- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062938433
作品紹介・あらすじ
28歳のわたし・田中真紀子は友人のイチローに誘われて、彼の家に間借りすることになった。けれどもその建物は、コンクリート三階建て・黄色い木造二階建て・鉄骨ガレージの3棟が無理矢理くっつけられた変な家。そしてわたしは、ガレージの上の赤い小屋に住むことに。全裸で現れる父親を筆頭に、個性派揃いのイチローの家族たち。ヘンテコな家でおかしな生活が始まった。そんなある日、イチローから「たまに同じ一日が二度繰り返される」という不思議な経験を打ち明けられる──芥川賞作家が描く未体験パノラマワールド!
感想・レビュー・書評
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著者の作品は、いかにも芥川賞狙いの100からせいぜい200枚強程度の中編が多かった。
また、たぶん作品の性質上中編が合っている。
その著者にしては、結構な長編。(連載雑誌を購入していたが、その段階では追いかけられなかった。)
ひょっとすると2014年に芥川賞を取ったからこそ、力を抜いて長編に取り組めたのかもしれない。
え!? 柴崎友香がループ系を!? え、しかも家族を!?
という驚きはあらすじを一瞥して感じていたことだ。
村田沙耶香が書き続けてきたような、いわゆる毒親モノを、著者が書くのは初めてではなかろうか。
著者はむしろアーバンな関係性に視野を絞り、興味の対象も視覚情報と活字情報一辺倒だった。
それが毒親やら過干渉やらDVやらネグレクトやら、厭さやら嫌悪感やら気持ち悪さやらライムスター宇多丸の言葉でいう「ヤダみ」やら、まで描いた。
筆者にしては挑戦……、とここまで書きながら、いや無謀な挑戦じゃないな、と思い直した。
だって視点人物は著者ならではの性格(従来の作品で貫かれてきた)から抜け出ていないのだ。
これを逆に考えると、従来の作品の淡白さの理由に、親子関係の歪みをそれなりに求めてもいいのだと、遡及的に言質を得たと、考えてもいいのかもしれない。
つまりデビュー作以来の淡白さを解釈しなおす機会をもらったとも、いえる。
ただし毒親やらDVやらといった安っぽい題材を取り入れつつも、ちゃんと柴崎友香味になっているので、やはり読んでよかったなー、と。
言い換えると、著者の作品群は茫漠さが味だが、この長編では長編ならでは、キャラの味つけや増改築されゆく舞台の面白みや、でぐいぐい引っ張ってくれた。
ところで著者の作品群においては視点人物の異様さが仄見えてくるのが面白いが、
「ふ、ふ、文さんは亀だって、面倒見てるじゃないですかあああっ! おうおああああっーっ!」
という台詞は、異様さが突き破ってきて、思わず笑ってしまったよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても長い作品で、何故だか読めば読むほど苦しくなって辛い気持ちになってしまった。。
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真紀子が言った「たいていのことは、その人がそう言うなら、少なくともその人にとってはそうなのかなーって思う」という言葉は、柴崎作品に一貫した態度と思う。そこが好き。
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2021.6.11断念
文章に目を引く描写はあれど、この先の展開にあまり興味がわかない。遅々として進まずのんびり読んでいたら、図書館から返却督促が来てしまい、執着もないので途中で断念。
やはり本は惹きつける何かがないと。 -
「遠慮すんな。ビール好きだろ。そういう顔してる」(44)
現実に違いないのに、少しずつずれて、欠けたり、重なったりしている風景。今この同じ場所で、同じ瞬間に、私と絵波が見ている風景を画像にして並べたら、それぞれ別のところがずれた、違う場所みたいなパノラマになっているだろう。(547)
それが始まりだとは私はまだ知らず、公園は三月で日曜で午後二時だった。(1) -
ぶっ飛んだ人たちなようで、でもこういう人いるよなとか、こういうところ自分にもあるよなとか思った。日常SF?みたいな柴崎さんのお話すきです!
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著者の初期の作品を遡って読もうと選んだ一作品。
今とは作風が違う気もする。
主人公の年齢や作年が若いからだろうか?
何が起こるわけでもない中に、不思議な体験もありそのギャップがいいのかもいれないが、なにか掴みどころの無い中、なにかすっきりせずに読了かな。 -
初めて読む作家。
印象としては、西加奈子に似ている。
なんでもない日常が、実はとても大切なんだと思わせてくれる作品。