リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880732

作品紹介・あらすじ

安心・安全の「落とし穴」。労働市場・教育・男女の不平等など動きが止まってしまった日本社会の問題点。言葉を使わない、セカンドチャンスがない-実は日本のほうがアメリカよりリスクが高い。日米を代表する研究者二人が日本人の「心と知性」を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 日本ではリスクに背を向けざるをえないのが、現状だと思います。セカンドチャンスの機会が少ないため、一度社会のレールから外れてしまうと、並大抵の努力では元に戻れません。
     
    明細書を書いていて、大学に戻りたいと思うことがあります。今担当している技術を専門的に勉強するためです。参考書の知識でも書けないことはありませんが、どうしても薄っぺらいものに仕上がってしまいます。特に、実施例に記載された実験を読み解くとなると、手も足も出ません。

    本来であれば、大学院で学んだ専門知識に関連する技術の知財を担当するべきだと思いますが、悲しいかな新規一括採用の枠組みでは、自分の専門知識をフルに活かせるとは限りません。社会に出たら、今までの知識はほぼリセットされてしまい、リスタートを余儀なくされます。

    もうすぐ、自分の中で決めた運命の五年目です。今お世話になっている会社に属するままでいいのか、別の組織に移ったほうがいいのか、熟考したいと思います。本書でも言われているように、日本社会で移るとなるには、相応の覚悟も必要であることも念頭において。

  • 対談形式でとっつきやすいんだけど、話題も言葉もついていくのは大変。
    実際対談を聞いていたとして、おもしろいけど、理解するのに時間がかかりそうな感じ。


    アメリカでは、
    就職試験でプライベートな質問をしない。
    シングルマザーであることで不利に扱われたり、差別されると法律違反で訴えられる。
    それと仕事の生産性は関係ない。

    今まで聞かれたことあるけど、違う国では違法なのかー。
    聞かれるのも、今後休む可能性があるとか、会社の人には必要な情報と思ってたけど、個人の資質には確かに関係ない。
    いつ病気するか、事故に遭う予定なんてたてられないし。
    聞かなくていいってことは、
    育児介護面でのフォロー出来るって事なんだろう。
    会社にか地域にかはわからないけど、
    日本みたいに仕事は決まったけど、子供を預けられないから仕事が出来ないというのはなさそう。

    子育てのコストにも同じように感じる。
    男性の育児休暇だったり、家庭での家事の負担率だったり。
    日本で女性が出産や結婚と共に退職が多いのは、給料格差もありそう。女が家に居るべきなんて古い考えが残ってるとは思いたくない。

    比較的所得水準の高い国で、極端な出生率低下のある国とない国の違いのひとつは、家族や性別役割について柔軟な考え方かどうか。
    男性が家事に多くの時間を使う国の方が出生率が高い。
    考えちゃうよねー。

    女だけで子供は出来ない。(お金があれば別)
    男と同じだけ働いて、家のことをして、子供のことをするなんて無理でしょ。


    学生が勉強しないのはした後の成功とか、やりがいが目に見えるものがないんじゃないかなぁ。
    働いて高所得を得られるのはほんの一部で、こうなりたいっていうお手本に欠けるのかなぁとか。

  • 日米の社会学者が長年の研究から見えてきた日本社会に潜むリスクと、委縮した今の日本社会について対談形式で論じます。

    対談形式ということでとても読みやすくなっています。
    ところどころ定義のわかりにくい表現がありますが、比較的説明がされていると思います。

    アメリカでは保護は厚くない分、リスクが取りやすい、という論理は今まで効いたことはあってもあまり受け入れてこなかったのですが、この本を読んでしっくりきました。日本の雇用制度も変化していくとよいですが、なかなかその方向には向かわなさそうですね。
    政治についても考え直そうと思います。

    また、リスクを取る意味について非常に多角的に論じられており、この本をもっと若いときに読むべきだったと感じています。
    そしてふと、この本が高校の時のレポートの参考図書に指定されていたのを思い出しました笑
    その時は手抜きして、読まないで書いたのですが、読めばよかったです。

  • 日本にはセカンドチャンスがない、ということは
    私も就職活動を通して感じていました。
    新卒で、いい企業に入らないといけない。
    正社員にならないと満足な生活が得られなくなる。
    新卒で就職活動に失敗すると後がない・・・。
    このような雰囲気というか、世間の風みたいなのを
    感じました。
    そして就職した会社でずっと定年まで働き続ける・・・
    これらは多分、一面では正しいのかなぁと思います。

