向こう側の遊園 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778510

作品紹介・あらすじ

廃園になった今も、無数の花が咲き乱れる街はずれの遊園地。そこには、謎めいた青年が守る秘密の動物霊園があるという。「自分が一番大切にしているものを差し出せば、ペットを葬ってくれる」との噂を聞いて訪れる人々。せめて最期の言葉を交わせたら……。ひとと動物との、切ない愛を紡いだミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 本屋で一目惚れして購入した本。
    廃園になった遊園地には秘密の動物霊園があり、一番大切なものと引き換えに墓守が動物を葬ってくれるという。墓守の青年と、そこを訪れた人間と動物の不思議な短編集。
    それぞれ最初に短い序章が書かれており、話を読んだ後でもう一度序章を読むと、より心にずしんと響く。動物にも心はあると思うが、果たして動物と人間を同等の位置に置くことが動物にとって幸せなのか。動物はそれを望んでいるのか。深く考えさせられる内容だった。
    月の明るい時にしか現れない、動物と心通わせる事のできる青年、夜の廃遊園地、花々が咲き誇る丘…こういう世界観に滅法弱い自分がいる。

    ドラえもんの道具のように動物と会話できたら…なんてよく思うけど、意外と全然思ってもみない事を考えられていそうで辛い(^_^;)

  • そこは、ひとが愛を葬る墓地だった。
    花々が咲き乱れる廃園となった遊園地。そこには、謎めいた青年が守る秘密の動物霊園があるという。「自分が一番大切にしているものを差し出せば、ペットを葬ってくれる」との噂を聞いて訪れる人々。せめて最期の言葉を交わせたら……。ひとと動物との切ない愛を紡いだミステリー。

    ライカは僕が付けた名前だ。
    最初の出会いは去年の五月で、
    駅前の雑居ビルの隙間にラブラドールのライカは
    ひっそりとうずくまっていた。
    P267より

  • 気になっていた、初野晴。

    廃園になった遊園地には不思議な噂があって、ワケありの動物を弔ってくれる青年がいるという。

    相手の心を覚り、嘘が嫌いなその青年との問答で進む連作短編集。
    「真実が語られる」というギミックが、ありえない世界であっても、現実に持ち込むことが出来る要素になっていて、面白い。

    単なる動物愛情物語に終わらせず、動物にまつわる過酷な状況も描かれている。
    陳腐な感想だが、人間のエゴを直視させられるしんどさがある。また、ミステリーとしても、とても巧みな作りをしている。

    基本的には廃墟の遊園地という、変わった場所が舞台になるのだが、登場人物によって語られるシーンが鮮やかに想像できる。

    シリーズ作品にも手を出したくなる、読み応えのある小説だった。

  • 半分寝ながら読んだ。
    動物、ペットと生きる。尊重するのと愛玩するのと、一体その境目は。

  • ハルチカよりは『トワイライト博物館』寄りなお話。書きたいんだって芯がしっかり通っているところと、ちゃんと意外性を狙ったストーリー展開の工夫が、良い。ただ少し、全体としてどこを目指してるのかがわからず、ボヤけてしまった感はあったかもしれない。一話完結の短編にされた方がスッキリはしたかも。

  • 昔、向ヶ丘遊園にある大学に通っている人とお付き合いしていたので、思い出してなんだか懐かしかった。心臓破りの坂とか、本当に懐かしい。

    廃園になった遊園地の跡地。
    そこは様々な花が咲き乱れる動物のための霊園だという噂がある。そしてそこには霊園を管理する若者がいて、彼に自分が一番大切にしているものを差し出せば、それと引き換えに、この霊園にペットを埋葬してくれるのだという。
    わたしは去年から猫を飼い始めて、ペットという言葉を口にするたびに少し違和感を感じるようになった。餌という言い方にも。一緒に暮らしていると、ペットという領域を超えて家族という意識が強くなるのかなと思う。

    さて、この本は5つの章から成る。
    ひとつ目のゴールデンレトリバーの話はなかなか面白かったので期待して読み進めたが、ビッグフットの章でボルテージが急激に下がってしまった。有名な某小説を彷彿とさせるこの話は、なんていうか、心に訴えかけてくるものがない。言いたいことは分かるけど、登場人物の温度を感じることができなかった。
    墓守をしている謎の青年がなぜここにたどり着いたのか、青年に嘘をついたものが酷い目に合うという噂は本当なのか、謎の回収ができないのもちょっと物足りなくて、中途半場な感じが否めない。
    でも文章は美しく、特に夜の描写はとても印象的だったと思う。

  • 廃墟になった遊園地にある、花が咲き乱れる庭園。そこにあるのは秘密の動物霊園。
    相変わらずはなしの内容は重めだけど読みやすい。
    墓守の青年は、月の光の下でだけ人間と意思疏通ができる。
    森野くんが謎を解く、というか、呪いを解くというか暴かれたくないものを暴くというか。

    どれも切ないはなし。
    似鳥さんの本と平行して読んだので、動物との関係を考えてぐぬぬとなる。
    デカルトが唱えた「動物機械論」。動物行動学では、動物は感情がないよくできた機械だという態度を今も取っているのだとか。うーん、あんまり人と同じに考えるのもどうかと思うけど、これはこれで極端だなー
    ビッグフットのはなし。最後に出した答えが辛い。知能を持ったインコのはなしも。
    最後に森野くん本人のはなしが知りたかったなあ。

  • わけありの動物たちを埋葬してくれる動物霊園の話。
    夜寝る前に1話づつ読んでいました。
    冷静に読み返せば首を傾げたくなる場面もあるし疑問も残るのだけれど、登場人物(動物)たちの痛みも舞台である廃墟の遊園地の描写も綺麗で、切ないながらに気分が落ち着く一冊でした。

  • 動物と会話が出来る青年の話。

  • 花々が咲き乱れる廃園となった遊園地。そこには、謎めいた青年が守る秘密の動物霊園があるという。「自分が一番大切にしているものを差し出せば、ペットを葬ってくれる」との噂を聞いて訪れる人人。せめて最期の言葉を交わせたら…。ひとと動物との切ない愛を紡いだミステリー。

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著者プロフィール

1973年静岡県生まれ。法政大学卒業。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。著書に『1/2の騎士』『退出ゲーム』がある。

「2017年 『ハルチカ 初恋ソムリエ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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