- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062900836
作品紹介・あらすじ
謎のゴーストを探し求めてアメリカ横断の旅に出るブッチ・キャシディとサンダンス・キッド。そしてBA‐SHOとSO‐RAもアメリカを旅し、「俳句鉄道888」で、失踪した叔父を探すドン・キホーテの姪と巡り合う。東京の空を飛ぶ「正義の味方」超人マン・タカハシは、ついにゴーストからの呼び出しを受ける…。隠されたゴーストの正体とは?時空を超え、夢と現を超え、疾走する冒険小説。
感想・レビュー・書評
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毎朝通勤時に少しずつ読み進める自分には合ってなかったかも知れない。一気に集中して読むと、より塊感が感じられたのかもしれない。
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『優雅で感傷的な日本野球』にも登場した、映画『明日に向かって撃て』でおなじみ実在の銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド。「ゴースト」という謎の存在を退治すべく西部から東部へとアメリカを横断する二人。
彼らが旅の途中で出会ったBA-SHO(芭蕉)は弟子のSO-RA(曾良)と草葉亭ホイットマンが待つルイジアナへむかうところだったが、のちにSO-RAとハーレイに乗って旅を続ける途中で『イージー・ライダー』よろしく銃撃されて死んでしまう。その死の直前の走馬灯で回想するアビシニアの砂漠で出会ったフランス人の詩人(おそらくランボー)との邂逅。
死後のBA-SHOは銀河鉄道999ならぬ俳句鉄道888で旅を続けているが、そこで出会った二人連れは、あのドン・キホーテの姪アントニアとサンチョ・パンサ。二人はドン・キホーテとサンチョ・パンサが出会った、自分たちそっくりの二人の話、をBA-SHO聞かせる。ゴーストと戦っていたそのもう一人のドン・キホーテを探して二人は旅をしている。
一方、現代日本の石神井公園ではおなじみ売れない作家で「正義の味方」のタカハシさんが悪と戦っており、ペンギン村では『死』が次々と村人をおそい則巻博士は最後の一人となってしまう。石神井公園の正義の味方タカハシさんは、当時併行して連載していたらしい『ゴヂラ』から流入してきた感じ。「ペンギン村に陽は落ちて」の章は、同じタイトルの本が別にあるけれど内容は違う、しかしペンギン村に誰もいなくなるこの寂寥感は共通。
他の作品と重複しているのは高橋源一郎の本ではままあることだけれど、この小説はその集大成といった感がある。ご本人もあとがきで、これ以降の作品すべてのタイトルが「ゴーストバスターズ」でもいいくらいだとおっしゃってましたが、確かに、結局はっきりわからない巨大で虚無的な何かと、登場人物たちは常に戦わされているのかも。
ラストは少年の一瞬の夢だったのか、さらに同じことをループしていくのか、ペンギン村の末路と同じく言い知れない寂寥感に襲われる。
※目次
アメリカ横断/反歌――奥の細道/アメリカ再横断/俳句鉄道の夜/俳句鉄道888/わたしの愛したゴジラ/ペンギン村に陽は落ちて/俳句鉄道の夜/冒険/解説:奥泉光 -
著者:高橋源一郎(1951-、尾道市)
解説:奥泉光(1956-、山形県三川町)
年譜・著書目録:若杉美智子 -
何度目かの再読。
色々な登場人物が(ブッチ・キャシディ、サンダンス・キッド、タカハシさん、ゴジラ、ぱーざん、はるばあさん、ドン・キホーテ、松尾芭蕉、女子高生などなど)が色々な場所で(アメリカ、俳句鉄道888、ペンギン村、東京近郊のデニーズなどなど)で、ゴーストを介して交錯しあう、といった感じだろうか。
僕は高橋源一郎の作品を読むと、いつも切ない気持ちになってしまうのだが、今回も例外ではなく、とても切ない気持ちにさせられた。
特にペンギン村の章は何度読んでも泣けてしまう。
それはともかく、そもそも「ゴースト」は一体何だったのか、物語の中では白黒はっきりはされてない。
だから(これも高橋源一郎の作品の常なのだが)白黒はっきりした結論が知りたい方には残念ながらあまりお薦めは出来ないと思う。
僕にとっての極上の一冊。 -
完璧なまでに美しい冒頭から続く二人のギャングの冒険譚は、高橋源一郎らしからぬストーリーテリングでぐいぐい読ませる。途中で挿入される(お馴染みの)ペンギン村のパロディにしても、一個のSFミステリーとして抜群に面白い。
ただ、如何せん批評意識が強すぎる。それが一般読者を遠ざけている。
僕個人としても、「松尾芭蕉」と「売れない作家のタカハシさん」のパートがなければ星5つだったかも。 -
“「どうしたね、パーザン」
「わたしにもうすぐ『死』がやってくるのだ」パーザンは小さいが、凛とした声でいった。「そのことを、あなたに伝えたくてここまでやってきた」
(…)
「しかし、どうしてもわからないことがある」パーザンは憂鬱そうな声でいった。
「『死』とはなんだろう。それがどういうことをさしているのかわからないのだ」”
“おまえはもうゴーストに触れたのだから、夢と現実のような粗雑な区分は捨てなければならない。いま、おまえの胸がつぶれそうなほど苦しいのなら、おまえはそれを大事にしなければならない。(…)それがどこであれ、結局おれたちはなにかをしなければならないのだ” -
異世界。夢と現実、時間、生と死といった、物事の前提になる概念も固まっていないため、何が起こるかわからない。予測不能な文章を読んでいると、徐々に高橋源一郎ワールドにはまりこみ、抜けだせなくなる。異世界を読ませてしまう文章力。すごい。
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こういうのこそ、高橋源一郎の真骨頂ですね!
でももっと、登場人物の内面に迫った血肉に満ちた話が読みたいです。
さらりとしたファンタジーな印象。
13.04.05 -
300 みちくさ