- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062881210
作品紹介・あらすじ
心のケアの実際の活動と、そこで大切なことは-。精神科医・加藤寛が、阪神・淡路大震災以来の経験をふまえノンフィクションライター・最相葉月にわかりやすく語る。
感想・レビュー・書評
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生々しさに涙する。
できることはとても多い。震災の経験が次に活かされている。
被災者の気持ちは被災者にしかわからない。
それでも何かをする。
書中にあるように、涙するその涙は自身の体を借りた亡くなった人の涙を代わりに流しているのかもしれない。
生きていい。まだやれることがある。一人でも必要とされているのであれば。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心のケアとは何か。
「心のケア」の実際の活動とは一体どんなものなのか。
被災地支援において外部支援者ができるのは、ほんとうにささやかで、けれどもそのささやかさが必要で、後方支援を継続していくことの大切さが伝わってきました。
やわらかで丁寧な語り口に、「これがプロの言葉づかいなんだな」と思いました。
支援者としてこんなふうに語れるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。。 -
3月にいわきに行ったときに聞いたことが忘れられない。本当に大変なのはこれからなのだというお話。私は心の専門家でもなんでもないので、忘れずにいることしかできないし、わかることもできない。それでも私なりに寄り添う道を探したいと思うのだ。とても示唆に富む内容だった。きっと、これは人と関わる仕事をしている人ならみな心に留めておくべきこと。
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薄々は気付いていた。しかし、私はなんて傲慢だったのか。自信過剰だったのか。心のケアをなんと取り違えていたのか。人の心がそんなに簡単なものでないのは自明であったのに。。。本の作り、構成も大変に良かった。
・最初の大きな悲嘆のままずーっと苦しみ続ける方が出てくる可能性がある。
・個人が示す心理的反応(恐怖、悲嘆、不安)はどれも正常な反応
・安全、安心、プライバシーの確保ができてやっと、心のケアの出番。
・お年寄りは強靱、子どもはしなやか。中高年の男性が一番の落とし穴。
・PTSD。7割回復、3割ダメ。
・住まい、生活の次は情緒的な支え。
・全身がセンサーになったつもりで聞く。その人をそれ以上傷つけない。簡単な相づちもだめ、自分の体験を話してもだめ。
・グリーフの感情は消えない。トラウマは対処できるが。
・デブリーフィングは必ずしも実証されていない。
・医師よりも看護職の方が断然役に立つ。
・震災の体験に触れるのはイヤ。「回避」反応。
・「目標を持って生きてきたのに途中でその思いを断たれた方がいる。生きることによってその思いを引き継いで頂きたい」
・「なんでもおっしゃっていいですよ」「ほんとにそんな気持ちをここでぶちまけたら、私はあなたのことを殺すかもしれない。それだけ私の怒りは強烈なのです」
・人が代わっても、小刻みなリズムで細く長く続くのがいい
・なにもしないでいるのは結構勇気が要る
・被災者は心を病んだ人じゃない -
阪神・淡路大震災をきっかけとし、自然災害だけでなく、えひめ丸沈没事故、明石市歩道橋事故、JR福知山線脱線事故などの人為災害の心のケア活動を進めてきた精神科医が、「その活動での失敗をとおして学んでいったプロセスを率直にお伝えすることが、今後、東北の被災地で支援に当たられる方たちの少しでも参考になれば【本書 199頁 加藤寛】」という理由で、作家 最相葉月氏とのインタビュー形式でまとめられた一冊。東日本大震災でも現地で活動されています。
その言葉通り、「医療や福祉の専門職の方々に現場で役立てていただけるような実践的な内容を盛り込みつつ、専門家ではないけれども支援にあたって留意すべきことを知っておきたいという行政機関や企業の方、学校の先生、救援活動に従事する方、そして、被災によって心に傷を負った方をそばで見守る友人やボランティアの方々にも参考にしていただけるよう【本書 4頁 最相葉月氏】」な、内容になっています。
第4章では 阪神・淡路大震災で被災し、家族と家を失った二人の方が、実名で16年におよぶご自身の回復の道のりを、ご自身の言葉で語られています。
本書は、救助や支援、回復の美談ではありません。
【いずれも本書抜粋 加藤寛氏】
・地域行政が大きなダメージを受けているので、これを建て直さないことには心のケアどころじゃない