    この本で「次のチャンスがある」という希望が用意されていること、
    期待が持てることも大切だと、教えられました。

  • 本書のタイトル『リスクに背を向ける日本人』というのは少々ミスリードがある題名かもしれない。対談という形式で二人のやりとりを綴ったものだ。現代の日本にある問題点を漠然と提起してそこから社会学者であるハーバード大教授のメアリー女史と北海道大学教授の山岸氏らしい内容の議論が行われる。しかしリスクテイクの話はあくまで導入であってもっと一般化した社会学者らしい話が記述されている。ゲーム理論などの考え方が展開されていますが、決して難しい数式を使っているわけではないので噛み砕いた語り口なので数学が苦手な人でも読解力がれば読めます。本著が特徴的なのは、「内向き指向な若者」「質問をしない学生」「転職でチャンスを見つけたがらない労働者」など一般的に今悪いとされている集団に対して、命令口調の説教や根性論を展開するのでなく、そういう現状が生まれたのはなぜか?について重きをおいて議論をしているところであろう。お二方とも社会学者とあってそういったシステムに着眼点を置くところが、らしい、と思った。なのでこの本は決して某勝間和代のような自己啓発本ではなくて、自分がこの状況を把握した上でどう行動するべきかを見つけられる良著である。

    リスクテイクの議論については詳しくは本著を読んでいただきたい。自分になかった視点がいくつかあってそれを記述したい。学校教育での教師の地位の低下が気になりました。なぜ日本の高校生は先進国の中でもとりわけ勉強しないのか?という問題に対してメアリー女史が80年以前では教師が就職に対するパイプをもち、それが権限の源となっていた。しかし今では大学卒業が当たり前になってきて高校の教師は以前の力を使うことができなくなったというのです。たしかにこれは一因としてある。あと親に対するアンケートで息子がほしいか娘がほしいかの質問に対して、さいきんでは娘が息子を逆転し所謂跡継ぎをほしがらない傾向に関して、これは子供がアフェクション化しているというのには大いに驚き、又共感した。つまり子どもがアクセサリー化しているのだ。発展しきった国では子供の教育に関スルコストが高い。それに跡継ぎという制度も通じなくなってきて教育をしたからといってそのコストがかえってくるとは限らない。よって親が子供に求めるものは単純にお金の問題ではなくアフェクション(情愛)なのだ。つまり言葉にはできない、愛情といった指数なのだと。そして愛情を与えてくれるのが女の子に多いという御仁方々の意見には納得しこういった視点はさすが社会学者だと思った。

    しかし対話形式なので少々やりとりが閉鎖的になりがちで又哲学チックな問題が一般化して読み終わったあと感想をどう言えばいいのか非常に難しい。現にこの書評を書いている僕自身考えあぐねている次第だ。しかし二度三度読む価値はあるし、難しいだけに自分で物事を考えるキッカケになると思います。是非一度お読みください

  • 貸出はコチラから          https://libopac.josai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2000134127

  • 題名を見て今働いている職場がまさに、と思い読みました。
    一人個人の行動や言動を変えたところで社会全体が欧米みたいな価値観や法制度に変わらない限りどうすることもできないという結論。ま、そうだよね。
    ただ今の日本人の行動についてアメリカと比較しながら分析されていたのは面白かった。

    以下、考えさせられた点
    ・10年前と今の日本まだ特に変わってないんだな
    ・アメリカでは結婚しないor独身でも中国人の養子を授かるケースが珍しくない→海外ドラマで学校に中国人が出てくるのはその影響なのかー?
    ・メアリーさん毒舌

  • 今のこの世の中、日本を理解するのにとても面白かった!!何度か読み直したい!

  • 日本人とアメリカ人の学者同士の対談。
    日本人は他の外国人と比べて、何がどうか、というもの。
    特性として、多数の日本人は組織の中ではなるべく目立たないように
    するのが賢いと感じている。
    転職にしろ結婚にしろ、一度失敗すると再チャレンジが
    欧米に比べて難しいよううだ。
    だからと言って、日本人が欧米人のまねをすればよいという
    ことではない、と著者は言いたいようだ。

  • 社会

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著者プロフィール

COEリーダー・北海道大学大学院文学研究科教授

「2007年 『集団生活の論理と実践』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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