森の力 植物生態学者の理論と実践 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882040

作品紹介・あらすじ

「お前はまだ人の話を聞くな。誰かが話したことの又聞きかもしれないぞ。
お前はまだ本を読むな。そこに書いてあることは、誰かが書いたやつの引き写しかもしれないぞ。
話はいつでも聞けるし、本はいつでも読める。
大事なことは、部分的あるいは結論めいた話や本にあるのではない」
「見たまえ、この大地を。見たまえ、この自然を。
ホンモノのいのちのドラマが目の前で展開しているではないか」
「お前はまず現場に出て、自分の体を測定器にすればいいのだ。
現場で、目で見、匂いを嗅ぎ、舐めて、触って、調べろ」

夜行を乗り継ぎ、現場調査に明け暮れた若き日々、
「見えないものを見る力」を学んだドイツ留学時代、
徹底的な調査研究で、日本の森の真実を知った10年間、
そして、自らの理論を基に、いのちを守るふるさとの森づくりへ。

日本一木を植えている科学者の理論と実践を知る決定版。

感想・レビュー・書評

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  • ☆マツ・スギ・ヒノキ信仰をやめよう。

  • 副題が本書の内容を的確に表現している。一般的な森が持つ働きを解説する内容でも、森の文化的・宗教的側面に重点を置いた内容でもない。宮脇氏が言うところの「ホンモノの」森が持つ力を、同氏の実践を基に植物生態学的に説明する内容である。
    少し著者の実績紹介に重きを置きすぎではないかとも思う一方 で、著者が常にフィールドワークを軸に現場主義を貫き、多くの関係者を巻き込んで行動し学術的成果をあげてきたことには素直に感服した。道を究めるとは正にこのこと、という感じである。生態系において植物は重要な役割を担うが、森林が国土の大部分を覆い、風土・文化にも影響を与えている日本では尚更である。20世紀の科学技術一辺倒の国土開発から転換すべきとする著者の意見には説得力があった。

  • 「働き方の哲学」(村山昇さん)に引用されていて興味を持った本。専門家ではない自分が読むのは時折苦労する内容もあった。しかし、とても面白くあっという間に読んでしまった。メーカーの総務的視点で捉えてみたり、昨今の政治家や公共団体の視点で考えてみたり…(私自身はどれにも当てはまらないが…笑)そんな想像をしながら読み進めると本当に考えさせられるし、素晴らしい取り組みだと思った。宮脇さんは今年でおそらく92歳。今も現役バリバリなようだ。一度お話を伺ってみたい。そう思わずにはいられない。「ホンモノの森」や、「ホンモノの人」という言葉には何故か刺さるものがある。これからの日本がどうあるべきか、世界はどうあるべきか、どんどん考えが膨らんでいき、「やれることからどんどん行動を起こしていこう!」と、奮起する。そのサイクルのエンジンでありモーターのような、パワフルで思慮深い方なんだろうな、と思った。
    この方がより永く活躍されることを祈ると共に、私自身も自分のできるところから手をつけていきたいと思った次第である。

  • <目次>
    プロローグ 三十年後の「ふるさとの森」に入ってみよう
    第1章   原点の森
    第2章   始まりは雑草から
    第3章   日本の森の真実
    第4章   木を植える
    第5章   ”宮脇方式”
    第6章   「天敵」と呼ばれた男
    第7章   いのちと森
    第8章   自然の掟
    エピローグ タブノキから眺める人間社会

    <内容>
    潜在自然植生。日本の場合、わかりやすく言うと「鎮守の森」。常緑広葉樹。照葉樹林ともいう。これを再度植えていくことで、日本の森や林は再生できる。災害にも強く、花粉症もなく、海に魚も戻る…。そういう地道な取り組みをしている、80歳過ぎの研究者で実践家、宮脇昭さんの半生記。

  • 基本的な骨子は前に読んだ本(「三本の植樹から・・・」)と同じなんだけど、潜在自然植生と呼んでいる、その土地の本来固有の木々をポット苗の形で植え付けてやることで、下草などの群生も含めてより健全な・強い・持続可能な森をより早く作ることができるという教えです。

