カレーライスと日本人 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062923149

作品紹介・あらすじ

インドで生まれたカレーが、いまや日本の食卓の王座についている。日本人はなぜカレーが好きなのだろうか。われわれが食べているカレーはインドから輸入されたのか。アジア全土を食べあるき、スパイスのルーツをイギリスにさぐり、明治文明開化以来の洋食史を渉猟した著者が、「カレーとは何か」を丹念に探った名著。刊行後、『美味しんぼ』で詳しく紹介されるなど、日本の食文化論に大きな影響を与えた。著者による補筆を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「もはや日本食」といって誰もが納得するであろう、インド発祥、イギリス経由で入ってきて、それから日本化したカレーライスについての、インドでのその様を探っていく段階から、歴史や変遷をたどっていく、非常に面白い本。食いしん坊でカレー好き、さらに読書も好きな人ならば、小躍りしてしまうこと請け合いの良書でした。さまざまな興味深いトピックに溢れてます。たとえば、明治五年のことですが、天皇が肉を食べた、と宮内省(当時)が発表したそうなんですが、それまでは日本人って、肉食が禁忌だったとのこと。それでも山村部などでは今でいうジビエ肉が食べていただろうと思われ、さらにいえば、表ざたになってないまでも、庶民の間でたまに食べられていたりもしただろうし、どこかの藩で将軍に献上している記録もあるようでした。タブーであって、全面禁止ではなかった。また、鳥肉は食べていたようです。さらに、ウサギを一羽二羽…と数えるのは、獣としてカウントするとタブーにひかっかるからだそう。そうやって心理面で操作して食べていたんですね。で、明治の文明開化による洋食誕生、つまり、西洋の調理法が日本に入ってきて、日本化されていく過程で同時に日本の食文化も変わってくるんですけども、肉食の解禁によって牛鍋が流行った。ステーキくらいの牛肉を味噌だとか醤油だとか砂糖だとかと鍋で煮たみたいです。夏目漱石の小説を読んでいても「牛鍋」なんてものが出てきますから、牛丼の具のようなものかなあと想像していたのですがちょっと違っていますね。で、それが文明開化の象徴だったのかもしれない。そんななか、カレーがイギリス経由で伝来する。イギリスでカレー粉が発明されていたので輸入して、手軽に作れたんでしょう。現存している最初の頃のレシピでは、カエルカレーがあります。ほか、玉子カレーだの牡蠣カレーだの、さまざまな食材でチャレンジしているのところに、明治の人たちの楽しんでいるさまが感じられる。明治の後期になると、もうその段階で、乾燥カレーなるものも商品化されている。お湯を注いで混ぜればカレーになったそうで、今でいうフリーズドライ製品的なものだったのかもしれませんね。とまあ、そんな感じで、著者の視野は広く、昭和にいたって、いわゆる原風景としてのじゃがいもと人参と玉ねぎと豚肉のカレー、それも、肉はちょっぴりだけど…というものに辿り着いていく。

  • カレーとはどこから来たのか、
    日本人にとってのカレーとは、
    何がカレーなのか、
    かなり歴史を深く掘り下げ客観的に考察。

  • カレーライスを歌ったのはエンケンだったか。エンケンの歌と存在は、強烈に心に刻印されていますが、この本は、なんかあまり印象に残らなかったです。【2023年4月20日読了】

  • カレーを通じて外国との交流の歴史、日本人の社会の変化がわかるとてもユニークな本。読んだのは学生時代、25年以上前になるが、いまだに読んだときの充足感は忘れられない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741226

  • 日本人にとってもっとも身近な食事であるカレーライスの歴史をめぐる研究の記録。調べるほどに謎が深まる展開はまさに研究。オススメ!

  • カレーのルーツを知りたかったので、面白く読めた。
    ルーを使ったベーシックなカレーを無性に食べたくなる本。

  • 日本にカレーが伝来するまでと、伝来してからいまのルーカレーのようなカレーが一般的になるまで。
    最初に日本国内で文字で紹介されたのがカエルカレーだったというのがかなりの衝撃だった…。いまの一般的なカレーになったきっかけが軍のレシピ本というのは知っていたのだけれども。

  • ラーメンと並ぶ国民食、カレーライス。インド発のこの食べ物は如何にして日本に入り定着しジャパナイズされてきたか。インド、イギリス、日本の歴史を紐解く取材で明らかにする。1989年に刊行された原書に加筆された現代版のため今では広まった知識ではあるが、カレー愛に満ちた取材を辿るのはなんとも楽しい。あとがきによれば著者は漫画華麗なる食卓の監修もしていたとか。なるほど。

  • カレーライスがいかにして日本の国民食の立場になっていったか、その歴史を、イギリスまで行って確かめた人の本。
    他にもカレーのこといろいろ書いているようだけど、特に食指が動かない。
    そんな感じの文章と内容でした。

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著者プロフィール

1955年、熊本県水俣市に生まれる。高校在学中、アメリカ人写真家ユージン・スミスと水俣で出会い親交を深め、写真家を志す。国際基督教大学で文化人類学を学び、以後、アジアをはじめ、世界各地を歩き、写真、文章を新聞、雑誌に発表。
現在は写真家、ジャーナリスト。大正大学客員教授。早稲田大学などでも食文化を講じる。人気カレーマンガ『華麗なる食卓』(集英社、全49巻)を監修。
主な著書に、『食の冒険地図』(技術評論社)、『世界の食文化4 ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー』(農文教)、『考える胃袋』(石毛直道民族学博物館名誉教授と共著、集英社新書)、『食の文化フォーラム31 料理すること』(編、ドメス出版)、『食べもの記』『手で食べる?』『食べているのは生きものだ』(以上、福音館書店)などがある。

「2015年 『カレーライスと日本人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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