- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062933513
作品紹介・あらすじ
東国から帰洛した親鸞に魔手が伸びる。専修念仏を憎悪する怪僧・覚蓮坊が、親鸞の長男・善鸞をそそのかし『教行信証』を奪おうとしたのだ。だが、その前に立ちはだかったのは、数奇な半生をたどり、宋の富商に身請けされたという謎の女借上、竜夫人だった。このふたりと、親鸞の因縁とは? 入魂の三部作、完結。
感想・レビュー・書評
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さて、超エンタメ五木版「親鸞」の完結編である。やっと文庫になりました。
「‥‥わたしは法然上人のお言葉を信じた。いまも信じている。もし、万一、そのお言葉がうそいつわりで浄土などなかったとしても、わたしはすこしも後悔などしない。だまされたと臍をかむこともない。もしあのとき法然上人の教えに出会わなかったら、わたしは生涯、無明の海を漂いつづけたことだろう。つくづくそう思うのだよ」
「はい」
唯円は短く答えて、頭をさげた。親鸞の言葉の全てが完全に理解できたわけではなかったが、親鸞が自分を正面から受け止めてくれている、ということだけは、はっきりとわかった。(380p)
完結編では、遂に親鸞、唯円、善鸞という倉田百三「出家とその弟子」の主要人物が勢ぞろいする。いわゆる「善鸞事件」を縦糸に、親鸞の「思想」の完成形を横糸に描いて行くのだろうと予想される。
しかし、親鸞の「教行信証」は、親鸞の迷いの所産として扱われるし、上に引用した親鸞の言葉は、正に唯円の「歎異抄」の中の「たとい法然聖人にすかされまいらせて、念仏して地獄に堕ちたりとも、さらに後悔すべからず候。」の場面である。私は唯円がこれを聴いて、はっと自分の信仰が大きく進む場面を想像していた。しかし、完結編に至っても、唯円はおろか親鸞さえもまだ迷っているのである。これが五木版親鸞なのか。
今回、「青春編」で登場した懐かしい人々がたくさん出てくる。一度は親鸞(範宴)に恋していた覚蓮坊(良禅)が、親鸞を徹底的に憎む役割で出てくる。善鸞も倉田版のようなどうしようもない人物ではない。また、黒面法師も名前だけは上巻で登場する。青春編で投げかけられた問いは、完結編で全て回収されるのか、上巻を読む限りは、まだ一切わからない。片鱗しか見えない。不安である。
2016年5月27日読了 -
60越えて京に戻って来たところからスタート、かなり伝奇的になってきて面白くなって来た。実は親鸞=イーサン・ハントでもよかったんでは、と思うが親鸞=チャールズ・エグゼビアな感じです。親鸞自身は親鸞なままなんですが、回りが普通の人でなさすぎるのでミラクルな事に(あははは)。ものすごくおもろいです。
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京都に戻った親鸞が90歳で没するまでを描く(レビューは上下巻まとめて)。
親鸞自体は動きがない(高齢で動けない)中、様々な動きがある。黒面法師などの過去からの因縁ある人物達の念仏を巡る戦いのドラマチックな展開と共に、親鸞自身の老いや息子や組織を巡る苦悩も描いている。
親鸞ほどの人物でも死の間際まで様々な苦悩を抱えて生きている。しかし、そのことこそが他力によって救われるという浄土真宗の真理のように感じた。
宗教小説の金字塔完結。 -
だいぶ前に「親鸞」全三部作の第一部(青春編、上下)、第二部(激動編、上下)を読んでから、かなり時間をあけてようやく第三部(完結編、上)を読んだ。その間読みたい本が次から次へと出てきたためなのだか、今この完結編(上)を読んで、すぐに読まなかったことを後悔している。
青春編で親鸞の8歳から35歳までの京での生い立ちと当時の社会風景、登場する色々な人物が親鸞と関わり影響することにわくわくした。そして激動編で越後から東国での36歳から61歳までの専修念仏説法の人生の物語に少しだれた。今回の完結編上巻は61歳にして再び京に戻り、新たな陰謀に巻き込まれる物語。青春編で登場した人物が90歳以上の高齢で登場し、大きな影響を及ぼすという物語で俄然面白くなる。
今でこそ浄土真宗は日本最多の門徒を有する仏教宗派だか、最初は異端の新興宗教で時代の例外なく弾圧されたことがわかる。そしていかにして闘い人々に支持されていったかという視点の物語ではないんだなとも思った。ミステリアスな謎から謎へと展開する歴史サスペンスであり、90年を経る因業の物語であるとわかった。
親鸞は好きな歴史的人物だが、何となく遠い存在の人物だったのが、どこか親しみを持った人物になったような気がする。
親鸞と長男善鸞との関係がどうなるのかも気がかりだが、覚蓮坊との闘いの行方、そして青春編から関わっているツブテの弥七や黒面法師も気になる。今回登場した竜夫人の存在感も気になる。完結編の下巻をこれからすぐに読もうと思う。そして青春編、激動編をもう一度読み直そうと思う。 -
京都に行った親鸞は動かない。周りは因縁の相手も含めて動きはあるが、親鸞はじっとしている。そうこうしていると80歳になる。それでもまだ迷う。迷いは尽きないし、即答が出来ない質問も多い。単純な教えゆえ、満足行く整理が難しいのだろうか。生に執着する事もおかしいという整理もあるようだし。宗教は難しい。善鸞の嫁の涼は恐ろしい。
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親鸞も80歳を超え、残すところ下巻のみになってしまった。
少し寂しい。 -
何となく今の感覚で読んでしまうけど、実は住む地が離れるというのは今生の別れを意味する時があるのか……。そして親鸞は遂に歎異抄へ!下巻が気になる!
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新たな怪人竜夫人が登場。覚蓮坊とのせめぎ合いが始まる。2018.3.3