- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062882613
作品紹介・あらすじ
過去30年の間に国際経済を取り巻く環境は激変しました。しかしながら、日本経済は、円安頼みの輸出立国モデルに固執した結果、長期にわたる低迷を余儀なくされました。猛スピードで変化した世界経済に立ち後れた日本に対して、いち早く金融自由化に取り組んだイギリス経済は劇的な復活を遂げ、IT化に成功したアメリカは歴史に残る黄金期を迎えています。かつて「欧州の最貧国」といわれたアイルランドは、世界経済の変貌にいち早く対応し、「ケルトの虎」と呼ばれるまでに急成長しています。はたして周回遅れの感もある日本に、挽回の余地はあるのでしょうか。残念ながら、アベノミクスは、株価の底上げには成功したものの、円安誘導の輸出立国モデルに固執しており、古い産業構造を温存することを躍起になっています。野口悠紀雄氏は、アベノミクスの金看板である、インフレ目標と異次元金融緩和は、目標も手段も間違っており、国民にカタストロフをもたらす可能性が高いと、厳しく批判しています。これからの日本経済を待ち受けているものはなにか? 経済学の第一人者 野口悠紀雄氏の鋭い分析がふんだんに盛り込まれた作品です。
感想・レビュー・書評
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24,27.38.61.108.147.186.196.209.211.212.214
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既存の産業に固執せず、新たな生産性の高い産業や雇用を創出することが必要。
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【由来】
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【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
・日本は円安という麻薬を使い続けることによって、経済の流れに逆らい、産業構造を保存したままここまで来てしまった。今後は高度なサービス産業の育成のための教育の高度化(特に金融知識)と人材を外国からどんどん取り入れることが必要だ。金融と言うとイメージが悪いが、リーマン・ショックに代表される金融不安は金融工学が原因なのではなく、金融工学を無視したことが原因。
【ノート】
・第7〜10章はちゃんと読めてない。数字が出てくると途端にスピードが落ちる。これはきちんとフォローしていくのが苦手なのか、経済についてまだ背伸びをした本を読んでいるからなのか。
【目次】 -
非常にわかりやすくまとめられている。
今まで読んだ中で金融や経済を扱っているところでは、最も読みやすい。
基本的に今まので歴史を振り返るというもの。
これから何をすればいいかって、そんなの本よんでわかるんだっったら、みんなやってるってばよ。
だからみな、過去の言い当てを自慢するの -
一言で言うと『産業構造が変わったのに、未だに日本は「物作り・輸出」を方針にしている。これを推し進めるアベノミクスでは日本の成長はあり得ない。』という本
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こんな本に勇気をもらえる
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冷戦終了から現在までの経済の動きについて、わかりやすくまとめられている
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金融改革と高齢者対応策で、今後の日本をとらえよう、という本か。戦後~現代までの日本の状況を金融、経済視点で説明してもらった。知識不足で、理解のおぼつかない点も多々あるが、他文献等ですぐフォローできるので問題ではない(フォローしないと理解できないので必ずやります)。ではどうするか?の観点での記述が、後半にわずかに記されているのみだったので、別書で補いたい。
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ちょっと古い本ですが、ようやく読みました。
日本の経済について、これだけ具体的に先を見て書けている本はなかなかないなあと思いました。ちょっと古い本ということで、この本の中に書かれている少し未来は、今から読むと少し過去なわけです。現実に起こっていることとすり合わせしていくと、野口さんの論考はかなり精度が高いと感じます。おそらくアベノミクスは失敗であるということも、証明されるでしょう。
最後の最後にインフレについての論考がありましたが、これはまだ起こっていません。これに対して、どうやって生き残るか、考えておかなければとかんじています。 -
IT革命や中国の工業化が進んだ1990年代以降の世界経済の変化を解説し、日本が取り残された原因とその改善策について提唱している。
1970〜80年代は、日本やドイツの工業生産が進んだため、アメリカやイギリスの経済は停滞した。サッチャーは民営化と規制改革を進め、レーガンも税制改革を行って経済が復活した。IT革命によってコストが劇的に低下し、海外アウトソーシングや水平分業への移行が進んだ。イギリスではビッグバンと呼ばれる金融の規制緩和を実施したことで、シティに外資系金融機関が進出し、金融機関のディーリングルームがロンドンに統合されるようになった。
1990年代に中国が工業化したことによって、世界的な分業体制は大きく変わった。日本は高度な経済活動に特化することができなかった。日本の経済体制は、大企業が支配的で意思決定は中央集権化しており、分散型の意思決定への転換が受け入れられなかった。テレビ事業が大赤字を出したように、日本型の垂直統合モデルは敗北した。
日本の労働環境は、1990年代後半から製造業の雇用が減少し、医療・福祉などが増加した。賃金は、製造業では1990年代後半以降も上昇しているが、就業者数が増えている医療・福祉で顕著に下落したため、全体の賃金は下落している。
財政赤字を縮小する方法として、税以外にインフレがある。第二次大戦直後の日本では、一般会計総額に対する国債残高の比率はインフレによって20分の1に縮小した。70年代のイギリスとイタリア、97年の韓国やタイ、98年のロシア、2001年のアルゼンチン、2008年のアイスランドなど、国債の返済能力が失われた国では通貨が暴落した。
社会保障給付費のうち、55〜60%は保険料によって賄われるが、20%程度が国費、10%あまりが地方負担。現在のままだと、厚生年金の積立金は2030年ごろに枯渇する。
貿易収支が黒字の場合は、円安による輸出額増大の効果が大きいが、貿易収支が赤字の場合は、円安だと輸入原材料費の増加の方が大きくなって赤字が増大する。石油ショックの際、日本は金融引き締めを行い、円高になったため、石油価格上昇の影響が緩和された。
著者は、新興国が工業化したことを踏まえて先進国の比較優位がどこにあるのかを考えることが必要であり、ものづくりこそ経済活動の基本であるといった考え方にとらわれて輸出立国モデルに固執すると、かえって事態が悪化すると主張する。政府がやるべきことは、業界側の主体的な取り組みを促す環境を整備するくらいがいいのだろうが、政府はこれまでの産業体制を保護しようとする一方で、経営者も政府の戦略を求めているという依存体質は残念だ。多くの先進国では外国人労働者の比率は6〜9%を占めているのに対し、日本は0.3%しかない。教育を変えるには時間がかかるだろうが、海外の人材を活用するのは即効性が期待できる。
製造業は共同作業が得意な日本人の国民性に合っているという見方もあるし、行き過ぎた金融業に走って欲しくもない。しかし、世界の経済状況が刻々と動いている中で古い考え方に固執して守り続ければ、どんどん世界から取り残されていくだろう。日本の経済構造の転換を主張する部分は、共感できる部分が多かった。