ギャングース・ファイル 家のない少年たち (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062931045

作品紹介・あらすじ

「俺たちは生き抜いてやる!」親と社会に棄てられた少年たち。金も家もない彼らが、少年院で出会った仲間と選んだのは、犯罪だった。強盗、詐欺、闇金、デリヘル斡旋。大金を得ても満たされない「居場所」を求める心。地縁も血縁もなく、社会の被害者である少年たちは、なぜ犯罪者になるのか、そして孤独の中で何を思うのか。人気漫画「ギャングース」原案、少年犯罪のリアルを抉り出す、衝撃のルポルタージュ!

感想・レビュー・書評

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  • 生きるために犯罪に走る少年たちのルポルタージュ。裏稼業に走る不良の姿が詳細に描かれている。

    彼らの行いは犯罪であり、社会的に認められるべきものではない。しかし、著者は犯罪それ自体ではなく、なぜ彼らがその犯罪を犯すに至ったのか、その背景にこそ注目すべきだと説く。

    少年たちによる凶悪な犯罪が明るみになったとき、人々はその事実それ自体に目を向け、その背景にまで思考を巡らせることは少ないのではないか。なぜなら、人々は犯罪それ自体の衝撃性には関心を向けるが、その犯罪を犯した少年については「昔から悪さばかりしてたどうしようもない不良だ」と一方的にレッテルを貼り、彼らがどんな人間か、犯罪を犯すに至った理由は何かについては興味が無いからである。

    著者は「悪とは何だろうか」という問いを通じて「法と悪」の意味を考えた結果、「法とは悪を裁くものではなく、違法を裁くものに過ぎない」という結論を導き出した。彼らは確かに加害者であるが、生育環境が劣悪な生まれながらの被害者でもあるのである。

    少年たちの犯した犯罪のみに注目して、「彼らは悪である」と一方的に断罪することがいかに近視眼的なモノの見方であるか。本書を通じて、強く感じた。

  •  映画などエンターテイメントでは犯罪行為に、世間に対して風穴を開けるような痛快な気分になることがある。ニュースに対してもそう感じることもある。しかし、この本でそういった犯罪行為に手を染める人たちが、本当に止むに止まれず、そこに追い込まれる形で行っており、行為がうまくいったとしても追われるような気分で過ごしている。また、そこでの勝ち組になるのは一握りでほぼみんなつらそう。

     しかし手口や、行為の描写がとても面白く、活き活きと描かれていて、ワクワクする。

     著者は、青少年犯罪者やその予備軍は社会的弱者であり、手を差し伸べるべき存在であると語る。この本を読んでいると確かに全くその通りだ!という気分になるのだが、最近知り合った発達障害の若者と接するのがとてもきつくて、自分にはその適性がないと悲しくなった。

  • 憎むべき「悪」であった犯罪者と呼ばれる少年や青年たちの裏の姿…本当の姿?を知ることができた、ある種衝撃を受けた作品。
    生まれつきの悪なんて本来はいないのかもしれない。生まれた環境でその人の一生は左右される。その事実を突きつけられた気がした。
    決して犯罪は許されることではないけれど、社会問題を見る目が変わる。
    読んで知って終わりにしたくはない。

    登場人物たちからは、すごく、人間くささを感じた。

  • 漫画ギャングースの原案ルポ。
    ギャングースは途中からなんとなく読んでいたが、いろいろ思い出したし、補完されたことも多い。
    それにしても、取材対象となった少年たちの境遇の悲惨さ。舞台となった当時から20年近く経っても変わらないどころか酷くなっている。
    山本譲司さんの名前がここでも出てきた。「累犯障害者」読まねば。
    辻村深月さんの解説も良かった。

  • さわりしか読んでないが、だいぶこのテーマの本は読んできたのでよいかな。

  • 蔵書(千葉1)
    新刊(千葉1)

  • ふーん。

  • 非常に鮮烈に、ギャングのリアルを切り取っている。
    こういった一般人が知り得ないノンフィクションものだと、信じられるのは文体を通した作者の人格だ。
    しかるに、鈴木大介には自己顕示欲があまりないように見える。
    純粋に不良少年少女が気になり、その姿を活写している。
    だから、安心して俺はこの中身を楽しむ。

    アウトローと、そうでないわれわれ一般人はおそらく交われない。なるべくしてなったアウトローとは、共有できる価値観が極めて少ないからだ。そしてその価値観のズレは、時として暴力となって我が身を襲う。
    しかし、アウトローのビジネスもまた、われわれの世界と同じアタマと度胸の世界である。逃げ場はない、楽な人生はないのだ。

    ところで、文章はそううまくないが、「カラフルな人間たち」という表現は、刹那性と虚無感、暴力性を含んでいてとてもよい。

  • 面白かっただけにホントに脚色ないのかなと疑ってしまう。

  • モーニングの連載よりこっちの方が面白かった。

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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