恩讐の鎮魂曲 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.20
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938365

作品紹介・あらすじ

恩師と向き合う悪徳弁護士・御子柴礼司。「贖罪」の意味を改めて問う、感涙のリーガル・サスペンス。
谷原章介さんが「王様のブランチ」の「思い出の一冊」に選んだ『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』シリーズ最高傑作!

少年時代の凶悪犯罪が暴露され、悪評が拡散する弁護士・御子柴。勝率九割の敏 腕も依頼者が激減、事務所移転を余儀なくされた。そんなとき少年院時代の教官が殺 人容疑で逮捕され、御子柴は恩師の弁護を力尽くでもぎ取る。罪を自ら認める教官だ ったが、御子柴の弁護法廷は驚愕の展開に!

感想・レビュー・書評

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  • 悪名高き御子柴弁護士シリーズ第3作目。
    御子柴が医療少年院で過ごした時代の恩師が殺人で逮捕され、その弁護を自ら率先して買って出る。
    しかし無罪を主張する御子柴と、自分の罪を認め有罪を望む恩師との駆け引き、また贖罪の在り方が描かれたリーガルサスペンス&ミステリ。

    現在、私は中山七里週間に突入中である。
    御子柴シリーズの連読により、もはや御子柴中毒となっている。御子柴に魅了された、ただのおじさんである私が、本シリーズを読破したあと、いったいどう腑抜けてしまうのか。こちらも乞うご期待いただきたい。

    冒頭、唐突に舟の沈没事故から始まる。いったい何が起きているのか分からないまま、読み進めて行くと、なるほどと。本作の法廷論争のテーマへと繋がっていく布石がお見事。

    兎角、何よりも本作は今までは見られなかった御子柴の心境の変化が顕著に見られる。恩師のために、必死にどうにかしようと奮闘する姿に人としての温かみ、人間らしさを感じさせるのだ。

    ずるい。

    これはいわゆるあれだ。
    厳つい風貌のヤツが、仔犬を愛でる姿を見ただけで、とっても良い人に見えてしまう、バイアスのやつだ。

    がしかし、とても良い。

    バイアスがなんだ。良いものは良い。それ以外何か特段の理由が必要だろうか。償いを教えてくれた恩師を全力で救おうと、抗おうとする御子柴が、とても愛おしいのだから仕方あるまい。

    また、御子柴の恩師・稲見の生き様が善き。
    前作で医療少年院時代に、稲見が少年・御子柴へ贈った言葉。

    『償いというのは言葉じゃなくて行動だ。だから懺悔は口にするな。行動で示せ。』

    まさに、稲見の有言実行な贖罪との向き合い方は【称賛】以外、相応しい言葉が見つからなかった。

    そして最後の数ページは、目頭が熱くなった。

    本作は今までのシリーズの中でも、紆余曲折があってとても読み応えがあり、かつ満足の行く読了感が得られるバラエティパック作品だと言えよう。

    リーガルサスペンスや社会派ミステリが好きな方。
    ダークヒーローや頑固親父が好きな方に、是非ともお勧めしたい作品である。

    • akodamさん
      NORAxxさん、こんにちは。
      御子柴礼司が止まらないっす。もはやメロメロっす。

      本作は御子柴の人間らしさを稲見が引き出していますな。【心...
      NORAxxさん、こんにちは。
      御子柴礼司が止まらないっす。もはやメロメロっす。

      本作は御子柴の人間らしさを稲見が引き出していますな。【心に真っ直ぐ突き刺さる歪みの無い刃】って表現、素敵だぞ相棒!(´∀`*)

      ただいま絶賛悪徳中❇︎

      ってか、復讐もあったのね^^;
      2021/12/04
    • misachi68さん
      akodam さん、いつも「いいね!」ありがとうございます。
      akodam さんの感想が面白くて、ついこのシリーズの1冊目『贖罪の奏鳴曲』安...
      akodam さん、いつも「いいね!」ありがとうございます。
      akodam さんの感想が面白くて、ついこのシリーズの1冊目『贖罪の奏鳴曲』安くなってたタイミングで買っちゃいました!
      しばらく積読状態になりますけど、読むのが楽しみです。
      2021/12/04
    • akodamさん
      misachi68さん、こんばんは。

      こちらこそ、いつも【いいね】とコメントまでいただき嬉しいです。

      私のレビューが、ついにmisach...
      misachi68さん、こんばんは。

      こちらこそ、いつも【いいね】とコメントまでいただき嬉しいです。

      私のレビューが、ついにmisachi68さんをミコシバー(御子柴ファン名称)へと導いてしまったわけですね。おめでとうございます!

