- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062930581
作品紹介・あらすじ
大学の探偵助手学部に通う君橋と月々は、志望のゼミに落ち、悪ふざけで出した第3希望の猫柳ゼミ行きが決定してしまう。指導教官は、功績不明かつ頼りなさげな女探偵・猫柳十一弦(25歳)。ショックを受ける二人だったが、名門ゼミとの合同合宿が決まり、勇んで向かった孤島で、本物の殺人事件に遭遇する!
感想・レビュー・書評
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とても面白かった。探偵が広く公認された世界という変わった設定だけど、その設定がミステリーの世界観を壊すことなく成立してるし、キャラクターたちも「探偵」「探偵助手」という設定にきちんと従って行動してるので不自然さがなくスッキリ読めました。
理路整然とした、無駄のない話だと思いました。何より、キャラクターが魅力的なのがよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
★これ以上、犯人に好きなようにはさせません。必ずみんなを守ってみせます(p.129)
探偵助手学部という設定はおもしろそう/キャラクタも好みでした/この著者もこういうユーモアミステリっぽいのを書きはるんですね/名探偵猫柳十一弦、たぶん意外に美女/名探偵雪ノ下樹のゼミは人気があり学生はエリート揃い/孤島の館で合同合宿/孤島と台風来襲という閉鎖的空間/最初の夜一人目と二人目の犠牲者が/棺の中で胸を串刺しにされた発光する死体、これはわかりませんでした/一酸化炭素と思われる気体が充満したアクセル製の立方体の中に閉じ込められた死体、これは簡単でしょう/わりと凝った仕掛のわりには犯行に使える時間が短く被害者自身の協力があったのかも?/事件が進むに従って恐慌状態になっていく探偵助手の卵たち。まあ、それも助手の資質かもね?/犯行を予測する猫柳は身を挺してそれを防ぎだんだん痛んでいく/猫柳の言う犯人のルール、ミッシングリンクはどんなものなのか・・・さすがにこれはほとんどの人がわからないのではないでしょうか/犯人当ても珍しく失敗しました/『観せる舞台』としてのクローズド・サークル/猫柳十一弦はどうやら早すぎるタイプの探偵のようだ。
■探偵助手学部についての簡単なメモ
【一行目】私は名探偵という職業に憧れ、名探偵として仕事がしたいと思っていた。
【アクリル製の立方体】殺人には向かない凶器。おそらくは自殺にも向かない道具。これはまあ、ネタバレというまでもなく自分から入るよう仕向けるしかないでしょう。どうやってそう仕向けたかはすぐにわかります。僕なら完全には中に入らず被るだけにするやろなあと思いますが。
【後片付け】《散らかしてくれる仲間がいるというのはいいことだ。》p.20
【雨笠聖一/あまがさ・せいいち】雪ノ下ゼミの学生。医学部から編入。
【鮟鱇荘】大学そばの安アパート。二階の三室は猫柳が全部借りきって資料置き場にしている。
【一酸化炭素中毒】かつて旅行中、テントの中でランタンをつけたまま本を読んでいて急に気分が悪くなって「ヤバ、一酸化炭素中毒かも」と外に飛び出て吐いたことがあります。そのとき調べたのですが、無臭で気づきにくい一酸化炭素は空気とほぼ同じ比重らしいですが燃焼によって発生することが多いのでその場合は上昇することも多いようです。なんらかの仕掛で自ら箱の中に入るよう仕向けることは可能かも?
