- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062816618
作品紹介・あらすじ
世界三大悪女の一人とされ、「残虐非道の女帝」のイメージがつきまとう西太后(慈禧大后)。だが、実は当時の4億人の民を率い、47年にわたって統治を続け、中国近代化の基礎をつくりあげた、辣腕の政治家だった。
『ワイルド・スワン』『真説 毛沢東』で中国の真実を描き続ける、あのユン・チアンが「誤った西太后」像を根本から覆し、「名君・西太后」の真実に迫る!
官僚の家に生まれ、父の失脚後は長女として一家を支えた慈禧(じき)。16歳で清朝第9代皇帝の咸豊帝の側室となり、やがて幼い息子が帝位を継ぐと、後見として政治家の頭角を現していく。
しかし、息子は若くして病のために崩御してしまう。
妹の子供を養子に迎えた慈禧は、光緒帝となったその息子の後見として返り咲き、宮廷内の政治に手腕を発揮する。
革新派の上級官僚の李鴻章や曾国藩らを重用し、ヨーロッパ技術を取り入れて近代化に邁進する慈禧を、やがて日清戦争での致命的な敗北が襲う!
政変への命がけの画策、宦官との恋……。誰もなしえなかった長期的な統治の秘密を、膨大な記録をもとに明らかにする!
感想・レビュー・書評
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悪女と評されがちな西太后(慈禧太后)の生涯・人物像に迫った作品。上巻は彼女の幼少期から咸豊帝の側室としての後宮入り、息子・同治帝の即位と死去、養子・光緒帝の即位及び日清戦争までを収録。
西太后は完璧で清廉潔白な人物とはたしかに言い難い。しかしながら崩壊寸前の国家をどうにか立て直すべく、因習や性差別に阻まれつつも難局に臨み行動した点はもっと評価されるべきだと思う。個人的には浅田次郎の『蒼穹の昴』からの印象をずっと抱いていたため、本書で述べられる彼女の姿は新鮮に映った。下巻にも期待しよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
西太后を「名君」として捉えたところが特徴。
清朝の後年、近代化が進んだこと、列強に対して独立国としての意地を見せたこと等、ポジティブな影響力があったとするが、どこまでが彼女の影響によるものなのか、読了後、なかなか腹落ちするところまでには至らず。(例えば、日清戦争の敗戦の原因が、頤和園の再建等で海軍を増強できなかったという事実からも)
清の場合、少数民族が国家支配をしていたという特徴がある訳だが、資金を吸収する仕組み(それを分配することでの求心力)を有していた、という中央集権的な点がある一方、中国という巨大国家であるが故の分権的な部分(李鴻章が私兵を持っていた)もある。
このあたりの、国家運営については、未だ分かり難いところがある。
以下引用~
・清朝には政策のチェック機関として、伝統的な監視制度のもとに置かれた検閲官、「御史(ウーシー)」がいた。批判を職務とする役人といってもいい。慈禧は御史以外の官吏による批判も奨励し、知識階級が国政に関わりやすいようにした。
貿易の拡大により、中国は効率のいいー腐敗のないー税関を持つ必要に迫られた。慈禧が海関の総税務司に任命したのは、恭親王が推したアイルランド人の28歳のロバート・ハートだった。
ハートのもので海関は、無秩序で汚職の巣窟だった時代遅れな組織から、秩序ある近代的な組織へと生まれ変わり、中国経済に多大な貢献をした。