アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882279

作品紹介・あらすじ

2013年8月、アメリカを代表する高級紙であるワシントン・ポスト紙が、
アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏に買収されたことは、大きな驚きをもって全世界に伝えられた。
だが、アメリカのメディア界では近年、とくに2008年のリーマン・ショック以降、このニュースに象徴されるような激変が起こり続けている。
ワシントン・ポストのライバル、ニューヨーク・ポストの大規模リストラと、ウェブ有料化の成功、
老舗の新聞社が新聞発行をあきらめ、オンライン専門のニュースサイトへの転換、
地方紙連合による記事共有化、
調査報道専門のNPOメディア・プロパブリカが、米報道界最高の名誉であるピュリツァー賞受賞するなど、NPOメディアの台頭、大学との連携。
そして報道のやり方の変化。
そんな激動のアメリカ・メディアの世界を、ボーン・上田賞受賞記者が丹念な取材から浮き彫りにする。
ニュースを伝えるのは誰なのか? これからの報道を誰が担っていくのか?
これは日本の近未来の姿なのか……。

感想・レビュー・書評

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  • 【アメリカのジャーナリストの少なからずが、「自分の信じる道を好きなように進みたい」と願うのに対し、日本人記者の私自身はもっと安全で、計算された旅を好んではいないか】(文中より引用)

    リーマン・ショックに伴う不景気、そしてインターネット・メディアの台頭といった荒波をかぶりにかぶった米新聞業界。急速に進むジャーナリズムの変革の様子を取材した作品です。著者は、2010年度にボーン・上田記念国際記者賞を受賞した大治朋子。

    著者自身が自分のこととしてジャーナリズムの行く末に問題意識を抱えているためか、焦点が極めて明確かつ掘り下げが十分になされている一冊でした。変化にあくまで前向きに対応すると同時に、「ジャーナリズムとは」という本質を明確にしたプレイヤーが生き残り続けているのかなとも感じました。

    たしかに米メディアの多様な選択肢には驚かされます☆5つ

  • 【由来】
    ・図書館の新書アラート

    【要約】
     アメリカでもWebによる影響でメディア再編が進んでいる。地方や中小のメディアカンパニー(主に新聞社)が淘汰されてゆく大きな流れの中で、それでも「ジャーナリズム」の使命を志向する記者たちが、Webを活用したり、記事の相互運用などの連携を取ったり、ローカル密着志向路線を色濃く打ち出したりして、新しい存在意義を創りだしている。

    【ノート】
    ・全般的には、アメリカで頑張っているジャーナリズムに対する賛歌的なトーンが強い。NPOも頑張っており、その活動を支えるアメリカの寄付文化がもっと日本にも根付けばいいのにという見解も示されており、個人的には強く同感。うちの事務所も、いつでも寄付を募っております(笑)。

    ・だが、「(株)貧困大国アメリカ」を読んだ後では、本書で描かれているようなジャーナリズムがどこまで有効なのかという気持ちになってしまう。草の根的な地元新聞社や報道系NPOが頑張ったとしても、地元から消えていく農業や、工業化していく酪農業、金融商品化する刑務所産業(!)への警鐘を鳴らすということは可能なのだろうか。

  • アメリカと日本の新聞社の違い。不景気の影響度も異なる。生き残りをかけて。

  • 「ウォール・ストリート・ジャーナル」がメディア王、ルパード・マー
    ドックに買収された時も衝撃だったが、2013年に「ワシントン・
    ポスト」がアマゾン・ドット・コムの創業者にしてCEOのジェフ・
    ベゾスに売却されたとのニュースもかなりの衝撃だった。

    そして、今年になって中国人実業家が「ニューヨークタイムズ」
    の買収に関心をしているとの報道があった。

    新聞の危機が言われて久しい。近年だけの話ではなく、ラジオや
    テレビ、インターネットと新たなメディアが登場する度に新聞は
    危機に晒されて来た。

    新聞は、いや、報道は生き残れるのか。毎日新聞ワシントン支局
    員だった著者が、アメリカのメディアの変遷を綿密に追ったのが
    本書である。

    インターネットに接続出来る端末があれば、いつでもどこでも
    ニュースを見ることは可能だ。だったら、紙の新聞は衰退する
    だけではないのか。

    だが、新聞社も新たな戦略を考える。より地域に密着した情報を
    報道する新聞もあれば、インターネットとの共存を考える新聞社
    もある。経費のかかる調査報道を外部委託するという方法もある
    し、同じ州の複数の新聞社が記事を共有することも出来る。