・いずれ外部チームは去っていきますから、そのとき恒常的に、少なくとも目処が経つまで地元で補完できるシステムをつくらないと難しい
・体の問題をサポートできなくなると、大げさな表現ですが、寿命を縮めてしまう。そこにはカウンセリングなどが入り込む余地はあまりありません。
・メディアを通じて伝えられるものと、ぼくらが現場で接するものとの間には大きなギャップがある
・専門家の治療によって回復を早めることはできるけれども、治療しなくとも自然に回復していけることが多いんですよ、とお伝えして、その方々を支えていくことがぼくたちの一つの大切な役割なんです。
・その人をそれ以上傷つけないということです。簡単な相づちを打つことも、自分の体験を話すことも控えなければなりません。ついつい、いいたくなるんです。(中略)でも、それは役に立たないです。病気で亡くなったのと、突然津波で亡くなったのとではわけが違いますから、そういう話をすることすら相手を傷つける可能性があるんです。
・自分の限界を知りつつ活動することが大切ですね。
・被災者の気持ちというのはその人にしかわからないんですね。どんなにこちらがわかったつもりになっても、結局、なんにもわかっていないんですよ。
・今回のような大災害では、人々とコミュニティが持つ回復力に委ねていくことしか、結局はできないのかもしれません。そして、確かに多くの被災者はどんな絶望の淵からも立ち直っていくことができます。しかし、そのプロセスには差が大きく、何年も何十年もかかる場合があることを、忘れてはならないと思います。
現場で現実に向き合い、考える人の姿がここにあります。
加藤氏のチームの支援を受けた被災者のお一人が次のように語っています。
「亡くなられた方々と私たちの違いは、いったいなんなのでしょうか。違いは、あるのでしょうか。(中略)どうか、そっとしておいてほしいのです。この二階には心の相談室があって、兵庫県チームの方がいつも待機しておられますね。あの方々は、なにもいわないですね。ほんと、みごとに、なにもいわない」
本書にはその目的のために、東日本大震災の災害・被災者・支援者の具体的な状況も記されています。
ほんの230頁にも満たない新書。しかし、1頁、いや、数行読み進む度に私の感情が乱れ、その都度自分の感情を整理する。そんな作業をしながら読み進める必要があり、読了まで一週間を要しました。
思考と行動の両方を具体的に助けてくれる良書です。 -
阪神淡路大震災の被災者支援機関として設立された「こころのケアセンター」副センター長が語る災害にあった時の心のケアの話。
被災者の話、阪神淡路大震災大震災でできたこと・できなかったこと、回復のみちのり、支援者へのメッセージ。
という複数の視点からの話。
実際の失敗談含めた活動の話なので、ケアの仕方というか、接し方がたくさん書いてあり、心理学を少し齧っている私には勉強になった。
ただ、被災者の方のリアルな話と、ここ最近の地震の多さに少し私自身がやられてしまった感じがあり、まだ少し読むのが早かったかもしれないと、自分自身では思った。 -
2012/01/11読了
遺された人々を支える、心のケア。
苦しみは長く続くので、これからの医療機関やそういった対策の需要はある。がしかし、相手や被災者はそうだといって必ずしも心の病人ではないし、そもそも「大丈夫ですか」以上進むのは、良かれと思っても慎重に行かなければならない。
阪神淡路大震災や、事件事故、天災、色々。心のケアをしてきた医療の人々が、彼らを如何に救うのか。昔と違って今では心のケア、心の病気に関しての理解は社会的にも深まり、無下にせず救いの手を差し伸べる事が増えた。前例があったからこそ、プラスアルファを考え、活かすことが出来ているのだろう。
内側を救うこと。
これも大切な復興への道のりの一つである。 -
あの日から10ヶ月という節目でふと手にとった本。あの状況でどうケアできるものなのか、かける言葉なんてあるのか、
という疑問もあったので。
まず生活基盤を整えていける事が第一、支援側も極限では一種の躁状態となるけれど休息をとって心身の健康を管理して細く長く対応する体制を心がける事、疲れや悲しいという感情が出てきて漸く医療が関わる余地が出てくる事、善意のあまり見落としがちなプロセスや相手に沿う難しさが書かれています。 -
本当に必要な被災者支援活動とは何か
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加藤 寛 (著), 最相 葉月 (著)
心のケアの実際の活動と、そこで大切なことは何か。16年間神戸で傷ついた心の回復に尽くしてきた第一人者が、阪神・淡路大震災以来の経験をふまえ、ノンフィクションライター・最相葉月にわかりやすく語る。