晴れたり曇ったり (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935968

作品紹介・あらすじ

「不純で鈍感な大人。けっこうわたしは、好きだ」「ときどきスランプは、やって来る」「さくら餅の、あの葉っぱはどうするのか」「寝そべってものを読む癖のある子供だった」……日常のこと、読書のこと、子供のころの思い出。優しさと可愛さと愉快さが同居する、心が温かくなるエッセイ集。未収録の一編も書籍初収録!

感想・レビュー・書評

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  • さらっと(それでいてわくわくして)読んだが、今までの中で一番心に残ったエッセイだと思う(著者の中で)。
    川上弘美さんが小説を書かれるとき、まずはじめに全体の「雰囲気」を決められていることを知った。
    内容や筋道については曖昧なままでいいのだが、雰囲気が決っていないと書き始められないと。

    笑えばいいのか悲しめばいいのか判断のつかない微妙な、
    道端の空き缶を蹴ってみたが外れて気まずい、
    世の中の全部を許してしまいたくなるうきうきした、
    例えば、そういう様な雰囲気。

    著者の小説を読むと、それぞれ独特の空気がある、と伝わってくるのはそのせいなのだと思った。ふわふわして掴みどころがなく、時々奇妙でそれでいてその中には現実の問題、その先に希望が見える。一つ一つ違う雰囲気。

    背筋がぴんと伸びておられ真面目でそれでいて、(天然系の)面白さ、ときに少女のような可愛らしい雰囲気(私などがいうのはとても僭越なのですが)。少し向こうから微笑んでおられるような川上さんのイメージがそのまま表されているエッセイだと思った。

    セーター 霜月
    毛玉ができた男の子のセーターのお話。(私も)男性がセーターを着ることがなんかいいな、と思っている。のでとても印象に残った。

    スランプのお話
    時々スランプはやってくる。仕事、人間関係でなく「生きていること自体」のスランプ。助けて、と誰かに言っても、誰も助けてくれない。誰かに助けられるのも、本当は困るし(そうだ!時と場合にもよるが、自分で乗り越えなきゃ、ですよね、助けてもらったとしたら後にひくし。ただ言ってみたいだけ、誰か助けてって)。
    そういう時はどうするか。
    そういう時には、水のたまった瓶の底に沈む小石のように、ただ一人しんとしている。
    (そうか、ただ一人しんとする!)

  • ふんわりつかみどころない川上さんの日常をこっそりのぞいている気分。

    ウニは私の仲間である。
    の文章は泣けてきた。

  • 「不純で鈍感な大人。けっこうわたしは、好きだ」「ときどきスランプは、やって来る」「さくら餅の、あの葉っぱはどうするのか」「寝そべってものを読む癖のある子供だった」……日常のこと、読書のこと、子供のころの思い出。優しさと可愛さと愉快さが同居する、心が温かくなるエッセイ集。未収録の一編も書籍初収録!

  • 晴れたり曇ったりという喫茶店、いまもあったら絶対行ってたなあ

  • エッセイはその人の素の部分が見られるから、怖くもあるけどハマった時には一気に好きになります。
    小説家は難しい堅いことを考えていそうなイメージ。もちろん、それで間違ってはいないと思うけれど、結構変わり者だったりもするものですね。
    川上さんの著作は、不思議な世界観で、その不思議さが垣間見えた気もするし、そうでもない気もするし。
    秋の散歩道で、これまでに出会った人や想い出、考えたことがとりとめもなく際限なく蘇ってくる感覚が分かる気がしました。

  • 00~12年掲載のエッセイ集でしたが、文庫解説だけは分かりやすくかしこまってて、なんだか笑ってしまった。
    真面目な人なんだなあ。
    エッセイに関してはこんなに1冊の収録作で作風が変わるのもすごいな、と思った。
    12年も経ったらそりゃそうかもだけども。

  • 2019.7月。
    川上さんのエッセイ。作りこんでないみずみずしさ。軽やかさ。強さ。この感じ、好み。

  • 川上弘美を久しぶりに読んだ。
    獺祭ということばについて初めて知って、思わず雑記帳にメモした。かわうそ、、、獲った魚を岸に並べるなんて想像するだけでかわいい。。
    ブルームーンもすごくよかった。
    生きるってほんとにすごいことなんだ。

    あと、当事者になってみないとわからないっていう話も。当事者にしかわからない苦しみがあるし喜びがあるんだよね。周りの人があーだこーだ言えることじゃない。

    よい一冊でした。

  • 結局作家は陽に陰に自分を切り取って作品に投影することでしか産み出す行為は出来ないのだろうか.私生活でどんなことがあろうと,それらを含めて言の葉を紡ぐしかない,因果な商売だとも感じる.

  • とても柔らかくてしみじみとしたエッセイ。言葉が水のように染み込んできます。ゆるゆると日々を過ごしてらっしゃるようで、でもそんな中で、離婚されたり、悪性の腫瘍が見つかって手術されたりしていたことを知り驚きました。死を、身近に感じます。生きていく中でスランプに陥っても、この川上弘美さんのエッセイを読んでしんと沈んでやり過ごそうと思います。読めて良かったです。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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