- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062923453
作品紹介・あらすじ
現在の「民主主義」の源流の一つが、古代ギリシア、なかでもアテネの民主政に求められることは、だれしも否定できないだろう。支配者と被支配者の区別を消滅させるほどに徹底した民主政治のしくみを、2500年も以前のギリシア人はどのように創り上げたのか。そして、200年近くもの間、市民たちはどんな思いでそれを担い、守っていこうとしたのか。
ペルシア戦争の英雄でありながら、被告人として民会に引きずり出され、苛酷な罰を受けて悲惨な最期を迎えた将軍、ミルティアデス。アテネ民主政の最大の指導者、ペリクレスの計数能力と家政術と公共事業。ソクラテス、プラトンの民衆裁判への敵意と侮蔑……。民会・評議会・弾劾裁判・陶片追放など、「参加と責任のシステム」のしくみを詳細に検討しながら、試行錯誤を重ねてきた人々の歩みをたどり、時に無邪気に理想視され、あるいは衆愚政として否定されるアテネ民主政の実態を平易に描く。
ペリクレスが理想とした民主政とは、たんなる国家制度ではなく、ひとつの生活様式だった。そこではどの市民も民主政への参加を期待され、政治生活に参加しない者は無能な市民と見なされたという。「民主主義」とは何か、「政治」にいかに参加するかが問われる現在、その源流へさかのぼって考える恰好の書。
朝日新聞「論壇時評」(2015年6月25日付)で取り上げた高橋源一郎氏が推薦。
[原本:「丘のうえの民主政」1997年、東京大学出版会刊]
感想・レビュー・書評
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民主主義はどのように生まれたのか。
自然状態に近い人間の集団は、血縁が中心だろう。そうなると自ずと腕力や知力に優れていたり経験豊富、世襲、一芸に秀でた個体が分かりやすく、合議制よりも一定以上の能力者に意思決定や統治が任されたのではないか。これは、現代の会社組織に近いかも知れない。しかし、こうした集団が複数発生すると、一々殺し合わずに、集団間の利害を調整する仕組みが必要となる。
専制君主政でも、寡頭政でもない新たなタイプの支配体制としての民主政。ソクラテスやプラトンはアテネの民主政に批判的な立場をとっていた。抽選で国家の役職を選ぶと言うやり方が不合理であると。ペロポネソス戦争後、デマゴーグの扇動によって操られたアテネは衆愚政に堕した。
意思決定や利益配分、社会福祉や集団の安全保障を制度設計し、警察機能を果たす。今の統治機構や政治システムが正しいと思えないが、現状を分析する上でも、源流を知ることは重要だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
231||Ha
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741390 -
古代アテネの直接民主制について、方法・規則・運用について、歴史書を引用しながら解説・考察した本。世界史の教科書の解釈「衆愚政治によりペロポネソス戦争で敗退したことでアテネ民主制は滅びた」とは異なる解釈をしている。
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第1章 マラトンの英雄とその死
第2章 指導者の栄光と苦悩
第3章 参加と責任のシステム
第4章 迷走するアテネ
第5章 民主政の再生
第6章 たそがれ
著者:橋場弦(1961-、西洋史学者)