    興味深かったのはNPOの話だ。日本とアメリカでは寄付金の
    制度が違うから難しいところだが、良質な調査報道を続けて
    いければ組織を安定させられるんだ。まぁ、日本でも「寄付して
    くれ」って掲げている組織もあるけど、胡散臭いところがある
    のだよな。どことは言わないけど。

    ジャーナリズム=新聞ではない時代が確かに来ている。だが、
    器が変わっても中身は変わらない。優れた報道を持続出来
    るのなら、新聞も他のメディアと共存していkれるんじゃない
    だろうか。

    アメリカの新聞社、学識経験者、トップジャーナリスト等、様々
    な人々に取材し、自身もアメリカの大学で行われている講座
    に参加して多様な観点から書かれた良書。

    文章も理解しやすく丁寧な取材もなされているのだが、著者が
    毎日新聞の記者っていうのが引っ掛かるんだよな。

    「新聞に事実を報道する義務はない」って言っちゃった社長が
    過去にいるんだもの。

  • 米国の新聞市場がどうなっているのかが、とてもよく取材されている新書です。特に既存のプリントメディアからどういうプレーヤーがオンラインに移っていて、それはどういう背景と順番で起こって、その周りのステークホルダーの反応も含めて立体的に取材されまとめられています。

    個人的には知っていることが多かったので、あまり目新しいことはなかったのと、「こういう素晴らしい取材が出来る方にはもっと違う対象を」とか思ってしまったりもしましたw 現在はエルサレム支局長とのことで、ものすごく期待♪(2014/12/19ごろ読了)

  • アメリカメディアに関するレポート。主にジャーナリズムについて書かれているが、ビジネスモデルを考えるために読んだ。
    ・紙は衰退しているが、ネットではニュース需要は高まってる
    ・質の高いニュースはお金を払ってもいい
    ・メーター制は課金の手段の一つ
    ・ローカルに特化は有効
    ・広告依存は危険(Webプラットフォームが利益を取る)
    ・アメリカではNPO化が進んでいる
    ・ローカル新聞は記事の共有化を進めている
    ・提供手法が変わってもニュースはなくならない
    ・収益の多様化が必要
    ・ニュースサイトのデータバンク化は有効

  • 日本とアメリカでは、制度や文化の違いはあるが、ためになることが多かった。「ニュース産業は新たに登場した情報系産業に市場を奪われている。だが、ニュースは人々の生活により大切な、行き渡った存在になる。そのことは結果的にジャーナリズムの未来を救う要素の一つとなるだろう。」

  • アメリカのジャーナリズム、興味深い。

  • アメリカと日本の新聞社の違い。不景気の影響度も異なる。生き残りをかけて。

  • インターネットの時代、既存メディアはどのような道に進むのか、良質なニュースや報道をいかに収益を挙げつつ維持していくのか、アメリカの新聞メディアを取材した重厚なルポタージュ。自分はメディアの人間ではないが、今後メディアはどうあるべきかという問題意識の持ち方や、ウェブの活用と可能性がニュースメディアにはまだまだあるという事、NPOといった小さな組織に可能性がありそれを広げていかないといけないということ、そして自由なジャーナリズムが今後ますます重要性を帯びてくるということ等、自分に関係する部分にも引きつけて考えさせられる面が多々あった。

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著者プロフィール

東京都生まれ。1989年毎日新聞社入社。阪神支局、サンデー毎日編集部、東京本社社会部、英オックスフォード大学留学(ロイター・ジャーナリズムスタディー・フェロー)、ワシントン特派員を経て、現在はエルサレム支局長。
2002年の防衛庁(当時)における情報公開請求者への違法な身元調査に関する調査報道、03年の防衛庁(同)自衛官勧誘のための住民票等個人情報不正使用についての調査報道で02、03年の新聞協会賞をそれぞれ受賞。
ワシントン特派員時代は米国の対テロ戦争の実情を描いた長期連載「テロとの戦いと米国」、米メディアの盛衰と再編についての長期連載「ネット時代のメディア・ウォーズ」で10年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞した。
著書に『勝てないアメリカーー「対テロ戦争」の日常』(岩波文庫)、『少女売春供述調書ーーいま、ふたたび問いなおされる家族の絆』(リヨン社)、共著に『個人情報は誰のものかー防衛庁リストとメディア規制』(毎日新聞社)、『ジャーナリズムの条件1、職業としてのジャーナリスト』(岩波書店)がある。

「2013年 『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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