【緒方みのり/おがた・みのり】雪ノ下ゼミの学生。測量器メーカー社長令嬢。
【小田切美奈/おだぎり・みな】雪ノ下ゼミの学生。メガネ女子。天才プログラマ。
【過剰】猫柳《もし何かが過剰な時には、そこに秘密が隠されている》p.312
【貴崎通/きさき・とおる】雪ノ下ゼミの学生。その中では話しやすいタイプ。登場人物が全部出てきた段階での犯人候補としてチェック。
【君橋君人/きみはし・きみと】→クンクン
【倉沢辰已】雪ノ下ゼミの学生。作家、倉沢舞児(くらさわ・まいご)の息子。
【クンクン】語り手の「私」。君橋君人。猫柳によってクンクンというあだ名がつけられた。性別は不明。登場人物が全部出てきた段階での犯人候補としてチェック。髪を切るスキルを持つ。
【計画】小田切《臨機応変に対応できない計画なんて砂上の楼閣だよ。私なら無数の可能性と、それにあてはめるいくつかのパターンを用意しておくね》p.69。まあ、ぼくでもそうしますね。
【蛍光塗料】厳密に言うと「蓄光塗料」。最初の夜、玄関の外に蛍光塗料がぶちまけられ松林に続いていた。
【合同合宿】猫柳《わたしたちがここに呼ばれたのには、何か理由があるのかもしれません》p.50
【探偵助手学部】大東亜帝国大学探偵助手学部。ワトソン役を育てる。
【探偵助手に必要なスキル】愚鈍である時代は終わって久しいらしい。皆から出た案は、医学的知識、鑑識能力、自警能力(戦闘能力)、記憶力、記録能力、外部との連絡手段を維持する能力、経験。個人的には、聞き上手であること、驚き上手であること、探偵に心地よく捜査させるための各種コミュニケーション能力と思うが?
【千年舘宮子/ちとせだて・みやこ】雪ノ下ゼミの学生。お嬢さまらしい。合宿のため孤島の館を貸してくれた。当然ながら犯人候補の一人。被害者候補としても強力。
【月々守/つきづき・まもる】探偵助手学部の友人。アパートも同じ鮟鱇荘。登場人物が全部出てきた段階での犯人候補としてチェック。《我々がどうでもいいと思うようなことを覚えていて、肝心なことは忘れるタイプだ。》p.171。《「馬鹿のふりをしろっでことね」月々が笑って云う。「俺の得意分野だな」》p.173
【中井錬/なかい・れん】探偵事務所の跡取り。ゼミのリーダー的存在。リーダーシップを取りたがり全員をコントロールしたがっている。もしわざとでなければ言わないでもいいことを言い他者を不安にさせるという、探偵にも探偵助手にも向かないタイプのようだ。
【猫柳十一弦/ねこやなぎ・じゅういちげん】二十五歳にして名探偵号を取得している天才。そのわりに妙に気が弱い。すく泣く。ゼミは人気がない。髪が長く表情が隠れていることが多く身体の位置がさだまらず常にゆらゆら揺れているように見える。《しょうがないって片付けることのできる事件なんてないんです。探偵がいるならなおさらです》p.235。《彼女は推理によって犯人の次の一手を予測することはできるが、それを回避する方法は常に行き当たりばったりでしかないのだ。》p.268。で、戦闘能力があるわけでもないので体当たりするしかなく自分自身をも痛めてしまう。
【閉鎖状況】《閉鎖状況における殺人事件において、最大の敵は犯人そのものよりも、疑心暗鬼という目には見えない相手だ。》p.174。《携帯電話やインターネットという情報技術が、クローズド・サークルを過去にしてしまった。》p.361
【雪ノ下樹/ゆきのした・いつき】名探偵。そのゼミは人気があり、ゼミ学生はエリート探偵助手候補。探偵助手というものをシステム化した。当然ながら全員の名が出た段階での犯人候補としてチェック。逆に被害者候補としても可能性が高い。
【雪ノ下ゼミの学生】貴崎通、千歳舘宮子、中井錬、雨笠聖一、倉沢辰已、緒方みのり、小田切美奈の七名。
【ライター爆弾】使い捨てライターを削るなどして爆発しやすくした。確実性に欠けるしそこそこの火傷は期待できるが殺傷力は低いと思われる。また当人に持たせるには手間もかかる。嫌がらせ程度か、持ち主が犯人か、不確実な多くの方法を用意していただけか。 -
犯行の動機などに少し?と思うものの、気軽にミステリーを楽しめる一冊です。次作にも期待です。
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設定などに、うっ、て思うことが多少あるけど、そこを受け入れられたら、肩肘張らずに気軽に読める一冊だった
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名探偵号があったり探偵が大学で教鞭を取っていたり探偵助手の講義があったりする世界。相変わらず北山先生のキャラクターは秀逸。今作の探偵である猫柳十一弦は今までになかなか例を見ない探偵だと思った。これは次作も読まなければ。