興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062923538

作品紹介・あらすじ

講談社創業100周年記念企画として刊行された全集「興亡の世界史」の学術文庫版第一期のうちの第4冊目。
 14世紀の初頭、アナトリアの辺境に生まれた小国は、バルカン、アナトリア、アラブ世界、北アフリカを覆う大帝国に発展し、19世紀までの約500年にわたって、多民族と多宗教を束ね、長期の安定を実現した。
 この「オスマン帝国」は、一般に理解されているような「イスラム帝国」であり「トルコ人の国」だったのだろうか?
 メフメト2世、スレイマン1世ら強力なスルタンのもとで広大な地域を征服した後、大宰相を中心に官人たちが支配する長い時代が続き、やがて、「民族の時代」の到来により「多民族の帝国」が分裂するまでを描き、柔軟に変化した帝国の仕組みと、イスタンブルに花開いたオスマン文化に光をあてる。
 イラク、シリア、そしてパレスチナと、オスマン帝国の崩壊後、この地域は、現在も紛争のさなかにある。現代の世界を理解するためにも必読の書。
[原本:『興亡の世界史 第10巻 オスマン帝国500年の平和』講談社 2008年10月刊]

感想・レビュー・書評

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  • 最初に大事なことを。「表題にあるような500年の平和なんて無かった」<代替わり毎に兄弟皆殺し、反乱、外征の繰り返し(代替わり毎の兄弟皆殺しは初期だけとはいえ)

    そして、オスマン帝国のコンセプトである『イスラム法を用いて、イスラム教徒と非イスラム教徒を平等に支配する』結局これが完成する前に国が滅んだ。ビジネスモデルに問題があったと思われる。ただし、形を変えながらも五百年継続した事は評価されるべきか。

    とはいえ、中央集権を指向していたにもかかわらず、徴税権を売却する、戦争には地方領主の軍勢を頼るなど、帝国維持の為の手法が中央集権を弱める方向というのは、緩やかに崩壊したとは言え、やはり崩壊する宿命だったのかも知れない。

    そして、オスマン帝国の領土が、そのまま現在の紛争地帯であると言うことも哀しい現実である。これは、オスマン帝国の責任のみならず、オスマン帝国末期に民族主義を煽る手法で切り刻んだ列強(英仏露)の責任が大きいのだろう。
    だが、未だにその始末はついていない。オスマン帝国の数百年という共通の経験は、その解決策の一助にならないのだろうか?

  • 世界史も地理も詳しくないのですが、大変興味深く読みました。
    学術文庫というのも初めて読みましたが、文庫にコンパクトにまとまっており、面白いです。
    コンパクトにするためにある程度端折ってはありますが、わかりやすく読みやすく、歴史や文化などに触れ絵や図なども豊富です。

    日本とは異なる価値観、考え方、それでも同じ人類として似通った判断をする部分もあり、それらのことに思いを馳せて読むのも面白かったです。
    周りの意見を聞く。美徳であり弱点でもあるという言葉が個人的には頷かされました。

  • 良書。この本も、やはり「興亡の世界史」シリーズはハズレがないなと思わせてくれた。オスマン帝国の支配が及んでいた地域の近現代史についてもっとよく知りたいと思ったので、別の書籍を当たってみようと思う。

  • とてもおもしろく読めた。
    500年の平和という中でも変容していく帝国の内実がわかりやすく描かれている。
    それぞれのエピソードを現代に引き戻してくると、中東欧や中等の現状(一部で混乱は続いている)の原因も見えてくる。

  • 西洋史関連の本を読んでいると、必ず出てくるオスマン帝国。

    知っているようで、あまり知らないので、読んだ。

    とてもわかりやすく、オスマン帝国の興亡について書かれていた。

    長きにわたる支配、広大な支配。

    なぜそれができたのか?について、少しは頭に入ったかな。

    多様な民族・文化・宗教を包摂しながら、その平和を保っていた。

    中でも、”異教徒に寛容だった”という点は、改めての認識。

    読んでいて思ったのは、バルカン半島や今のアフガニスタン(とその周辺地域)。

    昔から紛争が絶えない地域だなぁと。

    民族・文化・宗教が複雑に混じりあっているためなのか。

  •  中東諸国の歴史がよくわかっていなかった。オスマン帝国の歴史を学ぶことによって、争いの背景がわかりました。

  •  トルコ、と聞くと皆はどういうイメージがわくのだろうか。
     ある人はトルコアイス、ある人はケパブといった肉料理かもしれない。またある人はなんだかわからいけどイスラムの国という反応かもしれない。

     実際私はあまり印象がない。高校で世界史を学ばなかったせいもある。
     だからか、以前より中東やイスラムについてはいつかは勉強したいという思いがあった。

     とはいえ、この本を実際に手に取ることになるきっかけはテレビであった。Huluで放映された「オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム」だ。何気なく見たら面白いのだ。要はトルコ版の大奥といったストーリーであるが、そこにイスラムの影響、ヨーロッパとの文化的人的交流なども描かれていた。出ている女優や素敵なものあるが。話の筋は大河ドラマではあるが、私には目新しく、面白かったのだ。

     オスマンのことを知りたいと思い買ったこの本は、当初とは全く異なったオスマン像を私に与えた。500年以上に及ぶオスマン帝国の歴史、ハレムをはじめとした取り巻きの政治・戦争と栄光・内部の腐敗や権力争い等は丁寧に描かれています(イブラヒムやヒュッレムも出てきます)。これは非常に興味深く読みました。しかしより印象的であったのは、オスマン帝国というイスラム教義下に統治された各民族や宗教の共存だ。イスタンブールというヨーロッパにごく近い土地で、エーゲ海沿岸諸国出身の商人、現在の東ヨーロッパ出身の宗教者、はたまたシリアやイラク出身の豪族などが時代時代に生きていたのだ。最終章で筆者がややノスタルジックに述べるこのオスマン帝国の特徴である多様性とイスラム法による包摂は、現在民族主義に彩られた各地での内戦や争いとは実に対照的である。

     現在の民族紛争、宗教間の対立など、中東をめぐる問題をより深く理解するためには読んで損はないと思います。特に世界史を勉強しなかった方は必読かと思います。

  • HK5a

  • オスマン帝国が大きく2つに分かれること。
    17世期までのオスマン帝国が、他民族、他宗教国会であり、現実的な政策をして一つの国にゆるやかに纏っていたのが、ヨーロッパの近代化の波にもまれ、民族自決や宗教をはっきりと主張し出したことにより、内部崩壊が起こった。
    しかし、兄弟殺しはインパクト充分。不思議なのは、何故父親は殺されると分かって、何人も子供をつくったのか。今の道徳や社会制度の尺度では測れないのだろうなあ。

  • 塩野七生さんの「コンスタンティノープルの陥落」を
    読んで、オスマン帝国のスルタンや
    統治方法に興味が出て、こちらを読みました。
    正直中だるみしたんだけど、オスマンの女性や
    キリスト教徒など異教徒の扱い方、
    商人の台頭や役割、詩人の存在について等、
    トピックが非常に広く包括的でした。
    塩野さん、その辺書いてくれないかなぁ。
    併せて「pen イスラムとは何か」も読むと、
    より知識が補完されます。
    4つけたいけど、中だるみ分で3.8くらい?

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著者プロフィール

1958年山口県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学東洋文化研究所助手を経て、現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。著書に『オスマン帝国の時代』、共編著に『記録と表象―史料が語るイスラーム世界』『イスラーム世界研究マニュアル』などがある。

「2016年 『興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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