赤ヘル1975 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934794

作品紹介・あらすじ

一九七五年――昭和五十年。広島カープの帽子が紺から赤に変わり、原爆投下から三十年が経った年、一人の少年が東京から引っ越してきた。
やんちゃな野球少年・ヤス、新聞記者志望のユキオ、そして頼りない父親に連れられてきた東京の少年・マナブ。カープは開幕十試合を終えて四勝六敗。まだ誰も奇跡のはじまりに気づいていない頃、子供たちの物語は幕を開ける。

感想・レビュー・書評

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  • 1975年の広島が舞台。
    3人の中学一年生を中心とする物語。
    原爆の傷跡、閉鎖的な町、転校、友情など、様々なテーマが一冊に込められています。
    広島カープが1975年に優勝できたのは、赤ヘル集団から赤ヘル軍団になったから。
    野球は一人ではできない、みんなで補い合いながら仲間で戦う。
    600ページ以上ある本ですが、解説まで含めて、非常に読み応えのある本でした。
    大人にも子供にも読んでもらいたい、おすすめの一冊です。

  • カープが初優勝をしたのは広島県人になって2年目のことで、優勝の瞬間は歯医者の診察台の上にいた。 「もうすぐ優勝が決まるよ!」という奥からの声に先生は治療器具を手にしたまま診察室から出ていったきり帰ってこず、1時間ほど天井と医療ライトを眺めていた思い出がある。 当時の広島県人の思いが詰まったユーモアとペーソスに溢れた作品だった。個人的な思い入れもあり、また何年かしたら読み返したい。(o^^o)v

  • 「忘れてはいけない」
    という事がテーマの小説だった気がします。

    題名から簡単に受け取るのは、
    カープや初優勝のこと。
    でも、重松さん、流石それだけじゃなかった。

    戦争や原爆の影響のこと。
    都市や地方の格差のこと。
    両親や血縁の大事なこと。
    土地や引越の無様なこと。
    感謝や憎悪の発生のこと。
    夫婦や子供の関係のこと。
    戦前や戦後の変化のこと。
    投機と商売の心情のこと。

    そして。
    怒りと祈りを忘れない事。

    全ての場面において、悪感情を吐き出す、まさに今だけ派の人物群と、優しさ溢れる未来志向の感情を持つ人物群が用意されていた。
    その対極的な感情のぶつかり合いが書かれていたのが印象的でした。

    人は今を生きるために、忘れざるべくして忘れ、この瞬間に集中してしまう。

    ふと、何かのタイミングで。
    過去の経験、目を背けてきたもの、忘れたい出来事、負の側面や負の感情、そんなものが「心の中」に溢れ出る時がある。

    ただ、何かのその反面で。
    助けられた経験、真正面に向合ったもの、忘れちゃいけない出来事、陽の側面や正の感情、そんなものが「心の中」に沁み出る時もある。

    この揺り返しがありながら、誰もが人生を歩く。

    「ほいじゃが、忘れたらいけん、忘れてしもうたらいけんのよ」
    刻まれた、悲しみと苦しみと怒りと祈りを、決して忘れてはならないように――。
    -p563


    実際、広島に生まれ育ったせいで、個人的にあちこちの文章で共感もあったし、地名や広島弁がなんとも心地よく感じた読後感でした。
    原爆ドームと旧広島市民球場の間の、相生橋などは毎日通勤で利用している。

    ただ、そんな地元愛を越えた、普遍的な魂の叫びが、重層的に広がる登場人物たちの中にから読み取れるという点において、とてもイイ小説に出逢えたと思いました。

    そして関係ないけど。
    今期(2019年)は4位に終わったカープでした。。。笑

  • 文庫本で600ページを超える大作?
    ん~、半分は広島カープの初優勝の話なので、そこを外せば半分で済む物語。
    戦後30年の高度成長期末期の頃、まだまだ生活するのに精いっぱいの人たちがたくさん居た頃の話なので、そこのところは懐かしく読ませて頂いた。
    重松清の本は久しぶりだったけど、これはあまり人には勧めないだろうなぁ。
    という事で星二つ。

  • 1975年。終戦からまだ30年しか経っていない広島へ転校してきた中学生のマナブと広島育ちの同級生ヤス、ユキオ、そしてクラスメートの真理子との交流の話。タイトルからは赤ヘル軍団カープの初優勝への軌跡がメインテーマのような印象を受けるが、実際はそうではない。赤ヘルの快進撃はむしろBGMで、中学生同士のぎこちない友情と、原爆被害の悲惨さあるいは戦争の記憶を継承していくことの難しさとが交互に物語の主旋律をなしており、特に後者は相応に重いテーマとなっている。

    赤ヘル初優勝のストーリーを主に期待して本書を手に取る人は、やや期待を裏切られるかもしれない。ただ、荒くれものが多かった当時の野球界のエピソードは現代の常識からの想像を超えていて、そこだけピックアップしても興味深く面白い。その意味では、単に野球好きというだけで本書を読むのも決して悪くはなく、もしカープ好きならば球団のルーツとバックグラウンドを理解する上で間違いなく一読に価する。

    いくつも絡み合うテーマをよく深堀りして描き切ったなと思わされる一冊。

  • すごい。
    重い話とカープと親子と連れ、全て込められた本。

  • 広島が、カープが、より好きになりました。読んで良かったなぁ、と思った1冊

  • 広島ネタが満載で、贔屓をして最高評価。
    広島弁と、小さいころに聞いたジャンク語が盛り沢山。
    原爆投下、1975年カープの初優勝と、やんちゃな野球少年、転勤族の子供たちの成長と共に描いている。
    1、アメリカの行った理不尽な事実
    ・B29の爆撃機に付けられた名前は記帳の母親エノラ・ゲイ
    ・8/8福山、岩国、東京空襲で 原爆後も大量殺戮

    2、・結核で入院中の患者が、カープ樽募金を呼びかけ
     金山に手紙を書いたら、入団OKの変身を返した
    以後RCC解説者として活躍
    ・山本一義 地元への情から入団。
     広島に来るたびにファンの熱烈な歓迎を受けた
    ・中日との終盤対決で、クロスプレーでトラブル。ファンがグラウンドに流れ込んで中日の選手を負傷させた。
    警察とも衝突し、逮捕者も出る。翌日の試合が中止に。
    3、優勝決定するかもしれないヤクルト戦は、平日デイゲームだったが満員に。皆仕事を休んで観戦。
    教室でラジオ放送を掛ける学校の先生。確かにこんな先生はいた。
    4、寮の大家さんが、家具や着物を売って選手に肉を食べさせた話は有名。雨で試合が中止になっても払い戻し無し。
    5、1958の設立から26年間最高順位は3位。

  • 赤ヘルになって初優勝した1975年。
    カープの話というより、戦後30年の広島という街のお話。
    600頁超でボリュームも内容も読み応えあり。⚾️

  • 「よそもの」である転校生を主人公に、万年Bクラスだった広島カープが初優勝した頃の広島を描いた作品。広島初優勝までの軌跡をファン目線で語る話かと思いきや、原爆、マルチ商法、ひとり親、友情など、様々な要素も入り混じる、戦後の広島を描いた作品となっている。

    2016年の広島カープ優勝の際、店頭に並んでいたカープ特集のなかから購入。作品のなかで登場する広島弁が小気味いいせいか、1975年当時の描写が豊富に描かれていたためか、あたかも当時にタイムスリップした気分を味わうことができ、サクサク読み進めることができた。また、広島市民のなかで原爆がどのような形で日常生活に組み込まれているか知る一助になった。時折読み返したくなる良書。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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