ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934077

作品紹介・あらすじ

65歳の男が、20年前に同僚だった女性のお見舞いをしたくて、1000キロの道を歩き始める。世界36ヵ国が涙したロードノベル!

感想・レビュー・書評

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  • 定年退職した 65歳の男性が
    20年前同僚だった女性から手紙が届いた。
    癌で危ないらしい。
    返事を書いて ポストに投函しようと出かけたら
    会って 「ありがとう」と 伝えたくなり
    そのまま 1000KMの道を歩き始めるというお話。

    主人公が心に悩みを抱えたまま 歩くのですが
    途中で出会った人たちとの 心のふれあいによって
    心がすっきりしていく様子が 描かれています。

    「わからないことでも 信じれば何かが変わることがある」
    「受け取る事は与えるることと同じように 贈り物なのだ。
     受け取る事も与える事も ともに勇気と謙虚さの両方を必要とする」
    などど いう 文章が あり、 主人公を 見ているつもりが自分に置き換えてしまって 読んで納得しながら 読み終えました。

    人は生きていく上で 予定や持ち物など 色々必要なものがあるように思えますが
    それらを 全て手放しても 生きていける。
    でも、人は生きていく上で大切なのは やはり 心 (信頼 愛)
    それさえあれば 生きていける そんな風に感じました。 

  • 仕事も引退してイギリス南部の家で妻と余生を過ごすハロルドのもとにある日、元同僚の女性から1通の手紙が届きます。
    彼女は病気で余命いくばくもないことを知り、ハロルドは手紙の返事を書いてポストに投函しに出かけるのですが、一番近所のポストを通り過ぎ、次のポストまで…と思って歩き、そこにつくと、いや、もう一つ先…と通り過ぎて、そのまま歩き続き、あるガソリンスタンドで出会った店員の一言がきっかけとなり、そのまま彼女のいるイギリス北部まで歩いて会いに行こうと決心するのです。
    その間、色々な人に出会い、自分の人生、関係のこじれてしまった妻や息子のことを振り返り、ハロルドの今までの人生を紐解いていくのですが、これが、ハッとするような出来事が起こっていて、中盤からはドキドキしっぱなしでした。
    ハロルドが到着するまで、手紙の元同僚女性は生き続けられるのか、という点もドキドキしながら、とにかく頑張れ、頑張れ!と思いながら読みました。
    ハロルドの心境が旅を通して移り変わっていくところも面白かったです。

  • 読みながらつくづく思うのは
    翻訳が上手いなということ。
    この本を勧めてくれた知人は
    原書で読んでいる。
    英語はわからないので訳書を読んでいるが
    翻訳のうまさは感じられる。

    「記憶がつぎつぎによみがえってくるとは
    思いもよらないことだった。
    たぶんこうして歩いているせいだ。
    車を捨てて、自分の足で歩いてみると
    景色以上のことが見えて来るのだろう。」

    「楽しみが続くあいだは楽しむことだ」

    ずっとクウィーニーとはどういう女性なのか、
    息子のディヴィビッドは?
    それを思いながら読むことになる。
    そして出会った人たちの人生や生活が
    浮き彫りになって深みを与える。
    先刻気がついたがもう一冊の本があるのだな。
    『ハロルド・フライを待ちながら
    クウィーニー・ヘネシーの愛の歌』

  • ハロルドの巡礼の旅は、日本で謂えば、四国のお遍路さんの旅に似ているのでしょうか?
    歩くことで、足を反対の足の前に出し続けることを単純に繰り返すことで、…、どれ程の時間と言い訳、痛みと諦めと望みを繰り返すことで、純粋に自分と向き合うことができるのだろうか。
    ハロルドも、長くいつ迄も歩くうちに、心に秘めた記憶や、本来剥きだすべき想いを、何度も温めては捨て、捨てては拾い上げる。後悔と後悔と後悔と、秘めた…。
    これは、退職後になってやっと気づくことができるのだろうか。これは、巡礼をすることによってやっと辿り着けることだろうか。野宿がよかったのだろうか? 単なる老後の道楽でしょうか? 過去を振り切る儀式でしょうか? ふと、そんなことを思い描いていました。
    悲しい思い出と、明日に続くだろう最後が、少し救われた気がしました。これも、同行二人なのでしょうか?

    気になったフレーズは以下:
    ★彼はいま、かつて自分が犯した過ちを償うために歩いている。
    ★彼はもはや距離をキロ数では測っていない。自分の記憶で測っている
    ★たとえそれがたった一度でいいから自分の信じることを、すべての困難に抗ってしようとしているというだけが理由だとしても
    ★ふたりが二十年もの時間をかけて育ててきた沈黙と距離のせいで、ありきたりの会話までもがうつろに響き、苦痛にさえ感じられた
    ★サーガ・ジェネレーション:この国のかつて手厚い社会福祉制度の恩恵を受けて快適な年金生活を保証された最後の世代
    ★地面にでっかい穴を発見するようなものさ。最初のうちは、穴があることを忘れて、しょっちゅう落ちる。しばらくすると、穴はまだちゃんとあっても、それを迂回して歩くことが身につく
    ★自分はいまこの目に映るものの外側にいると同時に内側にもいる。歩くとは、じつはそういうことなのだ

  • イギリスのビール工場を退職した65歳のハロルド・フライが、癌である友人のため、お見舞いに行く話です。
    手紙をもらい、返事を投函しに行ったガソリンスタンドの店員に言われた一言で、1日も長く生きるよう願い、病院まで1000キロ歩くことを決めます。
    友人や妻や息子に対して過去の行動で後悔がある主人公の生活は、穏やかだけど不幸です。
    店を出てすぐ、所持品はカード1枚、携帯電話も地図も持たず、また足にはデッキシューズを履いたまま出発します。
    道中で出会う人々は、それぞれ悩みを抱えているため、暗い描写や地味な内容も続き、人によってはしんどいかもしれませんが、主人公の再生の物語なので読後感は爽やかです。
    また、終盤のガソリンスタンドの女性に宛てた手紙に、主人公が何故歩くのか、想いの全てが込められており、震えます。
    もし今読んで面白くなくても、数年後かもっと先には感想が変わるかもしれない本です。
    訳書もよいですが、原書で特に緑と空のカバーのペーパーバックがおすすめです。(Arisaさん)

  • 時間があれば。

  • 末期癌の古い友人に会いに1000キロ歩いて行く老人。その道程で人生を振り返る。
    いろいろなことがあった人生。悲しくても不本意でも輝いていても楽しくても行き違ってしまっても、やり直すことはできない一度きりの道のり。
    感動というのとは少し違う重くて深い話だった。

  • 65歳の男が、20年前に同僚だった女性のお見舞いをしたくて、1000キロの道を歩き始める。世界36ヵ国が涙したロードノベル!

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著者プロフィール

イギリス生まれ。前作『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』が2012年に刊行されるやいなやブッカー賞候補にノミネート。同年National Book Awardsにより「今年もっとも期待される新人」のい選ばれ、以降世界36ヵ国で刊行される。

「2016年 『ハロルド・フライを待ちながら クウィーニー・ヘネシーの愛の歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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