      読みどきを迎えられた際は、是非とも心ゆくまでお楽しみください❇︎
      2021/12/04
  • 悪徳弁護士御子柴礼司の過去の罪が暴露される事となった前作からどう繋がるのか、期待値特大で本作、「恩讐の鎮魂歌」へ。
    今回の被告人はかつての恩師、稲見。
    過去の流出により依頼者が激減したにも関わらず御子柴は改心すること無く、悪徳の名に恥じることの無い強引な交渉で彼の弁護をもぎとり事件の核を探って行く。控えめに言って最高。

    そこで御子柴が明らかとした恩師のどこまでいっても変わらなかった厚い熱い人情。そして変わらない御子柴自身の「贖罪」の信念。
    もうここまで来た方は男女関係なく彼のカッコよさにメロメロかと存じます。わかります。わかりますとも。握手しましょう。
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    毎度恒例 プロローグに心掴まれるマン。順調です。
    さてこれがどう繋がるのか、期待は好きなだけ膨らませよう。裏切られる事はまず無い。
    前作の続きを丁寧に描写しており、御子柴のその後を把握出来た上で、彼に「贖罪」の意味を教授してくれた恩師、稲見の起こした事件へと土台が切り替わる、相変わらずのテンポの良さだ。
    償いたい者と救いたい者。御子柴史上最悪であろう思い通りにならない依頼人。

    残念ながら今作に関してはことある事に「無理」を感じる場面が多かった。不確定要素が多過ぎる。稲見の周りの入居者達、福祉長、ヤクザ....まるで何かにコントロールされてる様なご都合良過ぎる言動に徐々に傾くMY NECK(首)

    詳しく語ればネタバレを含むので抽象的になってしまうのだが、何より(出木杉君的な意味で)奇跡人キャラ、稲見の存在がフィクションという現実をズブズブと突き刺して来た。とても好きなんですけどね彼。良い人だもん、とても。でも存在するのだろうか...理想の塊のように感じてしまった。
    プロローグの繋がりや中山七里作品にどうしても期待してしまう〈返し〉にもミラクルが付き纏い、自分がフィクションを読んでいた事を思い出してしまう。ふと現実に戻る瞬間が出来てしまうのだ。
    私には少しばかり整いすぎ、そしてお話が綺麗すぎたのだろう。捻くれ者の末路だ。故に威力は弱まり読了後のハートは見事な鎮火状態。立つんだジョー...
    彼の作品に常に感じていた、リアルとフィクションの綱渡りが出来なかったのが残念です。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    シリーズとして築き上げてきたキャラクター達の愛着によって楽しむ事が出来た。良いお話だもの、心の負担も少ないし、温かい気持ちになる。
    ファンブックとなった三作目、次回にも期待です。

    • すーさん
      NORAさんが大事に読まれていた三作目ですね。
      面白そうなので早く読みたいような、楽しみは後にとっておきたいような(*´ω`*)
      とりあえず...
      NORAさんが大事に読まれていた三作目ですね。
      面白そうなので早く読みたいような、楽しみは後にとっておきたいような(*´ω`*)
      とりあえず積読少し消化してから読み進めようと思います。
      2021/08/11
    • NORAxxさん
      すーさん、こんばんは^ ^
      そのお気持ちわかります。。
      好きな物ほど読むのを躊躇ってしまうんですよね、何だか勿体なくて(笑)
      うふふ、楽しみ...
      すーさん、こんばんは^ ^
      そのお気持ちわかります。。
      好きな物ほど読むのを躊躇ってしまうんですよね、何だか勿体なくて(笑)
      うふふ、楽しみにしてます(*´v`)
      2021/08/11
  • 御子柴シリーズ第3弾!
    また、一気読みしてもうた…(^^;;
    過去が、バレて、少しジリ貧状態。
    (死体配達人)

    今度は、少年院時代の恩師が老人ホームで人殺し?
    恩師を助けるために奔走する。
    「先生。ひょっとしてこの事件、情で動いてませんか」「老婆心で言いますけど、もしそうだったら気をつけた方がいい」
    いつもは、冷静沈着な御子柴さんも、情が入って…
    それでも、次々と真相を明らかにしていく御子柴さん!
    しかし、こんな老人ホームに、色んな事情の人が…そんな偶然はないわな…
    「お前の贖罪の仕方と俺の贖罪の仕方が違っていただけの話だ。」
    って言われても…
    何の為に、今までこの士業をしてきたか…っと言う前提条件崩れてしまう〜

    冷静になれ!御子柴さん!気持ちは分かるが、自分の贖罪を〜
    鬼畜から、人間に戻れる道へ〜

    次回、更に成長した御子柴さんが見れるのか!もう手元にはある!
    しかし〜まだまだ、順番が回って来ない…(積読本多数…ハァ〜^^;)

