込まれ戦後も互いに苦労し、何十年と時が過ぎてから再会する。再会出来た理由の1つに人の思いやる気持ちがそれを叶えた。戦争体験の話だけではなく、人を守る事の難しさ負の連鎖を断ち切るためにはどうすれば良いのか考えさせられる話。それは戦争中だけでなく今の世界でも抱えている問題。答えはいつか分かるのかな。 -
三人の女性の幼少期から晩年までを綴った、史実を基にしたフィクション。戦争について描いた小説はたくさんありますが、一人一人の人生について、徹底した取材を基に、ここまでリアリティをもって物語る小説には初めて出会いました。
中国残留孤児、戦争孤児、在日朝鮮人。知識としては知っていましたが、そういった人々が何を経験し、何を感じたのか、本当の意味では何も知らなかったのだと、この小説を通して改めて感じさせられました。作者の筆致は淡々としていますが、そこに語られる事実の壮絶さに圧倒されますし、胸が痛くなります。そして、戦争が個の人生を否が応にも変えていってしまうその無慈悲さを、ただそうであるものとして描き出そうとしている作者の覚悟にも、感服させられます。
三人の主人公の人生が一瞬交錯して、物語の最後にまた繋がる展開は、人と人が国籍や思想を越えて、繋がることができるかもしれないという希望を描き出しています。もちろん、その道のりは並大抵のものではないのですが…。戦争に翻弄されながらも、そこで生きていこうとする人々の人生を濃密に描き出した本作品。たくさんの人に読んでもらえるといいなと思いました。 -
美子が茉莉と珠子に1個しかない自分のおにぎりを分け与え、自分は1番少ない部分を食べた場面には、子供なのに、自分もお腹が空いているのに、助けが来るかどうかも心配な状況で、神みたいだなと思った。
この3人は、それぞれ中国残留孤児、在日朝鮮人、戦災孤児という精神的にとても辛い状況にありながらも生きてこられたのは、幼い時に受けた家族の愛情と自身の精神力だと思う。
現代社会で考えてみると、子供時代に自分は愛されて育ったという自信があれば、例えば仕事や人間関係で嫌な事が起こっても頑張れる気がするし、周囲の人に優しくもできる気がする。でも世の中そんな良い環境で育った人ばかりではないから、いろんな人がいる。そんな心に余裕がない人にも、平等に愛を分け与えることができるような人になれたら素晴らしい。やっぱり世の中は、お金も大事だけど、最後は『愛』なのだと思う。
最後に、中国残留孤児と在日朝鮮人、戦災孤児について深く考える良い機会になった。