    こうして作った森は、阪神淡路や東北の震災でも、火災や津波にやられることもなくほぼ残った(例の奇跡の一本松のところは数万本のマツが根こそぎ流され、家を押しつぶしたりしたらしい)、という指摘には深い説得力を感じます。

    復興行政には首をかしげたくなる内容が多いですが、こういう合理的な方法をたくさん採用してもらいたいもんです。

  • その土地本来の植物を植えることには大賛成。コンクリートの巨大防波堤よりは緑の防波堤のほうがいいけれど、なにかちょっとひっかかるのであった。

  • 資料番号:011521424
    請求記号:653.4ミ

  •  長年、日本全国で植林を続けている著者は、人手に頼らない永続的な森林を目指して、現在のその土地にあった植物を植えること(潜在自然植生)を提唱している。
     人間の手によってマツ、スギ、ヒノキばかり植えられている日本の山林は「木材生産工場」と化し、かろうじて「鎮守の森」と呼ばれる場所にその土地本来の植物が残るだけになってしまった。なぜその森が今でも残っているかから独自の考察を始めた著者は、大規模な全国植生調査を行い、森づくりをライフワークとするまでになる。

     東日本大震災では、海岸沿いの塩害には強いマツが自然災害にはまったく弱いことを露呈し、津波に乗って凶器と化して住宅を襲った。それに対して、根がまっすぐで深いタブノキ、カシ、シイ類などの広葉樹は、押し寄せる瓦礫や自動車をがっしりと食い止めた。
     著者は「白砂青松」「奇跡の一本松」「里山」という日本人の精神に合致したイメージを一度取り払って、人間と植物が共生していく上でこれから何を植えるべきかを考える時だという。そのお手本が東京のど真ん中にある明治神宮の森であり、完全な人工公園にも関わらず、時の大隈首相の反対を押し切って計画的に常緑広葉樹を植えた結果、100年を経て限りなく自然に近い豊かな植生になっているという。

     植生研究に没頭しながらも人間やいのちのことを考えている著者は、植物社会と人間社会が同じようなルールで生きているという興味深い示唆を与えてくれている。

  • 2014 05 27

  •  植生の研究家が語る本当の森とは。

     生い立ち、研究歴を追いながら本当の森とは何かを説いていく。
     目の前にある森が人間によって植えられた木によってできた本来の姿ではない可能性は相当に高いらしい。日本中を歩き回り、目に見えない本来の植生を調べたというのだからすごい。
     
     真の緑化運動とは何かを知れる一冊。

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著者プロフィール

1928年岡山生。広島文理科大学生物学科卒業。理学博士。ドイツ国立植生図研究所研究員、横浜国立大学教授、国際生態学会会長等を経て、現在、横浜国立大学名誉教授、公益財団法人地球環境戦略研究機関国際生態学センター名誉センター長。独ゲッティンゲン大学名誉理学博士、独ザールランド大学名誉哲学博士、タイ国立メージョウ農工大学名誉農学博士、独ハノーバー大学名誉理学博士、マレーシア農科大学名誉林学博士。紫綬褒章、勲二等瑞宝章、第15回ブループラネット賞(地球環境国際賞)、1990年度朝日賞、日経地球環境技術大賞、ゴールデンブルーメ賞(ドイツ)、チュクセン賞(ドイツ)、後藤新平賞(2015年)等を受賞。第5回「KYOTO地球環境の殿堂」入り(2013年)。
著書に『日本植生誌』全10巻(至文堂)『植物と人間――生物社会のバランス』(NHKブックス、毎日出版文化賞)『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る』(学研新書)『「森の長城」が日本を救う!』(河出書房新社)『森の力』(講談社現代新書)『見えないものを見る力』『人類最後の日』『東京に「いのちの森」を!』(藤原書店)他多数。

「2019年 『いのちの森づくり 宮脇昭自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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