  • 御子柴シリーズも3作目。冒頭の章はいつものことながら、どこに向かうのだろうかと不安を掻き立てられる。緊急避難であれば犯罪も許されそうで怖い展開。これが弁護に繋がって行くというドンデン返しの方向が見事。
    ただ、今回は頑固で自分の主張を変えない元教官。折角の御子柴の弁護も不発に終わるかとヤキモキしてしまう。
    圧巻の法廷闘争で次回も楽しみになる。

  • 清濁併せ呑む。本当に綺麗な人間って素晴らしいし、自分も歳を取ればそうなれるのかな。

  • 御子柴礼司シリーズ第3弾

    御子柴は関東医療少年院時代の恩師、稲見の弁護をもぎとる。しかし、稲見はあくまでも罪に服する事を望み、無罪を勝ち取ろうとする御子柴は焦りを募らせる。
    御子柴の『贖罪』と稲見の『贖罪』
    海難事故での緊急避難と老人ホーム内での緊急避難
    加害者と被害者。そして、その家族の煩悶
    たくさんの伏線に、、、御子柴の苦悩に、、、読み終わったら脱力です。
    次も楽しみで仕方ない!

  • 面白かった!!!
    御子柴礼司シリーズ第3弾!
    前作に引き続き、順番通り読まないと駄目です(笑)。前作までの登場人物もポイントとなります。

    ストーリとしては、
    過去の犯罪が暴露された御子柴の次の弁護は、少年院時代の恩師の稲見。
    本人も認め、自供している老人ホームでの殺人事件。その裁判で無罪判決を勝ち取れるのか?
    しかし、その一番の障壁は稲見自身。その信念。

    冒頭の海難事故での男の行為から、何がどうつながっていくのかと思ったら..なるほどでした。
    そして、養護老人ホームでの介護士殺人事件。
    御子柴が稲見の無実を勝ち取るために、熱くなります。
    そこから、老人ホームの闇を明らかにしていきます。
    そして、その事件の真相。
    稲見の考える「贖罪」その生き様
    そして、稲見から教えられた「贖罪」
    しびれました。

    そして、ラストの倫子からの手紙..
    これは、シリーズを順番に読まないとだめです。

    とってもお勧め!

  • 御子柴礼司シリーズ第三弾!!!
    筆者である中山七里さんの頭の中はどうなっているのだろう。
    どんでん返しの連続で予測していた以上のことが起こるから面白い。
    まさか!!!こう来たか!!!って感じでした。

    目次から
    第一章 被告人の従順
    第二章 被害者の悪徳
    第三章 証人の怯懦
    第四章 弁護人の悩乱
    これを見ただけで物語の展開に様々な思いを巡らせてくれる。

    贖罪の償い方に焦点を当てて読み入ってしまう。公判最終弁論の場面なんかはハラハラドキドキしながらも御子柴自身の深層心理を感じずにはいられない。御子柴の成長した姿を見ました!!!

  • 弁護士御子柴礼司シリーズの第3弾。鎮魂曲とはモーツァルトのレクイエムのことだが、何故題名がそうかは大きな意味を持つ。
    少年院時代の恩師稲見が殺人容疑で逮捕され、弁護をもぎ取るためにヤクザの山崎の手まで借りる。(あのヒートアップと逃亡刑事の山崎だよね)今回の御子柴の大きな壁は、実は被疑者の稲見自身だったのだ。何とか無罪を勝ち取るために、御子柴は足を使い、頭を使い、あらゆる手段を使い奮闘する。今回は冷静ではいられないのだ。最後は、どんでん返しのどんでん返しが続く。罰、贖罪ということをいろいろ考えさせられる。
    介護施設の職員の入所者への虐待が取り上げられているが、世の介護施設の実態はどうなのだろうか。作者は非難するだけで行動することのない安易な思いを打ち砕く。
    最後の津田倫子の手紙には驚いた。これこそ素晴らしい不意打ちだ。前作を読んでこそそう思えるのだが。

  • 御子柴シリーズ 第3作
    今回も手が混んでます。
    御子柴が少年院時代の恩師であり、父親として慕っていた元教官が、入居中の介護施設内で殺人事件を起こす。本人は殺人を認めているも御子柴はその無罪を勝ち取ろうと弁護を引き受ける。
    現代社会の問題点として介護を取り上げている。小説は事実より奇なりというくらい過去の事件まで絡ませる。最後まで読み飛ばせないですよ。
    この調子でいくと、御子柴弁護士の関係者がどんどん犯罪者になりそうですね。事務員さんなんかもあやしい雰囲気。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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