憲法という希望 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883870

作品紹介・あらすじ

「憲法は日々を生きる私たちの味方です。しかし、私たちがそれをうまく使いこなさなければ、憲法を活かすことはできません」
気鋭の憲法学者が憲法の歴史・理念を分かりやすく解説し、選択的夫婦別姓問題や、地方自治など、現実の社会問題に対して憲法をどのように使い活かすのかを語る。
また、2016年5月に行われた、NHK「クローズアップ現代」元キャスター・国谷裕子氏との憲法対談を収録し、さらに深く憲法の本質に踏み込む。
「憲法」がより身近になる、日本国民必読の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 普段読まないジャンル。
    監査でもよく言っている、フレームワークを使って考える、の憲法版(憲法がフレームワーク)。

    ・国家権力の三大失敗「無謀な戦争」「人権侵害」「権力の独裁」
    ・憲法はこれを防ぐためのもの
     (リスクに対するコントロールですね)
    ・訴訟戦略の巧拙
    ・道徳よりも法務教育!
    ・人権侵害は、少数の人にのみダメージがあり、その他の大多数にとっては、あまり影響がない。だからこそ、憲法で保障される。
    →民主主義と多数決は同じでないという理解が大切。

    一番意外だったのは、松田さん(松田公太)の参議院での質疑。議院内閣制にあって、弊害も目立つようなこの頃を鑑みると、こうした質疑を憲法を使い倒してやっていくっていう議員がいたことに、驚きました。

    さて、憲法なんて、大学時代の、芦部憲法とやらの分厚い教科書を思い出すけど、その本にも触れていた。

    「あまりにも緩くて、理論的に突き詰められているとは言えない」
    「こんなに粗い議論では人権は守れない」

    一生懸命読まなくて正解??

  • さらっと読める憲法の本。面白かった。
    最後に推薦書をいくつか挙げてくださっているのでこれから少しずつ読んでみようと思う。

    ・選択的夫婦別姓訴訟のアプローチについて
    ・辺野古基地問題からみえる現政権の憲法観

  • ここ最近まで、憲法に対してさほど関心もなく、学校の授業でちょっと勉強したくらいで、まともに読んだこともなかった。
    けれど、最近になって色々と思うところもあって、ちょっと目を通してみると、とても大切なことがたくさん書かれていることに気づく。
    そこで憲法って大切なものだと改めて実感し、とっつきやすそうな本を選んでみた。現在において注目されている議題と絡めた説明がなされていて、とてもわかりやすく良い本だった。

    「自分が権利を持っているのとまったく同じだけの価値の重さをもって、相手も権利を持っています。」
    「憲法が目指しているのは、すべての人たちが平等である社会、多様な価値が尊重される社会」ということはすごく大事なことであるし、
    「憲法は権力者を拘束するもの」ということも忘れてはいけないなと感じる。だからえらい人たち(?)が変えたがるんだな。
    本当にこんな歪な世の中だけど、希望と言えるのはたしかに憲法の存在なのかもしれないなと思う。
    そんな憲法を、私たちは大事にしないといけない。無関心であってはいけない。

  •  「憲法の本」というと,硬いんじゃないかというイメージが先行するのだが,本書は,その先入観を気持ちよく砕いてくれて,とてもスイスイと読むことのができた。

    社会に息苦しさが蔓延しているとすれば,それは国家が何らかの失敗をしているということであり,その解決の道筋は憲法に示されている可能性が高い。今こそ,憲法に託された先人たちの知恵に学ぶべきだろう。(はじめに)

     法律が、過去のさまざまなトラブルの経験から成り立っているように,憲法も悲惨な人間の失敗からできている。だからこそ,もし,いま変な息苦しさが社会に蔓延していると感じるのなら,それは,どっかでまた以前と同じ失敗をしようとしているのかも知れないのだと,木村はいう。

     本当にそうだと思う。

     本文では,立憲主義の基本的な考え方を説明すると共に,夫婦別姓や辺野古基地問題などの具体例を挙げながら,法律とはどのように扱うべきなのか…ということを分かりやすく説明してくれている。読めば読むほど,法律や憲法が身近に感じてくるから不思議な体験ができる本だ。

     巻末には,クローズアップ現代の国谷裕子氏との対談も収録されていて,さすがに国谷さん,木村さんの専門知識をわかりやすい形で引き出してくれている。これは,本人(木村氏)もそういっている。

     著者は,あとがきで本書の題名を『憲法という希望』としたことについて,次のように述べている。

    だれかを責め立てるようなものではなく,憲法の魅力を伝えられるようなもの,社会をより良くしていくための積極的な提案を示せるものにしようということになった。(P174)

