- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062933612
作品紹介・あらすじ
著者史上、最上の哀切と感動が押し寄せる、直木賞作家・葉室麟の傑作! 峻烈な筆で武士の矜持を描き出す渾身の時代長編。
下士上がりで執政に昇り詰めた桐谷主水。執政となり初登城した日から、忌まわしい事件が蒸し返され、人生は暗転する。己は友を見捨て出世した卑怯者なのか。三十半ばにして娶った妻・由布は、己の手で介錯した親友の娘だった。自らの手で介錯した親友の息子・喬之助が仇討ちに現れて窮地に至る主水。事件の鍵となる不可解な落書の真相とは――武士の挫折と再生を切々と訴える傑作。
序盤から畳み掛けるような波乱の展開である。喬之助が差し出した証拠はとても明白なもので、ではなぜ当時それに気づけなかったのか。そして真犯人は誰だったのか。もしも当時の主水の証言が間違っていた場合、藩としても喬之助の仇討ちを妨げられないと家老に言われ、主水はもう一度事件を調べなおそうとする。そこで手がかりになりそうな過去の事件が浮かび上がるが、なぜか邪魔が入り……。(中略)執政の上役たちは皆何かを知って隠しているようだし、主水の監視役に付けられた小姓組の早瀬与十郎も敵か味方かわからないし。そして、犯人につながる手がかりを目の当たりにしたときのサプライズ! さらにそこから……いや、それは書かないでおこう。落書事件の真相探しが、思いもよらぬ大事件に発展するとだけ申し上げておく。(大矢博子・解説より)
感想・レビュー・書評
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親友の罪を証言し、その親友の切腹に立ち会い首を落とした主人公の桐谷主水。その事もあり、「氷柱の主水」と呼ばれて下士から執政に昇り詰める。親友の娘を娶るが、その弟が真犯人が居るとして主水を父の仇と藩に敵討ちを求める。元々、周囲は主水に批判的で失脚した方が良いという雰囲気。監視が付き、これが非常に嫌な奴。ここまで読むと非常に重く陰鬱で、読む気が失せてくる。
真犯人探しが始まると急転してゆく。ミステリの要素が増えてくる。元対立派閥のトップに面談したことにより、原因と犯人が分かる。他の執政達は知っていて隠蔽していた。敢然と闘おうとする主水。
秘策を以って敵討ちに臨む。最後は意外な人物が手助けする。ただ、一番最後に詳細な事実が明かされるが、何だか安っぽい話しに落とされたような気分になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった
時代小説ながらもミステリー
ミステリーとして読むと、ちょっといまいちなところはありますが、最後のどんでん返しもあって、楽しめました。
ストーリとしては
下士あがりで執政に昇り詰めた桐谷主水が主人公。
初登城では四面楚歌。親友を見捨てて出世した卑怯者として、周りから疎まれます。
10年前、主水の親友綱四郎が前藩主を中傷する落書を書いたとして疑われ、主水はその筆跡が綱四郎と証言。結果、綱四郎は切腹、介錯は主水が行うことに。
出世のために親友を見捨てたとみなされます。
そして、その娘を妻に迎えて暮らしてしますが、綱四郎の息子が10年前の事件の犯人が綱四郎ではないという証拠をもって、仇討ちに現れます。
10年前の事件は冤罪だったのか?
事件の真相を調べなおそうとしますが、主水の監視役に与十郎がつけらえます。
与十郎は敵なのか?味方なのか?
落書に署名されていた「百足」の文字
百足はだれなのか?
事件の真相は?
といった展開です。
そして明らかになる驚きの真相。
悪人たちに対して、反撃する主水
半沢直樹を彷彿とさせます(笑)
そして黒幕が明らかになったとき、哀しく、苦しい想いも明らかになります。
ここが葉室麟なのねって感じ。
とってもお勧め -
「人生は選択の積み重ねである」と解説で述べられてあるが、人生の岐路の立っての判断ともいえるだろう。
些細な日常でも、右か左か正か否か、読者もまた様々な局面で判断を強いられているだろう(コロナウイルス騒動の現在も)。
過去に下した己の判断の正否が、心の重荷になっている主人公。冷酷非情に藩命を遂行し、「氷柱の主水」とも仇名されている。
著者の小説の大概を占める清廉潔白な主人公とは一線を画する人物設定。
事件の鍵となる落書の真相を巡って窮地に陥ると、謀計術策を駆使し、局面転回を図る。
誰が味方で誰が敵か、ミステリアスな展開に、夫婦愛や男の友情も加わり、読者の目をくぎ付けにさせる時代小説。 -
葉室麟の本はいつも面白いが、本作もその通り。本作は終わり方も比較的明るくて良いと思う。前半は主人公がかなりの窮地に追いやられ、読んでいて苦しく感じるほど。それだけ感情移入できるということだし、ストーリー展開も自然で納得できる。心洗われる読書をしたい人にはオススメの作家。
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黒島藩という豊後にある架空の藩を舞台にした連作のひとつ。豊後というのはよさげな場所なのか、ここらあたりの架空藩の物語が他にもいくつかあったような。藩の重役に取り立てられた桐谷主水が以前関わった友人の処罰事件への積極的関与を疑われ、対立する派閥の重役たちの思惑や仇討ちを狙う家人に悩まされながらも、自身の潔白の証しをもとめて探索する、というミステリ仕立ての物語。結局裏で糸を引く意外な黒幕の正体が判明して幕となるのだが、民主警察の時代ではないので、そこで簡単にお縄というわけにはいかない。そこで、早瀬与十郎という脇役が表舞台に躍り出て幕を引く。たしかにうまくできてはいる。孤立する桐谷と心揺れながらも支える妻女の由布というのも、この著者によくあるパターンだが、役者がそろっていながら底が浅いというか、他の名作に比して一頭地を抜くという域には達していない感じ。
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この作品は、江戸時代を舞台にしているけど、本当の人としての「義」を貫いた武士を描いていて、清々しい。江戸時代は、徳川幕府の政策のために、「愚かな主にでも忠節を尽くすのが武士道」などという馬鹿げた思想が、蔓延っていたので、この作品のような「義」を通す話は、気持ち良い。
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内容紹介
下士上がりで執政に昇り詰めた桐谷主水。執政となり初登城した日から、忌まわしい事件が蒸し返され、人生は暗転する。己は友を見捨て出世した卑怯者なのか。三十半ばにして娶った妻・由布は、己の手で介錯した親友の娘だった。自らの手で介錯した親友の息子・喬之助が仇討ちに現れて窮地に至る主水。事件の鍵となる不可解な落書の真相とは――武士の挫折と再生を切々と訴える傑作。 (解説・大矢博子)
著者史上、最上の哀切と感動が押し寄せる、直木賞作家・葉室麟の傑作! 峻烈な筆で武士の矜持を描き出す渾身の時代長編。
下士上がりで執政に昇り詰めた桐谷主水。執政となり初登城した日から、忌まわしい事件が蒸し返され、人生は暗転する。己は友を見捨て出世した卑怯者なのか。三十半ばにして娶った妻・由布は、己の手で介錯した親友の娘だった。自らの手で介錯した親友の息子・喬之助が仇討ちに現れて窮地に至る主水。事件の鍵となる不可解な落書の真相とは――武士の挫折と再生を切々と訴える傑作。
令和元年7月12日~14日 -
まさかまさかの展開。四面楚歌の主人公の味方にこの人物が。そして切ない別れ。読んで良かった珠玉の作品。