     安倍政権が憲法をないがしろにしてきたことへの警鐘・批判はあったが,「憲法ってなかなかいいじゃん」と思える内容だったし,もっと憲法について書かれた本を読んでみたいと思った。巻末には,読書指南もついていて至れり尽くせりだ。
     そういう意味でも,本書は,これから憲法について考えてみたいと言う人にとっては,いい入門書になっていると思う。

    第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によって,これを保持しなければならない。

     憲法を守ると言うことは,そういうことなんだなあ。

     そうそう,最高裁の「白黒の判断を留保するという姿勢」についての見方も,斬新だった。「最高裁が重要な憲法判断については、法的判断を下さないという態度をとるのは,もっと国民間で議論を深めていってねということではないか」ということらしい。確かに,もしも「白」と言われてしまったら,急に考えることをやめてしまいそうだ。「自衛隊は合憲!」と言われてしまったことを考えると,その後の展開はとても怖い。

  • 安全保障に関しては、ここに基地を造ると閣議決定してアメリカと合意すれば、地方自治体に関係なくそこに基地を造れる。

    現政権はまじにそう考えてる。恐ろしい。

  • 読了日 2018/08/06

    談話室で紹介いただいた一冊。
    正直難しくてしっかり理解できたとは思えない。


    目次
    はじめに
    第一章 日本国憲法と立憲主義
     守らせるのは「個人」
     憲法とは何か
     近代国家の三段階
     国家は悪いもの?
     国家権力の三代失敗
     文脈から考える日本国憲法
     最高法規九八条の裏づけ
     国民主権と天皇制
     憲法九条、二つの解釈
     国際的に見て妥当な条文
     武力行使は絶対に禁止?
     憲法九条の例外
     人権保障の条項が必要な理由
     三つの権利 自由権、平等件、生存権
     「権力の独裁」を防ぐ
     地方自治は権力分立の一種
     人権論と統治機構論
     国家批判は具体的に
     息苦しさに気づいたら

  • ちょうど別方面からも「木村草太さん」を薦められ、初めて彼の本を読んだ。
    読みやすく、わかりやすく、おもしろい。
    最後に「本当のプロ(教授と言われる人達を指す)は、一般の人が理解できる言葉に直してこそプロだ」というようなことを書いてあって、その通りだと思った。
    片方から批判するのではなく、憲法を使っていかに理論を組み立てられるか。
    辺野古も、ぜひ木村理論で押してほしい。

  • 学生時代、憲法を勉強していて、憲法の体温を感じたことはなかった。
    ところが、この本は全く違う。
    政府任せにして批判ばかり繰り返す日本人になってはいけない。

  • p.23-p.26
    憲法とは「過去に国家がしでかしてきた失敗のリスト」
    「国家権力の三大失敗は、『無謀な戦争』『人権侵害』『権力の独裁』」
    「こうした三大失敗を踏まえて、無謀な戦争をしないように軍事力をコントロールしよう、人権侵害を防ぐために大事な権利をあらかじめ示しておこう、独裁にならないように権力を分立したら民主的にコントロールしよう、というルールを憲法に書き込んだのが、立憲主義の憲法」
    「ですから、立憲的な意味の憲法では、軍事統制、人権保障、権力分立が三つの柱」

    国家批判は抽象論ではなく、具体的に。
    夫婦別姓の問題は「男女差別」ではなく「法律婚と事実婚の差別」として戦う。
    辺野古基地移設問題は憲法41条と92条・95条のコンボで攻める。

  • ・憲法=国家の失敗リストという定義が斬新。
    ・最高裁は「重要な憲法判断については、明白に違憲と言えない限り、法的判断を下せない」という態度をとるらしい。中立・公正な立場を貫く難しさが見て取れると同時に白黒つけないメリット(議論が深まる)にも言及されている。
    ・憲法は権力者の監視ツールとして認識していたが、考え方の異なる人同士が尊重し合う、合意を得るためのツールと捉えることもできる。

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著者プロフィール

木村草太(きむら・そうた)
1980年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業、同助手を経て、現在、東京都立大学大学院法学政治学研究科法学政治学専攻・法学部教授。専攻は憲法学。著書に『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲法の創造力』(NHK出版新書)、『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社)、『憲法という希望』(講談社現代新書)、『憲法の急所 第2版』(羽鳥書店)、『木村草太の憲法の新手』『木村草太の憲法の新手2』(共に沖縄タイムス社)など。共著に『ほとんど憲法(上下)』(河出書房新社)、『むずかしい天皇制』『子どもの人権をまもるために』(共に晶文社)などがある。

「2022年 『増補版 自衛隊と憲法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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